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受賞者プロフィール 宮地 重遠

プロフィール

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宮地 重遠(みやち・しげとお)

NPO法人地域振興支援センター クリーンアース環境研究所長
東京大学名誉教授

昭和 5年5月6日、東京都生まれ
昭和28年、東京大学理学部植物学科卒業
昭和31年、東京大学大学院理学研究科植物学専攻修士課程修了
       東京大学応用微生物研究所助手
昭和35年、理学博士(東京大学)
昭和38年、カリフォルニア大学スクリップス海洋研究所留学
昭和41年、ジョンズホプキンス大学留学
昭和44年、東京大学応用微生物研究所助教授
昭和55年、東京大学応用微生物研究所教授
昭和62年、東京大学応用微生物研究所所長
昭和62年、ドイツマールブルク大学客員教授
平成 2年、海洋バイオテクノロジー研究所専務取締役・総合研究所長
平成 3年、東京大学名誉教授
平成 9年、海洋バイオテクノロジー研究所特別顧問
平成14年、ハワイ大学 Distinguished Visiting Professor
平成18年、NPO法人地域振興支援センター クリーンアース環境研究所所長  現在に至る

平成 7年、フンボルト・リサーチ・アワード(ドイツ・フンボルト財団)
平成 9年、韓国海洋生物工学会功労賞
平成14年、国際応用藻類学会功労者メダル
平成23年、日本植物生理学会功績賞

受賞者紹介

 四方を海に囲まれている日本人は、多くの恩恵を海から受けている。日常的に食卓にのぼる魚貝類や塩から、海上交通や運輸、海辺での保養や娯楽、マリンスポーツなど、我々の生活は海を切り離しては存在しない。

 地球上に最初に生命が誕生したのは35億年前の深海で、細菌と思われる化石が見つかっている。27億年前には光合成を行う原始的なラン藻類が現れ、以後盛んに光合成が行われるようになった。その結果、酸素の生産が続いて海水成分が変化し、酸素を必要とする現代の動植物の祖先となる真核生物が生まれた。それゆえ、現在も海洋は多様な生物種の宝庫である。陸上でも海中でも、生命活動の基本となるのは「みどり」の植物の光合成である。浅い海では海藻などの大型植物が、大洋では植物プランクトン類(微細藻類)がこの任に当たっている。みどりの植物や藻類の最大の働きは光合成で、太陽光のエネルギーを使って水を分解し化学エネルギーに変えると共に、水の分解で生じた酸素を大気中や水中に供給する。同時に、この過程で生じた化学エネルギーを使って空気中や水中の二酸化炭素(CO2)と水から炭水化物を合成している。特に、海洋の植物プランクトンのCO2の固定能力も大きく、海洋も温室効果ガスの主成分であるCO2の吸収に貢献している。

 同氏は長年にわたり、真核生物である微細藻類と原核生物のラン藻類を使って光合成過程で炭水化物を合成する「CO2固定」の研究を進め、この分野の第一人者である。CO2固定には、大気中のCO2がまず植物の葉の細胞に入り、次いで細胞内の光合成を行う小さな粒子の葉緑体に入る。さらに、葉緑体内部の炭酸固定酵素にまで辿り着く必要がある。一方、水中のCO2の拡散は大気中の1万分の1と遅いので、水中植物のCO2固定能は極めて低いと思われた。同氏は、淡水性のクロレラを使って、CO2が濃縮されていることを見出した。このCO2濃縮は炭酸脱水酵素が行っており、CO2の濃度が低い時はこの酵素の活性が強くなり、CO2濃度が高くなればその活性が下がることを示した。続いて他の微細藻類やラン藻類でも同様のCO2濃縮機構があることを確かめた。さらに、微細藻類などはCO2濃度を感知する機構があり、この働きによりCO2濃縮機構に関与する遺伝子群の働きを制御してCO2の濃縮を調節していることを明らかにした。これにより海洋や河川・湖でのCO2固定の能力の大きさを説明できることが示された。

 同氏は、この基礎研究の成果を基盤に平成元年に世界で初めて「海洋バイオテクノロジー」という新しい学術・技術分野を創設した。続いて平成2年には海洋バイオテクノロジー研究所を創立し所長となった。そこでは、同氏の基礎研究の成果をもとに、海洋の微細藻類の植物プランクトン類のCO2固定能力の向上の基盤技術開発に携わった。この技術は海洋での魚貝類のエサの増大とともに温室効果ガスのCO2の削減という両方の効果が期待されている。一方、同研究所は6年間にわたり、日本近海や太平洋で採集活動を行い、約5万種の海洋微生物を収集してきた。このうちの1割強は未知のもので、海洋微生物ライブラリーとしては世界有数の規模を誇っている。現在、このライブラリーより新しい有用物質や創薬資源の探索が進められている。一方、海洋に流出された石油や各種富栄養源の微細藻類による分解の効率化などの技術開発も進行しており、大きな成果が期待されている。特に、微細藻類の中で油を合成して貯める種類を探索し、いくつかの藻類に於いてバイオ燃料生産の実用化にも進んでいる。この海洋バイオテクノロジーにより、海洋による地球環境の修復と海洋からの新たな資源の獲得など「海洋開発」に大きく寄与する道が開かれた。

 一方、同氏は国内の学会や国際学会の会長や要職を務め、当該分野の発展にも貢献されるとともに、一般向けの啓蒙書も出版し、みどりの重要性の理解や普及に努められた。

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