与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年8月10日

(平成23年8月10日(水) 17:15~17:35  於:合同庁舎第4号館4階共用408会議室)

1.発言要旨

 月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要を御報告申し上げます。
 景気の基調判断は、「東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるものの、持ち直している」と上方に変更しております。これはサプライチェーンの立て直しなどにより、我が国の生産が持ち直してきていることなどを踏まえたものであります。
 先行きにつきましては、景気の持ち直し傾向が続くことが期待されますけれども、電力供給の制約や原子力災害の影響、海外景気の下振れ懸念に加え、為替レートや株価の変動等によっては、景気が下振れするリスクが存在することに特に注意が必要です。
 政府としては、政策推進指針に基づき、大震災がもたらした制約を順次確実に克服するとともに、日本経済の潜在的な成長力を回復するよう取り組んでまいります。
 そこで、幾つか申し上げたいことですけれども、やはり第1には、政府としては信頼、クレディビリティーを強化する必要があると思っております。市場の信認のためには、政府や政治の政策実現能力に対するクレディビリティーを高めることが重要であって、結果を出す政治、これに戻ることが必要であります。昨日の3党合意は、その意味では大事な第一歩でありまして、社会保障・税一体改革や復興財源について早急に3党協議が行われることを期待しております。
 また第2には、リスクを極小化するということが必要でありまして、空洞化に対する懸念、電力供給制約などのリスクを減らすことに、政策、資源を投入すべきであります。また、例えば法人税減税も研究開発投資減税も両方やめるというのは、立地拠点としての競争力を落とすということであって、やはりそういう意味では研究開発投資減税というものの重要性を再認識すべき時期に来たと思っております。また、総合特区制度や補助金の活用によって、教育、医療も含めアジア並みの立地環境を整備することに努力すべきであると思っております。
 第3には、透明性の向上であって、いわゆる企業も消費者も、予見可能性が低下すれば設備投資が手控えられ、消費が低下をしてまいります。政府は、政策予見可能性を高める努力をさらに強めるべきであったと思います。小泉内閣から始まり麻生内閣で終わった経済財政諮問会議は、予見可能性という点では政策決定プロセスを透明化し、予見可能性を高めることに寄与したと思っておりまして、民主党政権もこの点は再考すべき時期が来たと私は思っております。
 以上です。

2.質疑応答

(問)今、政府の市場に対する信認を高める努力等、必要な行動についてお話があったのですけれども、こういった大臣の認識の前提となっているのは、今の世界経済の現状、金融市場の動揺等が、今日は株安はいったん歯止めはかかりましたけれども、円高等はまだ進行しているということで、おさまっていないということがあると思うのですけれども、日本経済の現状、このあたりのリスク、どの程度まで影響を与えるか、高まっているとお考えでしょうか。
(答)日本は、日本の国債が国内消化されているということに加えて、財政再建、財政規律に関しては、政府、国民ともに真剣に取り組んでいるということが、現在まで市場の信認を勝ち得ているゆえんだと思っておりまして、その努力は絶対緩めてはいけないと思っております。
 海外で起きているようなことに思うのですけれども、世界の経済はつながっていますから、日本に対しても世界的な経済の今の状況というのは、当然大きな影響を与えると思います。今のところ各国は協調体制をとって、いたずらな危機が発生しないようにやっておりますけれども、やはり時間はかかりますけれども、根本に横たわる経済財政の諸問題を解決するという強い姿勢が各国に今求められていると思っております。
(問)あと、今冒頭で御説明のあった法人税、開発投資減税等の重要性ですとか、諮問会議の活用というふうな大臣のお考えなのですけれども、これは3党の合意が成立して、今後与野党間の協力体制が築かれていく中で、そういったことを実現していくべきだというふうなお考えなのでしょうか。
(答)まず、3党協議ですけれども、菅内閣は、菅総理の今日の委員会での御発言などを伺っておりますと、8月中には終わりを迎えるわけです。新しい内閣が発足するに当たっては、やはり各党協議のルール、原則というものを定めた上で発足したほうがいいのではないかと思っております。大きな社会保障改革、あるいは大きな税制改革等々は、1つの党だけでは背負い切れない種類の問題でありまして、やはりこれに関しては各党で責任を分かち合うという政治の仕組みが必要だと思っております。そのためには、第一党である民主党が、やはり各党に声をかけて話し合いの準備があるという強いメッセージを発するということが、これからの政治に最も必要なことになってくると私は思っております。
(問)今のお話に関連してなのですが、大臣も菅政権が8月中に終わりを迎える可能性があるということを御指摘されましたが、振り返って半年以上、菅政権の閣僚の一人として経済財政運営にかかわってこられて、この点はもっと改善すべきではなかったかと今になると思うような点はございますでしょうか。
(答)経済に関しては、余りありません。ただ、全く予想しなかった3.11がありましたから、復興のほうに皆さんの関心が一方的に集中したということは、これは当然のことであったと思いますが、いろいろ御批判はあると思いますけれども、菅総理は、やはり全身全霊、復興、中でも原子力に対して力を入れておられたと思いますので、そういう意味では条件が3つ整って、総理もこれが本当に成立すれば次の段階にスムーズに移行する、そのためのことをやらなければいけないということを言明されていますので、及ばずながら私もそういうスムーズな移行については微力を尽くしていきたいと思っております。
(問)景気の話なのですが、政府としては、復興需要が本格化していく今年秋以降、本格的なⅤ字回復というのを想定していると思うのですが、世界経済の状況並びに円高、株安の状況が、政府が描く復興のシナリオにどのような影響を与えるか。
(答)多分、直接因果関係があるようなことを見つけ出すことは難しいと思いますけれども、外需に依存している部分というのは、やはり日本の経済はそれなりの影響を受けるというふうに考えております。
(問)今日、8月の月例報告を出されましたけれども、大臣として、今後一番どのような指標に注目されているのか。特にこの円高、株安の局面でどういう点を注視されているのか、まずお願いします。
(答)今日の月例経済報告は、この3日間に起きた話まで全部含めていないものでございます。したがいまして、皆様方が経済を見るときは、今日の月例経済報告プラスこの数日間で起きた状況全体を把握して報道をしていただくものと思っております。それでも、サプライチェーンが予想外に早く立ち上がっている等々、やはりそれぞれの場で国民が懸命の努力を払っているということは、今日の月例経済報告からもよくわかる話でして、危機に直面したときに力を出せるかどうかというのは、やはり本当の国民の力だと思っております。まだこれからも相当長い期間、努力を積み重ねていかなければならないわけですけれども、気構えだけは十分できていると思っております。
(問)冒頭におっしゃられた3つの申し上げたいこととして大臣のおっしゃったことというのは、菅総理含めてほかの閣僚なり党なりに何か要請されたことなのか、特に経済財政諮問会議は、それを復活して活用するという趣旨でよろしいのか、その点、確認させてください。
(答)経済財政諮問会議というのは、好きでやっていたわけではなくて、法律にきちんと書いてある組織であって、総理の諮問に応ずるというのが法律上きちんと明文化されている。そういうものをきちんと使うということは、政治主導から外れることでも何でもないので、政治主導で経済財政諮問会議をやられたらいいと、私はそのように思っております。
(問)反対に、現在その諮問会議が活用されていないことで、対応が遅れたりとかデメリットが出ているということはあるのでしょうか。
(答)会議体をたくさんつくらなければいけないという結果になっておりますから、そのうちの幾つかは諮問会議で代替できたのではないかという印象を持っております。
(問)まさに冒頭でおっしゃった大臣の御提言といいますか御提案なのですけれども、菅総理が退陣されれば、恐らく内閣の顔ぶれも相当変わるのかなと思いますけれども、少なくとも大臣御自身がその任にある間に、具体化に向けた道筋、先鞭をつけるといったような具体的なアクションを起こされるお考えがあるのかどうか、お聞かせください。
(答)言い残すべきことは、きちんと形で言い残したいと思っております。
(問)今回、アメリカの経済の回復が極めて弱いという形で、アメリカ経済に対する懸念を強調した表現になっていると思うのですが、アメリカの経済が今後日本経済あるいは世界経済に及ぼす懸念としてどういうことをお考えになっているのか、お聞かせください。
(答)1つは、マクロで見たら、アメリカ経済の不振によってドルの価値の上下の幅が広くなる可能性があって、当然為替レートの大きな変動というのは日本経済に影響を与えると思います。
 それから、アメリカの国内消費でございますけれども、消費自体も上昇しておりませんし、消費者マインドも弱いということがあります。これは、リーマンショックのときに顕現した家計のバランスシートの悪化というのは依然続いているということであって、やはり家計は、どちらかというと借金の返済や貯蓄を重点に物を考えているということですから、当然日本からアメリカに向かういろいろな製品の消費というものも弱くなってくる。そういう意味では、対米貿易が減少するおそれがあるということが言えるのではないかと思っております。

(以上)