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受賞者プロフィール 田畑 貞壽

プロフィール

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田畑 貞壽(たばた・さだとし)

千葉大学名誉教授

昭和6年3月3日 長野県生まれ
昭和29年 千葉大学園芸学部卒
昭和29年 東京都西部公園緑地事務所
昭和31年 日本住宅公団
昭和39年 パキスタン政府に出向(C.D.A計画専門官、イスラマバード計画に参加)
昭和43年 東京大学工学部都市工学科特別研究員
昭和46年 工学博士(東京大学)
昭和48年 千葉大学助教授
昭和53年 文部省長期在外研究員(ニューヨーク州立大学、カリフォルニア州立大学、
       カルガリー大学等)
昭和61年 千葉大学教授(園芸学部、大学院園芸学研究科、大学院自然科学研究科)
平成6年 千葉大学大学院自然科学研究科長
平成8年 千葉大学名誉教授
平成9年 上野学園大学教授
平成12年 (財)日本自然保護協会理事長

平成2年 IFLA(国際造園連合)日本代表(平成6年まで)
平成3年 日本造園学会会長(平成5年まで)
平成8年 農村計画学会副会長(平成10年まで)

昭和48年 日本造園学会学会賞
昭和57年 日本都市計画学会論文賞
昭和62年 日本公園緑地協会北村賞
平成3年 千葉県教育文化功労賞
平成10年 日本造園学会上原敬二賞
平成16年 日本都市計画学会功績賞
平成19年 千葉県環境保全功労賞

受賞者紹介

 近代以降我が国における地域、特に都市の緑地計画は、人口一人当たりの公園面積と近隣住区論による配置が唯一の方法であった。しかし、戦後の急激な都市化・人工化の到来は、自然生態的にみて健全な都市の緑地保全を要請するにいたる。

 みどりで覆われた緑被地は、水や大気や動植物の循環、生物の生息、人間との共生に、不可欠な存在である。

 同氏は、樹林、草原、水辺、湿地、農地、並木、公園、庭園、生垣、屋敷林などを「緑被地」として摘出する方法を考案した。コミュニティ、都市、農村など各種地域の「緑被地図」を作成し、「緑被地率」や「緑被率」を計測、緑被地率と都市開発など地域変容との関係性、歴史的変遷とその要因、傾斜度と残存緑被地率の関係などを考察することにより「緑被地構造」を解明した。このとき、緑被地率と人口密度、緑被地率と呼吸器系疾患、緑被地率と小動物の生息、緑被地率と地下水位との関係についても強い相関性があることを明らかにした。

 次いで都市生態系における緑被空間の機能について分析した。緑被地の分布形と緑被地率による環境保全機能、微気象の改善機能、ヒートアイランド現象の緩和作用、防火・防災機能、レクリエーション機能、景観構成機能など多面的空間機能について、計測、調査、分析した上で、居住環境の保全創出に係る緑地環境計画の基本原則を導き整理した。

 なお、調査対象は多岐に及ぶ。武蔵野市、町田市など市域スケール、東京都など都道府県スケール、多摩川、神田川など流域スケール、印旛沼・手賀沼、東京湾岸など水辺地域スケール、首都圏、中部圏、イスラマバード首都圏など広域圏スケールへと、空間スケールのヒエラルキーによる自然地特性、地域特性、スケール特性など緑被地の形態や残存率の傾向などを踏まえ総合化を図り、地域の自然環境保全活用のための計画手法である「グリーンマトリックス システム」を導き、横浜市、港北ニュータウンなどの計画策定を通して、その有効性を確認した。この他、里山、里地、里海など都市周辺部の緑被地保全と生物多様性や水辺保全性との強い関連性をも明らかにした。

 1960年代、広域緑地計画のなかで、厳正自然保護、緑地保全、土地利用分級などを客観的かつ自然科学的方法により具体化する社会的要請に対し各国で研究が進められたが、同氏の研究『都市のグリーンマトリックス』(1979年)の公刊は、G.A.ヒルズ(カナダ)、P.H.ルイス(アメリカ)とほぼ同じ時期(1979年)であって、I.マクハーグ(アメリカ)の『Designwith Nature』に次ぐ大きな意義を持つ著書であった。しかも複雑で多様な地質、地形、植生、水理など独特の日本の国土に適用できる実際的手法であったので、全国各地の「緑の基本計画」の策定にあたり、広く応用され、その有効性が実証された。

 以上のように、一連の緑被地研究は、それまでのような公園緑地のみに偏せず地域の自然環境を総体として把握できる「緑被地」という新概念の創出によって、また指標としての「緑被率」「緑被地率」「自然地率」による独自な分析法の確立によって、都市・農村を問わず、また地区・地域・国土のレベルを問わず、そしてまた江戸切絵図や明治期迅速図の活用による過去・空中写真による現在・グリーンマトリックス システムによる将来へと続く「緑の履歴・社会変化と緑被構造の関係性を踏まえた科学的緑地計画論」を可能にし、日本各地の「緑の基本計画」や「自然環境保全計画」に応用されることで、国土の自然とみどりの保全回復に大きく貢献してきた。

 同氏の自然保護や緑地保全への熱意は今なお衰えず、その成果を東アジアに展開すべく国際会議で講演を続けるなど、また、10年余にわたって(財)日本自然保護協会理事長として市民と共にみどりの保全や保護活動の下支え役を果たすなど、斯学の発展に大きく貢献した。

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