与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年7月13日

(平成23年7月13日(水) 15:13~15:26  於:合同庁舎第4号館4階共用408会議室)

1.発言要旨

 月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要を報告します。
 景気の基調判断は、「東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるなかで、このところ上向きの動きがみられる」と先月と同様の判断としております。
 これはサプライチェーンの立て直しなどにより、我が国の生産や輸出が先月に引き続き復調傾向にあることなどを踏まえたものであります。
 先行きにつきましては、生産活動が回復していくのに伴い、景気が持ち直していくことが期待されます。ただし、電力供給の制約や原子力災害の影響に加え、海外経済の回復がさらに緩やかになることなど、景気の下振れのリスクに注意が必要です。
 政府といたしましては、政策推進指針に基づき、大震災がもたらした制約を順次、確実に克服するとともに、日本経済の潜在的な成長力を回復するよう取り組んでまいります。
 以上です。

2.質疑応答

(問)先行きのリスクについて、電力制約であるとか、海外経済の状況について示されていますけれども、大臣として今の時点で特に注視される点というのを挙げるとすればどの点になりますでしょうか。
(答)ヨーロッパの危機というのは、ギリシャ一国にとどまらず、ポルトガル、アイルランド、場合によってはスペイン、イタリアと徐々にソブリンリスクを持っている国の数がふえているということは、非常に注意を要する。特に欧州の金融システム等は、今申し上げた国々に相当な量の資金を入れておりますので、仮にどこかがデフォルトという事態に陥りますと、一瞬にしてその影響が世界全体に広がる可能性がありまして、ギリシャ救済を始め、IMFとEUが協力をして世界的な影響が出ないようにしていただきたいと思っております。
 もう一つはアメリカの失業率、回復を見ておりませんし、住宅価格は軟調であるということと、中国の実質成長率が相当高いんですけれども、物価上昇も5%をはるかに超えたところにありまして、明らかに中国は引き締め政策に転じておりますので、そういう点も海外要因としてのリスクはあるだろうと思っております。
 国内では、電力の供給能力の問題というのは、今年だけではなく、来年、再来年と続く日本の基本的な問題として我々は克服していかなければならないと思っております。
(問)先ほど大臣が言われた海外の欧米の先行き不安を背景にして、海外市場で円相場が一時78円台まで高騰しましたが、まずこの円相場の動きについての御感想を。
(答)これは明らかに日本の国内の要因で起きているものではなくて、ユーロが売られ、ドルが売られ、逃避先として円が選ばれているというふうに推測をせざるを得ない状況だと思っております。
(問)円高に関しては、一時は輸出が減速とするというふうなことで、日本経済にマイナスになるという意見もありましたが、この復興期に当たっては、逆に円高のほうが日本経済にメリットが多いのではないかという議論もありまして、この円高傾向そのものについては、日本経済に与える影響について、どのように考えていらっしゃるでしょうか。
(答)為替相場がいかにあるべきかというのは、閣僚が言及すべきでない、市場が判断するべきだと思っておりますが、乱高下に至るようないわゆるボラティリティを持った市場というものは好ましくないというのは、財務大臣も私も共通して思っていることだと思っております。
(問)大臣が先ほどおっしゃられていた中国についてなんですけれども、今日成長率が発表されまして、GDPが発表されまして、やや減速であると、しかも物価も上昇しているし、賃金もちょっと上がっているというような状況で、日本経済への影響というのを今後どうごらんになられていますでしょうか。
(答)中国が過度の景気過熱を警戒して、国内で金利を上げたり、量的に引き締めたりするということは、国内経済をいわば収縮の方向に持っていくわけですから、輸出市場としての中国がそういう状況になると、当然影響は対中輸出をしている国には出てくると思っております。
(問)恐らく今日の夕方に総理が会見でおっしゃると思うんですけれども、脱原発依存というような方向性というのが今後どう日本経済に影響を与えるというふうに見ていらっしゃるのか、またそういった政策を進めるに当たってどういう点を注視すればいいのか、お考えをお願いいたします。
(答)基本的には、日本という国は資源のないという点では非常に貧しい国であって、そういう中で先人たちが知恵を絞って日本の経済の水準をここまで持ってきたと、その中には原子力を一つの選択肢として入れたわけでございます。
 経済が成立するためには、エネルギーをどうするか、鉄鉱石、レアメタル等の資源をどうするか、日本での畜産を維持するための飼料穀物の輸入はどうするかと、あるいは通商政策、特に高度のFTA、EPAができる時代に日本と通商政策の関係をどうするかとか、幅広い観点から見ていかないといけないと思っておりまして、エネルギー政策の一部だけを取り出して論ずるということよりも、エネルギー政策全体の整合性、それから一体日本をどういう国にするんだという国の姿に対する将来ビジョン、こういうものをあわせて考えませんと、こういう時期に決定的な政策選定するということは、避けたほうがいいと思っておりまして、特に福島の現場が落ち着いて、皆が冷静に物を考えられるような時期に将来の政策選択がなされるべきだと、私はそう思っております。
(問)海外経済の減速に関連するお話に戻るんですが、この震災以降、生産の回復に伴って輸出もテクニカルに戻ってきているとは思うんですけれども、今後景気の牽引役として輸出が順調に伸びていくかどうか、そこにアメリカ、中国、ヨーロッパの景気が輸出の動向にどう影響を与えるというふうに見通されていますでしょうか。
(答)それは輸出先が景気が後退すれば、当然日本からの輸出が減るわけですから、その影響を受けるということは間違いありませんけれども、来年度は日本の経済は日銀が言っておられるように、2.9%という予想をされていますけれども、復興需要及び急減速の後に急回復というものが来年になりまして実現すると、私はそう確信をしております。
 ただし、月例経済報告の中で述べられていますけれども、それには注意しなければいけないリスクというのがあって、今、記者の方から御指摘があった海外からの要因というのは、日本がコントロールできない問題ですので、そのリスクは確かに存在すると、そういうことを前提に経済運営をしなければならないというのは、当然のことだと思っております。

(以上)