内閣府 Cabinet Office, Government of Japan

内閣府ホーム  >  内閣府の政策  >  みどりの学術賞  >  過去のみどりの学術賞  >  第7回みどりの学術賞 受賞者  >  受賞者プロフィール 鷲谷 いづみ

受賞者プロフィール 鷲谷 いづみ

プロフィール

鷲谷氏の写真

鷲谷 いづみ(わしたに・いづみ)

東京大学大学院農学生命科学研究科教授

昭和25年3月22日、東京都生まれ
昭和47年、東京大学理学部卒業
昭和53年、東京大学大学院理学系研究科博士課程修了
昭和53年、理学博士(東京大学)
昭和61年、筑波大学生物科学系講師
平成 4年、筑波大学生物科学系助教授
平成12年、東京大学大学院農学生命科学研究科教授 現在に至る

平成9年、松下幸之助花の万博第5回記念奨励賞
平成23年、日本生態学会功労賞

受賞者紹介

 同氏は、植物の種子発芽や成長に関する生理生態学や繁殖生態学を基礎として、野生植物の保全、侵略的外来種の生態影響、里山や水辺の生物多様性の保全と再生などに関する広範な研究および普及活動を行い、日本において保全生態学を確立した。

 1980年代ごろから野生植物の絶滅危惧が顕在化してきた。同氏は、この問題に対して、生理生態学、送粉昆虫との相互作用や授粉様式の解析,および個体群生態学的手法などを適用し、科学的知見に基づいた保全手法を開発・定着させた。なかでも、サクラソウの保全に関する研究は、遺伝子レベルの多様性や集団遺伝学的解析を加えた、生活史全体にわたって保全の問題点を解明する総合的研究であり、同氏はそのコーディネータとしてリーダーシップを発揮し、「サクラソウ・エコゲノム・プロジェクト」として成功させた。これら一連の研究により、日本における絶滅危惧植物の保全に関する科学的分析の手法が確立されたと言える。

 また、里山や水田、河川の氾濫原など、近年の人間活動の変化による生態系や生物多様性の劣化に注目し、それらの保全手法を科学的に解明した。これらの種や生態系は、日本の身近な自然として特徴的なものであるが、最近数十年間で農林業が伝統的な方法から機械化・近代化したものに変化したことや、河川や湖、海岸などの管理手法が変化し、人工構造物が増えたことなどにより生息環境が失われ、その劣化が危惧されている。そのため、その保全には科学的なメカニズムの解明だけでなく、実際の農林業や河川の行政施策の中に反映させることが重要である。このような状況で、行政や地域住民との協働的実践を通じて、蓄積されてきた生態学的研究を現実的な技術手法として発展させた。このような、日本の里山に典型的にみられる、持続的な利用とそれによる生物多様性保全という考え方は、「Satoyama」として国際的にも注目され、生物多様性条約の中でも、Satoyama Initiativeとして採択された。

 一方、外来生物が日本の在来種や生態系、さらに人間社会に与える影響についても先駆的な研究を行っている。ハウス栽培のトマトなどの受粉のために輸入されるセイヨウオオマルハナバチは、日本在来のマルハナバチ類と競合し、これらを駆逐するだけでなく、日本在来の野生植物の繁殖についても、その送粉における相互作用を通じて影響を与える。同氏はこうした侵略的外来種問題の生態学的メカニズムを具体的に明らかにするとともに、セイヨウオオマルハナバチの侵入・分布拡大の実態を市民との協働で広範に調査し、影響の大きさと対策の重要性を科学的に解明すると同時に、広く啓蒙した。さらに、類似の研究や情報を整理し、外来種とその影響に関する体系的取りまとめも行っている。

 これらの研究と並行して、1996年に保全生態学研究会の設立(現在は日本生態学会に吸収統合)や,学術雑誌「保全生態学研究」の創刊(現在は日本生態学会が刊行)に中心的役割を果たした。また、保全生態学、自然再生、外来種の影響などに関する多数の著書を発表し,自然との共生などに関する概念をわかりやすく一般に普及させると同時に、市民との協働活動を多数の地域で展開し、地域の生物多様性や生態系の保全にも大きな役割を果たしてきた。これら一連の活動を通じ、日本の保全生態学確立や、生態系・生物多様性の保全・再生活動において、多大な貢献をした。

内閣府 Cabinet Office, Government of Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)