与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年7月22日

(平成23年7月22日(金) 8:32~8:48  於:院内内閣記者会3)

1.発言要旨

 閣議、案件どおりでございましたけれども、内閣府としては、本日の閣議において平成23年度の経済財政白書を報告いたしました。今年の白書の副題は「日本経済の本質的な力を高める」としておりますけれども、震災からの復旧・復興、その後の力強い成長に繋げるための分析を行っております。
 以上です。

2.質疑応答

(問)今お話のあった経済財政白書ですけれども、震災の影響、復興というのが大きなテーマだったと思うのですが、危機に強い経済というふうな提言も入っていましたけれども、この内容について、大臣の評価、今のところどのようにお考えかお願いします。
(答)本質的な力を高めるというのは、まず日本の人材、それから科学力、技術力、それから日本の労働力、それから新しい分野における意欲とか、対外通商関係の過不足ない他国とのレベルとか、非常にもろもろの要素で成り立っています。ですから、日銀に、例えば国債を引き受けさせて、一時的に日本の経済をブーストさせるとか、そういう話ではないのだと。やはり何もないこの国が経済的な発展、繁栄を続けていくということは、やはり日本人一人一人が持っている人間力、そういうものが大事であって、学校の教育のレベルとか学問の水準とか、そういう少し経済に縁遠いような話も、実は日本の本質的な力に重要なかかわりを持っているということを自覚的に考えていかないと、上っ面の経済指標を見ただけの経済の物の考え方ではなくて、そこにある本質的な経済力を構成する要素一つ一つを強くしていくという、そういうことを言っている。そこにやはり大事な点があるのだろうと思っています。
(問)白書について補足で数点伺います。
 大臣として、今回の白書の編さんに当たりまして、特に事務方に、この部分を集中的にやってみろ、分析を深めろと指示した部分はございますでしょうか。
(答)一切ないです。
(問)白書の中を読みますと、財政健全化のくだりだとか、社会保障の肥大化に関する警告的な文章とか、6月末に決定した税・社会保障一体改革を補強するような記述も多く見受けられたのですが、前回の会見で、税と経済に関する議論が少し混乱していると。リサーチペーパーをまとめるように内閣府に指示したと仰っていましたが、それを先取りするような記述も目立ったのですが、この辺については、これは大臣の何らかの意図があったのでしょうか。
(答)いや、正しいことを考える人は、誰が考えても同じように正しくなると、こういうことです。
(問)そうすると、一体改革と関連するような記述に関しても、大臣、基本的には評価出来る、内容については満足出来る白書になったと。
(答)これは経済の専門家が客観的に物事を記述しているわけなので、政治が介入して、こう書け、ああ書けという種類のものではなくて、やはりそういう専門家が感じたままを率直に白書という形で世の中に問うというところが、私は大事なことなのだと思っています。
(問)2点お願いします。1点なのですけれども、開国というテーマについて白書で1章を割いてかなり書いていらっしゃると思うのですけれども、ここへの大臣の思いと、実際TPPの交渉などが進んでいない現実との乖離についてどう思っていらっしゃるかお願いします。
(答)TPPというのは、太平洋の諸国が集まって通商の更なる新しいルールをつくろうと、こういうことですから、そういうルールメーキングボディーには多少の犠牲を払っても参加しておかないと、長期の日本の国益は実現出来ないと思っています。TPPに参加すると日本の農業が壊滅するというような怪しげな宣伝をしていますけれども、そういうものは必ず、その事態に対応する政策によって補完することが可能な事態なのであって、TPPが来ると日本の農業は今の14%になるだろうというのは、むしろ煽動的な話であって、やはり日本人は、日本の将来の通商とか政策とか、あるいは国際競争力のある農業とか、輸出が可能な農業とか、そういうことを考えて行動しなければならないと、そのように思っております。
(問)もう一点なのですけれども、先ほどの税と社会保障の一体改革についても、かなり今回、この財政健全化との絡みで白書に記述されていますが、一体改革の成案が出来てから、もう間もなく1カ月経つのですけれども、なかなか目に見えた進展ぶりが見えない状況について、どのようにお考えでしょうか。
(答)これは2通りに分けて考える必要があります。一つは、国会内の各党との協議をどうやってスタートさせるかという問題で、昨日の岡田幹事長の御発言などは、そのための環境整備が始まったという一つの証ではないかと思っております。
 もう一つは、あの報告書の中では「検討する」ということが書かれている部分が幾つもあります。この部分についてはきちんとスケジュールをつくって、誰がどこでいつまでにやると、法案化はいつ頃までにやるというスケジュール表を、原案は出来ていますけれども、それを一種のロードマップとして、作文だけつくったのではなくて、実際に仕事を進めていくということを内外に明らかにするということが、これからの大事なことだと思っております。
(問)白書の関係でお伺いしたいのですが、今、国民の関心は、凄く原発とエネルギー政策に向いているのですが、今回、ちょっと白書の中には盛り込まれていなかったのですけれども、これについてちょっと感想を一言お願いします。
(答)原発の問題については、専門家を交え、経済界を交え、国民を交え、相当幅広く議論をする必要があると思っております。これは単に日本のエネルギー供給構造、あるいはエネルギーの消費構造を議論するだけではなく、いわゆる供給先との関係をどうするかという海外との外交経済上の問題もありますし、やはりこれからの国民の一人一人の暮らしに関する、いわば物の考え方にかかわってくることでもあるし、そう短兵急に議論が出来るわけではない。しかしながら、議論をしないということは一番不毛なことなので、やはりこれは、こういう機会にきっちりと各方面で議論をしなければならないと思っております。
(問)足元の経済状況についてなのですけれども、円高が再び進んできまして、ヨーロッパの問題、依然くすぶっておる状態ですけれども、現在の円高が何故起こっているかということに対するお考えと、あと、来年度にかけて日本経済、復興需要でV字回復と、大臣も力強い回復と仰っていますが、その足かせにこの円高がなるリスクというのはどうお考えでしょうか。
(答)多分、安全な資金の逃避先として、この瞬間は金、あるいは日本の国債というものが選ばれているのだろうと思っていまして、専ら海外の投資家の世界全体の金融情勢に対する判断によって起こっている現象だと思っております。
(問)日本経済の回復シナリオへの影響というのは考えられていますか。
(答)それは多分ないと思います。
(問)復興の基本方針に向けて、昨日関係閣僚会議をやっていたかと思うのですが、ずっと問題になっている財源の問題で、月末までに何を決めるかということも重要なのですけれども、増税のタイミングについて大臣の御意見をお伺いしたいのですが、やはり景気との関係を考えると、来年、結構な好成長になりそうなので、早目に増税に踏み切るべきだという意見もあれば、そこは慎重に向き合うべきではないかという意見もあるやに聞いているのですが、その点、大臣のお考えはいかがでしょうか。
(答)野田財務大臣や平野復興大臣のお話を聞いていて、やはりお金は必要なだけ借りるのだけれども、なるべく短期間で返し切りたいということが、その発言ににじみ出ているわけでして、私もそういう考え方でいくべきかなと思っております。ただし、短期間で返すとなると一時的な負荷は大きいわけですから、これからどういう税目でやるかということは、7月末にかけてかなり大事な議論になると思っております。

(以上)