与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年4月13日

(平成23年4月13日(水) 10:54~11:09  於:合同庁舎第4号館4階共用408会議室)

1.発言要旨

 月例経済報告等に関する関係閣僚会議の概要を御報告いたします。
 景気の基調判断につきましては、「持ち直していたが、東日本大震災の影響により、このところ弱い動きとなっている。また、失業率が高水準にあるなど依然として厳しい状況にある。」と下方に変更しております。
 これは、2月までは景気の持ち直しが確認されるものの、3月の震災以降は、地震の直接的被害や部品供給の停滞等を通じた生産活動の低下、供給制約やマインドの悪化等による消費の弱まりなどが生じているといった現状を踏まえたものであります。
 先行きにつきましては、当面は震災の影響から弱い動きが続くと見込まれます。その後、生産活動が回復していくのに伴い、景気が持ち直していくことが期待されますが、電力供給の制約やサプライチェーン立て直しの遅れ等により、景気が下振れするリスクが存在することに注意が必要であります。
 政策の基本的態度につきましては、政府は、震災の影響等を踏まえ、国民生活及び経済活動の安定に総力を挙げて取り組むこと、このため、被災地への支援のための補正予算を早急に編成することを記述しております。
 なお、今回は震災の経済的影響とその対応について、各省庁の御協力のもと、内閣府において資料を取りまとめ、その概要についても御報告をさせていただきました。
 以上でございます。

2.質疑応答

(問)まずですが、「このところ弱い動きとなっている」という表現の持つ意味なんですけれども、方向感としては、景気の一時的な下向きの動きを指しているのか、それともこれが後退局面に入っていると、もしくはその差しかかっていると、そういう位置づけであるのか、その方向感についてお願いしたいと思います。
(答)これは多くのエコノミスト、あるいは内閣府の中でも検討しておりますけれども、震災の影響は一時的、一時的と言っても1週間とか一月ということではなくて、数カ月間、いろいろな間接的な被害、マインドの冷え込み等ですけれども、やはり年末にかけては景気は上昇していくということが今多くのエコノミストが考えていることであります。
 今の御質問にお答えするとすれば、これは短期のことを言っているということです。
(問)それから、先ほどおっしゃったこの表現の原因に、今まで日本経済がしばらく直面したことのない供給サイドの制約ということを強調されましたが、これはここ十数年余り経験したことのない事態であると思うのですけれども、その辺について大臣、御所見があれば教えてください。
(答)これは供給が全産業にわたって供給力が落ちたということではなくて、幾つかの特異点で起きていると。その代表的なものは電力、それから小さい部品、我々が気づかないような小さな部品、あるいはパーツというものが実はアセンブリー産業にとっては決定的な意味を持っている。仮の話をすれば、一つの部品がなくても自動車は完成できないと、そういう面でのサプライチェーンと言っておりますけれども、部品供給のすそ野の広がり方というのが我々が想像していた以上にすそ野が広い。そこのどこか1カ所で部品ができなくなると、アセンブリー産業自体にとっては製品が生産できないという、我々が今まで気がつかなかったような現象が起きているということだと思います。
(問)それから、いただいた資料の中にある地震の影響なんですけれども、今来たばかりなので、詳細には読めないのですが、これの要点としては、この地震の影響が例えば16兆円から25兆円とおっしゃっていた直接な被害からさらに拡大するのか、もしくはフロー面において、かなり長期間の影響を与えるというような内容になっているのか、ちょっとかいつまんで御説明いただけるとありがたいです。
(齋藤統括官)お手元にお配りした資料は、各省庁から経済的な影響について、どう見ているかということを提出していただいたものでございます。
 今のお尋ねですけれども、ストック面の話とフロー面の話、両方ございましたけれども、資料では混在をしております。しかも定量的な話では必ずしもないので、したがって今までの分析に比べてどうかということは、申し上げにくいところです。
 資料のポイントを御紹介いたしますと、まず供給側で申しますと、被災地では農林水産業を始めとして、鉱工業を含めて、広範なところで大きな影響を受けているけれども、ただ徐々に立ち直りつつあるところもあるとのことです。
 ただ、すべてがそうかというと、そうではなくて、例えば自動車で言うと、再開されてもかなり操業度を調整しなければいけないというような状況にあるとか、電気機械では世界で高いシェアを持つマイコンとかシリコンウェハとかリチウム電池とか、こういったところについては再開が遅れているというようなことがあります。
 それから、原子力発電所の事故の影響は大きく、半径30キロ以内では工場が操業停止しているほか、農産物などにも影響が出ていると報告されています。
 それから、被災地以外で申しますと、今、大臣からも御説明がありましたように、サプライチェーンで大きな影響を受けています。それから、計画停電についてもかなり影響が出てきています。
 「抜粋」で言うと3枚目になると思いますけれども、24時間操業を基本とする、また、設備の立ち上げに長時間を要する、それから、一つの生産工程が長時間に及ぶといったところ、こういった産業においては、計画停電によって、生産継続にかなりの支障が起きているということでございます。この他、計画停電の関係で言うと、飲食店とか百貨店でも影響が出ているということです。
 それ以外にも一部供給のボトルネックが出ているところもありますが、他方、代替生産で補完できる可能性が出てきているということでございますし、実際そういう動きもありますけれども、必ずしも十分ではないということであります。
 次に需要側では、カップ麺だとか缶詰だとかペットボトル水など、震災直後にかなり売れたものがあって、品切れになった状況もありましたけれども、今そういった面は落ち着きつつあって、むしろ問題は消費者の買い控えとか自粛ムードであるということで、高級品が売れないとか、外食、旅行などのサービス業に対する需要が減っているというような報告がございます。
 あとは風評被害が出ているということで、輸出についてもいろいろな検査だとか証明書を要求されるとか、場合によっては輸入停止の動きが出ているというようなこともありますし、それから海外からの観光客などがキャンセルをしてきているし、航空需要も減っている。コンテナ船も寄港を取りやめるというようなこともあるという報告がされています。それから、もちろん青果物についても、需要の減少が見られるということであります。
 他方で、住宅がかなりの程度被災していますので、これは徐々にこれから再建されたり、補修されていくと、それが需要の増加になるのではないかというようなことでございます。
 以上の他、雇用とか物価、金融面についても報告がありますけれども、いずれにしても、現状を詳細に把握するということが今回の各省庁からの報告を求めた理由でございまして、それはかなり出てきていると思います。しかし、フロー面だとかストック面での影響が以前の分析に比べてどうかということについては、それを十分判断できるような状況にはなっていないと思います。
(問)先行きのリスクなんですが、先ほど一時的とおっしゃいましたけれども、一時的な影響にとどまりそうだとおっしゃいましたが、見通しと地震の影響がどのくらいの期間に影響がありそうかということと、それからもし長期化する可能性があるとすれば、どういうところにリスクがあるのかというところを教えてください。
(答)震災地の話とか、それからサプライチェーンの回復というのは、どの方の意見を聞いても数カ月の話で、震災地は震災地でこれから復興計画を立てて着々とやっていくと、これは3年とか4年とか5年とか、時間がかかります。
 経済自体のリスクというか、不安定要因で最大のものは何かというと、電力の供給の問題、それから原子力発電所のあの状況がこのままであの規模できれいにおさまるかということ、それから風評被害というのは国内ばかりではなくて、今日お渡しした資料の中にあると思いますけれども、いろいろな国で検査はどうなったとか、ちょっと買えないとかというのがそういう海外にも及んでいる。
 そういうまだどこまでそれが続いていくかというわからない要素がありますけれども、とりあえず部品供給等は数カ月の単位、それから震災地の回復は数年の単位と、原子力はまだ本当のところはわからないと、そういうことじゃないかと思います。
(問)先ほど年末にかけて景気は上昇していくと多くのエコノミストが見ているというお話があったんですけれども、その見方は大体大臣の見方と整合しているのでしょうか。
(答)私もそうであってほしいと思っています。

(以上)