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受賞者プロフィール

プロフィール

篠崎 和子(しのざき・かずこ)

東京大学大学院農学生命科学研究科教授

昭和29年5月26日 群馬県出身
  同52年 日本女子大学家政学部家政理学科(現理学部物質生物学科)卒業
  同54年 東京工業大学大学院総合理工学研究科修士課程修了 
  同57年 東京工業大学大学院総合理工学研究科博士課程修了(理学博士)
   同57年 日本学術振興会特別研究員(国立遺伝学研究所)
  同59年 名古屋大学遺伝子実験施設特別研究員
  同62年 ロックフェラー大学ポストドクターフェロー
平成 元年 理化学研究所基礎科学特別研究員
  同 5年 農林水産省国際農林水産業研究センター生物資源部主任研究官
  同12年 (独)国際農林水産業研究センター生物資源部主任研究員
  同16年 東京大学大学院農学生命科学研究科教授
  現在に至る

受賞者紹介

<植物の環境ストレス応答機構の解明と耐性作物の開発>

 近年の温暖化等による地球規模の環境劣化や開発途上地域での爆発的な人口増加などにより、近い将来、食料の安定的な供給は人類にとって最も大きな課題になると考えられている。乾燥地帯や塩類集積地などの劣悪環境でも多くの収穫が望める環境ストレス耐性作物の開発が望まれており、ストレス応答に関わる遺伝子を同定し改変することによって強い耐性を持つ作物を作出する多数の試みがなされてきた。しかし、環境ストレスに対する植物の耐性機構が複雑なことから、耐性度を大きく向上する作物の開発は遅れている。

 篠崎氏は分子遺伝学解析や先端的なマイクロアレイおよびメタボローム解析などの手法を用いてモデル植物シロイヌナズナから環境ストレスの受容と耐性に関わる多くの遺伝子を見出し、複雑な植物の環境ストレス耐性の仕組みの全貌を明らかにするとともに、植物の環境ストレス耐性を強める鍵となるマスター遺伝子を同定した。さらに、マスター遺伝子の働きを強化することによって作物の環境ストレス耐性の増強が可能であることを実証した。

 篠崎氏は1994年に乾燥・低温・高塩濃度などの複数の環境ストレスによって誘導される遺伝子の解析から、発現誘導のために必要十分な塩基配列領域を初めて見出した。ついで1998年にこの塩基配列領域に結合する2種類の転写調節因子(DREB1とDREB2)を同定し、植物が環境ストレスを受容すると細胞内でこれらの因子が合成され、多数のストレス誘導遺伝子が働き始めるために、その植物が環境ストレス耐性を持つことを示した。この一連の研究によって、転写調節因子(DREB1とDREB2)が植物の環境ストレス耐性獲得のマスター遺伝子であることが実証され、この遺伝子の働きを強めることによって作物や樹木など様々な植物種の環境ストレス耐性を増強することができるとの期待から、国際的に広く注目された。また篠崎氏は、植物ホルモンの一つであるアブシシン酸によって制御される環境ストレス受容の仕組みについても研究を進め、2009年にはアブシシン酸によって制御される新たな転写調節因子(AREB)を発見し、AREBが活性を持つためのタンパク質修飾の機構を明らかにして、AREBも環境ストレス耐性のマスター遺伝子であることを示した。このように、篠崎氏の研究によって植物が持つ環境ストレス耐性の分子機構の全体像が明確になってきた。

 さらに篠崎氏は環境ストレス耐性作物の開発においても国際的なリーダーとして海外の研究機関と活発な共同研究を進めている。イネ・コムギ・トウモロコシ・トマト・ダイズ・イモ・牧草など多くの作物種にDREB1やDREB2、AREBなどのマスター遺伝子を一部改変して導入することによって乾燥・低温・高温・高塩濃度など様々な過酷な環境ストレスの下で十分な収量を得る品種が得られており、海外では野外の農場で栽培実験が進められている。

 以上のように篠崎氏の研究成果は、今後頻発することが予想される大規模な干ばつなどの地球規模の気候変動の影響に対応した食料の安定生産や地球環境の保全に向けた具体的な提案につながる広がりを持った大きな貢献であり、高く評価されるものである。

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