甘利内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年12月26日

(平成24年12月26日(水) 25:16~25:41  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

遅くまでお待たせしてすみません。
このたび、経済再生担当大臣並びに経済財政政策担当大臣、そして社会保障・税の一体改革担当大臣を拝命いたしました甘利明でございます。
喫緊の課題は、日本経済の再生でございます。日本経済再生本部を、本日というか、昨日の閣議で立ち上げることができました。そして、休眠中であります経済財政諮問会議、これは経済財政政策の全体の方向付けをするわけでありますが、これも立ち上げます。そして、この二つの会議をしっかり連携をとって、短期的にいいますと、円高・デフレからの脱却、そして、その先にしっかりとした経済成長戦略を描いて、それに向かって民間投資が活発になされていくような経済再生策をしっかりと描いていきたいと思っております。
それから、社会保障・税の一体改革の有識者会議が既にスタートいたしております。この有識者会議の取りまとめ結果、8月の法律の期限までにその結果が閣議決定できるようにして、法案として出せるように側面サポートをしていきたいと思っております。
また、3党協議は、新しい年金制度の議論、そして後期高齢者の医療制度の議論等、3党協議で並行して議論していく部分もあります。それをしっかりと連携をとっていきたいと思っております。
以上です。

2.質疑応答

(問)先程、おっしゃった二つの会議なのですが、まず何のテーマからそれぞれ始めるか、いつ頃始める予定なのか、今のお考えをお聞かせください。
(答)年明けからそれぞれスタートしていきたいと思っております。先程、官房長官が経済財政諮問会議と日本経済再生本部の関係をマクロ、ミクロとおっしゃいました。分かりやすく言いますと、基本設計と実施設計のような関係にあると思います。
 経済財政諮問会議で大きな方向性を作ります。日本経済再生本部の中に産業競争力会議を立ち上げて、詳細な実施設計を描いていくと。実施設計から基本設計に投げかける問題提起もあるでしょうし、あるいは基本設計から実施設計に向けてつける注文もあろうかと思います。相互がお互いにキャッチボールをしながら、実効性の高いプランができることを期待いたしております。
(問)関連してもう一点お願いします。
 それぞれの会議で民間のメンバーの方が入られると思うのですが、どういった方が適切だとお思いでしょうか。あと、いつまでにそれは決定される御予定でしょうか。
(答)経済財政諮問会議について、今、総理、あるいは財務大臣と相談をしながら、メンバーの選定をしているところであります。メンバー構成は、従来の仕組みに倣っていきたいと思っております。ですから、学者さんから2名、それから、経済界から2名。これはいわゆる名誉職ということではなくて、できるだけ、現役の経済に関わっていらっしゃる方を中心に選んでいきたいと考えております。
 それから、日本経済再生本部のもとの産業競争力会議であります。これは経済財政諮問会議よりももっと人数を増やして構成をしたいと考えております。できれば、産業競争力会議の方は、総合科学技術会議と連携がとれるような何らかの仕掛けができればいいかなとも思っております。
(問)今の質問に関連してお聞きいたします。
 まず、経済財政諮問会議を1月4日にも開くというような一部報道もあったのですが、これは可能なのでしょうか。
(答)普通、常識的に考えると、7日の週からですよね。常識的な線でいきたいと思っています。
(問)円高・デフレ対策なのですが、今日の発表で麻生副総理に「円高・デフレ対策担当」というのがついております。一方で、これまで内閣府が経済財政担当の方で円高・デフレ対策、総合対策作るなどやってこられたと思うので、そこは甘利大臣の所掌になると思うのですが、ここら辺の整理はどうなるのでしょうか。
(答)大臣間の整理ですか。
(問)そうです。
(答)お互い協力してやっていきますし、重複するところもあろうかと思います。円高・デフレ対策というのは、まず今、至急作業に入る補正予算が非常に強く絡んでくると思います。円高の方は、今日85円をつけまして、かなり適正水準に向かいつつあると。幾らが適正ですと言い切るのは閣僚としては適切ではないと思いますので控えますけれども、かなり良い方向に来ております。こういう方向が定着するようにしなければいけない。これは、やはりマーケットとの対話だと思います。政府と日銀がしっかり心を合わせるといいますか、アコード、政策協定をしつつ、毅然たる姿勢で市場に臨んでいくと。その決意のあらわれをマーケットは計っているのだと思います。
いろいろなツールがあるわけですから、それをしっかりと駆使して、ファンダメンタルズを反映するようなところに持っていくということが大事だと思います。
それから、円高・円安と、いわゆる需給ギャップというのは、密接な絡みがあろうかと思います。需給ギャップを解消する方法というのは三つあります。一つは、政府が需要を創るということであります。もう一つは足りない需要を外国で埋めてもらう。これは輸出の話であります。三点目は、市場に新しい需要を起こすようなイノベーションを起こすということであります。
この輸出についても、新しい国内需要を起こすことについても、両方ともイノベーションが関わってくると思います。日本の産業競争力をつけていくということであります。為替を競争可能なレートに持っていくということとあわせて、多少高くても日本の製品やサービスが競争に勝って、他国の製品・商品をしのいでいけるような魅力をつけていくということであります。そこらは成長戦略と絡んでいると思います。その成長戦略には、総合科学技術会議との対話も必要だと思っております。そこで先程、何らかの仕掛けができないかなということを考えていると申し上げたわけであります。
それから、政府が需要を創るということに関して言えば、一過性のものであってはならないということであります。その需要を発動することによって、需要の効果、直接的な効果が切れた後も効果が続くようなもの。例えばミッシングリンク、ぶつ切り高速道路というのは、それ自体は余り経済効果が上がらないと。ぶつ切りを埋めることによって需要が出るという効果があります。でき上がった後、その道路が経済効果を発揮するという。それから先の需要を起こしてくるわけであります。
あるいは減災・防災という点も、プライオリティーをしっかり図りながら、前倒しでその需要に対応していくということはあろうかと思います。発災した後対応するコストよりも、事前に防災をする方が、はるかにコストが安く、何よりも人命が救われる、あるいは財産的被害が極小化する。これもプライオリティーをしっかりとっていけば、極めて有効な手法、政府が創る需要の手法だと思っております。
いずれにいたしましても、その財政出動が二次、三次効果、何らかの効果を生むということを厳選したいと考えております。
(問)今後、経済をどう成長していくかというのは非常に大事だと思っているのですけれども、民主党政権でも何度か成長戦略というのは立てられたと思いますが、なかなかその効果が上げられなかったと思います。なぜ、民主党政権の成長戦略が、なかなか効果を上げられなかったのかというところをどういうふうに分析されているかというのと、今後その反省をどう生かしていくかということを教えていただけますでしょうか。
(答)過去に幾度も成長戦略、あるいはその焼き直しが行われたと言われています。なぜその効果が上がらなかったのか。それは民間投資が起こらなかったからです。なぜ民間投資が起こらなかったか。明確に方向性を示して政府がコミットしていないからであります。日本は課題先進国と言われています。課題先進国というのは、その課題を克服するビジネスモデルを作っていけば、これから同じようなことを迎える国に対してビジネスモデルごと輸出ができるということになります。そのビジネスモデルは何かと言えば、例えば、高齢化に、どうやって社会、経済の活力を維持していくかということであります。そこに創薬や医療分野の医療機器、あるいはロボットなど、そういうニーズがあるわけであります。
民間投資がなぜ起こらなかったかというと、きっちりとしたロードマップを作って、そこに向けて政府がきちんとしたコミットをしていないわけです。例えば、政府が、こういう環境整備に、この分野の基礎研究にこのくらい金を使うぞとか、あるいはこの分野の規制緩和をどういう時間軸で行っていくかなどを明示すると、民間経済主体が、それならばということで、自分の内部留保を使っても起死回生の勝負に出るわけです。あるいは借金をしてもそこに投資をするというプランが描けるわけです。
ただ、漠然とこんな方向がいいのではないですかと言うだけでは、やはりリスクをとれないということになろうかと思います。リスクをとる意思を発揮できるようなロードマップをきっちり描いてやれなかったということが一番の問題だと思います。全て政府のコミットがなかったということだと思います。
(問)日銀との関係なのですけれども、前原前大臣時代に金融政策決定会合に出席したりしていたのですが、この辺りはどういうふうに考えておられるのですか。
(答)結論から言えば、必要があれば出ることも検討するということだと思います。日銀は傍観者であってはいけないと思うのです。日銀の独立性、中央銀行の独立性は大事です。それは尊重しております。しかし、政府の一員で日本国政府の一員であることは間違いありません。ですから、日本国政府が抱えている課題について、毅然たる姿勢で臨んでいく。それは政府と心を合わせていく、その合わせ方が大事だと思っております。そういう方向性がきちんととれるかどうかを注視していきたいと思います。
(問)日銀について重ねて二点お伺いいたします。
先日の金融政策決定会合で、日銀は資産買入れ基金を101兆円にするという10兆円の積み増しの追加緩和を行いましたけれども、これまでの日銀の金融緩和というのは大臣の目から御覧になって十分なのか、それとも足りないのか。足りないとすれば、どれぐらいの規模をやればいいとお考えなのか、もしお考えがあればお聞かせくださいというのが一点です。
もう一点は、日銀とのアコードについて言及されましたけれども、2%の物価目標について、ある程度の時期といいますか、いつまでにというような時期をアコードの中で盛り込むお考えはありますでしょうか。
(答)日銀も、最近は従来に比べれば何をなすべきかという意識は強くなってきたと思います。それで、完全に十分かと言えば、まだまだやるべきことはあると思います。
従来、私が個人的に抱いていた思いは、量を増やすということもさることながら、質の問題であります。リスク資産に対して、どれくらい踏み込んでいるかということだと思いますし、マーケットに向けてどれくらいの強いメッセージが発せられるか。これは同じ内容の発信であっても、市場の受け止め方は、毅然たる姿勢の強さをどれくらい感じるかということといろいろあると思うのです。その辺を政府が持っている危機意識を是非、共有してもらいたいと思っております。
数字の話は、今、するのは適切ではないと思っております。
(問)先程の官邸の会見でも、麻生大臣が補正予算案について大規模で44兆円ということにこだわらないというような言い方されていたのですけれども、プライマリーバランスの15年度赤字半減、20年度黒字化ということの財政規律の兼ね合いということについて、大規模な補正予算との絡みでどうなっていくのか、その点についてお願いします。
(答)大事なことは、政府が財政再建の意思をしっかり持つということ。しかし、その中で機動的な財政運営をしていくと。目の前にあるデフレを解消するためには、相当、機動的な財政運営が必要だと思います。だからといって、中長期の目標を放棄するということでは、日本の国債に対する信用は失墜するということであります。この二つをしっかりメッセージとして、短期的には柔軟な対応をする、中長期にはしっかりとした財政再建の目標は崩さないという、この両方のメッセージが市場に伝わるようにすべきだと思っております。
ですから、15年度と20年度という目標、これは堅持をしつつ、当面、ここでの対応は、柔軟に対応していく。特に補正は、71兆円、44兆円、縛りの外でありますから、ここは相当大胆にやっていっていいかと思っております。
(問)政府と日銀の関連で一点お伺いしたいのですけれども、総理も強く要請されていましたアコードの決定のタイミングなのですが、日銀は次回の金融政策決定会合で、物価目標についての検討の何がしか結論を出すと。そのタイミングと合わせて、政策協定についても策定を進めるお考えがあるのかどうかということと、その目標が達成されなかった場合の説明責任について、現時点で大臣はどのようにお考えなのか、二点お伺いします。
(答)ここは、安倍総裁とよくお考えをすり合わせしていきたいと思っております。中央銀行の独立性の大切さはしっかり踏まえて、しかし、政府との協力のあり方、同じ目標に向かって心を合わせていく。そこは、独立性と両立するような対応をしていきたいと考えております。
(問)先程、医療のお話が少し出たと思うのですけれども、日本経済を本当に良くしていこうと思うと、医療の規制緩和や農業の改革など、特定の省庁、特定の業界団体ですか、いろいろなところに気を使って、なかなか政治が手をつけられてこなかった問題が多いと思うのですけれども、司令塔として、こういった省庁間の利害を超えて、取り組まれるお気持ちがあるかということを改めて教えていただけますでしょうか。
(答)もちろん、それがなければ成長戦略は絵に描いた餅に終わってしまいます。安倍総理が、休眠中の経済財政諮問会議を立ち上げるという意思を持たれたのは、小泉内閣、安倍内閣当時、御自身が総理として、あるいは官房長官、副長官として関わって経済財政諮問会議がきっちりとした司令塔の役割を果たしてきたということを体感されているから、もう一度立ち上げると。大きな方向について、省庁間の枠、利害を超えて意思決定ができるという場であるという認識を持たれているからだと思います。
成長戦略の現場から規制緩和を要求することがあるでしょうし、経済財政諮問会議の場から、こういう規制緩和の具体的設計をしろと産業競争力会議のほうに球を来ることもあろうかと思います。この二つのキャッチボールをしっかりしながら、良い設計をしていきたいと思っております。
(問)先程、財政再建の目標の話があったと思うのですけれども、これは来年度の予算編成では、いわゆる民主党政権がつくった中期財政フレームの枠というのは、見直すということなのでしょうか。
(答)これは、中期目標は掲げていきたいと思いますが、直近の予算の編成については柔軟性を持っていきたいと考えています。
(問)成長戦略の話なのですけれども、新政権としての戦略は、いつごろまでにつくるというめど、目標はありますでしょうか。
(答)年央、6月ぐらいまでにつくりたいです。
(問)景気認識についてお伺いいたします。
民間エコノミストの間では、中国やアメリカの景気の立ち上がりによって、人によっては年明け早々にも日本経済も輸出の回復などから立ち上がってくるというような見方もあるのですが、甘利大臣の日本経済の回復基調への見方を教えてください。
(答)私は、少し警戒をしております。民間シンクタンクの見通しは、かなり楽観的だったものが、軌道修正がかかっております。7-9月期の数字、あるいは12月の日銀短観、やはり油断をしてはいけないと思っております。

(以上)