前原内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成22年9月3日

(平成22年9月3日(金) 10:31~10:56  於:国土交通省会見室)

1.発言要旨

 おはようございます。私の方から二点ございます。まずは、北方領土への入域についてでございます。北方領土への入域につきましては、累次の閣議了解によりまして、特別の枠組み、例えば四島交流、それから北方墓参、緊急人道支援などによるものを除きまして、自粛を要請してきたところでございますが、最近、一部の我が国国民がロシアの出入域手続、つまりはビザを取得してということでございますけれども、それに従って北方領土に入域する事例が確認をされております。このような行為は、我が国の固有の領土たる北方領土に関する政府の政策と相いれず、国民一般に北方領土問題に対する誤った理解をもたらしかねないものでございます。また、長年にわたり問題の解決を切望されてきた元島民の方々や、返還運動に携わってこられた方々の思いに反するものでございまして、今後の返還運動に大きな影響を及ぼすものと考えております。本日の閣議におきまして、北方対策担当大臣として、岡田外務大臣とともに、各大臣に対し累次の閣議了解の趣旨の周知・徹底につき協力を要請いたしました。国民の皆様方に対しては、特別の枠組みによるものを除き、北方領土への入域は自粛されますように改めてお願い申し上げたいと思います。なお、国土交通大臣といたしまして、一部の事例については旅行業者が関与したことから、観光庁においても旅行業界に対し文書による周知・徹底を図ることとしたところでございます。二点目についてでございますが、海上保安庁の人事についてでございます。8月18日に発生をいたしました第六管区海上保安本部所属のヘリコプター墜落事故によりまして5名の乗組員が死亡するという事故の重大性、また事故とは関係が無かったとはいえデモ飛行を行っていたことを公表しなかったという問題などを踏まえまして、私から海上保安庁長官に対しまして、第六管区海上保安部の体制立て直しにつきまして検討指示をいたしました。9月10日付けで第六管区海上保安本部の本部長に第二管区海上保安本部長の三木基実を、また同本部の次長に海上保安庁交通部安全課航行指導室長の藤井寿夫を充てる人事異動を行うことを、今朝、鈴木長官から内示をしたという報告がございました。三木新本部長は、これまで海上保安庁のヘリコプター操縦士としての乗務経験がございます。大型巡視船の航空長や航空基地長を歴任するなど航空関係の業務に精通をしております。藤井新次長は海上交通安全関係の職務を歴任をして、第六管区海上保安本部が管轄をする瀬戸内海の安全対策にも精通をしております。第六管区海上保安本部においては、新たな体制の下で空と海の安全対策に万全を期すように努力をしてもらいたい。そのように考えております。私の方からは以上です。

2.質疑応答

(問)代表選について伺います。1日に告示されて両候補の政策が発表され、昨日は討論会も行われましたが、改めて両候補の政策上の相違点、評価を伺いたいのですけれども、とりわけ小沢さんについては予算編成の在り方について、例えばこの夏のシーリング、概算要求で一律10%カットだとか、政治主導になってないと、官僚主導のままで自民党時代と変わらないじゃないかという主張があるのですが、予算編成に携わる責任者のお一人として、その辺りどのように評価されているのかお願いします。
(答)今までの閣議、閣僚懇談会の経緯をよく御存じでないのではないかという気がいたします。我々は昨年の衆議院選挙のマニフェストに従いまして、公共事業費を1.3兆円削るということを一年間でやりました。これは四年でやるべきものを一年間でやった、まさに政治主導で行ったものでございます。その結果といたしまして、昨年の予算編成におきましては、例えば国土交通省の各部局においては前年度とは全く違った予算配分になりましたし、今回の予算についても、確かに形としては一律1割カットという形にはなっておりますけれども、私は最終形においては、公共事業費はもう四年で削るものを削ったわけでございまして、しっかりと前年度並みを確保したいとこのように考えておりますし、また累次の閣僚懇談会でも総理、官房長官、政調会長から、平成22年度の実績を勘案をして特別枠の査定を行うということで、まさに政治主導での予算配分をこれから行っていくことでございますので、一律1割カットというのは国民に対して批判をするのに聞こえは良いかもしれませんけれども、今までの予算編成過程の累次の閣議の経緯を知っておられないか、あるいは知っておられてもそれを無視して一律1割カットをことさら声高におっしゃっているか、そのどちらではないかという気がします。
(問)整備新幹線について一点ですけれども、先週の会見で未着工三区間の着工条件について示されましたが、時間がかかるものが多く含まれていたと思われますけれども、来年度の予算に提出するためには年末までに着工の是非を判断しないといけないと思いますが、大臣の現段階でのお考えをお願いします。
(答)昨年、政権交代の後にこの仕事に就いたときに、私が国民の皆様方、また国土交通省に申し上げましたのは、人口が減っている、少子高齢化が進みこれから少子化対策や社会保障費にお金がかかる、そして莫大な財政赤字というものがある中で、今までのような公共事業を総花的にやっていくのは無理だということを申し上げました。他方で、法律で決められている既着工の整備新幹線についてはきっちりやっていくということでございますので、尚更、未着工についてはしっかりとしたB/C、あるいは課題を設けてそれをクリアをしなければ着工の決断をしないということは、私は大切なポイントではないかと思っております。その上で着工に当たっての基本的な条件というのは安定的な財源見通しの確保、そして収支採算性、投資効果、そして営業主体としてのJRの同意、また並行在来線の経営分離についての沿線自治体の同意、これが基本的な方針で、そしてこの間お話しをしたとおり、北海道については青函共用走行区間における運行形態の在り方、並行在来線の経営の在り方、最高設計速度整備計画の見直し、これを新たに検討課題として加えましたし、北陸新幹線については白山総合車両基地と敦賀だけではなくて敦賀以西というものをしっかりと考えなければ、収支採算性というものについてはしっかりと対応できないと、また九州新幹線については肥前山口と武雄温泉の単線区間の取扱いとフリーゲージトレインの取扱いと、フリーゲージトレインもまだ曲線部においては普通の特急よりも更に10kmから40kmくらい速度が落ちるという報告を受けておりまして、今の段階では今実用できるという状況にはないという話を聞いております。いずれにいたしましても、このような条件をしっかり満たしていただくということが大事でありますので、こういった条件を満たすということを確認した段階で次の段階に進んでいくことになろうと思います。
(問)北方領土へのビザを取得した上での入域が相次いでいることについて、返還運動団体等から、より厳しい政府の対応が必要ではないかという声が出ておりますが、今の閣議了解を超えた更なる強い措置をとるお考えがあるかどうかその辺をお聞かせ願います。
(答)累次の閣議了解において、先ほどお話しをいたしましたように特別の枠組みによるものは除きまして北方領土に入域することを自粛するというのが政府の考え方であり、政権交代後も我々の今の政権の考え方でもございます。これを徹底するように我々としては今回改めて閣議了解の周知・徹底をしていきたいと思っております。また今回のそういった認められない北方領土への入域については、旅行業者が介したことから旅行業界に対する注意喚起・徹底を、国土交通省観光庁としてしっかりやっていくということ、これの様子を見て我々としては推移を見守りたいと、このように考えております。
(問)第六管区の人事ですが、これは更迭の人事になると思うのですが、これは前原大臣からの指示という理解でよろしいのでしょうか。
(答)海上保安庁の人事は長官の権限に属するものでございます。ただ、今回の5名の乗組員の方が亡くなるということ、そしてまた事故とは直接関わりが無かったとはいえ、デモ飛行について第六管区でそれを隠すようなことがあったということ、そういった重大性にかんがみて、また現在広島航空基地においてはヘリの飛行は行っておりません、つまりは業務ができない状況にあるということから考えますと、体制の一新というものが今後の安全運航、そして何よりも通常の勤務を行っていく上で大事だということを私から判断をいたしまして、体制の立て直しというものを鈴木長官に対して指示をしたところでございまして、鈴木長官の下で新たな人事を決めていただいたということでございます。
(問)先ほどの北方領土の件は、冒頭では各大臣に周知・徹底を求めたとおっしゃいましたけれども、大臣は先ほど閣議了解とおっしゃいましたけれども、今日閣議了解、それとも大臣と岡田さんの方から各閣僚に対するもの、どちらなのでしょうか。
(答)私と岡田大臣から発言をしたということでございます。
(問)これは閣議了解ということでよろしいでしょうか。
(答)累次の閣議了解の徹底をしたと。
(問)新たな閣議了解ではないということですね。
(答)今申し上げたとおりです。
(問)そうすると、今回こうしたことが相次いでいる背景というのは、北方領土の返還がなかなか進んでいないという指摘もありますけれども、なぜこういったことが続いてきていると大臣はお考えでしょうか。
(答)戦後65年経ちまして、今まで当たり前だと思っていたことが徹底されなくなってきたということでありまして、その点をしっかりと徹底をし直すということに尽きるのではないかと思います。
(問)代表選ですが、小沢さんの方もこれまでずっとマスコミの取材等を受けつけなかったスタイルを改めて、テレビ出演等をやっていろいろと国民に対するメッセージの発信というのを強化しているように見えるのですけれども、昨日の討論会を受けて、改めて菅さんを支持している前原さんの方から小沢陣営のそういった動きについてどういうふうに受け止めていらっしゃるか、また菅さん御自身も自分は公務があるからとおっしゃっていますが、そういった現職の弱味というものをどのようにカバーして、どういった訴えを菅陣営としてはやっていくべきだとお考えでしょうか。
(答)小沢さんが代表選挙に名乗りを上げられて、いろいろなところで自分の考え方を述べられているということについては、私は大変結構なことではないかと思っております。他方、菅さんは現職の総理大臣でありますし、現下の円高対策、あるいは予算編成、そして様々な公務、これを最優先すべきであるということから考えると、私は菅さんが表に立って代表選挙に臨まれるのは、いわゆる候補者間の討論や共同記者会見、あるいは立ち会い演説会、そういったものに限定をされざるを得ないのではないかと思っております。そういった意味では、この代表選挙を通じて両候補の考え方をしっかり述べていただく機会が提供されているということについては、私は大変結構なことだと思います。その上で私の今の感想を申し上げますと、小沢さんはマニフェストを実行するために財源は生まれてくるということをおっしゃっております。そしてその財源の中核に据えておられるのは、いわゆるひも付き補助金といわれるものでございます。確かに我々はひも付き補助金を無くしていって一括交付金化していくということを、これは民主党全体として確認をしているところでございますけれども、ではひも付き補助金を4割、5割カットして、そうすれば財源が出てくるんだと、こういうことをおっしゃっておりますけれども、これはすなわちひも付き補助金のいわゆる使い道というのは公共事業でございますので、小沢さんは国の公共事業費を4割、5割カットするということをおっしゃっているのに等しいことを言われていると。それを御自身が気付かれているかどうかわかりませんけれども、我々はマニフェストで四年間で1.3兆円削るとは言いましたけれども、更に4割、5割削って他のマニフェストの財源に回すという話は一切していないし、小沢さんは地域の再生ということをおっしゃっていますけれども、ある程度の公共事業費がなければ地域の再生は図れないのではないかという、私はそういう思いをいたしております。また、ひも付き補助金は無くすんだと言われておりながら、高速道路については国が都道府県に渡して、そして高速道路建設の後押しをするんだとおっしゃっていますけれども、これはむしろ高速道路に対する新たなひも付き補助金を作るということでございまして、おっしゃっていることが全く矛盾をしているという気が私はいたします。それから、沖縄担当大臣という立場から普天間の問題の感想を申し上げますと、鳩山さんが選挙のときに県外、できれば国外とおっしゃって、それを私はそばで見ていて本当にそうしたいという思いで必死になって平野前官房長官と共にその道を模索をされましたが、結局それができずに最終的には8月31日にまとめた日米合意、つまりは沖縄、辺野古に戻ってきたわけであります。私は、もしアメリカ、沖縄と話をすれば必ず良い案があるんだということを全く具体論無くおっしゃるということは、鳩山さんが苦しまれたこの10か月は一体何だったんだということになりかねないし、野党の代表選挙ならまだしも勝ったら総理大臣になる人がそういう対応で果たして良いのかという思いを私は強く持っております。いずれにいたしましても、そういうことも含めて代表選挙で政策が競い合われるということは大変結構なことでございますし、国民の皆さん、党員サポーターの皆さん、また国会議員の皆さん方には、誰が言葉ではなくて本当に政権を取ったときに政権を担い得るのか、またその具体的な政策は持っておられるのかということをしっかりと把握をし、吟味をした上で投票を行っていただきたいと、そういう思いを持っております。
(問)今御発言があった小沢さんの昨日の代表選のお話の中で、財源として無利子国債の話に触れていたところがありました。公共事業の予算として無利子国債を充てるようなことを示唆されていたと思いますが、そのことについて無尽蔵な公共事業の拡大につながらないかという懸念もありますが、どのようにお考えでしょうか。
(答)まずは、先ほど申し上げたようにマニフェストを実行するために財源はあると、その財源はひも付き補助金というものを無くして一括交付金化すれば4割、5割は出るんだとおっしゃっておりましたが、それはすなわち公共事業費を4割、5割削減をするということでございまして、それをマニフェストの財源に充てながら、また公共事業の財源にまた新たな国債、それはどういった形であれ国債で賄うという、そういった考え方には矛盾を感じます。ただ一般論として、私は無利子国債については否定的な考え方を持っておりません。この無利子国債については、将来の相続税の減額分がどれ位になるのかということと、今の経済状況をしっかりと担保をしていくために、私は議論をし得る考え方と思っておりますので、無利子国債という議論そのものは私は否定をしませんがそれをいわゆる財源として、一方でひも付き補助金を削ったらマニフェストの財源というものが出てくるとおっしゃりながら、公共事業の財源にするという考え方は、それ自体は論理矛盾しているのではないかと思います。
(問)代表選についてですが、菅さんの推薦人に名前を連ねた理由と、その立場からしてこういう主張をもっとした方が良いのではないかということがあればお願いします。
(答)菅総理に任命をされてこの仕事をしているわけでありまして、これはいわゆる閣僚一体となって菅政権を支えていく、そしてまたその菅政権の下で決めた予算、政策を進めていくということをやっている途上でございますので、私は菅総理を応援するのが極めて当たり前で、普通の感覚の中でそういう考え方に至りました。菅総理に望むことというのは、先ほども申し上げましたけれども、代表選挙が行われてはおりますけれども、菅総理は現職の総理大臣でございますので、現下の問題、日本が抱えている問題にしっかりとその日その日取り組んでいただく、そのことがむしろ総理としての安定感、あるいは期待というものを生むのではないかと、そういう思いを持っております。
(問)政治とカネの問題とか、国の総理大臣が短期間にころころ替わるのが良くないとか、その辺が議論の中心の一部を占めていると思いますが、それについてはどうお考えでしょうか。
(答)これは、投票される方が判断をされることだと思いますけれども、多くの国民の皆様方が3か月前に政治とカネの問題で幹事長を責任を取って辞めた人が代表選挙に出るのはどうかという思いを持っておられるのは当然だと思いますし、そのことを踏まえて私は議員の方々は御判断をされるべきではないかと思います。
(問)沖縄県の与那国島であった国の補助金の不正使用について御存じでしたらお答えいただきたいのですが、内閣府が10分の8を補助している与那国サポーター支援事業というのがあって、これは本来講師に払われる費用が払われていなかったり、港の整備に使われていたりと、本来使われるべきものに使われていなくて不正に使用されたことが発覚しているのですが、国としてどこまで事実を把握しているかということと、場合によっては返還を求めるのか、どのように対応するのかという点をお願いします。
(答)与那国島の案件については、内閣府から報告は受けておりますが、現在事実関係を精査しているということで、現時点においては細かい話は、コメントは避けさせていただきたいと思います。

(以上)