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受賞者プロフィール 石川 幹子

プロフィール

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石川 幹子(いしかわ・みきこ)

東京大学大学院工学系研究科教授

昭和23年10月27日、宮城県生まれ
昭和47年、東京大学農学部卒業。長銀不動産
昭和51年、ハーバード大学デザイン系大学院ランドスケープ・アーキテクチュア専攻修士課程修了。東京ランドスケープ研究所設計室主幹
平成6年、東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。農学博士(東京大学)
東京都立大学都市研究所研究員
平成9年、工学院大学工学部建築学科特別専任教授
平成11年、慶應義塾大学環境情報学部教授
平成17年、日本学術会議会員
平成19年、東京大学大学院工学系研究科教授。現在に至る

平成13年、日本都市計画学会論文賞受賞。慶應義塾賞受賞
平成15年、21世紀の公園競技設計1位(EU環境基金)

受賞者紹介

 「みどり」の問題が今日多くの人々の関心をよぶようになった背景には、身近な居住環境のなかで「みどり」が減少してきたこと、また、そのことに人々が本能的に危機感を感じはじめたことがあると思われる。都市に豊かな潤いと気品をもたらす「みどり」が、日本の都市では欧米に比べ、なぜ貧困であるのか、どのような方法によって「みどり」を確保し、整備していくことができるのか。同人の研究の原点となる問題意識はここにあった。

 同人の研究業績を要約すれば、各国の都市において公園緑地が成立する歴史を比較することから、「みどり」の継承と創出のあり方、都市および広域における「みどり」の機能・役割を明らかにし、そのことを通して「みどり」が社会的共通資本であることを論証したこととなる。

 研究業績は大きく次の三点にまとめられる。

 第一は「みどり」の継承と創出が世界各国でどのように行なわれてきたかを明らかにしたことである。19世紀以降の都市化のなかで、世界各国はいかなる手法によって都市内の「みどり」を持続的に維持し、さらに新たなストックとして生みだしてきたかを検証した。たとえばロンドンではスクウェアー、パーク、コモンという出自の異なる緑地においては、いずれも開発利益の地域還元と市民運動が維持や創出の原点になったことを明らかにした。このような具体的手法は都市によってその実状に応じて多様であり、住宅地整備と連動させたり、受益者負担、目的税等を課したりしていることを示した。また日本では明治6年の大政官布達に始まる公園経営が、各都市の創意工夫に委ねられてきたため、経営基盤の違いから都市ごとでの格差が大きくなってしまったことを明らかにした。

 第二は拡大していく都市に対して「みどり」をどのように計画的に整序していくかを明らかしたことである。その代表事例として、アメリカ諸都市における「パークシステム」を研究した。わが国では従来、パークシステムは「公園系統」と訳されてきた。しかし、同人は、パークシステムの本義は「パーク(公園)、パークウェイ(樹木や芝生の生えた大通り)、そしてブールバール(並木街路)のシステム」であり、公園と街路の整備を一体的に行い、環境インフラストラクチャーの敷設を市街化に先行して行い、その結果の開発利益を地域還元することにより、良好な自然環境の保全を行うものであることを明らかにした。この成果はアメリカ諸都市の公園当局を訪ね歩き、膨大な一次資料の検討のなかから見出したものである。また、この「パークシステム」の運動が都市計画(City Planning)という新しい職域の誕生を促したことを明らかにした。わが国における「パークシステム」は、関東大震災後の帝都復興都市計画で、防災都市計画として導入された点が大きな特徴である。これはシカゴ大火後の延焼遮断帯としてのパークシステムに倣ったものである。この流れは戦災復興都市計画に受け継がれ、日本での大都市の「みどり」の骨格づくりに役割を果たしている。

 第三は大都市圏問題に対する緑地の役割を明らかにしたことである。英国人エベネザー・ハワード(1850-1928)が提唱した田園都市論が大都市問題の解決のためであることや、広域パークシステムと田園都市論が結びつき「地域計画(Regional Planning)」が成立していく過程を明らかにした。この地域都市思想が、わが国では東京緑地計画、戦災復興計画、首都圏整備計画等へと展開していく過程を明らかにし、現行の都市計画の線引き制度のもととなっていることを示した。

 同人の研究は、都市の緑地は偶然の所産によるものではなく、継承・創出・維持のための市民の意志と都市・地域改革の制度・政策・財源が存在してきたからであることを明らかにしたものである。またこれは、都市の緑地を従来の物的環境としての「社会資本」と捉えるには限界があり、制度的、文化的な「社会的共通資本」と位置づけることが重要であると指摘するものである。宇沢弘文氏のいう市民の基本的権利を最大限に維持するために不可欠な役割を果たし、社会全体にとっての共通の財産として社会的な基準にしたがって管理・運営される社会的共通資本として、公園緑地を位置づける視点はきわめて斬新である。造園学や都市計画学だけでなく、経済学の分野からも注目されている。この長年の研究成果に対して、日本都市計画学会賞を受賞している。

 また同人は、この研究成果を現実の都市に反映させるべく、東京、横浜、鎌倉、各務原、神戸、マドリード、瀋陽(中国)などの国内外の諸都市の緑地計画の策定・指導にあたっている。研究の社会的貢献という意味からも評価される。

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