松原内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年10月1日

(平成24年10月1日(月) 12:08~12:31  於:警察庁第1会議室)

1.発言要旨

 本年1月13日に野田内閣の一員として、国家公安委員会委員長、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)及び拉致問題担当大臣を命ぜられ、全力を尽くしてまいりました。本日をもって退任することとなりました。この間、9か月弱でありましたが、本当に皆様にはお世話になりました。厚く感謝を申し上げます。
 国家公安委員会委員長としては、国民の安全・安心の確保のため、東日本大震災への対応と危機管理体制の強化、北部九州等における暴力団対策の推進、サイバー空間の脅威に対する総合対策の推進、捜査手法、取り調べ高度化への取組の推進、新たな死因究明制度の創設に関する取組の推進、いじめ問題に関する対策の推進、通学路の交通安全の確保に向けた対策の推進、予算・人員の確保、警察基盤の充実強化等、昨今の治安情勢に対応した様々な施策に全力で取り組んでまいりました。
 特に、北部九州において、法治国家として断じて許すことのできない事態が生じているなど、暴力団情勢は厳しい状況にあることから、私自身、現地に足を運んで、住民の方や地方自治体の関係者の方々と意見交換を行ったほか、対策を推進する上で欠くことのできない暴力団対策法の改正に取り組み、先の通常国会においてこれを成立させたところであります。
 サイバー犯罪、サイバー攻撃は、治安上深刻な問題となっておりますことから、不正アクセス防止法を改正したほか、先のICPOアジア地域会議の場において、国際連携を求めたところであります。
 また、交通安全については、交通事故遺族の方々の思いを受けて、制度見直しの検討を行ってまいりました。
 このほか、犯罪が複雑化、高度化する中で、治安水準の維持・向上をするために、DNAデータベースの充実、通信傍受の拡大を始めとする捜査手法の高度化が重要であると考え、その旨を発信してまいりました。
 特に通信傍受については、我が国は諸外国に比べ、著しく対象罪種が限定されるなど制約があります。この問題については、引き続き検討がなされるよう私としても期待をいたしておりますし、一政治家として、しっかりと捜査手法が高度化されるよう取り組んでまいりたいと考えております。
 他方、警察官による非違事案の続発を受けまして、現在、国家公安委員会の管理の下、全国警察挙げて防止対策に取り組んでおります。
 警察は必ずや国民の負託と信頼に応えることができると確信しております。安全・安心の確保について、警察に寄せられた国民の期待は、誠に大きなものであります。今後も全国警察職員の一層の奮闘努力を期待しております。
 そして、消費者及び食品安全担当大臣としては、消費者庁、消費者委員会、食品安全委員会、公正取引委員会等に関する事務を担当いたしました。この間、東京電力の料金値上げの申請への対応、特定商取引法、消費者安全法の改正、地方消費者行政の充実・強化、国民生活センターを含めた消費者行政の機能強化など、多くの課題に取り組んでまいりました。
 また、7月に全閣僚出席の消費者政策会議を開催し、9月には消費者安心アクションプランの原案を取りまとめるなど、政府一体となった取組を推進してまいりました。
 在任中は、意見交換会や各種の検討会、消費生活センターの視察といった場で、消費者団体、消費生活相談員、有識者の方々など多くの皆様から、現場の貴重な声を聞くことができました。この場を借りて感謝を申し上げます。
 消費者行政の課題は数多くありますが、後任の大臣の下、消費者目線を大事にし、国民の期待に応えられるよう、引き続き取り組んでいただきたいと思います。
 特に、東京電力の値上げ申請の問題については、更なる合理化による値上げ幅の圧縮のほか、適切な情報公開など継続的なフォローアップの仕組み、今後の消費者参画の拡大についても、経済産業省との間で合意に至ったところであります。
 今後、他の公共料金についても、今回のこうした議論を踏まえ、消費者目線でしっかりと取り組んでいただきたいと考えております。
 拉致問題担当大臣としては、2002年に初の日朝首脳会談が行われ、5人の拉致被害者が帰国をしてから10年目の今年を節目の年、勝負の年と位置づけ、私は、その任にある間に必ず具体的な成果を出すという強い決意を持って全力で取り組んでまいりました。
 北朝鮮が拉致を認めてから10年目となる先月17日、国民各位、国際社会、そして、北朝鮮の新たな指導者に向けて談話を発表させていただきました。そして、拉致問題の進展が見られなかったこの10年という長い年月を重く受け止め、改めて国家の責任としてこの問題を解決するという強い決意をしたところであります。
 しかしながら、拉致被害者の救出に至っておらず、御家族には大変申し訳ないという思いがいっぱいであります。
 拉致問題に関して、私は3つの考え方を強調してまいりました。第1に、拉致問題は決して風化をしない。拉致被害者の方々や御家族がいなくなってしまったならば、日朝間に永遠に解決しない問題として残るだろう、このことを強く申し上げました。このことは、野田総理も予算委員会で「拉致問題の解決なくして国交正常化はない」と言ったことを再びこの場で申し上げたいわけであります。
 第2に、北朝鮮が既に死亡していたとされている方々が実は生存していたということになっても、従来の主張を変えたとしても、批判することなく、前向きに受け止めていきたいということを申し上げました。
 第3に、拉致問題について、関係者の間で一定の進捗であると合意できるような進展が得られた場合は、人道支援など関係改善のための措置をとることができ、また、北朝鮮との間で様々な建設的な対話の可能性も出てくるだろうということを私は申し上げてまいりました。
 日朝の予備協議が、8月から始まっている中において、拉致問題担当大臣の任から外れることは、私としては極めて心残りであります。しかしながら、後任の方を含む新しい体制、内閣の中で、私は、横田めぐみさんや田口八重子さんが一日も早く日本に帰国できることを願ってやまないし、そのように私も応援をしていきたいと思っております。
 また、遺骨問題が今言われておりますが、遺骨問題は人道の問題として、重要な解決をするべき問題だと思っております。
 しかしながら、私としては、遺骨問題が議論される中で、この場をお借りして、拉致問題がゆめゆめ取り残されることがないように、強く申し上げておきたいわけであります。拉致問題の解決は、時間との闘いの中で最優先の課題であるというふうに思っております。
 また、特定失踪者問題、特定失踪者についても、国際連合等で多くの事項が議論されることを願っているところであります。後任の大臣、そして、このことに関して是非とも内閣全体で、引き続き、被害者の一日も早い帰国を目指していただきたいと強く申し上げたいと思います。
 死因究明でありますが、我が国において死因究明及び身元確認の実施に係る体制の充実強化が喫緊の課題となっております。
 本年6月に死因究明等の推進に関する法律が成立をいたしました。死因究明等担当大臣として、同法の施行準備等を進めた結果、9月21日に同法が施行され、内閣府に特別の機関として死因究明等推進会議が設置されたところであります。今後は、新大臣の下、死因究明等の推進に関する施策について、その在り方を横断的かつ包括的に検討し、その実施を推進していただきたいと思います。
 以上、この9か月弱の間、それぞれの役所の仕事に対する思いがあります。就任時の会見で、私の仕事は様々な意味で日本国民を守ることだと申し上げてまいりました。守るために全力で努めてまいったつもりであります。この間、御協力いただきました皆様には心から感謝を申し上げます。
 大臣退任により立場は変わりますが、これからも、国民の生活と安全を守る警察活動、消費者行政、食品安全、拉致問題対策、死因究明、公正なる市場の確保に関する政策が一層強力に行われるよう、しっかりと応援をしていきたいと思います。
 終わりに、在任中の御厚誼に改めて感謝申し上げ、退任の挨拶といたします。本当に長い間ありがとうございました。
 以上です。

 

2.質疑応答

(問)大臣は、10年ほど拉致問題にずっと取り組んできた上で大臣になられたわけですけれども、大臣として拉致問題を扱ってみて、問題解決に当たってどういうことが難しかったと思われますか。また、御本人の成果としてどのようなことがあったと思われますか。
(答)やはりずっと扱ってきて、これは二つの国が協議をし、そして解決をするということになりますから、相手のあることなので、非常にそこの部分が、相手が極めて、我々が今まで議論してきた相手と違うスタンスの立ち位置なので、そこが非常に困難さを感じたところであります。
 しかし、一方において、やはり10年という一つの節目に、北朝鮮側は一定の日朝の関係を打開したいという思いがあったのも事実だろうというふうに思っております。
 したがって、今、こういった実務者協議が始まっているわけでありますから、遺骨を中心にして議論が始まったのかもしれませんが、きちんとこの協議を通し、時間のない中、拉致問題の解決に結びつけていただきたいというふうに思っております。
 私は、重要なことは、日本の拉致の一定の進捗という言葉を先ほど使いましたが、この解に対して、北朝鮮との対話の中で常にそのことが分かるようにするということは、拉致問題担当大臣を中心として、家族会、救う会、特定失踪者問題調査会、そして、拉致問題をずっと支援してきた多くの仲間、また、メディアの関係者、そういった方々と常に意見交換をし、現状分析をし、寄り添って立って、そして、そこに一定の進捗を認定し、最後は総理にそれを出して、こういうことで一定の進捗なんだと言えるような議論を常に続けることが極めて重要だと思ってまいりました。
 私はその意味において、一定の進捗について私なりに、この間、家族会や救う会、特定失踪者問題調査会や、この問題に対して熱心に議論してきたメディア関係の方とも議論してきたところであります。
 また、特定失踪者というものも、我々の国においては認定被害者と別の扱いになっておりますが、実際に拉致をされているのであれば実態は同じなわけでありまして、そういった特定失踪者の中で、特に拉致の可能性が極めて高い方々を通して、この方々に対してきちんと光を当てて、拉致問題の全体の解決の中で、そこがきちんと乗るようにする努力もしなければいけないと思って、先般、藤田さんにジュネーブに行っていただいたところであります。
 北側の状況というのは、色々と分析があって、この場では細かくは申し上げることはいたしませんが、私は、新しい金正恩体制の中で、十分にこの問題が解決できる可能性はあるだろうし、日本からの強いメッセージがあれば、北はそれを無視することはないだろうというふうに考えております。
(問)国家公安委員長、そして、内閣府特命担当大臣、拉致問題担当大臣として、今年1月から約9か月間、これまで民主党政権として3年で8度という内閣改造ということがありました。国民からすると、果たしてこれで本当に大丈夫なのかという不安の面もあると思うんですけれども、このことについてどのようにお考えでしょうか。
(答)これは任命権者の方の御判断の中でなされていることだと思っておりますが、一般論としては、やはり一定期間大臣をすることによって、様々な行動や様々な事柄が成し得るんだろうというふうに思っております。
(問)この期間というのは、やっぱり短いというふうにお考えでしょうか。
(答)したがって、大体1年というのが一つの目途にあるのではないかというふうに、私は認識いたしております。
 ただ、ものによってはもっと時間がかかるものがありますし、拉致のような問題に関して言えば、北側との接触を含め、北が交渉相手として認知をするまでの時間も含めると、一定の時間というのは必要かもしれないというふうに思います。北朝鮮側がです。
(問)今の論調で言うと、逆に、拉致問題担当大臣をこのスパンで替えているということ自体、北朝鮮からすると、日本というのは余り拉致問題を重視していないように受け取られる可能性があると。
(答)私は、この1月からの活動で、北朝鮮の朝鮮中央通信で5回にわたって激しく批判をされ、罵られてきたわけでありまして、そういった意味で、北朝鮮側としては、私の場合かなり、言ってみれば状況ではなくて原理を貫くというふうに考えていると思うので、私から違う人に替わるということを含め、結果として一つのメッセージ性が込められるというふうに思う可能性はあると思います。
(問)どういうメッセージでしょうか。
(答)それはこの場では申し上げません。
(問)国家公安委員長として、先ほど、色々法改正もありましたし、施策はたくさんあると思うんですが、大臣として印象に残っている部分というのはどの部分でしょうか。
(答)国家公安委員長としては、認識として持ったのは、現場の警察官というのは、3・11の被災地に行った時のことも含め、あの吹雪の中で、本当に現場の警察官というのは、すごく熱心に行動しているというのは感銘を受けました。手が凍てつくような中でも、どこでもやっていると。もちろん、今、様々な警察関係の議論はあります。我々も警察改革精神というものをもう一回ということでやっておりますが、とにかく日本の治安を守る警察は、本当に熱心にやっているなということは、色々な場所に行ってこれを感じたということを申し上げたいと思います。
(問)せっかくなので消費者行政で、消費者行政を一元化してもう3年たちましたけれども、余り改革の意義が、カラーが発揮できていないように思いますが、トップとしてご覧になられて、この理由は何だとお考えになりますか。
(答)私は、新しい省庁で、小さく産んで大きく育てるということで始まって、今、消費者庁も徐々に存在感を出してきている過渡期だろうというふうに思っております。力を出していないというよりは、これから更に本当の意味で求められる消費者庁として、大きく巣立っていくのではないかと思いますし、新しく消費者団体の中心でやってきた阿南さんに長官になっていただいて、更に消費者目線は確立していくし、そこは消費者の観点から、妥協しない消費者庁になっていくのではないかというふうに私は思っております。
(問)いろんな分野に積極的に取り組まれている中で、今回の改造で退任される立場になったという総理の判断は妥当だと思われますか。
(答)それは任命権者の御判断ですから、私が先ほど長々と申し上げた言辞の中で、私の思いというのは全部尽くしているところであります。
(問)消費者担当大臣として伺いたいんですけれども、先ほど、今後の課題の部分で、東電のフォローアップのようなお話がありましたけれども、東電絡み以外で、何かしらこれはちゃんと引き継ぎたい、これだけはやりたかったというようなものがあったら、それを是非伺いたいのと、これから消費者行政に、一政治家としてどのような関わりをされていくんでしょうか。この2点。
(答)一つは、消費者庁的に言うと、地方消費者行政の充実というのは極めて重要な課題だと思っておりまして、今、予算の途中であって、本当は予算で更にもうひと踏ん張りしなければいけないと思っている時に、その立ち位置を外れるのは、これも大変に心残りでありますが、どちらにしても、消費者の観点を地方においても守るということで、これはこれとして、きちんとやっていかなければいけないと思っております。
 今おっしゃった公共料金の部分に関しては、今も古城先生を中心にして、公共料金に関する研究会があるわけで、この間も私、出席をいたしましたが、こういうものできちんと、公共料金のような、実際消費者から見たら無条件にそれを受けなければいけない、その原価のあり方等に関して、申し上げているレートメークを含めフォローアップの体制をつくるということは、先般の東京電力でしたわけで、このことに関しては、私も伝聞ですが、枝野さんも今後他のところでもという話がありましたので、きちんと消費者庁側も、ああいった東京電力の時のように議論をし、そして消費者の立ち位置を守ると、そのことをやりながら、だんだんと消費者目線というものが、国家の中において確立をしていくんだろうというふうに思っております。
(問)消費者団体と活発に意見交換されて、中には惜しむ声があるのかもしれないですが、今後、消費者行政にどういうふうに関わっていかれますか。
(答)消費者団体との懇談会が今日、明日で17団体と行うことを予定していたわけですが、そこには直接的には、ちょっと顔ぐらいは出すかもしれませんが。やはり消費者行政といっても漠然として、抽象的な表現で消費者行政と言うよりは、実際そこにいる、取っ掛かりを持つ様々なボランティア的な組織、団体をてこ入れすることによって、全体が底上げされると思うんです、消費者目線が社会の中で。
 したがって、今後、今私が17団体、18団体集まっての懇談会とか、個別にやってきました。こういったことは是非、新大臣にも続けていただければと思いますし、また阿南長官がそういったことを引き継いでいただくことを期待しております。
(問)大臣は国家公安委員長から拉致問題担当大臣を兼務されていて、国家公安委員長として、現場の警察官に拉致問題の捜査・調査の要請をしてきた場面も何度かあったと思うんですけれども、今、一部報道では、新しい大臣は国家公安委員長と拉致問題担当大臣を兼務しないという報道もあるんですけれども、国家公安委員長として、拉致問題対策に取り組むこともあるかと思うんですが、兼務する、しないということをどういうふうにお考えですか。
(答)そこは、私もまだ確たることは聞いていないわけでありますが、仮に別であっても、大臣同士が密接に関係をし、議論すればいいと思います。外務大臣と国家公安委員長、そして、拉致問題担当大臣と官邸が、きちんと相互に連携をする中で、様々な議論は私は十分に進んでいくと思っております。

(以上)