玄葉内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年4月26日

(平成23年4月26日(火) 10:19~10:42  於:内閣府本府5階522記者会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 本日の閣議では、野田財務大臣の財政演説についての御説明がありました。
 その後、閣僚懇談会に入りまして、私から一つの提案をいたしました。どういう提案かといいますと、被災地、特に地震、津波、原発、風評という四重苦で苦しんでいる福島で、臨時閣議あるいは対策本部を開いてはいかがかというものでございます。その理由は、やはり政治の強い意志を示す必要があるということ、つまり、必ず皆さんを守るということです。それと、多くの閣僚が福島に滞在することで、安全性をきちっとアピールするということもありますし、復興に対するメッセージということもございます。その後、例えば市場に出回っている福島の産品を食べて、宮城や岩手も含めた被災地に向かって、激励や視察をしてはいかがかという提案をさせていただいたところでございます。慎重な意見も一部から出まして、検討していくということになったということです。
 さらに、自見金融担当大臣、そして私から、やはり今回は前代未聞の事態なので、前代未聞の対応をしていかないといけないと申し上げました。例えば、商工業者というのは、本当に融資しかございません。阪神・淡路大震災のときは、まだ今よりも財政状況も景気も良かったのですが、今回は、財政状況も悪いし景気も良くない中で、しかも中小零細企業が非常に多い、あるいは個人商店主などが非常に多いという状況の中で、震災があった後、本当に立ち上がれるのかという強い危機感を持っているということで、やはり既存の制度とか枠を超えて対応していく必要があるのではないかということを、自見大臣も私も申し上げたところでございます。それに対して、まずは海江田経済産業大臣のところで、しっかりと検討するよう総理からの指示がなされたということでございます。
 私からは以上です。

2.質疑応答

(問)先ほどの臨時閣議の話で、慎重な意見もあったということですが、具体的にはどういう理由でございますか。
(答)理由はわかりませんけれども、それは好ましくないということをおっしゃった方が1人いらっしゃいました。
(問)23日に福島で、原子力発電所に関して、今後、2030年までに14基以上の原発を新たに増設するというエネルギー基本計画について、この計画はあり得ないとおっしゃったと伺っていますけれども、これは大臣御自身のお考えなのか、それとも民主党のお考えなのか、政府のお考えなのか、こちらの方はいかがでしょうか。
(答)エネルギー基本計画は、経済産業省でまずつくり上げるものでございます。ただ同時に、私が総合調整を担当している地球温暖化の問題に当たって、実は2030年までに原発新規14基増設というのが大前提になっているということです。私は、この温暖化の調整をするに当たって、原発14基の増設というのはあり得ないのではないかと思います。つまりは、そうではない仕組みをつくり上げて、温暖化目標をつくり上げていかなければならないし、そのプロセスを築いていかなければならないという趣旨で申し上げました。
(問)4月20日の民主党内での復興ビジョン会合で、ソフトバンクの孫正義社長が、東日本ソーラーベルト構想ということを提案されて、太陽光や風力発電を、津波の被害で塩害を受けた農地等に設置してはどうかということを御提案なさっております。これについて、大臣の御見解をいただければと思います。
(答)いつも申し上げておりますけれども、私は、これから東日本の復興に当たって、今おっしゃったような─太陽経済圏という構想もありますけれども、─太陽光、風力、水力あるいは地熱等の再生可能エネルギー、あるいは蓄電池や超伝導といった新しい技術、送電ロスを少なくすることができるスマートグリッドを十二分に活用したエネルギー基本計画にしなければいけないし、それらを東日本復興のいわば一つの目玉にしていくべきだと思います。そういった工場なども含めて、東日本に、あるいは今回の被災地に集積していくということを国家戦略プロジェクトとして行っていくべきではないかというのが私の見解でございます。
(問)統一地方選についてお伺いします。この24日で、前半戦、後半戦、両方終了したわけですけれども、この結果に対する大臣の受け止めと、党内には、菅総理大臣を含めて執行部の責任を問う声も上がっていますけれども、こうした声をどのように受け止めるか、お聞かせください。
(答)選挙というのは、やはり常に結果を真摯に受け止めないといけないし、基本的には今回の選挙は負けだと考えなければいけないと思います。
 同時に、いわゆる責任論というのは、私は、岡田幹事長の幹事長就任時に、岡田幹事長を支えるという約束をいたしましたので、その約束を守る、つまりは幹事長の意思を基本的に常に尊重しながら支えていきたいと考えております。
(問)復興のための組織ですけれども、菅総理が先週の記者会見で、野党にも協力を求めた復興実施本部というのを提案されましたけれども、それについて大臣の意見はどうでしょうか。また、検討状況は如何でしょうか。
(答)正直、その時点では十分理解をしておりませんでしたけれども、今の案の中にある、いわゆる政府にでき上がる復興のための本部、全閣僚が構成メンバーとなっている本部がありますが、これは、仮に復興庁ができても、同じように本部ができ上がる可能性はあると思いますけれども、その本部にメンバーとして、恐らく国民新党の代表、自民党の党首、公明党の党首に入っていただきたいという御趣旨なのかなと推測をしているところでありまして、それができるなら、できるに越したことはないのではないかと思います。
(問)全閣僚メンバーの復興対策本部とはまた別のものですか。
(答)いや、そこにお入りになられるという趣旨なのかなと推測をしています。あくまで推測です。総理がお考えになっていることで、私が考えたことではありません。
(問)復興庁に関して、来年4月に設置するというのを自民党側に伝えたという話もありますけれども、こちらについてはいかがでしょうか。
(答)それは伝えておりません。現状、私の考え方は基本的に変わっておりません。つまりは、スピード感を持って実が上がる組織体制がいいということです。しかも、ある一定の段階で強力に実施できる機関ができ上がれば、より望ましいという考え方は私としては変わっておりません。そういう考え方を持ちつつ、官邸と野党、自民党、公明党などと現在調整をしているところだということでございます。
(問)仙谷官房副長官が、復興院や復興庁といったような組織をつくるのは望ましくないのではないかという趣旨の発言をされているのですけれども、これについてどのようなお考えでしょうか。
(答)結局、復興院とか復興庁という組織をつくるときにも、二つのパターンがあると思います。つまりは、復興庁とか復興院というのをある段階から二段階論でつくり上げるということもできます。最初は本部を立ち上げて、復興計画をその本部の事務局で構想会議の提言を受けてつくり上げる、つまり企画立案をするということです。そして、ある段階で復興庁、復興院になるということです。そのときの復興庁、復興院も二つのパターンがあって、一つは、あくまで企画立案・総合調整型の復興院、復興庁と、いわゆる実施部門、執行部門すべてを含む復興院、復興庁という場合と、二つあり得るのだろうと思います。恐らく官邸は、そういった実施機関、つまりは権限の切り分けが生じるようなことについては、極めて否定的な見解を現時点で持っているということなのではないかと考えております。そういったことも含めて、現時点で調整中ということです。そう延ばすわけにはまいりませんので、やはりある時期で区切って、どこかで判断をして党内を調整したいと考えております。
(問)そうしますと裏返しで、企画立案・総合調整型の復興院、復興庁であれば、官邸も別に否定的ではないということになりますでしょうか。
(答)恐らく仮にそういうことであれば、私は十二分に調整可能だと思います。
(問)科学技術と宇宙のことで質問させてください。
 先ほど再生可能エネルギーのお話をされましたけれども、これは長年研究が進んできていますけれども、なかなか実用化が大きく進まないという問題がありますが、今後、科学技術担当としてはどのように進められるお考えでしょうか。
(答)長年、日本国政府はこの分野に一定の精力を注ぎ込んできたということですが、本気であったのかと問いたいと思っています。私は本気でなかったと見ています。本腰を入れてこの問題に取り組んだときに、日本人の新たな可能性が見えてくると考えています。つまり、日本人の得意分野に十二分になり得るはずなのに、してこなかったのではないかと思っています。
 この間も、資源エネルギー庁の幹部を呼んで、本気で考えるべきだという話をいたしました。先ほど申し上げたようなことを私も申し上げるようになりましたし、恐らく経済産業省も考え始めるのではないかと思います。そのときに大事なことは、これもいつも申し上げていますけれども、R&Dをやはり国家戦略上、前倒しをすることだと思います。つまり事業化がなかなか進まない、しかし、実はあちこちでかなり興味深い研究がなされて、事業化一歩手前まで来ている分野について、しっかり後押しをするというのが、私は戦略・戦術上極めて大切だと考えております。
(問)次に、宇宙ですけれども、昨日、準天頂衛星開発利用検討ワーキンググループの報告書を受けて、宇宙開発戦略専門調査会で検討が始まりました。実現のために行政組織をいじって、具体的には宇宙庁とは書いていないのですが、そういう組織をつくるというような検討をしておりますけれども、大臣は、行政組織を宇宙のために変えていくということ、今の時点でどのようにお考えでしょうか。
(答)準天頂衛星の話はこの間も出ました。現在は宇宙開発戦略本部ではなくて、基本的にまだ専門家の方々が、時々、阿久津政務官が入っているようでありますけれども、検討したという段階ですから、これから私のところに上がって、今回の大震災を受けて、改めて政治的検討をするということでございます。
 大震災直前に、私としては、そろそろ宇宙開発の体制、方向性を決め始めなければいけないということで、しっかりと検討を加えようと思っていたところ、今回の事態になりましたので、改めて宇宙開発の体制については、宇宙庁がいいのか、それとも今のように旧科学技術庁の関連性を強く持たせる方がいいのか、あるいはそれ以外の形があり得るのか、予断を持たずに、私としては一番あるべき体制を追求したいと考えております。
(問)どのぐらいのタイミングになりますでしょうか。
(答)残念ながら今は申し上げることはできませんけれども、できるだけ早くと思っています。
(問)経済政策の包括的な見直しについて、検討を始めているかと思うのですが、先ほどおっしゃいましたエネルギー基本計画の見直しですとか、温暖化の25%の目標ですとか、現時点ではどんなことが対象として案の中に挙がっているのでしょうか。
(答)例えば財政運営戦略を考える上でプライマリーバランス、赤字対GDP比という指標を使っているわけでありますけれども、結局、今回の事態を受けて、復興債を仮に出す場合、その償還財源をどうするのかによって全く違ってきます。出しっ放しであれば、財政運営戦略を大きく見直さざるを得なくなります。あるいは別会計にするのか、そうではないのかによって変わってきます。つまりは、それぞれについて一定の整理が必要なものがあります。
 それと、新成長戦略については、基本的にはやはり質的転換を図らざるを得ないのではないかという問題意識が当然あります。あるいは、農業強化策と包括的経済連携の問題についても工程表の変化もあり得ます。人生観や価値観を変えるような、これだけの出来事、大きなことを言えば、文明史的な出来事があった中で、全くこれまでと変わらず、平板に、これまでの延長線上にこれからの日本があるとは考えにくいと思います。
 ただ一方、人口減少、少子高齢化等この国が持つ根本的な課題というのは変わりません。そういった中でどうやって、子どもたち、あるいは孫たちに豊かさを引き継ぐのか。もっと言えば、その子どもたち、孫たちに引き継ぐ豊かさとは一体何なのか。そういった大きな方向性を、この大震災を受けて一回整理をし、再設計をして、強くメッセージとして打ち出さなければいけないのではないか、あるいは世界に対しても、別の日本をしっかり表現していかなければいけないのではないか、私はそういう問題意識を持っているところでございます。
(問)先ほど原発の14基新設はあり得ないというお話がございましたが、鳩山前総理時代の温暖化の25%の削減目標というのは、実際、原発の新設というのも前提になっていたと思うのですが、現時点においてこの25%という目標は今後も成立し得るのかどうか、お願いします。
(答)基本的に、短期と中長期に分けて考えないといけないと思います。短期的には、どうしても火力に一定程度頼らざるを得ないと思います。ちなみに、御存じのように、2020年までに25%削減というのは前提条件付きです。もう一つ基本計画が閣議決定されていまして、2030年までに30%削減というのは真水であります。この2030年30%というのは、別次元の技術に移行するというのが大前提となっております。その技術の内容を、あるいは対象を一定程度変えていくということが私は大切だと思います。したがって、そういったことを整理しながら、最終的に温暖化目標についてもしっかり打ち出しをしていきたいと考えております。

(以上)