古川内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年12月21日

(平成23年12月21日(水) 16:32~16:51  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 まず、月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要を報告いたします。
 景気の基調判断は「東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、緩やかに持ち直している。」と先月と同様としております。これは、サプライチェーンの立て直しが進展するにつれ、景気への追加的なプラスの効果が薄らいできている中、海外景気の回復の弱まりなどにより、輸出が横ばいとなっていることなどから、我が国の生産の持ち直しテンポが緩やかになっていることなどを踏まえたものであります。
 先行きにつきましては、景気の緩やかな持ち直し傾向が続くことが期待されますが、欧州の政府債務危機などを背景とした海外景気の下振れや為替レート・株価の変動等によっては、景気が下振れするリスクが存在することに注意が必要であります。
 政府といたしましては、震災からの復興に全力で取り組むとともに、急速な円高の進行等による景気下振れリスクや産業空洞化リスクに先手を打って対処するため、「円高への総合的対応策」及び平成23年度第3次補正予算を迅速に実行してまいります。
 2点目でございます。本日第5回エネルギー・環境会議を開催いたしました。ポイントは、次に申し上げる3点でございます。
 まず第一に、石田副大臣が座長を務め、一昨日取りまとめました原発等の電源コストの検証結果を報告いたしました。このコスト検証の計算式等は公開をいたしておりまして、国民の皆様方が様々な前提や考え方のもとで試算を簡単に行っていただけるものであります。ホームページのほうでもアクセスができますので、皆様からも提案を広く受け付けて、更なる検証を行っていきたいと考えております。
 私は、従来から「行政にもイノベーションが必要だ」と申し上げておりまして、戦略室のメンバーにも「行政のイノベーションを考えるように」といつも言っておりますが、今回こうした形で国民の皆さんが自分たちでも数値を入れることによって計算ができる計算式等を公開したことは、今までの霞が関の行政からすれば、画期的なことであると思っております。
 是非皆様方もホームページにアクセスして、見ていただいて、また使っていただき、それぞれの視点から、この計算式を使っての検証等を行っていただければと思っております。
 第二に、来春の「戦略の選択肢」の提示に向け、コスト検証結果を軸に、原子力政策、エネルギーミックス、温暖化対策の3つの基本方針を定めました。この基本方針に基づきまして、原子力委員会、総合資源エネルギー調査会、中央環境審議会等で選択肢の原案を検討いただき、来春、エネルギー・環境会議で複数の選択肢を提示したいと思います。その上で、国民的な議論を深め来年の夏をめどに戦略を完成させたいと思います。
 これらの検討と並行し、エネルギー・環境会議では、グリーン成長戦略の検討を進めてまいります。戦略の再構築によりまして、低炭素型の社会・産業構造への転換がどう進み、雇用・成長・新技術を生み出す新たなエネルギー・環境産業の拡大がどう見込めるかを明らかにし、日本の再生、そして世界の課題解決につなげてまいりたいと思います。
 第三に、当面の電力需給対策として、11月に取りまとめた規制・制度改革アクションプランの進捗状況の確認を行い、取組の先頭に立っていただいている所管の大臣から、それぞれの進捗状況、今後の方向性を表明していただきました。23年度中に更に具体化し、電力需給の安定に万全を尽くしてまいりたいと考えております。
 私からの冒頭の御報告は、以上でございます。

2.質疑応答

(問)今月の月例経済報告では、先行きについて、先月は「景気の持ち直し傾向が続くことが期待される」とあったのが「緩やかな持ち直し傾向」ということで、回復ペースが鈍化すると見込まれていますけれども、今後これを超えて、景気が踊り場、いわゆる足踏み状態になる懸念はないのかどうか。また、そういう懸念があるとしたら、それを防ぐためにどのようなことを考えていらっしゃるか、まずそのお考えをお伺いします。
(答)景気の現状の判断につきましては、これは先月と同様でありまして、あくまでも現状維持であります。
 一方で、先行きにつきましては、これはサプライチェーンの立て直しによる景気への追加的なプラスの効果が一巡することなどから、当分の間、持ち直しペースは緩やかな状況が続くものと見ております。
 また、先ほども冒頭でも申し上げましたが、欧州の政府債務危機などを背景とした海外景気の下振れリスクや、また為替レート・株価の変動等によりましては、景気が下振れするリスクが存在しておりますので、そうした状況を考えますと、引き続き警戒感をもって景気の動向を注視してまいりたいと考えております。
(問)間もなく来年度当初予算が閣議決定されますけれども、今後、景気の下支えをするための予算として、どのような予算にしていきたいかというお考えは。
(答)これは国家戦略会議のほうでも議論しておりまして、さきに予算関係の閣僚委員会でも決まりました来年度の予算の基本方針におきましても、来年は「日本再生元年」にしていくとしております。震災からの復興、そして福島原発事故の収束、それに向けての除染作業をはじめとするそうした取組、更には、食と農林水産業の再生の集中的取組の5年間の初年度でもございます。
 また、再生可能エネルギーを中心とした、新たなエネルギー産業の応援をしていく。そうした、新しい日本再生に向けてのもろもろの取組を来年度予算で大きく後押しをしていく、そしてそれをリードしていく、そうしたものの今、最終的な局面に来ております。
 来年の予算が日本再生を実現する、そうした大きな原動力となるようにしていきたいというふうに思っております。
(問)今日、日銀の金融政策決定会合の景気の現状判断で、「持ち直しのペースが緩やか」というものから「持ち直しの動きが一服」というものに、2カ月続けて下方修正しておりますけれども、これについて日銀と政府の間の景気認識というのは、若干異なるのかどうかという点をお願いします。
(答)日銀の景気認識につきましては、明日公表の金融経済月報で詳細に示されると承知いたしておりますけれども、政府と日銀における我が国経済の現状及び先行きについての見方は、総じて一致していると理解いたしております。
 事実、今日行われました月例経済報告関係閣僚会議に御出席いただきました日銀の西村副総裁からも、経済・物価の見方につきまして、政府と日本銀行で方向性は一致しているという御発言があったところであります。
 いずれにしても、我が国経済の置かれた状況の厳しさは変わりがない。そういったところについても、政府・日銀の認識は一致いたしておりますから、お互いにしっかり連携をとって、引き続き景気の動向には警戒感を持って注視をしてまいりたいというふうに思っております。
(問)月例と直接の関係はないかもしれないのですが、先ほど格付投資情報センターが、日本の国債の格付を「AAA」から「AA+」と引き下げたのですけれども、その理由として、野田政権の財政構造改革が進んでいないということを挙げているようなのですが、これに対する大臣の受け止めと、市場に対する信任を勝ち取るために何が必要なのか、お考えをお聞かせください。
(答)個別の格付会社について、コメントすることはいたしません。
 しかし、やはり今の日本の財政の置かれた状況を考えれば、昨年の6月にまとめた財政運営戦略をきちんと実行に移していく。そのための一里塚でもあります社会保障と税の一体改革にしっかり取り組んでいくということが極めて重要だと思います。
 この6月に取りまとめた成案を、年内をめどに素案に具体化をしていく作業をしっかりと行っていくということが、市場の信認をきちんと維持するためにも重要なことだというふうに考えております。
(問)エネルギー・環境会議の基本方針の概要版の11ページの「選択肢の提示に向けた基本的な姿勢」のところで、「大きな方向性として共有されつつある原発への依存度低減」とありますが、これを読むと、いわゆる一定程度原発を残すということも、今春の選択肢を示すというところに含まれるのではないかというふうにとれるのですが、そこの点についてどのように考えていらっしゃるのかが1点。
 もう一つ、これまで「エネルギーベストミックス」という表現だったのですが、すべて「エネルギーミックス」と変わっております。それについての真意をお願いします。
(答)1点目については、この基本姿勢①のところにあるとおり、「『白紙からの見直し』という原点に立ち帰り」とあります。そういった意味では、これは、あらゆる前提というものを排して白紙から見直すという姿勢には変わりはありません。
 2点目のところでありますが、「エネルギーミックス」という言葉にいたしましたことにつきましては様々、特に総合エネ調の中でも、色々この言葉遣い等についても議論があったということを私も仄聞をいたしております。そうしたことも含めて、これはエネルギーミックスという言葉を使ったほうがいいのではないかということで、これは総合エネ調などの議論を踏まえて、エネルギーミックスという言葉に統一をさせていただいたということであります。
(問)要するに、「エネルギーミックス」と「エネルギーベストミックス」は、どう違うのですか。
(答)これは、識者によって様々言われる方があるそうでありますが、ベストミックスというと、主観的な価値観というものが入る可能性があるわけでありますが、エネルギーミックス、好ましいエネルギーミックスという言葉には、何がベストかという価値観がなくなります、そういう意見も総合エネ調の中ではあったという話を仄聞いたしておりまして、そういう価値観を排した「エネルギーミックス」という言葉を使うということにさせていただいたというところであります。
(問)大臣が先ほどおっしゃった3つの基本方針のうちの、原子力政策に関する選択肢の提示、ページ数でいうと概要版では12ページになるのですが、2つ目に中長期的な原子力政策のあり方について言及されているのですけれども、「安全、環境、エネルギー安全保障、経済性などの論点を整理した上で」と書いてあるのですが、この「安全」から「経済性」までの4つ、安全のほうが優先順位が高いということなのか、それともこれはそれぞれ並立して、同じ価値を持っていると考えてこう書かれているのかということを確認させてください。
 あとは、原子力の中長期の原子力政策というのは、中長期の時間軸はどのくらいのことを考えていらっしゃるか。この2点を教えてください。
(答)これについては、基本的に担当大臣の細野大臣のところで詳しくは聞いていただくのが結構だと思いますが、少なくとも、ここに提示してある論点、「安全」、「環境」、「エネルギー安全保障」、「経済性」とありますが「など」という言葉もあります。これは別に、この4つにとどまるわけでもありませんし、それぞれの論点ごとに、こちらが大事でこちらが大事でないとか、そういう価値判断を持つものではない。
 あくまで、これは先ほども申し上げましたけれども、あらゆることをゼロベースでということでありますから、ゼロベースで議論する上でも、ではどういう論点を議論していかないといけないかというところは、これまでの議論の中でかなり論点整理がされてきたわけであります。
 その論点として挙がってきたものについては、どの論点についてもイーブンの考え方で、これから選択肢提示に向けての議論を行っていくことになろうかと思っております。
(問)先ほどの質問の中で回答されなかったのですけれども、中長期というのはどのぐらいの話かということと、原発の再稼働なのですが、短期的に見ると、このまま原発が動かないままでいくと、春先にはもう原発がゼロになってしまうという状況なのですけれども、それはちょっと幾ら何でも現実的に難しいだろうということで、短期的には原発の再稼働を目指していくのだということを大前提として考えているのかどうか、そのあたりをお聞かせください。
(答)中長期についてどういう形でいくかについては、まさにこれも細野大臣のところで、あるいは枝野大臣のところで議論をしていただいて、そういうものを受けていくということでありますから、今のところで何か具体的な年数とか、そういうものが決まっているわけではございません。
 2点目のところは、繰り返しになりますけれども、すべてのことについて、これはゼロベース、白紙で考えるということでありますから、原発についても再稼働ありきとか、そういうことではありません。やはりそこについては、しっかりと安全性や、あるいは地元の住民の皆様方の理解、そして様々な問題もあるわけであります。あらゆる予断を排して、そうした状況の中でどうエネルギーの安定供給を確保していくのかということを考えていかなければいけないと思っております。
(問)春先までに選択肢を策定するということなのですけれども、例えば選択肢といったときに、2020年なのか2030年なのか、あるいは例えば原子力は何%にするとか、そういうところまで具体的なものを考えていらっしゃるのか。そのときに、例えばどういうハードルがあるとか、そこまで詳しい内容を春先までにまとめられるおつもりかどうか。つまり年限と、どのような具体的な形のイメージを持っていらっしゃるのか、教えてください。
(答)今回、基本的な方向性、方針と、そして議論の論点というものの整理がされました。そこに基づいて、これから春に向けて、選択肢の議論に入っていくわけでございます。
 したがって、今の時点で選択肢の具体的な中身について、何かの予断をもって、こういう方向とかこういう中身ということを考えているわけではなくて、今回示された方針と論点整理の下で議論をする結果として、3月の末に選択肢を示していくということにしていきたいと思っております。

(以上)