玄葉内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成23年4月22日

(平成23年4月22日(金) 9:38~10:00  於:内閣府本府5階522記者会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。
 本日は、閣議の前に、経済情勢に関する検討会合がございました。与謝野経済財政担当大臣から発表があったかと思いますけれども、この大きな人類史上初めての事態を受けて、今後の政策推進のための全体指針をつくり上げて、連休後に発表すべきであるということになりました。それに当たっては私と与謝野大臣で話し合って、その内容についてしっかりとたたき台をつくるようにという指示があったところでございます。本日は、国家戦略の観点から説明をさせていただき、同時に与謝野大臣の方から、マクロの経済・財政の観点からプレゼンがあり、自由に意見交換をさせていただいたということでございます。
 基本的に日本の置かれた状況というのは、震災前から、人口減少、そして少子高齢化の中で、子どもたちにいかに豊かさを引き継ぐかという課題に我々は向き合っていたわけでありますけれども、今回の事態をまずどうとらえるのか。多くの日本人の人生観や価値観を変える出来事だったわけでありますけれども、そういったことをやはりきちっと整理しながら、国家戦略の再設計をしていく必要があるのではないか、日本全体の再生戦略を築き上げていく必要があるのではないかという話を私からさせていただきました。したがって、新成長戦略の中身も、やはり質的転換を図っていかなければならないということを申し上げた次第でございます。
 その後の閣議では、特に第1次補正予算の概算について、野田財務大臣から御報告がございまして閣議決定されました。総理からは3点お話がございました。一つは、今回第1次補正予算の概算の発表があったということで、いよいよ次の段階に入っていくということ。二つ目は、まさに再スタート、再出発ということであるけれども、それに当たって、一つは世界からの信任、これは財政のことも含めておっしゃっているのではないかと推測いたします。それともう一つは、いわゆる新成長戦略の再設計が必要になるのではないかという話を、前半の私の意見なども踏まえておっしゃっておられたと思います。そして、三つ目は、昨日福島に行ってきたけれども、御自分の反省も含めて、改めて各閣僚に被災者の立場というものをよくよく考えてこれからの震災対応、復旧、復興に当たるようにというお話があったところでございます。
 私からは以上でございます。

2.質疑応答

(問)先ほど紹介された総理の反省も含めてというのは、どういう趣旨で理解されていますか。
(答)それはよくわかりませんけれども、もちろん私は、総理は被災者の立場を常々お考えになっておられたと理解をいたします。ただ、私も公の場で一度申し上げましたけれども、20~30キロ圏内の方々はもう帰れないということを側近の松本内閣官房参与が軽々に言ってしまうとか、そういったことも含めて、多分おっしゃったのではないかと思います。
 いつも申し上げておりますけれども、被災者の心情、心境、心の痛みといったことを十二分に斟酌をして行動していかないと、今回の事態に向き合うことはできないと思っております。常に私が申し上げているのは、特に原発の被災者の皆さんにとって大切なことは、丁寧さでございます。つまり、一つは、やはり科学的根拠をもってきちっと説明をすること。十分な補償をすること。そしてコミュニケーションを十二分に基礎自治体の皆さん、住民の皆さんととっていただくことです。これはもう内々再三にわたって私自身申し上げてきたところでありまして、そのことを実感として感じていただけたのかなという意味で、私はよかったと考えているところでございます。
(問)新成長戦略の質的転換ということですけれども、もう少し、どういった内容をお考えになっているのか、現段階で考えられていることをお聞かせください。
(答)これは、まさに連休明けにしっかりと一定の方向を出させていただきたいと思っています。ただ、一例を敢えて挙げれば、新成長戦略にグリーンイノベーションというものがございますけれども、そのグリーンイノベーションの中身一つとっても、むしろ私は再強化しなければいけないと思います。地球温暖化の調整も私の所掌です。エネルギー基本計画は海江田経済産業大臣のところでありますけれども、2030年までに原発を新規に14基作れるはずがないわけであります。元々、日本のエネルギー戦略については、分散型エネルギーの問題、あるいは送配電システムの高度化といった問題に本腰を入れて取り組むことは考えられておりませんでした。しかし、まさに今こそ本腰を入れて根本から見直すべきは見直しをして、しかし一方で、地に足を着けるところは地に足を着けて、再生可能エネルギーあるいはスマートグリッド、超伝導、蓄電池を含めたシステム構築に力を注ぐべきだと思います。
 一方、日本人の技術力というのは、私は今でも世界から一目も二目も置かれていると思っています。これまでも申し上げてきましたけれども、特に環境技術の分野というのは世界一だと思っております。ですから、事業化一歩手前まで来ているR&Dなどは、やはりもっともっと重点化をして引き出して、そこから新たなエネルギー戦略というものを現実に地に足の着いたものにしていくといったことが一つ一つ変わっていくと思っていまして、やはり再設計をしていかなければならないのではないかと思います。
 今回、復興構想会議の梅原猛特別顧問が「文明災」という言葉を使われているようでありますけれども、私は原発を全否定するつもりは全くありません。ただ、やはり今回の事態というのは、多くの日本人に、本当に人生観や価値観、大きなことを言えば、世界観、文明観まで変えるような出来事だったと思います。そういう出来事があって、これまでと全く同じスピードで、全く同じことを国家戦略として行っていくことが本当に正しいのかどうか、あるいは国民的な合意形成が得られるのかどうか。そういったこともきちっと考えて、改めて日本の再生戦略を、子どもたちに豊かさを引き継ぐために、その豊かさは、具体的にこれまで想定していた豊かさと同じなのかどうかも含めて、しっかりもう一度考えてつくり上げていかなければならないのではないかという問題意識を持っております。
(問)今の全体指針というのは、その射程は主に新成長戦略で、税制等も今後、議論の射程に入ってくるのでしょうか。
(答)これは当然、財政運営戦略、もっと手前の問題でいえば中期財政フレームもありますし、あるいはエネルギー基本計画もあります。地球温暖化戦略もございます。これまで私のところで取りまとめていた経済連携と農業強化策をどうするのかという問題もございますし、まさにそれぞれ国家戦略にかかわる話でありまして、その内容と工程をどうしていくのかということについて、やはりどこかで新たなスイッチを押すときが必要だと思っています。そのときに今までと全く同じことを、改めて全部スタートさせますと言っても、単純に国民の皆さんの理解が得られないのではないかと考えております。
(問)2点ありまして、まず、科学技術政策についてどう変えていかれようとしているのかということと、もう一点、今日一部報道で「準天頂衛星に関するプロジェクトチーム」が7基上げるためには2,300億円必要だという報告書を今日の午後にまとめるそうですが、実際には7基つくるには、去年打ち上げた衛星も含めて3,000億円以上かかるプロジェクトになります。利用がどれだけあるかということが政府内でも疑問視されているのですが、これはそのまま今日の報告書を受けて進められるおつもりでしょうか。
(答)この間、科学技術政策についても、やはり今回の大きな事態を受けて、一度根本的な議論をする必要があるということを事務方に申し上げました。その上で、専門家の皆さんと来週議論する機会をつくりたいと考えております。当然、内容も一定程度変わってくると思います。
 そして、準天頂衛星でありますけれども、宇宙開発戦略本部が準天頂衛星を現在の1基から7基に増やす方針を固めた事実はございません。あるいは来年度予算で要求を行うといった事実もございません。このことも含めてきちっと議論をしなければいけません。
 準天頂衛星というのは、特に1基、3基、7基あることに意味があります。3基あれば24時間運用できるようになり、7基あれば、アメリカのGPSに依存しなくても済むということになります。今回の災害を受けて、防災にGPS、今回の準天頂衛星を使うという発想、あるいはその重要性を私は否定いたしませんけれども、根本的な議論をしてから、その上でしっかりと議論をしたいと思っていまして、一部報道であったということでありますが、私はそのことを知りませんし、仮にそうだとすれば、それは少しどうなのかなという感じでございます。
(問)では、今日まとめる専門家の報告書に関しては、それは出すだけということに、まとめるだけということになりますか。
(答)少なくとも私は聞いておりませんので、私に提出されたら、もう一回根本から議論をし直していくということになろうかと思います。
(問)防災時の通信というのは非常に重要だと指摘されているように私も思いますけれども、この準天頂衛星は、過去10年間やろうとして引きずってきたもので、そのシステムをつくるのに、この準天頂衛星がふさわしいものかどうか含めて、もう少し技術的な精査が必要ではないかと思うのですが、そのあたり大臣としてはどうお考えですか。
(答)御指摘のことも含め、今回の大震災が私たちに突きつけたもの、問いかけたものの方が、むしろ私は大事だと思っていますが、そのことをもう一回きちっと考えて、その上で優先順位を決めていきたいと考えております。
(問)復興基本法についてお伺いします。自民党は、昨日、党のたたき台をまとめまして、これまで主張してきたように新たな組織の設置を求めています。今日の民主党の内閣部門会議でも強力な組織が必要だという意見が出たようですけれども、この新たな組織の設置の是非について、大臣の現時点でのお考えをお聞かせください。
(答)私は、スピーディーで実が上がる組織体制が大切であると思っております。ですから、まずはやはりスピード感を持って復興のための計画をしっかりつくり上げることができる体制、その上で強力に実施できる体制の両方が備わればベストではないかと考えております。強力に実施をする体制という意味では、立ち上げに時間がかかりますけれども、ある段階から復興庁あるいは復興院のような一元化された体制、組織が立ち上がっていくということは、私は十二分にあっていい話だと思います。もっと申し上げれば、例えば原発の被災地の復興を想定したときに、やはり長い時間がかかることを想定しなければならないわけです。そういう中で、本部に事務局があって、その体制だけでその長い期間、いわば復興にスポットを当てていくことができるのかどうなのかという問題意識も、元々、私はございましたので、そういう意味では、いい議論をしていただいていると思っております。
(問)先ほどの新成長戦略の質的変化という部分で、今の新成長戦略は、インフラ輸出の中で原発の輸出を重要な位置に付けていますが、その点もやはり見直さざるを得ないという認識でしょうか。
(答)これも全体の青写真の中で位置付けを考えたいと思いますが、やはり一度立ち止まらないといけないと思います。一度立ち止まって、まず今回の事故の原因究明を、第三者機関を使ってきちっとやっていかなければならないと思います。そこからのスタートだと思います。
 ただ、科学技術そのものについては、私は国家戦略上、極めて大切なテーマだと思いますが、やはり科学技術にも光と影があるということではないだろうかと思います。ですから、特にエネルギー政策については、先ほど申し上げたような方向を強く打ち出していかなければならないのではないかと思っています。一方、科学技術全般については、例えばアメリカはスペースシャトルのチャレンジャーの打ち上げに失敗して、宇宙飛行士が残念な事態になって、その後、徹底して事故の原因を究明し、また新たな挑戦をしていくということがありましたが、これは一般論ですけれども、やはり科学技術というのはそういうところがあると思っていまして、そういう意味で光と影があり、その影を克服していかなければいけないと思います。
(問)先ほど経済連携と農業強化の話がありましたが、TPPについて、6月までにある程度の方向をというスケジュールに関してはどうなるのでしょうか。
(答)これも含めて連休明けにきちっと出すために、今、しっかりと内部で検討をしている最中でございます。ただ、言えることは、国と国との絆、これが経済連携ですから、経済連携の重要性というのは、私は変わらないと思います。その中で、いわばどういう経済連携手段を用いるか、しかもそれを戦術的にどういう時間軸で行うのかという部分についての工程表の変化ということはあり得るのかなと思います。

(以上)