内閣府 Cabinet Office, Government of Japan

内閣府ホーム  >  内閣府の政策  >  みどりの学術賞  >  過去のみどりの学術賞  >  第8回みどりの学術賞 受賞者  >  受賞者プロフィール 柴岡 弘郎

受賞者プロフィール 柴岡 弘郎

プロフィール

柴岡氏の写真

柴岡 弘郎(しばおか・ひろお)

大阪大学名誉教授

昭和 9年1月21日、東京都生まれ
昭和31年、東京大学理学部卒業
昭和36年、東京大学大学院生物系研究科博士課程修了
昭和36年、理学博士(東京大学)
昭和42年、カリフォルニア大学 Research Fellow
昭和49年、東京都立大学理学部助教授
昭和56年、大阪大学理学部教授
平成 8年、大阪大学大学院理学研究科教授
平成 9年、大阪大学名誉教授  現在に至る

平成 4年、植物化学調節学会賞
平成 6年、日本植物生理学会論文賞
平成 6年、アメリカ植物生理学会 Corresponding Membership Award
平成 9年、国際植物生長調節物質学会 Distinguished Research Award
平成17年、南方熊楠賞
平成17年、日本植物学会賞大賞
平成23年、日本植物生理学会功績賞

受賞者紹介

 植物の成長がどのように起こるのか、植物学の最も基本的な問題である。特に茎は、細長く成長することによってかかるコストを少なくし効率よく光合成を行うことを可能にしているため、茎の伸長成長がどのようにコントロールされているのか、その分子機構の解明は植物生理学の大きな研究テーマとなってきた。

 柴岡弘郎氏は、植物細胞が細長く成長する分子機構の解明に取り組み、ジベレリンこそが鍵をにぎる植物ホルモンであることを明らかにした。植物では、細胞の成長方向は細胞壁のセルロース繊維の配向によって決まり、そのセルロースの配向を制御して決めるのは植物細胞の主要な細胞骨格、微小管(細胞質表層微小管)である。では細胞質表層微小管の配向を調節するものは何か。同氏は、「植物ホルモンのジベレリンが、微小管の配向を調節することを介して、セルロース繊維の方向を制御し、これにより細胞の成長方向を縦に限定することにより、茎を細長くする」という説を世界で初めて提唱し、これをエレガントな実験を駆使して証明してみせた。またこの研究の過程で、広く除草剤として使われていた化合物ジクロロベンゾニトリル(ジクロベニル)がセルロ?ス合成阻害剤であることを世界で初めて明らかにした。これは現在でも最も特異性の高いセルロース合成阻害剤として広く研究に使用されている。

 さらにまた植物細胞の細胞骨格(微小管、アクチン繊維)による植物形態形成や、細胞分裂制御機構の研究を行い、道管要素の細胞分化過程においてアクチン繊維が二次細胞壁沈着パターンを制御する事の発見など、評価の高い業績を挙げてきた。このように同氏は植物ホルモンの作用機序を中心に、植物の成長生理学分野において常に時代を先取りする世界的な研究を行い、国際的にも高い評価を受けてきた。また植物化学調節学会、日本植物学会ならびに日本植物生理学会等において活躍し、当該分野の発展に大きく貢献した。

 同氏の初期の研究で、社会的に高く評価されているのが、ヒマワリの首(茎の先端)が太陽を追いかける回旋運動に関する研究で、テレビ等で広く紹介されている。高校生時代から詳細な観察を続け、ヒマワリの若い茎の先端が、東から西に廻ること、花が咲くともう動かず、東か西を向いて止まる事、日のない夜中でも複雑な運動を続け、朝は日の出前に東を向く事などを明らかした。そしてヒマワリの茎は何度か太陽を追いかければリズムを身につけ、太陽がなくても同じ時間に首ふり運動すること、この「クセ」はなおるのに時間がかかることも見いだした。さらにこの研究を進める中でヒマワリの首ふり運動に関連する成長調節物質を発見し、ヘリアンジンと名付けた。

 ヒマワリの研究に始まった「植物を見て、植物に聞いて、答えをもらってまた考える」という研究スタイルはその後の研究においても貫かれており、学生や若い研究者に多大な影響を与え、特に植物生理学分野の若手研究者の育成に大きな貢献を果たしてきた。この同氏の研究スタイルは、植物そのものだけでなく、植物が生活する自然の理解をもめざす事につながり、結果として同氏の自然への造詣を深め、民族学的分野ならびに博物学的分野の研究に顕著な業績のあった研究者に送られる南方熊楠賞(自然科学の部)の受賞につながっている。

 また日本植物生理学会ホームページの「みんなの広場」での質問コーナーのサイエンスアドバイザーとして長く活躍し、小学生から大人の一般人まで、多くの人から様々な質問を受け、それに丁寧に答えるという活動を行ってきた。学術書も多く出版しているが、一般向けの啓蒙書も多数著し、今なお植物の不思議さや「みどり」の大切さを社会に発信し続けている。同氏のこれまでの活動は、「みどり」に対する国民の理解増進をはかる社会教育の観点、ならびに日本の将来を担う研究者育成の観点からも高く評価されるものである。

内閣府 Cabinet Office, Government of Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)