与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年8月19日

(平成23年8月19日(金) 10:41~10:59  於:合同庁舎第4号館4階共用408会議室)

1.発言要旨

 閣議は案件どおりでございまして、特段お話しすることはございません。

2.質疑応答

(問)まず、マーケットなのですが、欧米で株式が急落して、日経平均も今日下落で始まりましたが、背景には欧米の景気、現状、先行きの弱さがあると思うのですが、それにつられて円も歴史的な円高水準、76円台がほぼ定着した感もあるのですけれども、この現状と日本経済に与える影響について、現在の御認識を。
(答)アメリカ経済はリーマン・ショック以降、金融セクター、保険セクター等は膨大な資本注入によって回復したのですが、やはり家計においては、住宅金融あるいはカードの残高等々から、決して一般的に言って家計のバランスシートが改善したということは言えない。やはり家計も、稼得した所得は借金返し等に回していて、消費者のマインドも、あるいは消費行動も大変弱いということ分かっております。
 それから、実際の数字としては9%の失業率があります。それから、ブッシュ大統領の時代からブッシュ減税、戦費、アフガン、イラク、また金融を助けるための膨大な金融安定化資金、こういうものでやはりアメリカ経済全体に対する信認というものが少し崩れた。そこにやはりS&Pが格下げを行うということをやったと。
 それと同時並行で、ヨーロッパでも、ギリシャが1次救済では立ち直らないで2次救済が必要になったと同時に、イタリアとスペインの国債が売り込まれると、色々なことが起きているのですが、基本的にはやはりマーケットが経済自体の将来に非常に予測可能性、予見可能性を失い始めたということだろうと思っています。
 資本の動きとしては、むしろ株式よりは国債へと、あるいは金へと。ユーロ、ドルよりは円へという非常に大きな流れになっているので、そう簡単にこの振れた糸というのは解けないと思いますけれども、日本にとって大事なことは、やはりこういうときは国際協調というものが必要なので、やはり国際的に恥ずかしくない誇れる行動をとっていく必要があると思っています。
 やはりアメリカに対する対米輸出が落ちるとか、あるいはヨーロッパ、東南アジアに対する輸出が落ちるということですけれども、やはり日本は国際国家としてやはり国際協調の中に生きるのだという強い決意をもって臨んでいく必要があると思っております。
(問)補足して、国際的に恥ずかしくない誇れる行動をとっていく必要があるということですけれども、具体的にその行動というのはどういう行動なのか。
(答)これは、世界的な話なりますと、米国から色々な要望が来るかもしれません。例えばリーマン・ショックのときには円/ドルのスワップをやったこともありますし、IMFへの出資も進んでやったこともありますし、そういう意味では、国際通貨、国際金融市場の安定化には日本として果たすべき役割が出てくると思いますので、そのときには進んで国際的な協力をするという姿勢が大事だと思っております。
(問)もう一点、国内の対策なのですが、大臣はかねがね空洞化対策を含む円高対策を3次補正の中で講じるべきだというお考えを表明されていますが、現時点で3次補正は恐らく臨時国会まで編成がずれ込むことがほぼ確実になっていますけれども、現時点で政府・日銀に出来る対応というのは何かないのでしょうか。
(答)いわゆる政府が持っている経済対策のツールというのは、税制、財政、規制緩和、政策金融。日銀が持っている政策ツールは、金利の上げ下げ、あるいは買いオペ、売りオペを中心とした流動性供給引上げ、あるいはリーマン以降はCPの買い上げ、REITへの融資、低利融資、色々な方法をやっていますが、経済対策は限られています。
 そういう中で、やはり例えば金融に苦しんでいる中小企業があるとすれば、それはやはり日本の政策金融機関、政策公庫等がやる必要があるし、信用保証も利用したらいいと思っております。
 空洞化対策は、少し時間をかけて、補正予算、法律、税制等でやったらいいと、やらなければいけないと、私はそういうふうに思っております。
(問)もう1点、全く話は変わりますが、月内にも民主党の代表選が行われる予定ですけれども、代表選に出馬をすると見られる予定者から、復興増税に関しては、当面の復興増税は、この景気情勢を考慮して見送るべきだというような、いわゆる慎重論が随分相次いでいますが、この復興増税に慎重な声に対する大臣の御認識と、大臣が考える復興増税を打つタイミングはどのタイミングが望ましいかという、この2点について。
(答)これは、復興の委員会の提言でも、あるいは復興本部が決めた基本方針でも、復興債を出して復興資金に充てると。しかし、市場の信認を確保するためにはそれの返済の道筋はきちんとつけるということが決まっているわけで、民主党は既に決まっていることはやはり守る必要がある。特に閣僚においてをや。
(問)今のに関連してまず1点目お伺いしたいのですけれども、既に決まっているとされている復興増税というものが、改めて代表選の争点かのように取り上げられている現状というのをどう見ていらっしゃるのかということをもう一度お願いいたします。
(答)党内選挙目当ての極めてポピュリスティックな考え方なので、政権の一員としてはとてもそれは認められないということです。
(問)大連立というものも今回の代表選の中で取り上げられていますけれども、ねじれ国会でなかなか与党の考えるように政策が進まない中で、大連立の必要性というのはどのようにお考えでしょうか。
(答)やはり誰かと誰かが一緒になって家庭をつくるというときも、手順を踏んで順番にやっていって、気が合うか、気が合わないか判断してからやるので、そこは慎重にやったほうがいいと思います。
 しかし、やはり現状はしっかり見なければいけない。やはり税制改正とか社会保障改革とかというものをやるときには、ねじれとかそういうことは関係なく、一つの党でそれを背負うというのは不可能になっているということで、やはりスウェーデンが社会保障改革、税改革をやったときのように、党派の利益を捨てて、国民にとって何が必要かという一点で政策協議をするということは日本の社会にとって必要なことだと思いますし、世界経済の中で今言われているのは、ヨーロッパでも、アメリカでも、政治が不在だということが言われ始めている。日本はそのようにならないように党派を超えて協調していく必要があると私は思っています。
(問)あともう一点だけなのですけれども、全国知事会のほうが改めて円高対策として、さらなる介入と日銀の国債引受けというのをまた求めていますけれども、知事会のほうからの要請が出ていましたけれども、改めてこの円高になっている局面の経済対策として、この2つの方策というのをどのようにお考えか、お願いいたします。
(答)知事会というのは色々なことを仰るので、敬して拝聴しておきたいと思っています。
(問)株価の話に少し話を戻したいのですけれども、株価の下落による逆資産効果が国内の景気、とりわけ個人消費に与える影響について、見方をお示しいただきたいのですけれども。国内の個人消費に与える今後の影響ということなのですが。
(答)それは過去のデータを調べていただければ、当然逆資産効果というものはあったということはありますけれども、これは個人だけではなくて、企業もそういう逆資産効果というのはあるので、株価が下落するというのは日本経済にとって良いことではない。また、生保あるいは銀行の資産も劣化しますから、貸出しのほうも落ちてくるということで、株価は心配の種の一つです。
(問)市場の件で関連ですけれども、昨日は世界中で株価が3%、5%、大きく下がりましたけれども、その数日前は数%、世界中で株価が大きく上昇したり、かなり変動が大きい状態になっています。大臣が先ほど仰られたように、予測可能性の低下ということが一つその要因になるのかもしれませんけれども、そうなりますと当局が協調して出来ることというのは、例えばG7で声明をまとめてメッセージを改めて送るとか、そういった何かしらの協調したアクション、具体的なアクションというものがマーケットに対して必要になるとお考えになられますか。
(答)市場は自律的に動くので、よそから鎮静剤を打つ余地はないと思っています。ただ、米国の株式市場だけに関して言えば、連邦準備の金融政策、特に超緩和傾向でこれから維持していくというその方向性は市場に効いてくると思います。

(以上)