甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成25年1月28日

(平成25年1月28日(月) 9:48~10:09  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

臨時閣議における私の発言でありますが、本日の閣議において、平成25年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度が了解をされた。
平成25年度の経済見通しについては、世界経済の緩やかな回復が期待される中で、本経済財政運営の基本的態度における施策が推進されることにより、着実な需要の発現と雇用創出が見込まれ、景気の回復が進んでいくと考えられる。この結果、我が国の国内総生産の実質成長率は2.5%程度、名目成長率は2.7%程度、消費者物価上昇率は0.5%程度になると見込まれる。
一方、先行きのリスクとしては、欧州の政府債務問題等、海外経済をめぐる不確実性、為替市場の動向、電力供給制約等があることに留意する必要が挙げられる。
経済財政運営の基本的態度としては、日本経済再生に向けて、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略からなる「3本の矢」により、長引く円高デフレ不況から脱却をし、雇用や所得の拡大を伴う景気回復を目指すこととしている。
以上であります。

2.質疑応答

(問)16年振りの名目と実質の逆転状態の解消だと思うのですけれども、これと、5年振りの消費者物価指数のプラス転換、この二つについての御感想と、物価が下がっていく、いわゆる「デフレ」は年内に脱却できそうと見込んでいるということかを確認で教えてください。
(答)安倍内閣では、日本経済の再生をするということが至上命題であります。そのために「3本の矢」からなる対策を一体的に行う。まず、第一弾として大胆な金融緩和、日銀との共同声明を行い、関係を強化したわけであります。そして、併せて緊急経済対策を作り、それの実行たる補正予算を編成し、それに続いて、その「3本の矢」を予算の内容に表現をしていく新年度予算の編成をしたわけであります。これによりまして、今年度末から来年度当初にかけて、経済効果が発揮されると思っております。それによって、実質、名目の逆転、正常な状態に戻るという見通しを出したわけであります。
では、これでデフレを脱却したかと言われますと、デフレというのは、継続的に物価、生産、そして、所得のマイナス連鎖の起因になる連続的な物価の下落になるわけであります。デフレの脱却というのは、その状態から戻らないということの見通しが立てるということであります。単年度の見通しで、名目が実質を上回ったから即脱却できたということは、まだ、この時点では言えないと思っております。
(問)政府経済見通しと民間とのギャップについてお伺いいたします。今回、出された成長率見通しというのは、民間の出している予想から比べると強気の見通しだと思いますけれども、その中身の違いについて見ると、特に公共投資に関して、民間は人材自体のボトルネックがありますので、13年度中にそこまで執行できないのではないかという見方が多いようですけれども、それについて大臣の御所見をお願いいたします。
(答)一つには、民間の見通しの中には、日銀との連携強化、それから緊急経済対策、これを織り込む前のものも一部あります。全てが織り込んでいるわけではないということであります。これが一つあると思います。
そして、その経済対策の発動の時期と、いわゆるその中身でありますけれども、効果が年度末から次年度当初に表れてくるという点、それから、財政出動が従来型でないということに、政府は極力留意をしているということ等、そこの認識が若干違うという点、その2点で、この政府と民間の差が出てきているのではないかと思っております。
(問)財政出動が従来型ではないということについて、もう少しお願いします。
(答)民需を喚起するような、即効性と、一過性でないというところに注意をした財政出動になっているということであります。
(問)来年度予算の大枠が過去最大級、最大規模ということで、明日、閣議決定される見通しですけれども、大臣は来年度予算の編成から財政再建に向けた意思をきちんと表していくと、昨日、ダボス会議でも話されたわけですけれども、来年度予算の中で財政再建に向けた政府の意思というのはどのように発現されているとお考えでしょうか。
(答)最大の意思は、3年続いた、税収を公債発行額が上回るという異常事態を脱するということがまず第一だと思います。これはわずかではありますが、正常な状態に戻したということであります。
それから、ダボス会議でも指摘されたことでありますけれども、短期は景気刺激、中長期は財政再建、この道筋をしっかり繋いでいくということが大事だと思います。つまり、予算の中身は、公債発行額を税収以下にしたことが一つ。それから、成長路線に向けて、中身は絞っても予算のシフトを行っているという点であります。それが従来型とは随分違うところだと思っています。
(問)ダボス会議の関連で1点教えていただけますでしょうか。ダボス会議では、円安誘導批判に対して説明をなさったということなのですけれども、それは各国に理解が得られたと認識されていらっしゃるのか、その点をお願いいたします。
(答)円安誘導批判というのは、ごく一部の国からであります。具体的に言えば、ドイツ、それから、何となくそういう思いを持っていると言われているのが韓国、中国であります。それに対して私から説明をして、ダボス会議の最中で円安誘導だという指摘はありませんでした。日本の政策を支持すると。具体的には、IMFのラガルド専務理事、OECDのグリア事務総長、カナダ中央銀行総裁からも支持すると、それから、民間の識者からも、この政策は正しいということが相次いだわけであります。説明後に、この政策に対して危惧を持っているという発言は一つもありませんでした。
心配をされている国自身は、恐らく日本の輸出力、競争力が上がっていくと自国経済に打撃を受けるという心配をされているのだろうと思っております。
(問)政府経済見通しで成長率が出ましたけれども、来年度以降を含めて、来年度というよりは安倍政権のインフレが2%を目指すという、そういう経済の中で、実質と名目の成長率を大体どれぐらいに見込んでいるのか、どういう経済の姿を目指しているのかという、そこの姿がまだ示されていないと思うのですが、それについてはいかがなのでしょうか。
(答)これからの話であります。日銀との共同声明においては、2%の物価安定目標を日銀が主体に目指すと、それについて、政府としては財政再建と経済成長がきちんと両立するような絵図を書いていくということであります。
自民党の政権公約においては、名目3%以上とたしか書いてあったと思います。その中で、もちろんGDPデフレーターと物価との関係がありますから、一概に数字がこうということはなかなか言えないのでありますけれども、名目3%以上の成長を目指すということが与党の政権公約でありましたから、政府としても、それに近いような数値に向けて政策努力をしていくということだと思っております。
(問)政府としてそういう数字を、今後、まとめられるお考えはあるのですか。
(答)これは経済財政諮問会議の中で、いろいろと中期・長期の経済財政運営についての方針の中で、目指すべき方向性が出てくるのではないかと思っております。
(問)フジテレビなどが行った世論調査の結果なのですけれども、政府と日銀が2%の物価上昇目標を明記した共同声明を出したことに対して、6割の人が「評価する」と答えました。また緊急経済対策についても、「評価する」が「評価しない」と答えた人を上回りました。安倍首相が掲げる経済再生への期待がうかがえる結果とも言えるかと思いますけれども、これに関してどうお考えになるでしょうか。
(答)総選挙以降、安倍内閣が実現をするということに向けて、株価を中心に期待値が相当上がってきたわけであります。私どもとしては、期待外れに終わらないように最大限の努力をしなければいけないと、気持ちを引き締めたわけであります。そして、その上で具体的な政策、予算を発表していきました。期待が現実の政治にかわっていく中で、更に評価を高く頂いたわけであります。余計この結果を受けて緊張する中で、政策を今度は実行していくということと、実行が具体的な成果に結びついていくという過程をしっかりフォローしていかなければならないと思っております。大変に高い評価をいただいておりますことを素直に喜びたいと思いますけれども、半分は、それが落胆に変わらないように全力を投じていくと、緊張感の方が若干多いかなという感じであります。
(問)政府経済見通しについて、重ねて恐縮ですが教えてください。今回の実質2.5%成長というのは、この10年間で2%を超えたのはたしか1回しかなかったと思います。経済対策などの効果が発現するというのもよく分かるのですが、今の経済状況で本当に2.5%の成長ができるのかということと、実際それに向かってできない場合のリスク要因はどういうものがあるのかというのを教えてください。
(答)政府としてはしっかりとした意気込みを示さなければならないという前提はあると思います。それで、世界のリスク要因が改善の方向に向かっていると一つは思われます。ヨーロッパはまだ不安定要素はありますけれども、一応、政府債務危機に対しての当面の打てる施策は、EUは打っているわけであります。それが次第に評価されつつあるということが一つ。
それから、中国経済、懸念されていた失速について、若干明るい見通しが出てきたということ。アメリカは、財政の崖を何とかしのいだ、まだ半分しのいだというところだと思います。それに向けて見通しをアメリカの有力議会関係者とバイ会談で話しましたけれども、何とかしのいでいけると思う、というような見通しでありました。等々を考えますと、海外的なリスク要因というのは従来よりはかなり減ってきているのではないかと思っております。もちろん下振れリスクがなくなったわけではありません。
併せて日本経済は、緊急経済対策を打つと同時に、成長戦略を、今、策定中であります。総理から矢継ぎ早に対策の指示が出ているわけであります。これがきちんと実行できるとするならば、これくらいの数字は確保できるのではないかと考えている次第であります。
(問)ダボス会議では、今、大臣が御説明いただいたように、日本の政策に対して、主要機関から支持が取りつけられたということはそのとおりだと思います。一方で、カンファレンスの中でも、ドイツだったと思いますが、日本の今回の為替政策は、周辺国の利益をそいでいるのではないかというような発言もありましたが、多分、韓国などそこら辺のことを念頭に置いているのだと思うのですが、こういう国とこの点において誤解を解くというか対話を直接する御意思、あるいは必要性はあると思いますか。
(答)日本が今回の一連の対策、政策を通じて何を目指しているかということは、日本が世界経済の牽引役の一員になっていかなければならない。そのために、この十数年間、解決ができなかった抜本的な問題に今、挑戦をしているということを理解していただく。その過程において、懸念はあるのかもしれませんけれども、しかし、日本が健康な経済体質を取り戻して、そして、まだ3番目にはなっていますけれども、世界の3本に入る経済大国であります。その経済大国は、世界の経済を牽引していく責務があるわけであります。私どもは長い間、デフレという病巣を払拭することができないが故に、世界の牽引役としての貢献度は、期待されているほど高くはなかったのだと思います。その貢献を果たしていくための、いわば体質改善の期間であるということをしっかり説明をしていきたいと思っております。

(以上)