与謝野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 平成21年4月17日

(平成21年4月17日(金) 8:52~9:05  於:衆議院議員食堂)

1.発言要旨

 閣議は案件通りでございました。

2.質疑応答

(問)経済財政諮問会議ですけれども、今日から、骨太の方針に向けて本格的な社会保障と財政の話がキックオフするかと思うのですけれども、昨日の民放のテレビ番組でもプライマリーバランス等々について色々ご発言がありましたが、改めて現下の経済財政の目標等の見直しについてのお考えをお聞かせください。
(答)財政に関する目標というのは、努力目標であると同時に、努力の結果、到達可能な目標でなければならないと思っております。
 もちろん、何年か使ってまいりましたプライマリーバランスというのは、この時代、大きな意味も働きもあったと思いますけれども、実際厳密にプライマリーバランスという概念を考えますと、その到達の仕方によっては財政が発散してしまうというモデルも書けますし、また、収束するというモデルも当然書けるわけで、実はプライマリーバランスは一定の結果だけを約束するものではありません。
 近年の債務の増加の状況を考えますと、プライマリーバランスの到達の仕方というのは、到達することも難しいですし、到達の仕方もかなり難しい。そういう意味で、国会の答弁では何度も、この旗は相当傷んでボロになっている、ただ、財政規律を考えると残しておいた方がいい、という答弁をしてまいりましたけれども、税収の動向あるいは経済の状況、諸々のことを考えますと、国民に分かりやすい経済財政の目標は、幾つかありますけれども、その中の財政健全化目標としての別のメルクマールが、もしかしたら必要になるのではないかと思っております。
(問)昨日、自民党の柳澤さんのところのプロジェクト・チームで、市場の危機対応の法案の骨格が固まりましたが、その中に日本政策投資銀行の民営化は3年間事実上延長するという趣旨の内容が盛り込まれる見通しになりました。この政投銀の民営化について、与謝野大臣は以前も委員会でご発言されていますが、この3年延長についてはどのようにお考えになりますか。
(答)民間会社に政府が命令出来るのかという問題がありまして、政府のこういう不況下における手足と申しますか、ツールと申しますか、そういうものは果たして民間会社で出来るのだろうかということなので、民営化の方向は変えないにしても、その時期を若干延ばすという党の方のご判断は、多分相当な根拠のある話だろうと思っております。
(問)一定程度の株を政府が持ち続けるべきではないかという議論もありますが、それについてはいかがですか。
(答)そういう議論も、政府との関係、政府との絆、紐帯を、特に危機対応業務にとりましては、株の保有を通じて、政府の意思と政投銀の意思が合致する可能性、蓋然性を高めておくということは、必要なのかもしれません。まだ議論の結論は聞いておりません。
(問)先日の財制審後の会見で、西室会長からプライマリーバランスについても小泉改革以来の一里塚であるから残しておいた方がいいというご発言があったのですが、そのことについてのご所感と、確認なんですが、プライマリーバランスという旗はもうボロボロになったので、それは旗を降ろすという意味なのか、それとも旗は残しておいて別の指標というものも並び立つ形で模索をするというイメージなのか、そこについてご説明ください。
(答)プライマリーバランスというのは、どんなやり方をしても一度は通過していくのだろうと思いますので、残ると言えば残りますし、旗は立てておいて、相当ボロになっていますけれども、財政規律を常に思い出すためには、そういうことも必要かなという気もします。
(問)西室会長は残しておいた方がいいということだったのですけれども、いかがでしょうか。
(答)どういうふうにしても残ります。
(問)自民党内で、マニフェストに国会議員の世襲制限を設けたらどうだという話もあるのですが、大臣はこの国会議員の世襲についてどのようなお考えをお持ちでしょうか。
(答)これは色々なケースがありますから、にわかに断じることは出来ない。党の方でよく議論されたらいいんじゃないかと思います。
(問)先程のプライマリーバランスの件で、到達の仕方によっては発散する可能性もあるとおっしゃっていたんですけれども、どういったケースを念頭に置いておっしゃっているのか、もう少し説明していただきたいんですが。
(答)こういうケースを考えればいいわけです。あなたの収入が月1万円で、生活の何から何まで月1万円で出来ます、というのがプライマリーバランス。だけれど、あなたは1億円も2億円も借金がある。それはもう間違いなく発散する世界。だけれど、見かけはプライマリーバランスに到達しているわけです。プライマリーバランスというのは借金の利払い、元本払いを除いた世界で収支が合っているか、というだけの話ですから。
 1万円の収入で1万円の支出でも、借金ゼロの人はプライマリーバランス、イコール財政が均衡したという世界だけれど、1万円しか収入がなくて1万円の生活をしているのだけれども、実は借金は5,000円しかない場合はというと、ぼちぼち100円ずつ払っていけば50カ月で返せるわけです。そういうのは明らかに収束していくプライマリーバランスだけれど、先ほどの1億円の場合のように発散するプライマリーバランスというのはモデル的にはすぐ書けるわけです。自分の収入と自分の支出が一致したのをプライマリーバランスと言うわけですけれども、それは、全く借金のことは忘れてバランス出来たかどうか、元本の支払い、支払うべき利息を捨象して物事を論じていますから、プライマリーバランスに到達しましたと言っても、そこから先は天国に行くか地獄に行くかぐらいの差が出来てしまうという問題がある。
(問)その到達する時期について、プライマリーバランスの黒字化ですけれども、11年度の黒字化ということを大目標にして様々な社会保障の費用とか公共事業の費用の削減とかという話をしてきたと思うのですが、その11年度という時期は、はっきり後ずれさせるという目標も出すのですか。
(答)今関係者が色々なシミュレーションの前提となる数字を選んだりしていて、ものすごい組み合わせの計算をしなきゃいけないんです。金利、成長率から何から、色々なシミュレーションをするための前提となる数値自体が変動する。そういう中で、どういう幅の考え方ならそこに結果が落ち込むかなというのを今計算していますから、もう暫くかかると思います。
(問)社会保障の費用とか公共事業の3%シーリングとか、そういったものも大きく目標を変えるということになるということですか。
(答)今シミュレーションをやっていますが、今ある計画目標は変えないでやっていると思います。例えば歳出削減目標は変えないとか。シミュレーションですから、色々な変数を、色々な値をとって今作業をやっている最中です。
(問)プライマリーバランスの新たな別のメルクマールが必要になるというお考えということなんですが、昨日おっしゃっていたような債務残高対GDP比、そういうものをお考えですか。
(答)みんなが見て、なるほどなというのはどこかな、というのもこれからの勉強ですね。2050年に到達すると言っても、みんな信じないでしょう。あと40年はという、そういう目標では、多分ない。私は確かにまだその頃は元気です、というぐらいのところでないと、2050年という人は、あと40年だから30歳の人も70歳になってしまう。
 日本の財政を再建するためには相当の年数を要するんですよ。

(以上)