細野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年8月30日

(平成23年8月30日(火) 10:31~10:55  於:第4合同庁舎6階605会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。先程、菅内閣最後の閣議がございまして総辞職をいたしました。
 次の内閣が誕生するまでの間は危機管理の側面もありますので、職務執行上の役割を果たさなければなりません。したがいまして、ほぼ様々な私が抱えるべき仕事を引き継げる準備は終わっておりますけれども、いろいろな事態に備えてしっかりと準備をしておくというか、常に動けるようにだけはしておきたいと思っております。
 1点、御報告を申し上げます。
 それは、懸案となっておりました原子力損害賠償支援機構の理事長として杉山武彦氏、一橋大学の前学長でございますが、この方を内定をいたしまして、本日この支援機構の設立を認可をいたしました。私も今朝方お会いをいたしましたけれども、非常に学識ともに非常に優れた方でございますので、大事な支援機構ですので、しっかりと理事長として引っ張っていってくれるものというふうに考えております。
 今般、理事長が内定をいたしましたので、今後、所要の手続をより加速化をいたしまして、早期に機構を発足させることとしたいと考えております。それによって原子力事故の被害者が迅速に賠償を受けられるようになることを期待しております。
 幾つか私のこの8月の恐らく今日であるだろうと考えておりました任期内でやっておきたいなと思っていたことがございました。その多くは先週終了いたしました。具体的には、例えば除染の様々な現地や政府内の組織の立ち上げ、さらには原子力安全の新しい組織の準備室の立ち上げ、それらはかなり苦しい日程ではございましたけれども、とにかく実現をしなければならないということで、何とか先週全て終わっておりました。この機構の理事長だけがどうしてもなかなか最終、固まらなかったわけですが、最後にいい方に理事長に就いていただくということが決定いたしましたので、当面の課題という意味ではこれをもって一応の区切りがついたかなと思っております。
 依然として原発の事故も、さらには様々な新しい組織の在り方も懸案は山積でございますので、そこはしっかりと次の体制に引き継げるように私もそこは万全を期していきたいと思っております。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)日本経済新聞の福士と申します。賠償機構の発足時期について、先程早期に発足したいというお話がありましたけれども、具体的にいつぐらいの時期にと考えていらっしゃいますでしょうか。
(答)今日設立の認可を担当の大臣としていたしましたので、あとは手続的な問題に入ってまいります。具体的には出資金を払い込んだ上で機構を登記しなければなりませんので、その発足までにおよそ1週間程度要する見込みということでございます。ですので、あとは手続的な問題ですので、それが終了した時点で設立が正式に認められるということになっています。
(問)来週中には。
(答)そうですね。今から1週間ですから、今週はまだ火曜日ですから、来週中にはできるんじゃないかと思っています。
(問)朝日新聞の関根と申します。昨日民主党の代表選が終わりました。野田さんが新しい代表に選ばれましたけれども、課題となっている挙党態勢をどういうふうに築いていくかという上で野田代表に望む幹事長人事も含めて、そういう人事の在り方について、どうあるべきかということについて御所見があればお願いします。
(答)ここは大臣会見ですからあまりそのことについて言及することが相応しい場所だとは思いませんが、人事というのは本当に難しいですよね。私も─自分はもちろん人事権者になったことはありませんけれども、いろいろなことでお手伝いをしたことはありますので、非常に難しい判断であるというふうに思っています。ですから、そこは勿論挙党態勢というのは作っていかなければなりませんけれども、個別の人事については、これはとにかく総理になられる方が本当にしっかり考えた上で御判断をされると。私のような者があまりああでもない、こうでもないということは、あまりというか、絶対にいい影響は及ぼしませんので、総理の判断をしっかり見守って、その総理の判断の下で全員でまとまっていく、これに尽きるんじゃないでしょうか。
(問)日本テレビの福井です。大臣会見でということなので、新しい内閣に望む、原発担当大臣として望むことをお聞きしたくて、まず事故収束の観点から、そして再発防止の観点から、それぞれどのようなことを期待されますか。
(答)そうですね。その辺りはこれまで言ってきたことに尽きていると思っております。つまり、例えば事故の収束であれば、冷却機能をより安定化をさせて、滞留水を下げて、そして冷却水のこの量を変えることで、どれぐらい炉内の温度が下がるかというのをしっかり見なければなりません。それを見た上で適切に注水量を調整をして冷温停止まで持っていくということですね。その先に中期的な課題がありますから、それを廃炉まで至るかなり長いプロセスになります。そこを私がずっと悩みながら、なかなかまだ方向性を出すことができていない。これは時期的な問題もありまして、ステップ1からステップ2に至るところは現体制でやることのほうがむしろ政府と東京電力の役割分担として望ましいと思ってきたので、あえて判断をしてこなかったんですが、廃炉に至るプロセスの中で今の体制の中でそこまで行くのか。それとも何らかの仕組みを考えていくべきなのか。その辺りが恐らく一番難しい判断になってくると思います。
 再発防止は、ほぼ方向性は出しました。あとは具体的にしっかりとした安全規制が作れるかどうかという、そこにかかっていますので、ここからは事務方の皆さんにもやはり頑張ってもらわなきゃならないと思うんです。そういう体制ができましたので、あとはその方向性に違わぬようにしっかりやっているかどうかを担当大臣は常に方向性を明確にした上で確認をしていくということが重要ではないかと思います。
(問)TBSの峠田です。よろしくお願いします。次のということなんですが、原発担当大臣というのは継続性が必要だと思われますし、地元でも頻繁に替わるということはあまりいいイメージは持たないと思いますが、大臣としての立場でこの次の内閣でも続けたいという御意思はあるんでしょうか。
(答)人事は総理がお決めになることですので、新しい体制ということになれば新しい人がやるというのが基本だというふうに思っています。私も大体このぐらいの日程でというのは分かっておりましたので、引き継ぎに向けて準備も進めてまいりまして、引き継げる体制になっております。勿論、原発の問題、特に福島の皆さんに御心配をおかけをするわけにもいきませんから、今御指摘のような懸念が現実になることがないように、そこは最大限の今の担当大臣としての配慮はしていきたいと思います。
(問)毎日新聞の足立と申します。先程の質問で廃炉措置の関係で、今の体制でそこまで行くのか、仕組みを考えていくべきかとおっしゃったのをもうちょっと具体的に説明をして、何のことを指しているのか教えていただきたいのと、あとそれから再発防止の観点で、今回情報がスピーディーに情報、透明性とか、スピーディーに流れるかというのが非常に懸念、問題になったと思うんですが、その辺というのはどこで担保、再発防止についての方向性を出したというふうにおっしゃっていたんですが、その辺はどこで保たれるようになるんでしょうか。
(答)まず1点目は、現段階で私が言えるのはそこまでなので、そういう若干あいまいな表現を申し上げているので、これ以上踏み込むということは具体的な体制の在り方について私がサジェスチョンすることになりますので、それはもう今日総辞職した人間としてさすがに控えたいというふうに思います。勿論、いろいろこの問題ばかり近くでやってきましたから感ずることはありますので、それは新しい大臣にしっかりお伝えをしたいと思います。
 もう一点、情報開示の問題なんですが、私もこれまで担当してきましたので、この6カ月の情報開示の在り方については私自身の反省も含めていろいろな思いがあります。もちろん、私のところで情報を隠したということはありませんが、なぜ─例えばSPEEDIの情報などがきちんと官邸に上がって公開できなかったのかとか、保安院と東京電力の間でも様々な情報のやりとりが、先日も津波の高さの問題がようやく8月になって出てきたと、そういうことがありましたけれども、ああいったことについては国民の皆さんが懸念を持たれる、疑念を持たれるのは非常に問題だというふうに思っています。やはり新しい安全機関というのは推進側としっかりとやはりそこは分けていくということが要するに安全サイドに立って全てを考えていく機関になるわけですから、極めて重要であると思っています。あとは情報開示というのは、多分に組織の文化的な側面がありますね。これはSPEEDIを情報開示が遅れたそういう部署についても言えますし、保安院についても言えます。その辺の情報に対する文化を変えていくというのも非常に重要になってくると思います。それは一筋縄ではなかなかいきませんから、新しい組織をつくる中でトップにどういった人を据えるのかとか、その中でのそういう文化を徹底する教育の仕組みをどうするのかとか、何か制度を変えたら全て解決するということでは必ずしもないと思いますので、総合的に対応して、新しい組織は今おっしゃったようなことがないようにやっていかなければならないと考えています。
(問)読売新聞の山下と申します。新機構の人事なんですけれども、大分当初よりも人事の決定がずれ込んだと思うんですが、どういう理由でここまでずれ込んだかということと、政府の中には企業経営者がいいんじゃないかという意見があったと思うんですけれども、原子力という特殊な分野を管轄するわけですけれども、運輸が専門の先生だと伺ったんですが、そういう部分で実務面での不安とかはいかがでしょうか。
(答)8月中にはということを言っておりましたので、確かにぎりぎりにはなってしまったんですけれども、ずれ込んだということでも必ずしもないんですね。この杉山理事長ですけれども、運輸部門で様々な確かに専門的な知見は有しておられる方でありますけれども、電力というのもインフラ産業でありますし、公共経済学全体の元々御専門ですから、そういった御専門をしっかり活かしていただけるのではないかというふうに思っています。そして、理事長の大きな役割は、機構というのは非常に大きなお金を扱いますし、政府の様々な例えば税金との関わりにおいても重要な役割を担います。ですから、国民から見たときに疑念を持たれない、そういうしっかりとした客観的かつ公正な判断をいただけるという、その辺りが重要であると考えてまいりました。したがいまして、経営者というのも勿論一つの候補の一つということにはなるわけですけれども、経営者となってくると、例えば東京電力との関係なんかは非常にこれは難しい問題があるわけですね。御本人としては立派な方であったとしても、そことの密接な利害があるというような観点でいくと、そういう疑念を国民から持たれかねないという問題があるわけです。そういった意味では学者の中でそういったことについて疑念を持たれない。しかも大局的な判断ができる方ということであれば、それは好ましい人選ではないかというふうに私は考えてまいりました。ですから、いろいろな要因を総合的に考えて、この杉山理事長に決定をしたものです。
(問)たしか機構の設立は8月中という話を最初にたしか……。
(答)あと手続的なところが残ったのは事実ですけれども、なぜ8月中かと言っていたかというと、例えば賠償そのものに何らかの支障が生じたり、機構の立ち上がりがいつになるか分からないということで様々なそれこそ賠償の現場に混乱が生じたり、そのことを避けたかったわけです。ですから、実質的に今日の認可をもって機構が設立をされるということは確実になったわけですから、その懸念が払拭できたという意味で当初私が申し上げていたことが実現したのではないかというふうに考えています。
 ですから、8月中に全ての手続が終わらないと何か滞るとかということではありません。その大きな枠組みそのものが確実にスタートするということが確認をできたということをもって当初の目的は達成したというふうに思います。
(問)TBSの岩田と申します。内閣の一員としての仕事を一旦終えられるということになるんですけれども、今の率直なお気持ちをお聞かせいただけますか。
(答)そうですね。2か月という短い期間でしたけれども、私としてはこの2か月というよりはその前の3月11日からの6か月という、そんなイメージでどうしてもおるんですね。ですから、この6か月本当に実にいろいろなことがありましたし、その時々、非常に重い判断をしなければならない立場でやってまいりました。常に自問してきたのは、国民にとってそれが判断として正しいかどうか。絶対にこの様々な判断において「私」を差し挟んではいけないと。常にそのことだけを考えてやってきました。ですから、全ての判断において私は自分には恥じない判断をしてきたというふうに思っています。全体として非常に厳しい御評価を菅内閣としていただいていることは非常にこれは残念ですし、そういった意味で十分ではなかったことが沢山あったんだろうというふうに思っています。ですから、まだ事故そのものが原発の場合には収束をしていませんので、それが収束が終わった段階で総合的にそれをどう評価するのかというのは改めて私自身も考えていきたいというふうに思っています。
 また、政府のある種独立した形で検証委員会がありますから、そこでは当然私の判断も含めて菅内閣全体が評価をされる、検証されるということになりますので、そこはしっかりと検証していただいて、問題があるところは御指摘をしていただいて、国民にお示しをするというのが政府の役割ではないかというふうに思っています。
(問)さっきの質問と重なるんですけれども、やはりまだ原発問題を続けたいというお気持ちはございますか。
(答)続けたいかどうかで言えば、こんなに重い仕事はあまりありませんから、それは誰かがやってくれるんであれば、それはそれでありがたいことなのでしっかり引き継ぎます。ですから、これはちょっと皆さんなかなか想像していただけないかもしれないんですけれども、この仕事を喜んで楽しくてやる人は一人もいないと思うんですよね。ですから、どうしてもやってみたいななんていう思いは微塵もありません。ですから、そこはしっかり引き継げるものを引き継いでいくと。
 この重い仕事ですから、なかなか一人で背負っていくということは難しいですよね。私も海江田大臣であるとか、園田大臣政務官と一緒にやってきましたから、そういう─それこそ大臣という職でなくてもお手伝いできるところはあるでしょうから、それはみんなで分担をしてやっていくべきものであるというふうに思います。
(問)よみうりテレビの福井と申します。9月1日で消費者庁が発足丸二年を迎えます。この丸二年の成果と課題、どのようにお考えでしょうか。また原発担当相という非常にお忙しい仕事との兼務の中で、そちらの消費者担当のほうは全うできたか。さらには次の消費者担当の大臣に引き継ぎたいこと、望むことを教えてください。
(答)そうですね。丸二年経ちましたので、消費者庁が果たしてきた役割もある一方で様々な課題が残っていると思います。一つ言えることは、消費者庁というのは消費者サイドに立って様々なことを政策として推進していくという立場なんですが、他の省庁との力の強さというんでしょうか、それにおいてまだ十分ではない面があるんですね。具体的には、例えば放射性物質で汚染された食料品をどうするのか、というような課題については本当は消費者庁がもっともっと踏み込んで農水省なり厚労省に物を言っていっていいというふうに思いました。実際、私この2か月の間、消費者庁は相当尻をたたきまして、かなり強くそれらの省庁に要望して、また検査機器を地方にもしっかりお渡しをするなどの対応はしてきたというふうには思っています。ただ、全体としていうと、発足2年で消費者庁としてプロパーで採っている職員は残念ながらまだゼロですから、そういった意味では組織としての地力をしっかりつけて、消費者サイドに立った政策を作っていくという、そういう力をつけていかなければならないんではないかというふうに思います。
 あとは来年の通常国会には法案の大改正が待っていますから、そこをしっかりやり切る中で消費者庁の存在感が高まることが国民全体にとってのプラスになる、そういう方向に向かっていくことを望みたいと思います。今のが次の大臣に向けてぜひ引き継ぎたいことの一つでもあります。
 あとは2か月どうだったかということなんですけれども、元々私は消費者行政そのものにそれほど精通していたわけでもないし、意識としては原発という、そういう思いのほうが非常に強かったですから、当初は若干自分の中でこの問題をどこまでできるのかということについての不安があったことは率直に認めます。2か月経ったわけですけれども、この問題に対する重要性はすぐ認識できましたので、かなり力を入れて取り組んだという思いがございます。例えば、先ほど消費者庁の在り方について少し厳しいお話もいたしましたけれども、その他にも例えば国民生活センターの組織の在り方、これも大議論になりましたので、消費生活センターも福島で見ましたし、国センにも行って職員の皆さんとも対話を重ねました。消費者庁の中でも幹部だけではなくて、若手の職員からも国センのあり方についてはヒアリングをして、私なりにここは熟慮に熟慮を重ねた上でやはり第三者も入れた上で検証したほうがいいだろうというふうに考えたものですから、そういう検討の機会をまた設けるという判断をいたしました。
 もう一点、ちょっといろいろと言ってくどいようですけれども、消費者委員会というのは非常に重要な役割を担っておりまして、この委員の任期が8月中で切れるものですから、その人選も関係者の皆さんからいろいろな意見を聞きながら進めてまいりまして、現実に終了いたしました。したがって、人間の時間というのは確かに24時間しかないんですけれども、24時間フル稼働すれば、やれることは無限にあるんです。ですから、原発サイドだけに終わったということではなくて、消費者問題も含めて私はこの2か月に関しては自分としてはベストを尽くしたというふうな思いです。

(以上)