前原内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年10月12日

(平成24年10月12日(金) 10:45~11:14  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

お疲れさまです。私から3点お話をさせていただきます。
まず1点は、月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要を御報告させていただきます。
景気の基調判断は「景気は、引き続き底堅さもみられるが、世界景気の減速等を背景として、このところ弱めの動きとなっている」といたしまして、下方に変更しております。これは、公共投資や設備投資等には、依然底堅さがみられるものの、世界景気の減速を受けて輸出が弱含んでいるほか、消費についても自動車販売が減少していること等から、生産が減少していること、こうした状況の下で企業マインドにも慎重さがみられること、などを踏まえたものでございます。
先行きにつきましては、当面は弱めの動きが続くと見込まれます。その後は復興需要が続く中で、海外経済の状況が改善するにつれ、我が国の景気は回復へ向かうことが期待されますが、欧州や中国等、対外経済環境の不確実性は高い状況であります。世界景気のさらなる下振れや金融資本市場の変動等が我が国の景気を下押しするリスクとなっており、警戒感を持ってみていくことが必要であります。政府といたしましては、我が国経済の当面の最大の課題であるデフレ脱却に向け、日本銀行と一体となって、断固として取り組んでまいります。
次に古川前大臣の頃から始まりましたマンスリートピックについて申し上げます。12回目でありますけれども、今回は「最近の消費動向を巡る3つの論点と先行きについて」取り上げております。
これまで日本経済を牽引してきた消費に弱めの動きも見られることから、エコカー補助金、高齢者の消費、天候要因の3つの論点について最近の個人消費の動向を分析いたしました。
そのポイントを御紹介いたしますと、エコカー補助金を背景に、自動車販売は増加をしたが、人気車の供給制約もあって後半の盛り上がりに欠けた。年明け以降の消費を押し上げてきた高齢者の消費には鈍化の兆しが見える。8月の個人消費は伸びたが、猛暑による一時的な押し上げの要因が大きいと見られる。先行きについては自動車販売底打ちのタイミングと所得・マインドの持続性が鍵となる。こういった興味深い結果が示されているので、皆さんも是非御覧いただきたいと思います。
最後に、原子力行政担当といたしまして、またエネルギー・環境会議の議長といたしまして、核燃料サイクル関連施設の実態を把握するために、来週15日月曜日に青森県を訪問することといたしました。具体的には六ヶ所村の核燃料サイクル施設とむつ市の使用済燃料中間貯蔵施設等を訪問し、その現場をしっかりと見させていただくとともに、率直な意見交換も行ってまいりたいと考えております。
私からは以上です。

2.質疑応答

(問)月例経済報告についてお伺いいたします。
 民間エコノミストの間ではもう既に景気は踊り場を過ぎて後退局面に入ったという指摘が多くなっておりますが、今回の3カ月連続の引き下げを受けて、前原大臣の御所感をお伺いしたいと思っております。
 もう一つは、景気が悪くなっているのはもう間違いのないことで、いわゆる景気対策、経済対策の必要性、あるいはそれをやる意思はあるのかどうかをお聞かせください。
(答)まず、景気が「踊り場」にあるのかということでありますけれども、「踊り場」というのは景気拡大局面の中での一時的な足踏み状態ということをいうわけであります。その「踊り場」という表現を、月例経済報告では用いておりませんし、またその判断もしておりません。
今回は、現状をこのところ弱めの動きとなっているとした上で、先行きにつきまして当面は弱めの動きが続くということを見込んでおりますが、そうした状況を脱して再び景気回復に向かうと期待しているわけであります。
景気の後退局面入りの話でありますけれども、繰り返しになりますが、生産等の判断を下方修正しておりまして、景気の基調は弱めの動きとなっております。
我が国の景気が後退局面入りしたか否かにつきましては、データが十分揃った段階で内閣府の経済社会総合研究所において判断されるものでありまして、現状では確たることを申し上げることはできないということも付け加えておきます。
次の御質問でございますけれども、現在の景気動向には極めて危機感を持っているということを申し上げた上で、財政、そして金融、しっかりとした対応を取ることが必要であると思っております。特に財政面におきましては、補正等の御議論もあろうと思いますけれども、それよりも前に特例公債法案が成立し、またこの財源が手当されなければ、補正を組んで景気刺激策どころか、今の予算をいわゆる執行抑制している段階でございまして、まずは国会を開き、そして特例公債法案を通していただくなかで24年度予算をしっかりと執行していく、あるいはそれを前倒して執行する体制をつくっていただくということがまず大事だと考えておりまして、そのことに我々としてはしっかりと力を入れていきたいと考えております。
(問)本日、大臣はドラギ総裁とバーナンキ議長と会談なさいますが、これはどういった経緯でしょうか。先方から求められたのか、それとも大臣がそういう会談を設置されたのか、などの経緯をお聞かせいただきたい。あと、それぞれの会談でどのようなことを大臣としておっしゃる御予定があるのか。その2点をお願いします。
(答)せっかく世界の中心的な金融政策を行っておられる方々が日本、東京に来られるということなので、こちらから会談の申し入れをさせていただいたということであります。
中身につきましては、お互いの了解事項として、具体的なことは皆さん方にお伝えしないでおこうということを申し上げておりますけれども、総括的には世界全体の景気動向についての見通しや意見交換等々、あるいはFRBあるいはECBの取組の説明を受け、我々は日本としてどういった考え方で政策遂行をしているのか、そういったことの意見交換になろうかと思います。
(問)医療イノベーションを推進するお立場から、その柱ともなるiPS細胞について、世界で初めて治療に成功したという一部のメディアの報道がございましたけれども、その方が自称、自分はハーバード大講師だということに対して、ハーバード大が否定をする声明を出すなどかなり混乱した状況になっているのですが、そういった状況について政府として何か実態を調べられるなど、あるいはiPSに対して若干信頼が傷ついたような事態にもなりかねないのですけれども、それについて何か対策はとる御予定でしょうか。
(答)今御指摘のようにアメリカにおきまして邦人研究者等がiPS細胞から作成した心筋細胞を初めて患者に移植したとの記事がございますけれども、我々のお答えといたしましては、いまだ科学誌に論文が掲載されておりませんで、事実関係の検証が不可能でございますので、現時点では、記事内容についてコメントする段階ではないと考えております。
我が国においては、再生医療の特性を踏まえて、安全性を十分に確保しつつ実用化を加速する取組を推進してまいりたいと考えているところであります。
(問)この件について特に調査などはされないということでしょうか。
(答)現段階におきまして新聞が報道されている、そしてそれを確認しようにもいまだに科学誌に論文等が掲載された形跡がないということの中で、現時点においては事実関係の検証が不可能である。したがってコメントができないということでありまして、事実関係の検証が可能になった時点で、政府としてはしっかりと調べていきたいと考えております。
(問)御本人にお話を聞いたりなどそういう御予定は今のところはない、あるいは御本人が所属される東大病院にお話を聞いたりということは今の時点ではないということでしょうか。
(答)はい、現時点では考えておりません。
(問)先程、特例公債法案の早期成立とおっしゃいましたけれども、今後の国会の進め方を巡って党首会談が近く行われる見通しになっておりますけれども、その財政を預かるお立場から、その党首会談にどういった議論を期待されるかということと、開かれるであろう臨時国会の時期、どれぐらいのスパンで開かれることが望ましいとお考えになるか、お願いします。
(答)国対委員長でございませんので、どのぐらいの期間ということについては、正に幹事長部局、国対が与野党でお話をされながらお決めされることであって、私から申し上げることは慎みたいと考えております。
また、一与党の国会議員として申し上げれば、やはりこの臨時国会を開いていただく、そしてこの国会でやるべきことは最低二つではないかと思っております。一つは、11月に枯渇すると言われている国の財政を考えれば、特例公債法案をしっかりと与野党で話をしながらこれを通していただくということが大事だと思っております。
私が政調会長のときに当時の茂木政調会長や石井政調会長と話をして、お互いこれは共通の認識を持っていたのでありますけれども、今回はもう政治問題化しているので難しいと思いますけれども、来年以降の取扱いについては、もともと憲法が条約と予算の衆議院の優越を与えている。その憲法ができたときにはまさか日本の予算がこれほどまでに借金によって賄われることを誰も想定していなかった。したがってこの特例公債法案については予算と一体という判断をする中で、しっかりと予算が成立すれば、何らかの取り決めを国会で行って、政局の争点化をさせないという高いレベルでの取組が必要ではないかと思っております。今回は目の前にあることでありますので、来年以降しっかりとこの特例公債法案の扱いについては日本の国家のことを考えて判断されることが望ましいのではないかと思っているところであります。
もう一つは我々国会議員が選ばれるというのは1票の格差、そして最高裁の判断というものが極めて大事でありますので、この1票の格差を是正するということ。、少なくとも国会としてその意思を示し、そして成案を得る。ここまでは是非やるべきではないかと思っております。
また、前者の特例公債法案にあたって様々な御意見が野党から出されております。例えば減額補正の話などそういうお話が出ているわけでありますけれども、中身を精査し、そして減額補正をということが仮に我々として前向きに考えられるとすれば、そのときには、やはり補正全体の在り方について現下の経済状況を踏まえた判断も御相談をさせていただくことが望ましいと、経済財政担当としてはそのように考えております。
(問)月例経済報告の3カ月連続の引き下げに関連してなのですけれども、改めてその日銀に対して何を求めていかれるかということをお伺いしたいことが1点と、それからバーナンキ議長とドラギ総裁との面談についてなのですけれども、日本経済の最大の問題の一つに円高があると思いますが、その要因となっているのがFRBの金融緩和であり、ECBもそこに入るのかも分かりませんけれども、このことに関して、日本が円高で苦しんでいるということに対して、何か訴えられることはないでしょうか。
(答)二つの御質問を一つにまとめてお答えをしたいと思いますけれども、中身については申し上げないということであります。ただやはり我々の最大の問題は円高基調にあり、それが輸出産業を中心に大変な苦悩を強いられているということは事実であり、経済財政を担当する私として、それに全く触れないということはあり得ないと思っております。どういう話をするか、どういう言い方をするかについては、先方との信頼関係のもとで、お話をすることはできませんけれども、それに触れないことは、私はあり得ないと思っております。
その上で、日銀の金融政策については、日銀の独立性というものを我々は、しっかり踏まえた上で、しかし日銀法の第4条においては、政府と緊密な連携をとるということが書かれていますし、また同時に2月14日の政策決定会合において、日銀自らが中長期的な物価安定の上昇率の目標ということで2%以下のプラスの領域、当面は1%を目途と考えるということをおっしゃっているわけですから、やはり結果を出す、実現するということが大事であるということで、我々は強力な金融緩和を求め続けたいと思っておりますし、総理は1年以内にデフレ脱却をするのだということをおっしゃっているわけです。政府のトップである総理がこうおっしゃっている中で、もちろん経済財政運営、日本再生戦略の着実な実行、こういったものはもちろん政府の立場として行っていきますけれども、日銀の役割も極めて大きいという観点を考えると、総理の1年以内のデフレ脱却ということ、そして2月に自らが宣言された消費者物価上昇率1%の当面の目途を早期に実現するためにしっかりとした対応をしてもらいたいと考えております。
(問)先程の特例公債法案に関する御発言の確認なのですが、何らかの取り決め、高いレベルでの取組が必要だという御趣旨の発言は、来年度以降の法案の扱いについて、今の体制の野田総理と安倍総裁のうちに何らかの形で今回の党首会談とは別に機会を設けるべきだという御趣旨でしょうか。
(答)事実関係として申し上げますが、私が政調会長のときに、茂木政調会長、そして石井政調会長との間でこの特例公債法案があるがために決められない政治、また予算の執行ができないということで、国民生活のみならず、日本の景気減速というものは、世界第3位の経済大国でありますので、他国にも影響を及ぼすということを勘案すると、そしてその憲法の衆議院の優越とその憲法ができたときの恐らく誰もが日本の国家予算、半分近くが借金によってカバーをされるということが想定されていたとはとても思えません。そういうことを考えるのであれば、正にこの特例公債法案については、憲法上の衆議院の優越を鑑みて、しかしこれは国会での議論が必要です。私も政調会長を離れました。茂木政調会長も今は離れておられます。これは申し送りをしておる事項でありますし、また財金の委員会の現場でもそういう議論は議員さんの間でされていると伺っております。これは与野党で共通した問題、どちらが与党になり野党になるか分からない状況の中で、この問題については大局的なしっかりとした道筋を来年以降についてつくるということが大事であるという問題意識を私は持っておりますし、少なくとも政調会長の間ではそういう思いを共有していたと。また前の財金委員長以下与野党の理事の皆さん方もそういう問題意識は共通されていたと報告を受けておりますので、今の体制、少なくとも民、自、公の3党の中で、何らかのしっかりとした議論を私はしていただきたいなと思っておりますし、そのことを申し上げたということでございます。
(問)月曜日に視察されることなのですけれども、現時点で大臣として持っておられる問題意識、着眼点を簡単にお願いできますでしょうか。
(答)エネルギー・環境会議において、革新的なエネルギー・環境戦略、2030年代に原発ゼロを目指すということで、今まで原子力政策を推進してくださる立場に立って国に最大限の協力をしてくださった青森県、あるいは青森県の関係自治体には大きな衝撃が走ったと伺っておりますし、そのことについては枝野経産大臣、あるいは高原資源エネルギー庁長官を初め、しっかりと説明をされた。そして、一定の御納得をいただいていると考えております。
そのラインに立って、新たに私も原子力行政の内閣府特命担当大臣に拝命されました。またこれからグリーン政策大綱を進めていく。これは年内にまとめるということでありまして、今までの政府の方針をしっかりと御説明し、そして核燃料サイクルは続ける。しかし、ゼロを目指すという方向の中でその長いタームの中で緊密な連携をとりながら、これからいろいろな相談に乗っていただきたい。また青森県からの御要望も承りたい。こういったことをじっくりと意見交換させていただく、現地に赴いてその話をするということが大事なことではないかということで、伺うということでございます。
(問)予算編成のことで伺いたいのですが、大臣はこれまでの記者会見の中で予算編成については財務省主導ではなくて、政治主導であるべきだというような発言をおっしゃっていたと思うのですけれども、一方で、23年度補正と24年度の復興予算の関係で、いわゆる本来の趣旨と合わない事業が計上されているということが問題視されていると思うのですが、それを踏まえてこうした事業の見直しや今後、来年度の予算編成に向けて、国家戦略大臣としてどういうふうにかかわっていきたいと考えられているのかということをお聞きしたいのですが。
(答)平成21年10月23日の閣議決定では、予算編成の基本方針については、国家戦略室で策定し、予算関係閣僚会議の検討の上、閣議決定をすると書いてあります。これが民主党政権において閣議決定をされた予算編成の大きな方向性であります。したがって、それに基づいて、私のもとでその動きに着手しておりますけれども、平成25年度の予算編成の基本方針については、日本再生戦略のフォローアップやあるいは政調会長として主体的にかかわった25年度の概算要求の組換え基準、グリーン、ライフ、6次産業化、こういったものに力を入れていく。こういったことを中心に計画は作らせていただきたいと思っています。
査定についてはしっかりと財務省にやっていただきたい。これはもう決まりですので、財務省には査定をしっかりやってもらいたいと思っているところであります。そういう意味においては、主導権争いということではなくて、民主党政権においてはもう方向性はしっかりと決まっているということが私の認識であります。
それを申し上げたのが何か主導権争いだという捉えられ方になっているけれども、私としては、民主党政権としての取り決め事項であるということを申し上げておきたいと思います。その上で、お尋ねの復興予算について他のものに使われているということは、厳しく精査されて正されなければいけない、私は由々しきことだと思っております。
特に、被災地の方々の心情を考えると、被災地の復興だと言いながら、それを別のものに使っているということについては、極めて私は不誠実な対応に映るし、また実際にそうであると思っております。これはどこがということではなくて、復興担当大臣である平野大臣のもとで中心にやられると思いますけれども、政府全体としてやはりこの復興予算の使われ方についてはしっかりとこれから精査していく。そしてまた今まで別の使われ方をしていたものについての見直しを行っていく。そういうことが大事ではないかと考えております。
(問)先程総理が1年以内のデフレ脱却と言っているとおっしゃいましたけれども、これは政府の方針なのですか。
(答)総理がそのお話をされている。その総理の意向を踏まえて、我々としてはしっかりとその目的に向かってあらゆる努力をしていくということでございます。
(問)総理の発言は、いつの発言ですか。
(答)代表選挙です。
(問)それはやはり政府の発言、総理大臣としての発言ではないと考えられるのではないですか。
(答)他の方も手を挙げられていて、指名をされていない発言ですので、本来であればお答えをする必要はないのかもしれませんが、総理であるときの代表選挙、そして、あれほどの圧倒的な得票で再任をされた民主党代表の野田総理の御発言は重いと私は考えております。

(以上)