内閣府 Cabinet Office, Government of Japan

内閣府ホーム  >  内閣府の政策  >  みどりの学術賞  >  過去のみどりの学術賞  >  第3回みどりの学術賞 受賞者  >  受賞者プロフィール 和田 正三

受賞者プロフィール 和田 正三

プロフィール

和田氏の写真

和田 正三(わだ・まさみつ)

九州大学大学院理学研究院特任教授、東京都立大学名誉教授

昭和16年8月20日、東京都生まれ。
昭和40年、東京大学理学部卒業。
昭和46年、東京大学大学院理学系研究科博士課程単位取得退学。東京大学理学部助手。
昭和47年、理学博士(東京大学)。
昭和56年、東京都立大学理学部助教授。
平成元年、東京都立大学理学部教授。
平成10年、岡崎国立共同研究機構基礎生物学研究所客員教授(併任)。
平成17年、東京都立大学名誉教授。自然科学研究機構基礎生物学研究所特任教授。
平成20年、九州大学大学院理学研究院特任教授。現在に至る。

平成16年、日本植物学会学術賞受賞(「植物の光形態形成に関する研究」に対して)。
平成17年、アメリカ植物生理学会 Corresponding Membership Award 受賞。
平成18年、日本植物生理学会賞受賞
      (「葉緑体光定位運動の光受容体と運動機構の解析」に対して)。
平成19年、アメリカ植物生理学会 The Fellow of ASPB Award 受賞。
平成21年、ドイツ・フンボルト財団 Humboldt Research Award 受賞。

受賞者紹介

 みどりの学術研究にとって、地球上をみどりに彩る植物の葉緑素の研究は、もっとも基礎的な課題である。葉緑素は、酸素発生型の光合成をする生物がもつ色素であり、細胞小器官をもつ植物においては、細胞小器官の一種である葉緑体に含まれている。葉緑素は、葉の緑色の元となり、有機物合成という生物にとって非常に大切な機能を担っている。農業生産、森林、造園、園芸、自然保護などの基盤になる植物の営みは、葉緑素のはたらきに依存しているといってよい。

 植物にとって、光合成を効率的に行うことは極めて重要である。植物は光に感応して芽を出し、成長し、光を吸収しやすいように葉を付けて、光合成の効率を高めようとする。これらの現象は「光形態形成」と呼ばれている。植物は光形態形成に見られる営みを行うため、光の情報を感知する光受容体を細胞内にもっている。

 いっぽう、葉緑体は、光の条件に応じて細胞内を移動する。光が弱い場合には、葉緑体はより多くの光を受けるように細胞の表面付近に集まるが、強い光の下では障害を避けるために細胞の側壁に移動する。光定位運動と呼ばれるこの現象は、19 世紀にはすでに観察されたものである。一定の場所に留まって生活する植物に普遍的に見られることから、植物の生存にとって重要な生理反応であると考えられてきた。

 同人は、植物の光形態形成、そして葉緑体の光定位運動において、光受容から現象発現にいたるまでのメカニズムを解明することに貢献してきた。

 第一に、植物の光形態形成とその光受容体の研究において、光に敏感で細胞構造が比較的単純なシダ植物の一種ホウライシダの配偶体を使い、細胞の伸張、膨潤、伸張の方向、細胞分裂のタイミング、位置などの諸現象を調べた。実験では、光の波長、強度、照射方向、偏光、細胞の部分照射などによりこうした現象を制御する方法を開発し、光形態形成を細胞のレベルで解析した。その結果、シダの光形態形成に働く光受容体の実体、各生理現象に関わる光受容体の細胞内分布、その作用のしくみ、さらに個々の現象にともなう細胞骨格の役割などを明らかにした。

 光受容体には、赤色光を吸収するフィトクロムや、青色光を吸収するフォトトロピンなどが知られている。同人は、この両者が融合したため赤色光も青色光も吸収できるキメラ光受容体をホウライシダから発見し、「ネオクロム」と命名した。この光受容体の機能解析を進めた結果、ネオクロムをもつシダでは光に向かって屈性するとき感度が非常に高まっていることがわかった。この成果にもとづき、同人は、「林の下のような薄暗い場所でもシダ植物が育成できるようになったのは、ネオクロムが大きく寄与したからである」とする仮説を提案している。

 また、緑藻類のヒザオリには、シダとは起源が異なるものの生理的な機能が同じであるネオクロムが存在していることを発見した。これは、2 つの光受容体の融合が、植物進化の途中で独立して2回起こったことを示しており、光受容体の進化をめぐる研究に重要な新知見を与えるものである。

 第二に、同人は、葉緑体の光定位運動において、光受容から現象発現にいたるまでに、どのような信号伝達が行われているかを明らかにした。まず、モデル植物であるシロイヌナズナの葉緑体運動に関する変異体を数多く選抜した。これらの変異体の遺伝解析と、原因遺伝子の機能解析を行った結果、強い光の下でみられる葉緑体の逃避反応や光屈性の光受容体が、「フォトトロピン2」と呼ばれるものであることを発見した。また、この逃避反応が葉緑体の光障害を減らすことも証明し、逃避反応が植物の生存に欠かせない生理現象であることを示した。さらに、赤色の光に誘導されるシダの葉緑体光定位運動の受容体がネオクロムであることを明らかにするなど、植物における葉緑体運動の光受容体をほぼ全面的に解明することに成功した。

 また、葉緑体運動の過程に遺伝子発現は関与しないこと、葉緑体の移動に従来まったく知られていなかったアクチンの微繊維が関わっていること、それが作られるには葉緑体の外包膜上にあるCHUP1というタンパク質が働いていることなどを明らかにした。このように同人は、葉緑体光定位運動の研究で常に世界の第一線で研究を続けている。

 これら一連の研究を通し、同人は、植物における光受容体の進化と、葉緑体の定位運動の意義、そしてその機構を明らかにした。このような光生物学における傑出した業績により、関連学会の学術賞などを受けてきた。さらに、日本植物学会、日本植物生理学会、国際光生物学連合など、みどりの学術を支える学会活動においても顕著な貢献を行っており、国際光生物学連合および日本植物学会の会長を歴任している。また、広く市民に向けた書籍を執筆するほか、学会が実施する一般向けの講演会にも参加するなどし、普及活動の面でも主導的な役割を果たしてきた。

内閣府 Cabinet Office, Government of Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)