与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年8月23日

(平成23年8月23日(火) 8:55~9:14  於:合同庁舎第4号館4階共用408会議室)

1.発言要旨

 閣議は案件どおりでございましたけれども、閣僚懇で総理から、今後の日程についてお話がありまして、多分、30日に内閣総辞職をすることになるだろうということを言われました。それに合わせて、各省大臣が引継ぎ、あるいは残務について全力を挙げるようにというお言葉でした。
 さて、今日は、リサーチペーパーの中間報告、紙をお配りしてありますけれども、7月に内閣府に対しまして、経済成長と財政健全化についてのリサーチペーパーの作成を指示いたしました。その際、税収弾性値をどう見るか、またインフレによって財政を健全化することは可能であるのか、更にインフレと高い税収弾性値によって、財政健全化を図る政策スタンスに問題はないのかといった点を明らかにするように、指示をいたしました。
 その後、7月29日、岩田一政日経センター理事長を座長とする研究会が開催され、議論が行われました。現在も作業が引き続き行われているところでございますが、昨日、中間的な報告があり、お手元にその概要を配布しているので御参照いただければと思います。
 ポイントをまとめますと、次のとおりです。
 高い税収弾性値を前提に、大きな自然増収を期待することは適当ではない。物価上昇は税収だけでなく歳出も増加をさせる。民間需要の増加による実質成長を伴わない単なる物価上昇による成長では、財政は健全化しない。インフレと高い税収弾性値に期待する政策スタンスについては、民主的な課税の決定という観点から、負担の具体像が明確でない税収に期待するのではなく、現時点において国民が予見し得る形で税負担を法律に明確に規定し、財政を健全化することが重要であるということです。これが1点です。
 それから、本日から、前から計画をしておりました、私が主催する、経済社会構造に関する有識者会議を設け、その1回目が12時から2時間開催されます。構成員、開催要項はお手元に配布してあります。この会議は、経済社会に関する基本認識や政策、制度、規範等のあり方、有識者としての見解を取りまとめ、政策形成のアンカーとしての役割を果たしていただくことを期待しております。終了後、座長からブリーフィングをさせていただきます。
 メンバー表を見ていただくと、色々な分野を横断的に広く人材を集めておりまして、それぞれの教授の先生方は、色々な重要な審議会の会長等、あるいは中心的な人物を務めておられる方、課題横断的な方に集まっていただいて、内閣府としての政策形成に、また政府の政策形成に御尽力をいただきたいと思っております。以上です。

2.質疑応答

(問)冒頭で大臣からお話のあったリサーチペーパーの中間整理ですけれども、前から報告の取りまとめを指示されたということではあるのですけれども、内閣の交代が直前になった時期に、敢えてというか、これをメッセージと打ち出された意味合いについて、改めてお伺いします。
(答)これは今に始まった話ではなくて、税制改正などは必要ないと、歳出削減をやって経済成長すれば日本の財政は立ち直るという偽りの伝説が長い間続いたわけでございます。
 これは、一つは、経済成長というものはそれほど簡単ではないと。それから、これを主張する方々は、どちらかというと名目成長率重視の方で、インフレに頼って税収を上げていこうと、そういうような間違った考え方をしておりまして、実質成長を伴わない単なる名目成長率は、税収も若干増やしますけれども、歳出も大きく伸びるということで、財政に全くと言っていいほど貢献しないということは、論ずるまでもなく明らかなことです。
 最近、税・社会保障一体改革を議論したあたりから、この、一度は消えた幽霊のような議論がまた復活をしてきましたということは、国民に錯覚を与えるだけでなく、真実を知らせないという、政治としては大変不誠実なことでありまして、やはりそういう論陣を張っている方に対しては、内閣府が経済財政の基本政策を司る役所として、正論をもって、この俗論に対して戦っていくということが必要なわけでございます。
(問)もう1点、新たに設置された有識者会議なのですけれども、これの位置付けといいますか、前に諮問会議の再活用みたいなことも大臣は仰ったかと思うのですけれども、今回、経済財政担当大臣の下にこういう会議をつくるということの意図についてお伺いします。
(答)内閣府は、経済財政、またその他の国民生活にかかわる重要な制度について、きちんと物事の発言をし、政府をリードしなければならない役所なわけでございます。
 これは、このメンバー表を見ていただくと、すぐお分かりいただけるのですけれども、伊藤元重さんは、産業構造審議会の委員、また産構審の基本政策部会長、産業競争力部会長。井堀先生は、財政制度等審議会の委員。岩田一政先生は、日経センターの理事長であると同時に実務者検討ユニット会合の有識者。清家先生は、慶應義塾長であると同時に、社会保障・税一体改革集中検討会議でも重要な委員として御発言をいただきました。牧原東北大学教授は、総務省自主・自立税制研究会委員です。吉川洋先生は、財政制度等審議会の会長であり、社会保障・税一体改革集中検討会議委員です。吉野慶應大学教授は、金融審議会の会長というので、産業、税制、財政、金融、あらゆる分野の専門家が、専門家といっても高いレベルの方が集まって、政策形成のアンカーとしてやっていただくということで、これは私のためにつくったのではなくて、国民のためにつくったものであります。
(問)もう1点だけ。円高について、先週末にニューヨーク市場で史上最高値を更新、東京市場でも76円台と、まだ歴史的な水準が続いているのですけれども、円高対策についての政府の現在の検討状況についてお願いします。
(答)円のレベルそのものについては、財務大臣と日銀総裁が、恐らく色々お話をされていると思います。我々が考えなければいけないのは、円高がもたらす思わぬ国内経済におけるマイナスの効果、こういうものに対しては、やはり政策的に手当てを出来るものは手当てをすると。そういうことを、やはり第3次補正の中には、きちんと考え方としても、実額としても盛り込まなければいけないと思っております。
(問)民主党の代表選のほうで、前原さんが今日にも出馬表明というような事態になりましたけれども、代表選の候補の顔ぶれを見ていますと、野田さん以外は皆、復興の増税にちょっと慎重、あるいは反対というような姿勢が見受けられるかと思うのですけれども、改めて復興増税について、大臣の、必要性を含めて考え方を教えていただけますか。
(答)内閣は連続しているということが一つと。それから、この取り扱いについては、民主党の人が見ている話は大して重要ではなくて、市場の方、海外の方が日本政府の所作というものを見ているということに注意をしなければなりません。
 かてて加えまして、復興構想会議も、あるいは政府・与党の復興対策本部も決めていることがありまして、一つは復興債を出すという話。それから復興債の返済期間はなるべく短期間でやろうと、5年ないしは最長10年と。それから当然のこととして、これの返済。すなわち税による増収措置をこのためにつくって、国民の負担をお願いしようということは既定路線でございまして、党内の歓心を買うために、政策や経済理論を抜きに、あるいは市場の動向を無視して、代表選挙でこの件について物を言うことは、やめていただきたいと思っております。
(問)2点お願いしたいのですが、先ほどリサーチペーパーで、偽りの伝説というのがまた言われていると仰っていましたけれども、今回出されたこの内閣府の報告書というものが、次の民主党代表を含め、民主党全般に意識が共有されるというお考えでよろしいのでしょうか。なかなか今までの議論を見ると、難しいような気がするのですけれども。
(答)この件は教育効果がなかなか上がらない分野で、もう6年も7年も前から、インフレ頼みの経済成長は駄目よと。名目成長率が上がれば長期金利も上がりますよと何度言っても分からない人は分からない。教育効果が極めて出てこない。だけれども、正しいことを言っている側は、これを繰り返し、繰り返し申し上げないと誠実ではないということです。
 今回は成長率、あるいはインフレ率ばかりではなくて、税収弾性値が一時的に上がったことをもってして、とんでもない税収弾性値を前提に物を考えている人がいるのですけれども、伝統的な日本の税収の弾性値というのは、1から1.1の間なので、そういうことも教えてあげないと信じてしまう人がいる。霊感商法みたいなものは駄目だということです。
(問)もう1点、先ほどの復興税と円高の関係なのですけれども、これだけ円高が進むと、法人税を含めて復興増税を来年度からやるというのはなかなか難しいのではないかという議論がまた出てきているかと思うのですけれども、この円高が進んでいる現状の中で、復興増税を検討することについてはどのようにお考えでしょうか。
(答)ですから、5年で返そうとか10年で返そうとかという野心的なことを財務省が言われるから話が大変になるので、10兆借りても家のローンを返すように、ぼちぼち返していけば、もう少し長めの期間をとれば、毎年の増税幅は国民に痛みを感じさせない範囲で増収が可能になるというのが、最初からの私の主張なのですが、早く借りて早く返そうという、最初は元気のいい話だったわけです。

(以上)