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受賞者プロフィール 中静 透

プロフィール

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中静 透(なかしずか・とおる)

東北大学大学院生命科学研究科教授

昭和31年3月8日、新潟県生まれ。
昭和58年、大阪市立大学大学院理学研究科後期博士過程単位取得退学(理学博士)。
昭和60年、農林水産省森林総合研究所
平成元年、農林水産省森林総合研究所主任研究官。
平成4年、農林水産省熱帯農業研究センター主任研究官。
平成5年、農林水産省国際農林水産業研究センター主任研究官。
平成6年、農林水産省森林総合研究所主任研究官。
平成7年、京都大学生態学研究センター教授。
平成13年、総合地球環境学研究所教授。
平成16年、人間文化研究機構総合地球環境学研究所教授。
平成18年、東北大学大学院生命科学研究科教授。
現在に至る。

平成15年、日本林学会賞受賞。
平成16年、松下幸之助花の万博記念賞受賞。

受賞者紹介

 人々が意識する「みどり」には、森林が大きな位置を占めている。同人は、約30年の長きにわたり、天然林を中心として、森林の動態を研究してきた。我が国の天然林ばかりでなく、熱帯雨林や季節林の動態についても精力的に研究を進めている。


新潟県・弥彦山の森林にて

 特に、長野県飯縄山、カヤノ平、秋田県森吉山、奈良県大台ヶ原山等をフィールドとして調査研究を実施した。これらの調査の結果、樹冠層の一部が壊れ、穴があくことによって、光が侵入し、林床の稚樹の光合成が盛んになり、森林が更新していくことの重要性を明らかにした。安定していると思われていた天然林が自ら新陳代謝を行い、代替わりを行っているわけである。この変化過程はギャップ・ダイナミックスとして、世界の多くの森林に共通する現象として認められている。また、ブナ林の更新を阻害しているササ類が、大面積で一斉枯死することによって森林の動態に大きな影響を与える事実を長期の観測によって明らかにした。さらに、太平洋側と日本海側のブナ林の成立や更新が大幅に異なる要因について、多くの研究者とネットワークを組織した研究によって、日本海側における冬期特有の深い積雪をもたらす気候が、我が国に特徴的なブナ林の形成と再生に多大な影響をもたらしていることを解明した。さらに、注目すべきは、天然林の生態研究を行うために極めて良好な条件を備えた茨城県の小川群落保護林を調査地として選び、数多くの研究者と共同し、天然林の動態を明らかにする研究を行った。その中で、多様な樹木がそれぞれの生態的地位と個体群動態を持つことによって、森林内で共存できる仕組みを明らかにした。また、植物のみならず、野生生物、昆虫、菌類、土壌、土地利用など広い分野の研究者と共同で、天然林だけでなく人間の影響を受けた森林を含む地域で、生物多様性の変化やその影響を研究してきた。

 同人は、天然林の動態研究を広げ、熱帯雨林の動態研究にも、力を入れている。半島マレーシアにおいて、2000mの標高差のある森林帯において、温度と日照条件によって、生態系が変化することを明らかにしたほか、タイの熱帯季節林では山火事やタケ類が森林の動態に大きな影響を与えている事実を明らかにした。また、マレーシアのサラワク州、ランビル国立公園においては、地上50m以上の樹幹層における生物社会の生き方、適応性の研究を進めてきた。数年に一度の一斉開花と雨林の更新との関係、地上50m以上の林冠を中心とした熱帯雨林の生態を解明し、その生態と地球環境変動との関係についても定量的な解析を行ってきた。これらの熱帯林での生態研究の成果を。日本の森林生態の解明にもフィードバックし、我が国における森林生態研究の発展に大きく貢献している。

 これらの功績は、同人の独創的な発想及び地道な調査研究から生み出されたのは言うまでもないが、マンパワーを必要とする研究分野のフィールドワークを円滑に、かつ、組織的に推進していく同人のリーダーシップによって、森林の生態研究が発展したことは注目に値する。さらに、マレーシアやタイを中心とする熱帯林の研究における国際的な活動を通して、各国の森林生態分野の研究者とも親密な関係を持ち、研究交流を続けている。このように、我が国ばかりでなく、世界における「みどり」の学術を発展させ、みどりの保全・育成の基盤を作るトップリーダーとして、今後数十年、森林研究を牽引する貴重な人材である。

 同人の功績は、「みどり」との生態系としての接点が薄れた現代社会に生きる多くの人々に、「みどり」を身近なものとして意識させ、「みどりとの共生」の大切さを心から浸透させることに大きく貢献している。

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