古川内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年1月24日

(平成24年1月24日(火) 10:08~10:32   於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 昨晩、またそして今朝も雪でしたけれども、皆さん、大丈夫でしたでしょうか。
 これは、古川宇宙飛行士が昨日いらっしゃって、古川さんが宇宙から撮った写真をいただいたものなのですけれども、ここに見えるのが富士山です。雪があると、富士山だけ雪をかぶっているものですから、宇宙からでもよく見えます、富士山がくっきり見える。雪は大変ですけれども、雪があるからこそ、宇宙からでも富士山が見える。そういう意味では、雪もまたいいかなと思っております。
 今日は最初、私のほうから3点申し上げたいと思います。
 まず1点目は、本日の閣議におきまして、「平成24年度における財政運営戦略の進捗状況の検証」及び「経済財政の中長期試算」を配付いたしました。
 「経済財政の中長期試算」は、中長期のマクロ経済及び財政の姿を展望したものであり、「平成24年度における財政運営戦略の進捗状況の検証」は、本試算を踏まえ、財政運営戦略における財政健全化目標の達成に向けた進捗状況等を検証するものであります。
 「経済財政の中長期試算」におけるマクロ経済の姿については、成長戦略シナリオでは、2020年度までの平均で、名目3%程度、実質2%程度、慎重シナリオでは、名目1%台半ば、実質1%強の成長となっております。
 また、平成24年度予算では、依然として国債発行額が税収を上回り、社会保障費の相当部分を借金に頼っているなど深刻な状況にあります。この点で、社会保障・税一体改革素案に盛り込まれた改革は、社会保障の安定財源確保及び財政健全化の同時達成への第一歩を踏み出すものであり、その実現に向けて早急に取り組む必要があります。
 「経済財政の中長期試算」の慎重シナリオに基づき財政健全化の進捗状況を見ると、2015年度の財政健全化目標は、国・地方で3.2%程度、国単独で3.4%程度に対し、試算上、2015年度の国・地方及び国の基礎的財政収支赤字は、それぞれ対GDP比3.3%程度、3.6%程度となっております。仮に社会保障・税一体改革による影響を平年度化すれば、財政構造としては基礎的財政収支赤字、対GDP比の半減目標の水準が達成される姿となっておりますが、2015年度の財政健全化目標の達成に向け、成長力の強化を初めとするあらゆる政策上の努力に全力を上げることが必要であり、国家戦略担当大臣としても成長力の強化を初め全力で取り組んでまいりたいと考えております。
 2点目、先日、大学の9月入学についてもいいことではないかという発言をさせていただきましたけれども、同時に、就職を受ける学生たちを受け入れる側の体制の整備も重要だろう。特に私は、民間の方々にもそうした人たちを受け入れる、ギャップタームなどを利用して様々な経験をされた方をむしろ優先するような、そういう仕組みも考えたらどうかということで考えましたが、これは民間だけではなくて、やはり官の世界でもそうした人たちを受け入れる。今は基本的に4月の入省、入庁になっておりますけれども、9月に入省、入庁できるような、その間、ギャップタームやギャップイヤーを活用して様々な経験をした人たちの経験をむしろプラスに評価するような取組ができないかと思っておりまして、秋入学への全面移行はしばらく先の話で、直ぐに行われることではないのでありますけれども、政府としても秋入学で卒業される人たちを採用していくことは、むしろこういう人たちのほうが様々な経験をして、これからの政府に必要な優秀な人材を確保することにもつながる面があるところもございますし、日本の成長戦略の一環としても重要なところでございますので、是非政府全体としても考えていったらいいのではないかと思います。私も内閣府の次官に対しまして、今後の課題として、一回検討してもらいたいということを指示いたしました。法律を変えなくてはいけないとか、あるいは運用でそういうことができないか、様々な検討、もちろん人事院も含めてかもしませんが、いずれにしても、こうした大学側の動きに対して、政府の側でも検討をしていって、民間の方々も含め、産官学一体となってグローバル人材の養成に資するような環境づくりをしてまいりたいと思っております。
 3点目が、今、大変欧州の状況が注目をされておりますし、私どももこの状況については大変注視しているわけでございますが、こうした欧州の政府債務問題や政策対応のあり方等につきまして、情報収集及び意見交換を行ってもらうために、明日25日から2週間程度の日程で齋藤内閣府本府参与が欧州各国を訪問する予定としておりますので、御報告をさせていただきます。
 私からは以上であります。

2.質疑応答

(問)2点お願いします。
 まず1点目、中長期試算の前提についてなのですけれども、様々な前提を置かれて慎重シナリオも出しておられますが、その中で一体改革による消費税の引上げというのは、安定財源確保に向けたものと明確に位置づけられているので、経済の影響は限定的になるという前提を置かれていますけれども、これ自体は慎重シナリオよりも楽観的過ぎないかなという気もするのですけれども、こうした前提が慎重シナリオ下でも確実に行われるという見込みについてどのようにお考えかお願いします。
(答)今回の社会保障・税一体改革は、社会保障の機能強化、機能維持のための安定財源確保と財政健全化の同時達成を目指すものであります。財政運営戦略の中でも、構造的な歳出増要因というのは、この社会保障部分である。そこに対してきちんとした安定財源を確保することが非常に大事であるということは財政運営戦略の中でも述べられていることであります。
 今回の一体改革に基づく消費税率の引上げ自体は、家計の実質可処分所得の低下をもたらして、消費を減少させる効果がございますけれども、一方で、改革に伴う新規歳出増が経済を押し上げる効果が同時に見込まれると考えております。
 また、今回の一体改革の下で行われます消費税率の引上げは、使途を明確にしないで行う増税とは異なって、社会保障財源化ということが明確になっておりますので、国民に還元されると広く受け止められることによります効果も見込まれると思っております。そうした効果を総合して試算した結果、社会保障・税一体改革が経済に与える影響は限定的なものになるという試算が出てきたということであります。
(問)もう一点、年金改革についてなのですけれども、先日来、輿石幹事長や岡田副総理のほうからも、最低保障年金を含めた新年金の姿をこの国会で示すべきではないかというご意見が出ております。ただ、昨年末に素案をまとめる議論の中では、そこは党のほうでもそんなに突っ込んで議論してなかったと思うのですけれども、この国会でそういった姿を示すことについて、マニフェストなどで年金問題に取り組まれた古川大臣としてどう思われているかお願いします。
(答)もうこれは既に成案をまとめるときの段階でもかなり具体的な枠組みの中までできております。したがいまして、どこまで細かくそれを詰めていくのかという問題ではないかと思っております。いずれにしても、年金改革、新しい年金制度をつくることは、野党時代から私が申し上げてきたのは、民主党としての考え方はあるけれども、他の意見は一切聞きませんということではなくて、最終的な姿は、与野党を超えた合意の中でつくっていきましょうと。民主党として考えているのは、所得比例年金と最低保障年金を組み合わせた形です。もちろんその具体的なイメージとしての最低保障年金の7万円ということは、そういう数字としては示させていただいておりますけれども、こうした形をベースにしながら、最終的なところは与野党で合意ができる形を生み出していかなければいけないと思っています。
 もう既にかなり具体的なところまでの大きな制度の枠組みについては、これまでの議論の中でまとめてお示しをしているわけでございますから、それをどこまで具体化をするのかということが今後の議論の中では焦点になってくるのではないかと思っております。
(問)協議次第ですけれども、場合によっては、もう少し具体的な姿とか、必要な財源の金額というのは出しても構わないとお考えですか。
(答)数字を置けば、当然その数字を前提とした財源とか、そういうものは出てくるわけであります。しかし、その数字自体が、最終的にはこれは与野党で合意をしなければ、我々が言うだけでそうなることではないと思っていますので、数字をどのような形で置くのかということはかなり幅広いところがあるのではないかと思っております。今のところ、我々がずっと申し上げてきたのは、最低保障年金として7万円というところは固定をしておりますけれども、それ以外についてはまだ様々な議論をする余地はあるのではないかと思っております。
(問)財政運営戦略の進捗状況の最後のページのところなのですけれども、「2020年度の財政健全化目標の達成には相当程度の追加的な財政収支改善を行う必要がある」という表現があるのですけれども、この表現は去年までと基本的には一緒なのですが、今回、一体改革素案を踏まえた上でこういう追加的財政収支の改善を行う必要があると書いてあるということは、2015年に消費税率を10%にした後も、さらに消費税率の引上げとかそういう取組が必要だということなのか、大臣の御認識をお聞かせください。
(答)財政健全化というのは一足飛びにできるわけではありません。三段跳びのようなものですから、まず1段目のジャンプをしていかなければいけない。ですから、今回、社会保障・税一体改革案をまとめさせていただきました。2015年から2020年へ向けての次の改革への道筋をつけるためにも、まずはこの足元のところをまとめた一体改革案を実現して、2015年度における半減目標の達成に向けて全力を上げていくというのが私どものスタンスであります。
(問)昨日、経団連が春闘への方針を示しまして、その中で記者会見した経団連の宮原副会長が、円高や震災から生産拠点の海外移転が進んで、製造業は日本で事業を続けられるかどうかの瀬戸際になっているということで、非常に産業の空洞化に対して強い懸念を示した上で、定昇凍結、ベアは論外等の発言をされたのですけれども、そういった空洞化の要因として電気の安定供給の問題が、昨日の会見でもやはり出てきたのですが、大臣は先週、その点についてお触れになりましたけれども、現状としては、中小企業からは今のままではかなり厳しいという声が上がっていますが、どのようにお考えになりますか。
(答)先日の会見でも申し上げましたが、この空洞化懸念がされている状況の中で、電力料金を大幅に引き上げるということにつきましては、東電から見れば、自分たちは苦しいのでということは分かりますけれども、本当に東電がどこまで切り詰めてやっているのかということをもう少ししっかり検証する必要があるのではないかと思います。また、東電は今様々な形で国も、国民も支援する形になっておりますし、これからも支援をしていくという立場に置かれているわけであります。ですから、自由料金だからといって自分たちの都合だけで需要側がほとんど選択の余地のない料金値上げをしてもいいものかどうかと、これは経済財政担当大臣の立場として非常に懸念をいたしております。
 大企業の中には、自家発電等色々策をとれるところもあるかもしれませんが、中小企業になるとそういう手段というのはほとんどなくて、今でも既に夜間電力などを活用して、少しでもコストを減らそうとする努力をしているわけであります。今回の値上げは、私が聞いているところでは、夜間電力等も関係なく、言ってみれば、キロワット当たり単純に燃料費の増額分を割ってそれを乗せていくということになっているようでありますから、夜間料金が適用されている事業者の皆様方は、単価が今まで安かった分、逆に非常に割高な、平均で17%と言われていますけれども、2割、3割というような値上げになっていってしまう。本当にぎりぎりのコストで仕事をされている皆さんからすると、とてもそれは受け入れがたい。空洞化にもつながると思いますし、私も地方に回って地方の中小企業の皆さん方から言われたのは、海外に行ける企業はまだいいのです、もうやめるしかないという状況に追い込まれている中小企業も多いのですという話がありました。やはりそういうぎりぎりの立場で追い込まれているという人たちが多いということを東電においてももう一回検討する必要があるのではないかと思っています。電力の安定供給のためであり、別に東電を救うためではありませんが、東電もきちんとやっていかなければ、政府として国民の皆さん方に、東電をサポートしていくこと自体の理解が得られるのかなと、私は思います。
(問)念のため確認です。冒頭にあった秋採用の検討の話ですけれども、新しい松元次官に指示したのですか。
(答)はい、次官に。
(問)先週位に指示したのですか。
(答)そうですね、秋入学の動きが出てきました。やはりこれは受けるほうも対応を検討していかなくてはいけないと思います。そうでないと大学のほうもなかなか思い切れないところがあります。そのときに民間企業にもちろんお願いすることもしていかなくてはいけないと思いますが、まずやはり政府の側、公務員の側がそういう人たちを積極的に採用していく、門戸を開いていくという姿を見せることが、他の民間の皆さんもこうした秋入学、そうしますと夏の前に卒業になるかもしれませんが、そういう人たちの採用にも向かうことになろうかと思います。政府が率先垂範をしていくという意味でも、是非前向きに検討するように、法律を変えなければいけない部分はあるかもしれないのですが、運用でできる部分はないのか、そういうものを含めて検討してもらいたいという指示をいたしました。
(問)貿易赤字なのですが、去年1年間で、恐らく通年で貿易赤字、兆円単位の貿易赤字になると思うのですけれども、貿易立国の日本として年間で貿易赤字になることについて大臣の御所見と、今後国として何が必要なのか、それについてお願いします。
(答)貿易赤字は、去年の場合は特殊な要因があったと思います。今回発生した震災の影響や、世界の減速によって輸出が低迷をしたといったことがあったと思います。しかし、全体的なトレンドとしては、貿易黒字が減少していくという傾向にある。このことはやはり一つには産業の空洞化が進んでいるということの一つのあらわれではないかと思っております。
 しかし同時に考えていかなければいけないことは、空洞化の中でも、新たに日本から輸出をしていける分野や、産業を育てていかなければいけないと思っています。ですから、これまでと同じものを輸出するというだけでは、この貿易収支を改善する方向に動かしていくというのはやはり難しいのではないか。新しい分野、例えば、これは新成長戦略以来目指しておりますグリーンイノベーションの分野であるとか、ライフイノベーションの分野、特に私は医療の分野が、例えば医療機器などは今ほとんど外国から輸入しているわけでありますけれども、この辺は非常に付加価値が高くて、また精密で、本来、日本の製造業がこの分野にもっと取り組むようになれば、大きな一産業になっていく潜在力を秘めていると思います。しかし現実には、ほとんど日本の多くのそうした技術を持っているメーカーなどはあまり医療機器などの分野には多く参入をしていないという状況があります。例えばそういった部分を強くしていく。
 また、農業の分野ですね。日本の食というのはおいしくて安全で、そしてまた体にもいいというところもあるわけであります。先日、大間のマグロの初競りで、外国の人が買おうとするのを、とにかく日本人の方が大変高額で競り落としましたけれども、ある種日本の食というものを世界にもっと出していける分野もあると思います。そういった意味では、新しい輸出できる分野をどう拡大をしていくのかということがこれから大きな一つの戦略として考えていかなくてはいけないことではないかと思っております。
(問)財政運営戦略の15年間の半減目標のところで1点確認をさせてください。先程、成長戦略の強化等で達成したいというお話がありましたが、財政構造上は財政運営戦略の半減目標を達成するというふうに進捗状況の確認の部分で書いていますが、この財政構造上達成するだけでは不十分で、やはりきちんとプライマリーバランスとして半減をしないとこの財政運営戦略を達成したことにはならないという認識でよろしいのでしょうか。
(答)先程申し上げましたけれども、構造上は、達成しているという形になると思いますが、もちろんまだ15年まで期間はあるわけであります。その達成に向けて様々な努力、もう今回の消費税についてはこれでフィックスがされたわけでありますから、そのほかの分野で成長力の強化やさらなる歳出削減、そうした分野で頑張っていくということは当然私どもはやっていかなくてはいけないと思っております。

(以上)