与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年6月17日

(平成23年6月17日(金) 9:35~10:09  於:合同庁舎第4号館4階共用408会議室)

1.発言要旨

 まず、閣議の前に行われました第4回の成案決定会合の概要を御報告します。
 野田財務大臣・税調会長。税調では2月以降審議をしてきた。昨日の全体会合で意見として決定した。これを踏まえて、成案決定会合に会長・会長代行が臨むことで了解した。
その後、中村室長より、お手元の資料1について、特に赤字の部分を中心に説明がありました。
 小沢鋭仁議員。今回の審議は、拙速だと昨日の税調で申し上げた。党では連日熱心に議論しているが、20日という日程先行でやるのはいかがなものかという議論が圧倒的に多い。各党のみならず、政府内からも同じ意見が出ている。もう少し丁寧な御審議をお願いしたい。
 亀井政調会長。消費税は党としては賛同出来ない。連立合意にかかわるもの。この後、政党間協議があるものと理解。
 片山総務大臣。国・地方について、自分が気になっていた点は全部入った。本日、6団体と確認のための作業をしたい。この案で理解が得られるように努力する。
 田中康夫議員。両党間及び党首間で確認してからの問題ということでよいか。
 枝野官房長官。週末を含めて調整して、必要に応じて文言の修正を行い、20日に本部で最終決定したい。その間、政党間でのお話をしていただく。
 田中議員。我々の立場は、この改革では羊頭狗肉になると認識。
 枝野官房長官。本日の案を前提に政党間協議を含めて、週末を含めて調整を行い、20日に本部を開催したい。
 その後、総理が御挨拶になりました。
 閣議のほうでございますけれども、案件どおりでございましたけれども、今日、子ども・子育て白書が閣議決定をされまして、本日の白書では子ども・子育てビジョンに基づく施策の推進状況、子ども・子育て新システムの構築に向けた検討状況。東日本大震災の震災地等の対応を含めた子ども・子育て施策の具体的実施状況などを紹介いたしました。
 また、子ども・子育て支援は内閣の最重要課題の一つであり、子供と子育てを応援する社会の実現に向けて全力で取り組んでまいりたいということも発言をさせていただきました。
 また、男女共同参画担当の大臣としては、公務員の採用に当たっては女性の割合を30%以上にするべきだという発言をいたしました。
 以上、まとめて御報告を申し上げました。

2.質疑応答

(問)今回のこの社会保障・税一体改革成案の案ということなのですけれども、修文を加えまして、地方への配慮をかなりにじませるというか、取り入れた内容になっていますけれども、まずこの案について、大臣、全体としてどう評価されていますでしょうか。
(答)これは、まず現行消費税5%のうち、1%の地方消費税は、これは元々地方のものでございましたから、そこは動かさないと。それから、現行5%の中で交付税に回っている分、これも動かさないと。ただし、この分は社会保障に使うというきちんとした説明をしていただくことになりました。したがいまして、現行5%の消費税については、交付税分が社会保障に充てられるということを除いては変わっておりません。
 それから、5%上げる分についての中では、地方消費税ということは書いてございませんけれども、社会保障制度の中に占める地方の割合に応じて、当然地方にもその財源は配分されるというのは、半ば当然のこととして書いてございます。
(問)今仰ったとおり、社会保障に占める地方の割合に応じて地方にその財源が配分されることは当然だと仰った件なのですけれども、以前、大臣は地方のPBが黒字であることを挙げて、国は赤字であると。地方は国に対して同情の念を禁じ得ないということを考えてほしいというふうに仰っていましたけれども、これを、今回の成案を受けて、国の財政健全化に対する取り組みについての影響というのはないのでしょうか。
(答)今回の国・地方の合意によって財政の中期フレームが目標としている2015年の基礎的財政収支に関する目標は達成されるということを確認した上で行った作業でございます。
(問)あと今日、菅総理はこの会合の中で、まだ残された論点があると。週末も含めてもう一踏ん張りしてほしいというふうに仰っていましたし、この会議の中でもまだ調整が必要であるということが言われていますけれども、大臣から見て、あと残された論点、どういうところが調整として重要なポイントになっていくのでしょうか。
(答)今まで、党から、地方から色々な御意見をいただいて、地方の分は完全に片付きましたが、前回、党から御指摘をいただいたデフレ脱却とか、あるいは実施時期に関することとか、党については案文の修正によって一応の対応をしておりますので、残された論点がどこなのかということは、今日、この案文が、修正されたものが初めて民主党の議員の皆様方に配付されるわけですから、私共としては、党の御要請には殆どこたえているつもりでございますけれども、残された論点というよりは、党のほうがどういう御意見を仰るかというのを注目して見ているわけでございます。
 ただ、論点で言えば、民主党と国民新党の間の調整が残っていると言えば残っていると言えると思います。
(問)今日閣議の前に、二重ローン問題に関しての話があったかと思うのですけれども、二重ローン問題への対応の方針について、今日の内容と、そこへの評価というのを伺えればと思うのですけれども。
(答)二重ローン問題の対応については、内容は、ほぼ今日配られた紙で固まったと御理解していただいていいと思いますけれども、あと、その二重ローン問題をスムーズに決着、現地でしなければいけないわけですから、それに対する体制は一体どういうものが合理的なのかという部分はこれからきちんと協議をしなければいけませんし、二重ローン問題というのは、債権・債務の関係を整理するわけですから、専門的な知識とか、今までの経験とかということもまた必要になってくるので、どこがやるかは別にして、相当手慣れた経験の深い方を集める必要があると思っております。
(問)資料1の7ページ目なのですけれども、社会保障給付にかかる公費の全体推計というのがあって、地方単独事業を含めた社会保障給付の全体像、費用推計を総合的に整理すると。要は費用推計を地方単独の事業を含めてやり直すということだと思うのですが、これはどういう意味なのかと。どこまで地方単独事業を国で見れるかを整理した上で、その後、そこの部分についての推計をするためにやるものなのか、それとも、普通の内閣府が出している試算のことを言っているのか。どういう試算のことを言っているのか。
(答)詳しくは中村室長から御説明させますが、消費税を今度上げるについては、104条に大事なことが書いてありまして、社会保障4経費に使うという部分と、官の肥大化には使わないということ。それから、区分経理をするということで、そういう考え方を実現するためには、まず社会保障と言われているものにどういうものが入っているかということを明らかにして、一つ一つを見ていこうということです。
(中村内閣官房社会保障改革担当室長)そのとおりでございます。現在、社会保障給付費というのは、基本的には国際的な分類、ILOの分類に対応するようにつくられておりまして、法律に基づいたり、あるいは国の制度によって国民に権利を付与したり、義務を課すようなものということで、国際的な分類によって社会保障給付費というのが日本でも決められている。ただ、地方単独事業については含まれていない。技術的な制約もあって、改革原案では、社会保障給付費の数字を示しておりましたが、それでは地方単独事業を全く国は無視しているのではないかという議論が生じたもので、きちんと地方単独事業も含めて社会保障制度としてどういう範囲のものがあるかということについて、元々この議論は、地方単独事業についても精査が必要だという議論から来ておりますので、そういう精査もする過程の中できちんと明らかにしていこうということ。したがって、注のほうに、現在、国・地方公費として把握出来ているのは39.4兆円で、他方、総務省推計では地方単独事業として社会保障に関連する支出は7.7兆円と見込まれるということは付記してありますが、この中で、それでは制度的に社会保障給付費として含まれるのはどういうものかということは、精査のプロセスを通じて明らかになるものだと考えています。
(問)もう一点なのですが、総理が週末含めて作業してくださいということなのですけれども、具体的に何が行われる方向なのでしょうか。例えば、国民新党との間であれば二幹二政(幹事長・政調会長会談)になるのか、党首会談になるのか。相手はどういうことをこの会合で要求されているのか。それからもう一つ、党のほうとのプロセスも大臣が出てやるような場面が出てくるのか。どういうことが週末に起こるのかということを想像されているのでしょうか。
(答)常識的な想像しか申し上げられないのですけれども、国民新党とは、民主党、国民新党の責任者、どのレベルか分かりませんけれども、多分話をきちんとされると思います。
 それから、党の調査会のほうは、党の御要望を入れたり、地方の御要望を入れた、今お手元にある紙は今日初めて御覧になるので、地方の要望が入ったかどうかということも確認されるでしょうし、民主党が言っていましたデフレでの関係とか、一連の問題について我々としては出来る限りの書きぶりをしたつもりですが、それに対して御意見が出てくると思います。
(問)先ほどの質問、国と地方の関係に関する話ですが、先ほど大臣はPBの黒字化半減、黒字化については何の影響も与えないと、地方単独を入れてもということを仰いましたが、地方単独は、地方は7.2兆円、15年度で9.3兆円と言っています。どれぐらいの部分の幅を入れるから、入れるのか入れないのかよく分からないのですけれども、それがある程度どれぐらいという規模がないと、PBの部分に関して影響を与えないというのを入れないと思うのですけれども、地方単独は一体幾らぐらいというふうに想定されているのかというのを1点お願いします。
(答)これはまさにこれから精査して数字を出していくということですが、その限界はやはり財政再建目標も同時に達成しなければならないので、そういうことも地方にはお考えをいただかなければいけないという実際上の制約があります。
(問)もう一点、今度は党の話で、書き加えられたところで、経済状況の好転を前提としてという部分を書き加えられていますが、勿論これ104条にもそういうふうに書いてあると思うのですけれども、結局これがある限り、いつまでたっても進まないという懸念もあるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
(答)そんなことはありません。経済状態の好転というのは、やはりそのときの内閣が判断するということです。
(問)今の経済情勢の好転の関係なのですけれども、抜本改革の実施時期については、経済情勢の好転という条件を付していて、一方で党から要望の強いデフレの問題についてはそこと直接リンクさせない形で経済成長の話のほうに盛り込んでいらしたのですが、その意味合いというのを大臣のお考えをお聞かせいただけますか。デフレと、やはり消費税の引き上げというのは直接リンクするものではないと、そういう意味合いとして受け取っていいのかどうか。
(答)消費税に関して法的整備を平成23年度中に行うと、実施時期は民主党の公約に縛られている部分がありますけれども、実施しようと思ったら予期せざる異常な事態が発生していたと。そういうときは、平素のときに物を考えないと政治の判断としては妥当性を欠くということで、これはあくまでも予期せざる事態に対する弾力性も持っていますという文章でございます。
(問)6月2日以降の議論なのですけれども、一部拙速だとかという話が出ていますけれども、率直な感想として、消費税を引き上げるべきか否かという議論や、あるいはこの社会保障改革でもって、どのように国民に便益が広がるのかという議論よりも、むしろ地方との取り分の争いと言うと言葉は悪いですけれども、霞ヶ関の争いみたいなところに何となく時間が割かれて、本質的な部分が国民に伝わらなかったのではないかというふうな印象を受けているのですが、6月2日以降の議論の運びについては、大臣どのようにお感じになったでしょうか。
(答)地方との話というのは最後の僅か5日間ぐらいの話で、そう大して時間がかかっているわけではない。これは、社会保障改革の本体をきちんと決めることと、やはり10%、あと5%が必要だという認識を政府・与党内で高めていくということでして、地方との問題はきちんと意見も分かっていましたし、それなりの対応ということを考えていたわけで、そう時間がかかったわけでないし、意外なことが起こったわけでもない。多分、こういう御要望があるだろうと。その御要望にはこういうふうにこたえていくということは、予め考えていたことなので、驚くような内容にはなっていない。ただ、国民の理解を深めるためにという点では、やはり今回の税制改革は社会保障の財源を確かなものにして現行の社会保障制度の持続可能性を高める。それと同時に、若干足りないところやほころびもあるので、そういうところを充実させようということと、1兆円を超える効率化もやっております。それに画期的なのはやはり社会保障に関する番号制度をきっちりやろうということになっているので、これはこの成案には間に合いませんでしたけれども、近々、法案要綱も出てまいりますので、いよいよ番号制度が具体化、制度化されるのは近い。これは画期的なことの一つだと思っています。
(問)今日出てきた成案ですけれども、地方の声とか経済の好転というような表現を入れたりと配慮されているのはよく分かるのですけれども、それはどちらかというと、まだ具体的な制度設計のところには至っていないと思いますが、20日以降、その案が決まったとして、あとこういう具体的な議論というのをいつどのように進めるべきとお考えか、まず教えてください。
(答)デフレの問題というのは10年はやっていませんけれども、この7、8年ぐらいデフレ対策ということを政府も言ってきたわけです。私は、一度デフレという言葉をこの役所の文書から消したことがある。それは何故かといいますと、デフレの定義がよく分からない中で、デフレ対策、デフレ対策と、何か対策があるように皆思うのですけれども、デフレというのは非常に複雑な要因から成り立っていて、こういう対策をすればデフレがきれいに消えるという問題ではない。本当のデフレ対策というのは、日本の経済の真の力が強いかどうかということにかかわっているので、お金の流動性の利用とかマネーサプライとか、そういう話で決まってくるものではないというのが私の持論でございまして、デフレを直すために日銀に何かやってくれと言っても、ほぼ限界に来ているのではないかと思います。とはいえ、日銀との連携は極めて大事であるということは申し上げるまでもありません。
(問)伺いたかったのは、麻生さんのときに2011年度の消費増税というのを言っていたけれども、結局経済状況もあり実現は出来ていません。今回、この案をつくったことで、より前回の自公政権で決めたときよりも、更に一歩踏み出しているということが出来ているという実感というのは、おありなのでしょうか。
(答)閣議決定までいたしますので、それ自体は大変重い決定だと思います。
(問)確認なのですが、PBの改善に寄与する3%、消費税の3%、これは動かないということでよろしいのでしょうか。
(答)そういうことでございます。
(問)ということは、地方の単独事業がどのように、認められたとしても、これにもし影響があるとしたら、恐らく制度改革に伴う増の1%分について何かやりくりがあるということという理解なのでしょうか。
(中村内閣官房社会保障改革担当室長)基本的には、増税に伴う経費と、機能強化充実分になる経費がプライマリー・バランスの改善に寄与しない部分ですけれども、社会保障4経費に関係する地方単独事業として、リストも総務省から粗々のものが出てきておりますが、精査によって範囲が明らかになると思いますので、3%の枠内におさまらないということを今想定しているわけではありません。
(問)もう一点、消費税の現行の5%分も含めて社会保障に使われるということは、地方が今交付税として、一般財源として使っている分も含めて、もうこれは社会保障に使うのだということは地方も納得する、あるいはそういう意味として、この案を理解してよろしいのでしょうか。
(答)あくまでも観念的な話なのですけれども、10%になったときの内の1%は地方消費税という名前がついておりますから、地方の独自財源として、これは地方の自由な意思で使われるわけです。それから、交付税という形で地方に配分されていることも、やはりその地方交付税は社会保障費に使われるのだというきちんとした説明をするということを総務省は言っておりますから、全体のうちの9%は社会保障費に充当されると、こういう仕組みになっております。
(問)景気の話なのですけれども、一部報道で6月の月例経済報告のほうを4カ月ぶりに上方修正ということなのですが、大臣のほうから見て、今経済というのはそういうところまで来ているという御見解でしょうか。
(答)月例経済報告の話を今すると叱られるので、それは勘弁していただきたいのですけれども、日銀も見方を変えてきましたし、供給的な制約とか、供給面での制約とか、自粛ムードとか等々の、経済に覆い被さっていた色々な悪い話がどんどんなくなってきて、輸出も回復していますし、消費マインドも改善していますから、また日銀、IMF等も来年の日本の経済成長率が2%を超えたものを出しておりますから、それはこれから悪くなるのではなくて、良くなるのだと考えたほうが正しいと思います。
(問)先ほど消費税を10%にした場合にも地方消費税は1%というふうに仰いましたけれども、そうしますと、国と地方の消費税の割合、4対1という割合は、これは変えてしまうということなのでしょうか。そこを確認させてください。
(答)国と地方の割合は、入口ベースで言うのか、出口ベースで言うのかということが大事なので、必ずしも入口ベースで拘る必要はなく、どこの経路を通ってどう出たかということのほうが大事でございますし、地方のことは地方を尊重するということで、この財源について政府だけが使うことになるということではなくて、社会保障の担い手全体で公平な均てんが行われるということでございます。
(問)今回まとまった案の中にも地方消費税を充実するという表現があるのですけれども、そうしますと、その辺りはどう考えているのでしょうか。
(答)これは附則104条の引用でございます。
(問)充実することにならないのではないですか、1%のままのということであれば。
(答)精神を書いておくことは大事なことなのです。

(以上)