与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年8月9日

(平成23年8月9日(火) 18:59~19:17  於:合同庁舎第4号館4階共用408会議室)

1.発言要旨

 閣議がございましたが、特に御報告することはありません。

2.質疑応答

(問)まずマーケットの動向について数点質問させていただきます。
 本日ですが、日経平均が9,000円割れをして外国為替市場でもドル/円が一時76円台になるなど、既にG7の緊急声明が出された後でも市場の動揺は全くおさまっていないような状況ですけれども、まずこの現状の認識と、株安、円高が日本経済に与える影響についてどのように御認識されているか。
(答)これは、日本が持って他山の石としなければならない事態だと私は思っております。これは、市場が米国債、あるいはユーロ建てのイタリア、あるいはスペインの国債に対して、いわば不信認を突き付けた状況でありまして、やはり国境のないグローバライゼーションが進んだ経済の中では市場の信認を得るということは極めて大切なことであって、日本も財政規律に関しては、今のところ市場の信認はいただいていると思っておりますけれども、これから更に、特に政治家がこういうことを十分認識しながら政策運営をやっていかなければならないと思っております。
 当面、株安というのは世界的な連鎖現象でございますので、これはいずれどこかでストップがかかるものだと思っております。円高は相変わらず資産の逃避先として円が選ばれているということでございますから、小手先の対策ではこういうものは傾向というものを大逆転するというわけにはいきません。しかしながら、円高で、明らかに中小企業をはじめとしたところが打撃を受けるわけですから、そういう面では金融、その他の政策を動員して、やはり国内の円高に対する対策というものも考えなければいけないと思っております。
 世界経済を取り巻くリスクというのは、先週以来、もう皆さん御存知の色々な出来事があって、連続的にリスクが高くなると。仮に各国の政策運営というものが間違った方向に行けば、経済有事とも言えるような状況に陥るということを目前にしているわけですから、日本政府も各政党もやはりそういう極めて危険水域にあるということを十分認識した上で政策運営をやっていかなければいけない。そういう点では、特例公債法について今日3党で合意が出来たことは喜ぶべきことであると思っております。ただし、3次補正についても、単に震災復興というものに限定するというところからもう一歩踏み出して、やはり空洞化対策、電力供給・隘路対策、中小企業対策という観点も3次補正の中で考えていく必要性が出てきたと思っております。そういう意味では、日本経済のリスクをいかに極小にするかという大所高所に立った議論が3次補正に必要になってきたと私は考えております。
(問)先ほど、3次補正では一歩踏み出して空洞化対策等もというお話がありましたが、先週の為替介入の効果も既に剥落していて、3次補正を待たずに円高に対する総合的な対策を政府が早急にまとめるべきだという声が経済界を中心に強まっていますが、考えられる対策と取りまとめの時期、もし目星がありましたら御認識を。
(答)経済対策で出来ることというのは、日本銀行を中心とした金融政策、これはもう金利はいじっても動かないわけですから、やはり量的緩和の中で量的緩和の範囲というものをもう少し考えられるかどうかということを検討する必要があると思います。
 それと、国内の中小企業向けにはやはり資金繰りに対する目配り、これは色々な方法がありますけれども、信用保証協会を使ったもの、政策公庫を使ったもの、政投銀を使ったもの、輸銀を使ったもの等々色々ありますが、そういう資金繰り等ではやはり相当配慮をしなければならないと思っております。当面は、税制予算が緊急出動出来ませんので、せめて金融対策には万全を期すべきだと思っております。
(問)今のお話にあった特例公債法案、3党合意で成立で喜ばしいというお話ですけれども、もう少しこの法案の成立の意義についてお話をお伺いします。
(答)いずれ通ると思っておりましたけれども、やはりアメリカの議会を見るまでもなく、政党間の協議が不調が続くと、やはり国民や経済界というものは予測可能性、予見可能性というものを段々失ってきて、それ自体が不安を呼ぶ。また、その不安がまた不安を呼ぶ、そういう連鎖が起きるわけです。アメリカで起きていることも一部議会の対応が原因になっていると報ぜられています。そういう意味では、特例公債法という予算執行上必要不可欠なものについて与野党合意が出来たということは予算に関する予見可能性がきっちり出来たということでは喜ばしい。嘘のようなガバメントシャットダウンというようなことが回避出来たということは、当然のこととは思いますけれども、やはり喜ばしいことだと思っております。
(問)関連で、全く違う方向からの見方なのですけれども、菅総理がかねがね仰っていた退陣の条件の中の最大の懸案というものがこれでクリアされた形になったかと思うのですけれども、菅総理の退陣の時期についてはどのようにお考えでしょうか。
(答)それは菅総理御自身が決めることなので。菅総理は、私はよく存じ上げていますけれども、自分の言った言葉は必ず守られる方であると私は思っております。
(問)先ほどの、3次補正に入れたほうがいいのではないかという空洞化対策なのですけれども、仰るようにあまりお金をかけた対策というのが今回は出来ないのではないかと思うのですけれども、金融政策の他に、今仰ったようなこと以外で出来ることというのがあるのか。それとも、殆どそういう対策をとっても意味がないのか、そこら辺のお考えをもう少しお願いします。
(答)空洞化対策というのは、ある企業が国内に立地したほうがいいのか、海外に立地したほうがいいのかということを考えるときに、立地条件というのがやはり国内が優れているということにしなければならないと思っております。それは税制もそうですし、恐らく電力料金等もそうですし、また輸送インフラ、輸送のためのインフラ等の問題もありますし、色々な要素で国内に立地するか、海外に行って工場をつくるかということになると。企業家たちはそういうことを考えながらやっておられる。勿論、その中に為替レートも入ってまいりますけれども、現時点で即効性のある為替対策というのは、出来るだけのことはやりますけれども、どの程度効果があるかということを考えながらやっているわけです。ですから、せめて税制とかその他の条件、電力供給の安定とか、そういうことを考えて国内にとどまっていただくように環境づくりを政治がやらなければいけないと思っております。
(問)その中の税制の場合に、復興税の議論では基幹税という話が出ていますけれども、改めて空洞化対策で法人減税というのが俎上に上る可能性というのはあるのでしょうか。
(答)私はこういう状況になりますと、基幹税というふうに考えている考え方が正しいのかどうかと思っております。どういう税目を選んだら経済に対して中立かということは、やはりこういう状況の中では考えなければいけないと思っております。
(問)最後もう一問だけなのですけれども、特例公債法案が今日合意しましたけれども、間もなく震災から5カ月という期間が経ってからということについては、時間がかかり過ぎたのではないかという見方もあると思うのですけれども、この点についてはどうお考えですか。
(答)金繰りとしては9月ぐらいまで持つだろうと言われておりましたけれども、自民党政権も特例公債法というのは何十回も通しているわけで、やはり本予算が通ったわけですから、その付属品である特例公債法というのは、国会が話し合いの上であってもどうしても通す必要がある事柄だと私は思っておりました。
(問)先日、G7が緊急の電話会議を開き、声明を出したにもかかわらず、市場の動揺が殆どおさまらないという状況ですけれども、G7声明の中で、例えば為替の部分等に、明らかに為替介入を認めるような表現をしながらも、一方で市場がレートを決めるべきだという表現が入っていたりしましたが、あの声明について大臣の御評価をお聞かせください。
(答)そういう小さな文書の表現で物事が動いているとはとても思えない。もっと大きな流れとしてのお金があちこちに動いているというふうに理解したほうがいいのではないかと思っております。動いているお金というのは、為替介入などをやる額とは桁違いのものでございまして、むしろ、お金はリスクの高いところから低いところへという普通の動きをしていると思っております。
(問)今の関連で少し追加で質問なのですが、先ほど大臣、小手先の対策でこの傾向を大逆転するのは難しいということだったのですが、今回の為替介入自体の評価というのはあまり評価しないということでよろしいですか。
(答)そのようなことはなくて、今回やりましたから。投機が行き過ぎますと、また日本政府は介入をしてくる。今度は国際協調による介入かも分からないと。そういうお行儀の悪い投機家に対する警告をしたということで私は評価しております。

(以上)