内閣府 Cabinet Office, Government of Japan

内閣府ホーム  >  内閣府の政策  >  みどりの学術賞  >  過去のみどりの学術賞  >  第6回みどりの学術賞 受賞者  >  受賞者プロフィール 新城 長有

受賞者プロフィール 新城 長有

プロフィール

新城氏の写真

新城 長有(しんじょう・ちょうゆう)

琉球大学名誉教授

昭和6年10月31日 沖縄県生まれ
昭和32年 琉球大学農家政学部卒
昭和35年 九州大学大学院農学研究科農学専攻修士課程修了
昭和35年 琉球大学農家政工学部講師
昭和39年 琉球大学農家政工学部助教授
昭和47年 琉球大学農学部助教授
昭和50年 農学博士(九州大学)
昭和55年 琉球大学農学部教授
平成9年 琉球大学名誉教授

昭和54年 日本育種学会賞
昭和59年 沖縄タイムス文化賞
平成5年 日本農学賞、読売農学賞
平成8年 紫綬褒章
平成15年 勲三等旭日中綬章

受賞者紹介

 収量やストレス耐性などに関して雑種がその両親よりも優れている現象を雑種強勢(ヘテローシス)と呼び、トウモロコシや野菜などの他殖性作物においてはこれを利用したヘテローシス育種が一般的である。一方、自殖性作物であるイネにおいては雑種の種子を大量に得ることが難しいために1960 年代までヘテローシス育種は実用化されていなかった。

 同氏は世界各地のイネ品種を栽培することが可能な沖縄の環境を活用して大規模な研究を展開し、「細胞質雄性不稔系統」とその「維持系統」、子実の稔性を回復させるための「稔性回復系統」からなる「三系法」を確立し、雑種イネの育種に関する基本材料の開発に成功した。

 この不稔性は核内遺伝子と細胞質遺伝子の相互作用によって発現し、細胞質に不稔遺伝子があって核内にその回復遺伝子が無い場合にのみ花粉の発達が阻害されて雄性不稔となる。この雄性不稔性は花粉で発現する配偶体型の遺伝形質であり、減数分裂は正常に進行するが、一核期で花粉の発育が停止する。なお、本形質は雌性配偶子(卵)の発育には関係せず、主な農業形質(出穂日、穂数、草丈など)にもほとんど影響しない。

 細胞質雄性不稔系統は細胞質に雄性不稔遺伝子を持ち、核内には稔性回復遺伝子を持たないので、花粉が不稔となり、それ自身では種子ができない。従って、これを維持・増殖するためには正常の細胞質を持ち、稔性回復遺伝子を持たない維持系統を父親として交配する必要がある。この交配により、細胞質に母親由来の不稔遺伝子を持つ雄性不稔系統が安定して維持される。一方、ハイブリッド米として栽培するには当然種子が実らなければならないので、核内に稔性回復遺伝子を持った稔性回復系統を父親として交配することにより栽培用の種子を大量に生産する。

 同氏は世界各地の栽培品種や野生種を大量に調査して、不稔細胞質には多くのタイプが存在すること、稔性回復遺伝子にも数種類あって、そのうち二つの遺伝子については連鎖分析によって座乗染色体を明らかにした。

 世界の15 ヶ国から蒐集した153 品種については、インド・バングラデッシュ地域に由来するわずか4品種が雄性不稔細胞質を持っていた。一方、野生稲130 系統については約半数の62 系統が雄性不稔細胞質を持っており、本形質は栽培化の過程で淘汰されたものと見られた。153 の栽培品種の稔性回復遺伝子については54 品種が効果的な、28 品種が弱い稔性回復遺伝子を持ち、残りの71 品種は稔性回復遺伝子を持たないと見られた。稔性回復遺伝子は中国の長江付近を北限として南に向かって分布頻度が高まった。また、日本稲などの短粒種には少なく(8.5%)、インド稲などの長粒種には多い(62.9%)など、系統進化との関連が示された。

 インド型の栽培品種である Chinsurah Boro II ならびに Lead Rice に由来する雄性不稔細胞質を持つ実験系統とそれぞれ150 および213 の日本品種を交雑した実験によると、約1 割の品種が稔性回復遺伝子を持っており、それらは主に、近畿以南に分布していた。一方、野生稲に由来する雄性不稔細胞質に対しては日本の214 品種中に稔性回復遺伝子は見出されなかった。

 ハイブリッド米は30%程度の増収を示す場合が多いが、当時「米余り」の状況にあった日本では普及せず、人口増加に伴う食糧不足に悩んでいた中国に導入されて黎優57 号(日本のレイメイ由来)などが育成され、長江以南のインディカ栽培地帯に広く普及した。新聞報道によれば、1991 年には栽培面積で約50%(生産量で約60%)と長江以南ではほぼ全面的にハイブリッド米が栽培されて中国の米の増産に大きく貢献した。

 アジア地域の人口が増加する中で、米の増産は食糧需給を安定させる大きな鍵であり、わが国の食料安全保障にもつながっている。同氏によるハイブリッド米の研究と開発は日本発の大きな貢献である。

内閣府 Cabinet Office, Government of Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)