古川内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年6月19日

(平成24年6月19日(火) 9:01~9:19  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

おはようございます。
まず最初に、先週の土曜日にパン、中華麺などに適した国産の小麦「ゆめちから」を利用しました食パンの製造ラインを視察させていただきました。今パン等に適した小麦は99%を輸入している状況でありまして、1%しか自給率はないわけです。これを解決していく1つのツールとして13年にわたって品種改良が行われてきたのが「ゆめちから」という新しい品種でございます。こうした国産の小麦の対する需要を高めることによって生産を拡大することが非常に重要なことだと考えております。
私もその場で試食させていただきました。記者の皆さんにも来ていただきましたけれども、食べていただければ大変おいしいのですけれども、まだ「ゆめちから」という、皆さんもお米はコシヒカリやあきたこまちなどいろいろとブランド名を知っているのがあっても、小麦のブランドというのは浸透していない。私もこの「ゆめちから」に出会うまでは小麦にそんなにいろいろなブランドがあることを知らなかったわけであります。値段が従来のものに比べると高いためになかなか浸透していないというところで苦労しているというお話も伺いました。
この「ゆめちから」というブランド名が浸透していき、これを使ったパンがおいしいのだということが多くの人に広がっていけば値段が高くても消費者の皆さん方に受け入れられるのではないかというお話も伺いました。
改めてブランド力をどう上げるということは国内外において非常に大事なことだと思っております。成功しているビジネスなどを見てみますと、特に高級ブランドはそのブランドがつくだけで他のものが全く同じであってもそれだけで値段が何割も、場合によっては何倍も高い状況になるわけであります。やはりそのブランドが生み出す価値は非常に高い。そういったブランド力を生み出す努力を我が国はしていくことが成長という観点からも非常に大事なことである。これは食においても同じことが言えると思います。
既にそうした高いブランド力を有している食品も日本にはいくつも存在しております。この「ゆめちから」という新たな国産の小麦の品種もそうしたブランド力を付けていくことが非常に大事であることを感じて帰ってきた次第であります。
私からは以上であります。

2.質疑応答

(問)昨日、神奈川県の黒岩知事とお会いされた際に神奈川県の医学部の新設構想について最大限支援するといったご趣旨のご発言をされたと聞いています。具体的にどういう点を支持されて、具体的にどのような支援をされようとお考えなのでしょうか。
(答)黒岩知事から京浜臨海部のライフイノベーション国際戦略総合特区における神奈川県の取組についてご説明いただきました。その中では外国人医師・看護師による治療や外国人患者の受け入れ、また英語で授業をする特色のある医学部の新設、こうした開かれた医療を神奈川県として全力で取り組みたい。特に英語で授業をする医学部の新設を重点的にやりたいというお話がございました。  先日、私の下で医療イノベーション5か年戦略を立てさせていただきましたけれども、日本の医療を成長産業にして、かつ世界にも発信していくためには日本の医療システムあるいは日本の薬、医療機器に慣れ親しむ人たちを作っていくことが非常に大事なことです。  現実に例えば、私も岡山の医療機器を作っているメーカーを訪問させていただいたとき、社長さんから言われたのは製品の質でいえば間違いなく自分たちの製品はアメリカなどで作っている製品よりも良い自信がある。ところがお医者さんの多くはアメリカで研修を受けて、アメリカ製の機器に慣れてしまうと日本に帰ってきても慣れ親しんだ機器を使う。そういうところがなかなか自分たちの機器が広がっていない1つの要因になっているのだというお話がございました。逆に言えば日本のそうした機器などを海外にも出していこうといれば、その人たちが慣れ親しむ状況をつくっていかなければいけないと思います。  また、日本の医療システムは非常に優れたシステムであります。単に医療水準だけでなくて、病院におけるホスピタリティや、また病気になる前の様々な健康診断の仕組みも含めてトータルとしては健康を守っていく、そして増進をしていく仕組みを是非海外にもパッケージとして展開していく。このことは日本の成長にもつながりますし、そして何よりもそうしたものが移植された国々において、その国々の人たちの健康や命を守ることに繋がる。日本は人間の安全保障を外交の大きな方針として示しているわけでありますが、まさに日本らしい外交の大方針であります人間の安全保障を高める取組にもつながって、世界における日本の貢献として、医療の仕組み、保険の仕組みを海外に伝えていくことはこれからのミッションである。このことは日本再生のための基本戦略の中でも述べたことであります。  そういう様々な観点から言いますと、この特区における海外からの人たちも学べるような環境の医学部は大変素晴らしいことだと思います。特区は全国でやるのは難しい問題について、特区という限られたところではありますけれども、そこで新しい取組を行って、具体的な分かりやすい、これから目指すべき新しいモデルを示していくことが特区の役割でありますから、こうした考え方には私も全面的に賛同させていただくことを申し上げたわけであります。  ただ、これはまだ、県から申請が具体的な形では上がっていないようでありますので、是非国に上がってきたときには私も政府の一員としてこれが実現するように最大限努力していきたいと思っております。
(問)新設にはいろいろハードルもあるかと思います。文科省は頭が堅いというご発言をされていたのでしょうか。
(答)文科省とはいつも闘いをいたしております。先日の大学の改革などでも、例えば、英文学科や英語学科など英語を専門にするところで英語の試験を継続するのはいいと思いますが、そうでない他の学部について言えば、英語というのはコミュニケーションするツールですから、大学で英語で授業などを行ったときに、きちんと理解できるかどうか、そういう能力を判断すればいいのではないか。ですから、英語の科目の試験はむしろ廃止してTOEICやTOEFLなどの試験の成績で何点以上取ってくることを受験のときに求めることによって日本の高校以下の英語教育も全くガラッと変わってくるのではないかと思います。しかも、そういう形になりますと、1回きりの試験ではありませんから、一発勝負でそのときたまたま知っている単語が出た、イディオムが出たということに左右されるのではなくて、何回でもチャレンジしてブラッシュアップすることができる。そうした仕組みを作ることがいいのではないかということでかなりやり合いました。TOEICやTOEFL、こうしたものの活用を推進するところで止まったこともありました。私としては、次の時代を担っていく子どもたちは、今本当に大きな転換期にあって、従来の枠にとらわれない柔軟な発想ができる人たちを育てていかなければいけないのだと思います。まさに私がいつも申し上げているイノベーションを実現できるような人材をどう育てていくかということには従来の枠にとらわれない発想が非常に重要なことではないかと思います。そうした視点からすると、やや文部科学省の考え方は従来の枠にこだわっているところがあるのではないか。そういったところで柔軟な発想をすることが大事なことではないかということは従来から文部科学省とやり合っているところであります。
(問)話は変わりますが、一体改革の三党合意ですが、先般の会見で大臣は社会保障についても先送りや棚上げではないとおっしゃられたのですが、昨日、夜に開かれた民主党の合同会議では自公と妥協しすぎているという声や増税先行だという声が出ていて、大臣のご認識が共有されているとは思えなかったのですが、この点についてはどのようにお考えでしょうか。
(答)説明を党内の中できちんとしていかなければいけない部分があると思います。いろいろな誤解があります。党内もそうですし、また皆さんの中でも、あるいは識者の中でもあると思います。例えば合意の中にありました社会保険制度をベースにして年金や医療のシステムを検討するところを取り上げて、民主党は最低保障年金を取り下げた、棚上げした、そういうコメントをされる識者の方も週末にはテレビで見かけたりしました。  民主党の年金改革案では、所得比例年金という社会保険方式の年金制度と税による最低保障年金、この2つは一体不可分のものです。順序から言えば、社会保険方式による所得に応じた保険料を支払って、その支払った保険料に乗じた給付が受けられる社会保険方式の所得比例年金、これをベースとして、その所得比例年金額が少ない人を中心に税による最低保障年金を付加して、全ての人に月額7万円以上の年金額が保障できる仕組みにしていこうということが民主党の年金改革案です。民主党の年金改革案は最低保障年金だけがあるわけでなくて、社会保険方式の所得比例年金がベースにあって、その上に税による最低保障年金が乗るということであります。そういった意味では、社会保険方式がベースになっているということは言えるわけであって、このことをもって最低保障年金を棚上げしたということは私は当たらないと思っています。  こうしたことなどもまだきちんと党内も含めて伝わっていない部分があるかもしれません。こうしたところは丁寧に事実関係をご説明していく努力をしていかなければいけないのではないかと思っております。
(問)欧州情勢についてお伺いしたいのですが、ギリシャについてですけれども、再選挙の結果、緊縮派が勝ってユーロ離脱のリスクが減ったことでマーケットは好感しているかと思うのですが、一方でスペインでは金利が跳ね上がったままで全般的に見れば不安が解消された状況ではないと思います。そこで日本経済への影響という点でお伺いしたいのですが、波及経路としては金融市場の混乱、直接の貿易、それからアジアから欧州向けの完成品輸出が減ったことによって日本からアジアへの部品輸出が減るなど、いろいろな経路があるかと思います。普段から日本経済への影響を注視されていらっしゃると思いますけれども、今後を見る上でどの辺にポイントを置いて見ていらっしゃるかをお伺いできればと思います。
(答)今ご指摘がございましたようにギリシャの再選挙の結果を受けて、昨日の金融資本市場においては緊張の緩和が見られた点もございます。一方でスペインの金利は過去最高をつける。そういった意味では欧州の政府債務危機についてはなお予断を許さないと考えております。  この問題はこれまでマーケットがリスクオフ姿勢を強めて、結果として世界的な株安や円高、ユーロ安の動きの要因になってきたと考えています。マーケットに、特にリーマンショック以降、世界的な金融緩和で膨大なマネーが存在しています。このマネーが非常にリスクにセンシティブになっています。こうした膨大なマネーがリスクオンの状況になっていくのか、あるいはリスクオフになるのかによって相当市場も変動するということでありますので、こうしたマネーのリスクオフの姿勢がどういうふうになっていくのかを中心にしっかり注視していきたいと思っております。
(問)大飯原発の再稼動が決まりましたけれども、政府の今後節電目標の見直しについての考え方についてお願いします。
(答)再稼動にはそれぞれ約3週間を要する見込みであります。また、再稼動の作業中にトラブルが発生して工程が遅延する可能性もあります。そうした観点から当面は現行の節電目標を堅持していきたいと考えております。  一方で出力が100%に達して安定稼動が確実になった際には節電目標を変更したいと考えております。

(以上)