古川内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成24年1月13日

(平成24年1月13日(金) 10:15~10:43  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 本日の閣議で辞表を提出させていただきました。皆様方にはお世話になりまして、どうもありがとうございました。
 私からは以上でございます。

2.質疑応答

(問)一体改革担当大臣としてこの4カ月を振り返られたとき、素案をまとめる際、最後には総理が6時間ほど党税調の総会に出席されてまとめられましたけれども、一番成し遂げたこと、手応えのあった成果というのはどういうものだったのか、まずお願いします。
(答)まずはやはり総理がおっしゃっておられた年内をめどに素案をまとめることができたということは、私は大変よかったことだと思っております。この社会保障・税一体改革に並ぶものとして、共通番号制度についてもまとまって、今、次の通常国会に向けて法案の提出の準備が進んでおります。どんと前に進むというわけではありませんけれども、一つ一つ着実に社会保障・税一体改革の実現に向けての歩みを進めることができたのではないかと思っております。
(問)特に番号制度については、就任直後から、一体改革の議論とは切り離しても与野党協議を呼びかけたいとおっしゃっていましたけれども、現実にはできていないという現状についてはどう思われますか。
(答)これは本当に大変残念なことだと思っています。私は従来から、この共通番号制度、マイナンバーは、憲法改正のための国民投票法のようなもので、改正に賛成か反対かは関係なく、やはり手続法として、私はずっとこの国民投票法の議論も携わってまいりまして、しっかりとシステムをつくらなくてはいけないと言ってまいりました。このマイナンバーというのは、そういうものに類するものであって、社会保障の形はどういう形がいいのか、あるいは税の負担のあり方はどういうのがいいのか、もちろんそれは様々皆さん色々な意見があります。しかし、例えば、給付付き税額控除であるとか、あるいは総合合算制度であるとか、新しい社会保障の姿や新しい税制を導入するためには、どうしても必要となってくる共通の基盤であります。さらに、税の面で言えば、所得の今まで以上の公正かつ正確な把握ということでも非常に大事な仕組みであって、国民の皆様方の負担をお願いする以上は、きちんと納得をしていただける、公平で公正な負担をお願いしていく、そして皆さんが納得していただけるような新しい社会保障の制度をつくっていく。それはそれぞれ各党、あるいはいろいろな識者の方々によって意見の違いはあっても、こうした共通番号、マイナンバーが導入されることによって様々な税制や社会保障の新しい仕組みというものを導入することができることになります。共通のインフラとしてこの国会に法案を提出させていただく予定でおります。もちろん中身について色々な御意見はしっかり承っていきたいと思っていますけれども、しかし、共通番号制度、マイナンバーを導入していこうということについては、多くの方々が御理解をいただいていると思いますので、もちろんそのリスクにはしっかりと配慮をしながらも、その実現に向けて、私もどういう立場であっても努力をしてまいりたいと思っておりますし、是非、野党の皆さんにもこの協議に積極的に一日も早く参加をしていただきたいと思っております。
(問)国家戦略担当大臣としての質問なのですが、総理は、副総理を置く意向を示されていますけれども、副総理や官房長官と違って国家戦略担当大臣だからできることというのはどういうことがあると思われますでしょうか。
(答)国家戦略担当大臣というのは、もともとマニフェストでも示されていましたように、総理直属の機関として総理の官邸での政治的なリーダーシップを強めていくためのものです。我々は国家戦略室から局への格上げを目指しているわけでありますけれども、それを正にリードしていくのが国家戦略会議のあり方だというふうに思っています。国家戦略担当大臣の使命というのは、総理の思い、総理がトップダウンのリーダーシップを持ってやっていきたいということをサポートしていくことであると、私も今までそういうふうに思ってこれまでもやってまいりました。この4カ月の間でありましたけれども、国家戦略会議をつくり、日本再生のための基本戦略というものもまとめさせていただきました。さらには、日本の将来の中長期のビジョンを含めた、若い人たちに夢と希望を持ってもらえるような、そういう新たなフロンティアの改革を目指すフロンティア分科会の設置というものを決めて、今月中にもスタートしていくのではないかと思っております。国家戦略担当大臣は、正に総理のリーダーシップを支えていく、総理直属の国家戦略の機関であります。ですから、会議も国家戦略室も、総理のリーダーシップを支え、補強する役割として今後とも活動していくべきだというふうに思っております。
(問)経済財政担当大臣としてお伺いします。就任からずっと経済は非常に難しい情勢が続いてきたと思います。震災の影響から復興する中で、途中で円高、海外経済の減速という要素が加わって、今は足踏み状態ではないかという指摘も出ておりますけれども、景気の現状についてどう思われるかということと、これまで政府として経済財政運営にどういう役割を果たしてこられたのか、振り返ってみてどう考えていらっしゃいますでしょうか。
(答)就任初日に総理から、総合的な円高対策を取りまとめるようにという御指示がございました。歴史的な円高の中で、日本の輸出産業を中心に大変厳しい状況にあります。この4カ月間は対外的には円高の影響であるとか、またタイの洪水というのもありました。さらには、ヨーロッパの国債の危機、それに端を発した世界経済の減速、そういう中での日本への影響も常に注視をしていかなければいけない状況の中で、経済運営については、為替と前日のニューヨークダウの数字を朝起きてまず最初に確認するような日々でございました。そういった意味では、細心の注意を払ってきたつもりであります。
 一方で、国内について言えば、そうした様々な下振れのリスクもありますけれども、私は次第に復興需要がこれから本格化をしてくる状況にあると考えています。国内におきましては、この復興需要というものがこれから本格的に発現してくる状況では、対外的に様々な下振れ要因・リスクというものに配慮すれば、国内的には景気回復に向けての足場というのはあるのではないかとこれまでも見てまいりましたし、これからもそういう状況は続いていくのだと思います。
 したがいまして、大事なことは、復興需要というのはずっと続くわけではありませんから、復興需要による景気の下支えがある間に、次のロケットに点火をしていかなければいけない。今の潜在的な成長率で、これは1%ぐらいじゃないかと言われていますけれども、これを引き上げるようなイノベーションというものが必要であって、この復興需要で支えられているうちに、イノベーションを実現して、イノベーションによって潜在的な成長率が上がっていって、本格的な景気回復の軌道に乗っていく、そうした状況をつくっていくということが極めて重要だと思っています。だからこそ、私も今年最初の記者会見で申し上げましたけれども、今年はイノベーションの実現、このイノベーションの実現というのは、政府自身がイノベーションを実現するということができるわけではありませんから、政府はイノベーションが実現できるような環境づくりにこれまでも取り組んでまいりましたし、これからもっと強化、加速していかなければいけないと思っています。
 この4カ月間で一番私自身、具体的な政策として目に見える形で実現をして、今後の動向に大変期待をいたしておりますのは、復興特区において5年間の法人税無税という特区をつくらせていただきました。私は国家戦略室長のときから、特区については原則ノータックス・ノーレギュレーションだということを言ってきていて、そうした地域で新しい産業や雇用が生まれて、そういう中からイノベーションが生まれていく、それが新たな経済成長の目にもなっていく。そういった意味では、私は特区というものは非常に今の閉塞状況をブレークスルーするには大きなツールだと考えておりまして、本来は総合特区でもそうしたノータックスという状況を実現したかったわけでありますけれども、残念ながら、その時点では実現できませんでした。しかし、今回、復興特区という中では、この5年間の法人税無税を実現することができたわけでありまして、これは新規立地企業についてでありますから、新しく事業を起こしたいという人たちが、国の内外、国の中だけじゃなくて海外からも来てもらったらいいと思うのです。そういう人たちが新しいビジネスを起こしていく。やはりイノベーションというのは、新しいビジネスの中からのほうが起きやすいところもあるわけでありますから、そうしたことから是非発現していって、こうした特区や、そうした新しい企業が出てくるところから新たなイノベーションが生まれ、それが新しい潜在成長の大きなロケットになっていく状況になっていただきたいと私は切に願っております。
(問)就任早々から名古屋、大阪、京都等各地に出向かれて、そこでよく円高対策をしっかりやってくれと要望を受けていらっしゃったかと思うのですけれども、現状まだこの為替水準で輸出企業は苦しい状況にあるわけですが、政府として今後円高対策として何かやり残したことであるとか、地方の声を聞いた上で今後どういうことが必要だと考えているか、そういうことはどうでしょうか。
(答)総合的な円高対策の中で、もちろん過度な為替相場の変動に対しては、これは必要に応じて為替介入を含めた断固たる措置をとっていく、そうした姿勢は今後とも変えていくべきではないと思っております。同時に、やはり為替の変動に左右されないような強靱な経済をつくっていくということを一日も早く実現をしていくということが大事だと思います。正にそれも実はイノベーションの実現ということにつながっていくわけであります。私も東大阪のボルトの工場、会社とかも訪問させていただきました。厳しい状況の中でも、オンリーワンの技術を持っていれば、為替の動向に左右されずに競争に勝ち残っていけるというところがあるわけでありますから、是非そうした企業を育てていく、産業を生み出していく努力をしていきたいと思っております。私は新成長戦略で大きな二つの分野、グリーンイノベーションとライフイノベーションにおいて実現ができる、それだけの技術力を日本は持っていると思っています。
  特に、エネルギー・環境会議の議長もやらせていただいておりましたけれども、エネルギーの分野において、私は大きなイノベーションを実現できると思いますし、原子力の依存度を低減させていきながらエネルギー安定供給を実現するためには、エネルギーの分野におけるイノベーションというものを大きく前進させていかなければいけないと思っています。また、その部分でイノベーションできるだけの潜在力は十分にあると思っていますから、引き続きやっていくべきではないかと思っています。
 さらにもう一つ付け加えれば、この円高の状況を活用して、むしろ将来の成長になるような企業をどんどんM&Aなどで買収していく、また資源を獲得していく、そうした攻めも今から行っていかなければいけないと思っています。円高で苦しんでいる方々へのきちんとしたケアをしていくのと同時に、この円高という局面をむしろ日本の将来の強さ、競争力、そして成長の財産にしていくような積極的な攻めの対応というものを今後ともとっていくことが必要ではないかと思っております。
(問)古川大臣は国家戦略相と経済財政担当相、大きく二つ兼務をされて、一体改革や科学技術など、かなり兼務されている仕事が多かったのですが、この4カ月なさって兼務の多さ、特にそれぞれの分野、専門知識が必要な分野を兼務されている状況について、どのような感想をお持ちでしょうか。
(答)正直申し上げまして、毎日バッティングセンターで、どんどん来る球をとにかく打ち返さなきゃいけないという状況で、こっちからボールを投げようと思うと、向こうから球が飛んでくるという状況にあったことは事実であります。それぞれ今申し上げたような国家戦略においても、また経済財政分野においても、また社会保障・税一体改革の分野においても、さらには、科学技術や宇宙開発、こうしたところも科学技術のイノベーションの司令塔をつくったりすることもやってまいりましたし、また宇宙開発も、今日は専門調査会のほうで最終報告書を出していただくようになってまいりますけれども、新たな宇宙政策の司令塔作りとか、日本の将来のためには非常に重要な政策も担当いたしておりました。ほかにも知財戦略やIT戦略、また遺棄化学兵器というものもございましたし、TPPの問題もございました。そういう意味では、1日のうちに経済から始まって税の問題が来たり、科学技術の問題が来たり、頭の中の切り替えをしていくというのが非常に大変だったなという思いがありますが、大臣室のメンバーを初め、現場で頑張ってくれていた皆さん方の支えで何とかやってこられたと感じております。
(問)社会保障と税の一体改革の関連なのですが、素案がまとまりまして、今後は与野党協議が控えているのですが、新しい段階に入っていくわけですが、一体改革担当相として、今後の担当相としての課題というのはどういう点にあると考えていらっしゃいますか。
(答)やはりこれは国民の皆様方に、なぜ、この一体改革が必要なのかということの御説明をしっかりしていくということではないかと思います。TPPの問題もそうでありますが、この問題は、日本の将来を考えたときには、やはり避けては通れない課題である。これは総理がいつもおっしゃっておられましたように、どの政権であっても避けて通れない課題、私どもはそういった課題に直面をしています。しかし、これはTPPでもそうでありますが、社会保障・税一体改革もそうなのですけれども、かなり先まで見た長期的な視点に立って今やっていかなければいけないということで取り組んでいるわけでございますので、目の前のことだけ考えると、何でこんなときにこんなことをやるのだと、そういう御意見がやはり出てくるのは、どうしても仕方がないことだと思います。したがいまして、大事なことは、私たちが今取り組んでいることが、足元のことだけではなくて、中長期の日本の社会、特に次の世代、若い世代の皆さん、ちょうど私の46歳というのは日本の人口でいうと平均のところになるみたいでありますけれども、正に我々の次の世代、今20代とか、あるいは10代とか、こういう人たちが私ぐらいの年齢になったときには、日本社会が活力を持って、世界からも尊敬される、憧れられるような、そういう国であるためにはどうしなくてはいけないということで取り組んでいる課題でありますので、しっかり丁寧に御説明をしていくことが非常に大事なことになるのではないかと思っております。
(問)関連質問なのですが、目の前の話としては、いわゆる与野党協議という呼びかけだとか、今後、与野党協議が動き出すタイミングに合わせて基本は党のほうが中心になるかと思うのですが、一体改革担当相としては、こういう与野党協議の呼びかけなり、与野党協議の段階でどのような関わり方が可能だと考えていらっしゃいますか。
(答)これは次の担当になられる方が基本的には考えられることだと思いますが、この社会保障・税一体改革というのは、多くの方が与野党を超えてやらなければいけないと考えている課題であることは間違いないと思います。しかし、そのことが政策よりも政局、そうした側面でなかなか協議の場に参加できない、参加していただけないというような状況があるのではないかというふうに見えております。ここは我々政治家がこうして今、国民の皆様方から議席をあずからせていただいて政治をやっていることの意味は何なのか、やはりそのことを一人一人政治家自身我々が問うていかなければいけないのではないかと思います。我々は何も政局をやるために国政に送り出していただいているわけではありません。国民の皆様方がやってほしいと思うような、やらなくてはいけないと思っているような政策を実現するためにこの国会の場に議席をいただいているのだと思います。一人一人の議員がしっかりそこのところをもう一度自分で認識ができるかどうか、このことは与野党を超えて必要なわけでありますから、私もどういう立場であれ、自分のおつき合いのあるような親しい人たちも含め、こうしたことの重要性、今申し上げたようなことをお伝えして、今こそ政治が本当に機能できるかどうか、今バッチをつけている我々政治家が本当に存在意義が問われているのだとしっかりお伝えしていく。その存在意義が問われていることに対してきちんと答えられるかどうか、それを本当に今、問うていかなくてはいけないのではないかと思いますし、どういう立場であれ、そうした問いかけは私も行ってまいりたいと思っております。
(問)今回の内閣改造というのは、問責を受けた2閣僚は交代しないと野党との協議、審議がなかなか進まないという状況の中で行われて、官房長官も、今回の改造は一体改革をより進めていくねらいがあるという趣旨のことをおっしゃっているんですが、大臣として、今回の内閣改造をするということ自体の受け止めというのをお聞かせいただけますか。
(答)内閣改造につきましては、総理の専権事項でございますので、特にコメントはございません。
 ただ1点だけ、やはり問責の問題でありますけれども、一昨年の菅政権のもとでの問責のときから、この問責のあり方については、識者を初め、こういう扱い方をするのが如何なものかという議論はあるわけであります。やはりここも、先程のお話ともつながるのですけれども、政治が機能していくためにはどうしたらいいのかということは、この機会に与野党共に胸襟を開いて考えていかないと、今の状況ですと、当分、参議院の与野党逆転の状況は続いていくわけであります。これは仮に選挙があって政権がもしかわるようなことがあっても、そうした状況は変わりません。そうした状況の中で、また、そのときの野党が問責を出してということですと、与野党が両方で自殺行為をしているということではないか。国民から見れば、一体政党は何をやっているのだ、政治は何をやっているのだと、これは本当にあきれて見られているのだと思います。自分たちで国会がきちんと機能するように、そして物事を決めていけるように、これは今の問題点は憲法の統治機構の問題まで遡るものだと思いますけれども、、様々今日本が直面している、そしてこれから直面するであろう問題は、一つ一つ政治がきちんと物事を決めていく、解決をしていく、政策を実行していく、そうしたことをやらなければ物事が前に進んでいきません。では、物事を前に進めるための仕組み、決め方というのはどういうものなのか、これが今、統治機構のあり方そのものが、従来の自民党支配の状況とは全く変わった状況の中でうまく機能しないような状況になっているわけでありますから、やはりそこはこの機会に、これもまた党派を問わず考えていって結論を出して新しい国会運営のルール、そういったものをつくっていこうと、将来的にはそれは憲法の改正も含めた議論に進んでいくべきだと思いますけれども、そうしたことを今やらなければいけないのではないかと個人的には思っております。
 どうもお世話になりましてありがとうございました。

(以上)