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受賞者プロフィール 佐藤 公行

プロフィール

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佐藤 公行(さとう・きみゆき)

岡山大学名誉教授

昭和10年7月9日 徳島県生まれ
昭和33年 岡山大学農学部卒
昭和34年 岡山大学理学専攻科修了(生物学専攻)
昭和42年 岡山大学理学部助手
昭和47年 理学博士(東京大学)
昭和57年 岡山大学理学部教授
平成 9年 岡山大学理学部長
平成11年 岡山大学副学長
平成13年 岡山大学名誉教授

平成14年 日本植物生理学会会長(平成15年まで)

平成 4年 国際光生物学協会 Finsen Lecturer Award
平成15年 山陽新聞賞(学術功労)
平成21年 国際光生物学協会 Finsen Medal

受賞者紹介

 みどりの植物の営む「光合成」は、太陽の光エネルギーを使って水を分解し、大気中に酸素を供給している。われわれ人類を含むすべての動物はこの酸素を呼吸することによって生きながらえている。一方、動物から吐き出された二酸化炭素(CO2)や工業的に放出されたCO2は、この太陽の光による水の分解で得られたエネルギーを使って炭水化物となり我々に食糧を提供している。同氏は、光合成の最も重要な反応である酸素の発生装置の研究のパイオニアとして国際的に最も高い評価を得ている。

 光合成は、みどりの植物の細胞の中に含まれる細胞内小器官のひとつの「葉緑体」で行われる。葉緑体の内部は層状の構造体(チラコイド膜)と可溶性部分(ストロマ)に二分され、前者で光エネルギーを化学エネルギーに変え(光化学反応)、このエネルギーを使ってストロマでCO2を固定して炭水化物を合成する。

 この光化学反応はチラコイド膜の中で行われるが、最初の反応は「光化学系II」と呼ばれ、光エネルギーを利用して水の分解を可能にする高い酸化力を生成し、CO2の固定に必要なATPとNADPHを生産する反応を駆動する場所で、光合成の反応で最も重要な位置を担っている。しかし、この光化学系IIは膜に埋め込まれているため、その研究は困難を極めていた。

 同氏は先ず、生化学的手法を駆使し永年の試行錯誤の末、「光化学系II複合体」を高純度に精製することに世界で初めて成功し、得られた色素タンパク質標品の色素(クロロフィルなど)およびタンパク質サブユニット組成を決定し、この複合体の全体像を明らかにした。この一連の研究成果は、その後の光化学系IIの研究の突破口となり、国際的にこの分野の研究が一気に加速した。

 次いで、同氏は「水を分解する活性を保持した光化学系II複合体」の精製にも世界で初めて成功した。これにより、光合成研究で最も解明が遅れていた「光が当たると植物から酸素がどのように放出されるか」という研究が可能となり、この分野の研究のブレークスルーとして大きく貢献した。さらに、光化学IIの初期光化学反応を担う最小単位である「光化学反応中心」を精製することにより同定し、そのサブユニット組成を解明することに成功した。

 これらの成果を基礎に、次に分子生物学的手法を導入して、光化学系II反応中心タンパク質の構造と機能を解析する研究をも進め、この方向においても大きな成果をあげた。同氏のこれら一連の研究成果は、世界的に極めて高く評価され、その後の光化学系II研究ひいては光合成の研究の発展に大きく寄与した。

 同氏は、これらの「光化学系II」に関する優れた先覚的な研究成果に対して、国際光生物学協会より、光生物学の進展に最も貢献した研究者に授与される伝統と格式の高いFinsen Medalを受賞した。このことは、同博士の研究が国際的に高く評価されていることを示す一例である。

 同氏をパイオニアとする「光化学系II」の研究成果を基に、現在、無限の太陽エネルギーを利用する「人工光合成」の技術開発が進められている。一方、この研究成果は、作物や樹木の生産性を高める技術開発の基になるものでもある。

 同氏はまた、日本植物生理学会の会長をはじめ植物科学の諸学会や、文部省学術審議会専門委員をはじめ国の委員会等の各種役職を務め、我が国の植物科学、特に光合成研究の発展に大きく貢献している。さらに、国際光生物学協会の副会長や国際光合成学会の事務局長なども務め、国際的にもこの分野の発展に寄与している。また、「生命を支える光」など一般向けの啓蒙書も出版し、みどりや光合成の重要性の理解にも努めている。

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