古川内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年2月16日

(平成24年2月16日(木) 18:10~18:20  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要を報告します。
 景気の基調判断は、「東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、緩やかに持ち直している」と、先月と同様の判断としております。
 これは海外経済の回復の弱さなどから、輸出がこのところ弱含んでいるものの、消費については、エコカー補助金の効果や家電販売に底打ち感が出てきていることなどにより、底堅さが見られること、またこれらを反映して、生産については基調として緩やかな上向きの動きが続いていることなどを踏まえたものであります。
 先行きにつきましては、景気の緩やかな持ち直し傾向が続くことが期待されますが、欧州の政府債務危機が金融システムに対する懸念につながっていることや金融資本市場に影響を及ぼしていることなどによりまして、海外景気が下振れし、我が国の景気が下押しされるリスクが存在することに注意が必要であります。
 政府としては、大震災からの復興に全力を尽くすとともに、欧州政府債務危機等による先行きリスクを踏まえ、景気下振れの回避に万全を期すこと、そしてデフレ脱却に断固として取り組み、全力を挙げて円高とデフレの悪循環を防ぐことなどに取り組んでまいります。
 もう1点、今月の「マンスリー・トピックス」のテーマでございますが、「貿易赤字に関する考察」です。
 この中では、例えば2011年の貿易赤字の大半はサプライチェーン寸断による生産、輸出の急減、震災被害による代替輸入増、火力発電所の代替稼働によるLNGの輸入増といった、震災の一時的な影響で説明が可能であるということ、また、輸出入の所得弾性値は、為替の弾性値よりも高いことから、貿易収支黒字が続くかどうかは、海外需要をどの程度取り込めるかが鍵であるということ、所得収支は依然大幅な黒字で、その相手国としてアジアや資源国、オーストラリアの比率が上昇している点を指摘しております。これは対外投資の戦略的な重要性を示唆している、また、他方、過去50年におきまして、所得収支の黒字で貿易収支の赤字を持続的に補った国はほとんどないと、こういった大変興味深い分析が行われておりますので、是非皆さんも御一読をいただければと思います。
 私からは以上でございます。

2.質疑応答

(問)基調については変化がないということなのですが、項目について見ると、個人消費は上方修正されています。これは先程大臣もおっしゃった要因かと思うのですけれども、住宅投資については下方修正されたということなのですが、内閣府の説明では、建設労働者が若干東北に集まって、人手不足になっているというようなこともあるようなのですけれども、この住宅投資の回復に向けて、その様な労働需給の逼迫をどう改善していったらいいか、大臣のお考えは如何でしょうか。
(答)労働需給の問題につきましては、東北のほうで復興需要が発生していて、その他の地域の労働者も東北に移動していることによって労働者不足が全国に波及しているという話もあるようでございます。
 一日も早く被災地の復旧、復興をしていかなければいけないという点では、やむを得ない部分でもあろうかとは思いますが、被災地の一日も早い復旧、復興のためにも、全国の経済もきちんと立ち直っていくことが大事でございます。この部分の労働者の不足については、現場の方々もいろいろ工夫をしておられると思います。被災地においても、国土交通省のほうでも、現場の技能者の不足に対しての対応の措置をとっておるようでございますので、そうした限られた労働者の数の中でも、被災地の復旧、復興がしっかりと進み、同時に他の地域への影響も必要最小限になるように、政府としてもできる限りの努力はしていきたいと思っております。
(問)海外景気なのですが、今回は中国、それからその他アジア地域について下方修正をしていますけれども、新興国経済の減速傾向が鮮明になってきたかと思うのですけれども、現状と今後の見通しについて、日本経済に与える影響についてお伺いできれば。
(答)中国について申し上げますと、これまでの金融引き締めや世界経済の減速などの影響によって、景気の拡大テンポが緩やかになってきて、特に成長を牽引してきた投資や輸出の伸びが鈍化している状況にあると思っています。
 その他アジア地域も、世界経済の減速等の影響によって、景気はこのところ足踏み状態となっていて、それが生産や輸出に弱い動きとして見られていると認識しています。
 新興国は、世界経済全体の減速の影響が出ているのだと思います。そういった意味では、世界経済、特に欧州の動きや、アメリカの動きもしっかり見ていかなければいけないと思います。欧州のほうはなかなか厳しい状況でございますが、アメリカ経済のほうは少し予想よりもいい方向に進んでいるかと思いますので、この傾向が続いていくかどうかをしっかり注視すると同時に、欧州では、今日の報道などを見ますと、ようやくギリシャの問題も一つの方向が出たというような報道もございます。ヨーロッパにおいて、きちんと閣僚会議などで決められたことを迅速かつ着実に行い、欧州状況も安定をしていくことによって世界経済全体の減速が食いとめられるような状況になっていくことを期待したいと思っております。
(問)政策態度の記述で少し確認させてください。  「政府は、日本銀行と一体となって、速やかに安定的な物価上昇の実現を目指す」というくだりがありますけれども、このときの安定的な物価上昇というのは、今回日銀が出された中長期的な物価安定の目処(めど)のCPI上昇率1%とほぼ一緒という解釈でよろしいでしょうか。
(答)この点については、日銀で出しております中長期的な物価安定の目処は、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラスの領域で、当面は1%目処となっています。私どももそうした認識を持って、政策運営を行ってまいりたいと考えております。
(問)デフレ脱却に全力で取り組むとよく皆さん言われますけれども、デフレ脱却という解釈がいろいろあると思うのですが、この物価上昇の目処とデフレ脱却の定義の関係はどのようにお考えでしょうか。
(答)何をもってデフレ脱却と言うかは、インフレターゲットの話と同様、人によって様々な見方があると思います。まずは、今も申し上げた日本銀行と認識を共有して、一日も早い緩やかな物価上昇が実現をする状況を目指していくということがデフレ脱却にもつながっていくのではないかと思っております。
(問)関連でもう1点なのですけれども、明日、大綱を決めるという一体改革との関係なのですけれども、そこの素案の記述では、経済の状況を総合的に勘案すると書いてあると思うのですが、実際増税を実施するときには、日銀が出された目処というのは、実現させたほうがいいとお考えか、あるいはそれは前提条件ではないのでしょうか、そこら辺のお考えは如何でしょうか。
(答)これはその時点において、そのときの政府が総合的に判断するということになろうかと思います。

(以上)