古川内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年9月2日

(平成23年9月2日(金) 22:35~23:01  於:内閣府本府5階522会見室)

1.発言要旨

 大変お待たせいたしました。このたび国家戦略担当大臣、経済財政政策、科学技術政策担当の内閣府特命担当大臣、更には社会保障・税一体改革担当大臣、宇宙開発担当大臣を拝命いたしました古川元久でございます。その他に知的財産戦略、IT政策、そして遺棄化学兵器処理、日本学術会議なども担当させていただきますので、よろしくお願いを申し上げます。
 先ほどの官邸での記者会見でも少し申し上げましたが、私は、安心なくして成長なし、成長なくして復興なし、復興なくして日本の再生なしと、そうした考え方に立って社会保障と税の一体改革、そして新成長戦略、更には財政運営戦略、私自身もこれまでまとめてきたものを一つ一つ着実に実行していく。そのことによって、国民の皆さん方が安心出来る社会保障の環境をつくり、更には復興の過程でまた新しい成長を実現していく。そのことによって、経済成長と、そして復興を同時に成し遂げていく。そうした復興の過程を通じて、新しい日本の姿、新しい日本の経済社会の姿を是非実現していく。そのことが被災地の皆様方に対して夢を与えていくことになると思いますし、そのことがまた復興につながると思いますし、そして被災地がそうした新しい日本の姿を復興の過程で実現していくことが、それがまた日本の再生にもつながっていく。そうした考え方の下、大変大きな重い課題を背負うことになりましたが、全力で当たってまいりたいと思いますので、皆様方のまた御指導、御鞭撻を賜りますように、よろしくお願い申し上げます。
 私からは以上でございます。

2.質疑応答

(問)国家戦略室なのですけれども、大臣はどのように今後強化、機能強化を図っていこうと思われているのか。御自身の独自のアイデアとか何かあれば。これまでこういうところが足りなかったので、こういうふうにしてみたいなとか、お考えがあれば教えてください。
(答)国家戦略室は、私自身が最初の戦略室長として、部屋のレイアウトから、それこそ机や椅子を調達するところから、人もちょっと来てくれということで呼んで、そういう思いで菅前総理とともに立ち上げた部屋でございます。そういった意味では、大変、私も思い入れがあるところでございます。
 この国家戦略室につきましては、やはり何といってもマニフェストでお約束をした、まさに官邸主導、政治主導の司令塔としての機能を果たす。そのためにもこの国家戦略室、今、総理大臣決定になっておりますけれども、局に格上げをして、そして体制、法律的な根拠もしっかりつけた上で、体制を様々な形で強化をしていくそうしたことを考えていたわけでございますが、御承知のように、今の政治状況の中で、残念ながら今法案が取り下げられてしまっているという状況であるわけであります。是非私はもう一度、ここは是非国家戦略局に格上げになるような形というものを目指していきたいと思っています。
 同時に、この省庁の縦割りを超えた総理の懐刀であり、また官邸主導の司令塔になる国家戦略局が存在するということは、今後どういう政党が政権を担うに当たっても、やはり私は必要なことではないかと思います。そういった意味では、この国家戦略室を機能強化、局への格上げも含め考えていく中で、是非ともこれは野党の皆さんにも御理解をいただけるような形というものを目指していきたいと思っております。
 特に、国家戦略室時代にも実は少し議論しておったのですが、外の人たちの御意見もオープンな形で伺うような形の会議体をつくってはどうかという検討も、実は私が室長時代にもしておりました。この今の日本の危機的な状況というのは一部の人たちの知恵だけではなくて、衆知を集めて、日本の衆知を集めて乗り越えていかなければいけない。そういう衆知が集まるような仕組みというものを是非私自身も考えてみたい。この点につきましては、国家戦略室の今後のあり方については、前任の玄葉大臣や、また総理とも御相談をさせていただいて進めていきたいというふうに思っております。
(問)今のお話に関連すると思うのですが、これまで内閣府でいいますと、経済情勢に関する検討会合とか、その他経済に関する会議体がありまして、総理もその辺を集約していくというようなお考えを示していたと思うのですけれども、その辺、大臣はイメージをお持ちでいらっしゃるか。また今後のスケジュールとか、会議体制の仕組みづくりに向けてのスケジュールをどのようにお考えかということが1つと、もう1つは、今回、国家戦略、経済財政、社会保障改革という3つの担当を持たれることになりますが、その3つを兼務されることの意義をどのようにお考えかということをお願いします。
(答)まず1点目につきましては、今日、総理とも少しお話をさせていただきましたけれども、指示書をいただくときに、まさに経済財政について、幅広く様々な意見交換をし、またそこで意思決定をすると、そうした仕組みというのを総理もお考えになっているようであります。それで、国家戦略室のあり方も含め、この点についてはまた議論しましょうということになりましたので、これについては総理、そしてまた先ほどもお話し申し上げましたが、前任の玄葉大臣などにもお話を伺いながら、最終的には総理と協議の上、何らかの方向性を出来るだけ早い段階で打ち出せるような努力をしたいと思っております。
 私個人といたしましては、例えば国家戦略会議のような会議体を設けて、政治家だけでなく、民間の方も交えたようなものも、一つのあり方としてはあるのではないかなと思いますが、いずれにせよこの点については、しっかりと総理とも御相談をさせていただきたいと思っております。
 2点目については、確かに大変に重い仕事であることは事実であります。ただ同時に、実は私自身この3つのものに、この2年間政府の中で、また党の中で取り組んでまいりました。この3つの問題というのは、非常に密接に関連をいたしておりまして、全体を1人の担当で見るということによって、それぞれのバランスというものがとれるということはあるのではないかと思います。そういった意味では、大変な重責でありますが、多くの方々の御協力をいただきながら、それぞれのところについてさまざまな知見を集めていきながら、最終的にはこの3つのバランスや全体的なところは、私のところで責任を持って判断をさせていただく。そうした形をとらせていただきたいと思いますし、そうしたことが出来るという意味では、兼任をしているということは意味があるのではないかというふうに思います。
(問)科学技術担当大臣として、科学技術イノベーション戦略本部、マニフェスト、政策集にも書かれているのですが、昨日、玄葉大臣が有識者会合で、政治的に一定の目途をつけたというふうな話をしたのですが、戦略本部の設立に向けてどういうイメージを持たれているのかが1点。
 もう1つ、古川大臣が副大臣時代に国立研究開発機関の報告書をまとめて、新しい法人のあり方を提言したのですが、その後、あまり進んでいないのですけれども、新しい研究開発法人のあり方について、どういうスケジュールで進めようと考えているか。
(答)1点目につきまして、党のほうで科学技術の調査会も出来まして、私も事務局長をやっておりました。そこでの提言をまとめて、政府のほうに提言をさせていただき、それを踏まえて玄葉大臣中心に議論をされて、一定の方向性が出てきていると伺っておりますので、そうしたものを私も確認をさせていただいて、それを前に進めていくように努力をしていきたいと思っています。
 2点目の研究開発法人のところにつきましては、これは今、研究開発法人がある中で、必ずしもあの中間取りまとめで考えているような研究開発法人にするのが良いというものでないものも混じっておりまして、やはり今研究開発法人と言われているものの中身をよく精査して、仕分けをしていかなければいけないだろう。そして、まさにあの中間取りまとめで、基金化をするとか、非常に研究者にとって使いやすい形にする、運営が出来るようにすると、そうしたものに本当に適している法人については新しい形にする。
 しかし、そうでないものについては、これはやはりちゃんとスクリーニングをしなければいけないと思っています。そのスクリーニングをする仕分けの過程というのは、独法の改革、これは行政刷新のほうで進んでいると認識しておりますが、そうした改革、方針を進めていただくということが、まず大事ではないかと思っています。同時に、それはそれといたしまして、この中間取りまとめでまとめた方向性というもの、こちらはこちらでスクリーニングしたものをどうするのかということについては、またこれからもう少し進めていきたい。そういった意味では、こちらの新たな研究開発法人になるものの中身をもう少し精査していくと、詰めて具体化していくということと、同時にこちらの今あるものをどう仕分けしていくか、このことをいわば車の両輪のような形でこれから進めていかなければいけないのではないかと思っております。
(問)先ほどの官邸での会見で、円高対策に絡んで、日銀の金融緩和に踏み込むような発言をされましたけれども、これは大臣、日銀の現状の金融緩和策がまだ不十分だという認識なのか、それとも一般論としての金融緩和要素なのか。
(答)私は、この状況の中で、各国が金融緩和政策をとっていることによりまして、比較の問題で言いますと、日本との金利差が縮まっていることがやはり円高の一つの要因ということも言えるのではないかというふうに思います。そういった意味では、やはり日銀においては、更なる金融緩和というものを検討する余地はあるのではないかと考えておりまして、是非その点は、日銀の独立性というものは勿論しっかり尊重していかなければいけないと思っていますが、しっかり政府としての考え方はお伝えをしていく。そして、緊密に意見交換をしていくということはしていかなければいけないのではないかと思っております。
(問)もう1点、税と社会保障の一体改革の担当相も兼務されておりますが、スケジュールでは、8月から与野党協議を開始するとなっていますが、全く展望がつかない状況ですけれども、野党にどのような形で協力を求めていくのか、それについてのお考えを。
(答)これは野田総理からも対話の政治というお話がありましたが、やはり協議の場、同じテーブルに着いていただくためには、野党の皆さんの信頼を獲得していかなければいけないと思っております。私が前、内閣にいましたときも、常にそういった意味では野党の皆さんも協議に乗りやすいような、できるだけハードルは低い形の提案をまとめさせていただきました。例えば新年金制度に関する7原則であるとか、今回の社会保障・税の一体改革の提案も、これまでの自公政権でまとめたものも叩き台にしながら、そこに我々の考え方をのせていくというような形でまとめたものでありますので、そういった意味では議論の叩き台としては、かなり我々としては野党の皆さんにも配慮したつもりであります。
 しかし、それは相手があることでありますから、今後粘り強く野党の皆さんにも、我々はこれでなければ駄目だということでなくて、これを叩き台として、そこで同じ場で議論しようではないですかと、そういうことを訴えていきたいと思っております。
 とにかく私もずっと社会保障の問題、議員になってから一貫して取り組んでまいりましたが、これまで社会保障は政争の具になってきて、私なども思い出しますと、一番実は国会で乱闘になるのは、厚生委員会か厚生労働委員会なのですね。あまり他の委員会で乱闘になることはなくて、大体、混乱するのは厚生委員会か厚生労働委員会です。そういった意味では、私のような武闘派でない者にとってはなかなかですね、いつ、それこそ眼鏡を飛ばされるか分からないみたいな、そういう恐怖を何度も感じたことがあります。
 しかし、こういう社会保障の問題が政争の具となってきたことが、今の社会保障制度にはほころびがあちこちに見られているにもかかわらず、抜本改革が進まなかった最大の理由ではないかと思います。そのことは、実はこれは与野党ともに社会保障の問題にかかわっている人たちは、認識を共有していると思います。そういった意味では、やはりここはもうこれだけ社会保障の問題をめぐってお互い政争するようなことが続いてきたわけでありますが、そろそろそうしたものにもノーサイドで、やはり一緒になって抜本改革を一歩でも進めていくと、一歩ずつ進めていくということをしていかないと、私は、本当に与党・野党ではなくて、政治全体に対する信頼がますます失われてしまうことになるのではないかと思います。そのことの被害者は、やはり国民の皆さんになってしまいます。そういった意味でも、やはり一番国民の皆さん方が求めている安心出来る社会保障制度の構築、このことについては与党・野党を問わず、政争の具とせず、一歩でも前に抜本改革を進めていくと、そうした思いで私も野党の皆さん方に丁寧にお願い、そしてまた説得を続ける努力をしたいというふうに思っています。
(問)すみません1点、野田新総理は、財政規律の考え方とともに、成長という考え方を打ち出しています。また、経済界のほうからも、実体経済の下支えという考え方よりも、成長戦略を何とかしてほしいという声が大きく上がっていますが、大臣御自身、今具体的に何が問題で、具体的にこうしたらいいという何か具体的な策があったら、ちょっとその辺の考えをお聞かせください。
(答)先ほどもちょっと冒頭で申し上げましたが、私は、日本がやるべきこと、新成長戦略で掲げたグリーン・イノベーションやライフ・イノベーションなど、成長戦略で掲げた項目をまず先進的に先取りするような形で被災地の復興の過程で、思い切った形で適用していくということが必要ではないかと思います。また特区なども、私も国際戦略特区などの立案にかかわって、あれでも役所の人たちにすると、担当の審議官に、私は役人生活35年間やっていてこんなことが出来できたのは初めてですと言って感動していただきましたけれども、しかしそれでも、やっぱりあの程度で終わってしまっているのですね。
 ですから、例えば特区制度なんかで言えば、これは日本の中で考えるのではなくて、世界の中で見ても、ほかの国の特区に引けをとらないぐらいの、そうした中身でなければならないのだと思います。私は、今の日本の経済をもう一度活力あるものにしていくためには、ともすると非常に様々な不安があって内向きになりがちなわけでありますけれども、しかしだからこそ、今こそ外に目を向けて、世界がどうなっているのかを見て、そして世界で成長している、元気がある、そうしたところに学ぶところは学ぶ。私は貪欲にそうしたことを、今までの日本の仕組みや慣行であれば無理であるとか、あるいはそれに比べれば良いとか、そういう自分たちの過去と比較をするのではなくて、世界の様々な国がとっている成長政策や戦略、そういったものと比較をしてでも引けをとらない、遜色のない政策を思い切ってとっていくべきだと思いますし、いかなければならないと思います。やはりそこにしか私は日本の再生、それはひいては被災地の復興ということにつながるわけでありますが、そういうことは実現できないのではないかと、そういう思いであります。
(問)すみません、2点あるのですけれども、先ほど国家戦略会議というお話がありまして、その前に、衆知が集まるような仕組みを考えたいと仰ったのですけれども、これは同じものを指しているのでしょうか。その衆知が集まるような仕組みというのが、この国家戦略会議という理解でよろしいのでしょうか。
(答)例えばということでありますけれども、どうした仕組みが良いか、そこはこれまでの戦略室の運営の中でも、様々なところで外部の皆さん方の色々な意見も聞いてまいりましたけれども、そうした見えない形ではなくて、むしろそこは開かれた形で外の皆さんにも、そこに集まっている人たちがどういう議論をしているのか見えるような形で議論することが、衆知を、色々な知恵を集めることにもつながると思いますので、形は先ほど申し上げたように総理とも御相談させていただかなければいけないと思っていますけれども、何らかそういうような仕組みというものはできないかなというふうに考えております。
(問)それは、かつて自公政権のときにあった経済財政諮問会議のようなものとは全く性格が違うものですか。
(答)経済財政諮問会議は、私はそれなりの役割を果たしてきた面もあると思います。ですから、これが全く違うものなのか、あるいは似ているところがあるのか、そういったこともこれから議論する中で形を考えていきたいというふうに思っております。いずれにしても、ここは国家戦略室を機能強化して、縦割りの弊害を打破して、国家戦略室、将来的には出来るだけ早い段階で局への格上げができるような法改正も私はもう一度チャレンジしたいと思っておりますけれども、そこに向けて案を練っていきたいと思っております。
(問)もう1点なのですけれども、TPPの交渉参加の是非に関する結論については、全体像というものを取りまとめて、当面先送りされている形になっているわけですが、新政権で今後、国家戦略担当大臣としてどのように議論を進められて、いつ頃までに結論を出すお考えなのかをお聞かせください。
(答)私は、日本が高いレベルの経済連携を推進していくことが不可欠なことであるという認識に立っております。そうした点では、このTPPのみならず、日EU、EPA交渉の早期開始や日中韓のFTAの共同研究の年内終了や来年の交渉開始合意や、日豪EPAの交渉推進、また日韓の止まっておりますEPA交渉の早期再開、そうしたものに向けて積極的に取り組んでまいりたいと思っています。そういう中の一つとしてTPPについても、これは様々な意見がございます。特に被災地の農業の復興などにも関係しておりますから、そうした声にも十分配慮しつつ、今このTPPについての国際交渉の状況はどうなっているか、そういう情報の収集などもしておりますので、そうした情報収集を続けるとともに、国内の産業空洞化の懸念、そうしたものもしっかり配慮して、しっかり議論をして、そして協定交渉参加の判断時期については、総合的に検討した上で、出来るだけ早期に判断出来るように努力をしていきたいと思っております。

(以上)