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第4章 イノベーションで拓く2025年の日本の姿

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国民の意見(注1)や日本学術会議の報告書「日本の計画」(注2)、「日本の科学技術政策の要諦」(注3)、「科学者コミュニティが描く未来の社会」(注4)、科学技術予測調査(注5)等を参考にしつつ、20年後の日本と世界を展望すると、生活者の視点からは以下に示す世界のモデルとなるような2025年の日本の姿が見えてくる。

ここで示される5つの社会像は、我が国が人口減少下であっても生産性の向上等を通じて持続的な経済成長を達成できる国であることが前提となっている。

1.生涯健康な社会

医療提供の現場は、医療施設が中心だった時代から、個人の日常生活の場に拡大している。

睡眠時等の常時健康診断や食生活や運動等の生活習慣の改善を通じた予防医療が個人レベルで行われるとともに、随時、医療情報ネットワークを通じて医療施設と健康に関する情報交換を行うことが可能となっている。

個人に対応した予防医療は地域を問わず受けることが可能であり、離島に住む人々も都心部に住む人々と同様、日常生活においてごく当然に健康を維持している。

がん、心筋梗塞、脳卒中等の克服により、生死をさまよう大病にかかることはほとんどなくなる。

また、再生医療技術、高度介護ロボット、対認知症特効薬等のおかげで、いわゆる「寝たきり」病人は激減し、家族や介護者の負担も激減する。

不慮の事故による負傷者や急病人は、整備された救急医療情報システムの下、24時間体制の救急医療施設へ迅速に搬送され、生命の危機を免れる。

2.安全・安心な社会

生活環境の随所で、センサによる自動認識・自動監視等が行われるとともに、地域社会内で防犯・防災ネットワークシステム、救急医療情報システムが整備され、また携帯化・高度化の進んだ救命機器(携帯型AED等)をいつでも・誰でも使える社会環境が整備されることにより、子供、高齢者、障害者はあたたかい「みまもり」と「自助・共助」のあふれる社会の中、安全な日常生活を送っている。

堅牢かつ自己修復機能を持った材料技術等で多くの建造物は長寿命化・高容積化されており、災害に強く住みやすい住宅づくり・街づくりが進んでいる。地震、津波・高潮、土砂崩れ・洪水、台風等の自然災害が起きる場合にも、高度な予測技術と災害情報ネットワークの高度化により被害は劇的に減少する。

自動車、歩行者と道路、街区一体となった高度道路交通システム(ITS)が整備されていて、渋滞解消等円滑な交通流が達成されているとともに、交通事故が激減し交通事故死亡者はほぼゼロ、となっている。交通の円滑化は、CO2の削減や物流コストの低減にも寄与している。

カード等の形で電子チップ1個を保持していれば、個人情報が保護された安全・安心な環境下で各種代金の支払いや公的手続き等が全てできるようになっている。

電子タグ等の利活用により、食品の生産・流通履歴データやアレルギー情報を入手できる等、食べ物の安全情報を知ることができるようになっている。

高度な認証技術や自動検知システム、ICタグやセンサ等が、港湾、空港等それぞれの施設環境に合わせて活用されることにより、テロの未然防止のための保安体制が確立されている。

3.多様な人生を送れる社会

就業形態の多様化や年金のポータブル化等による転職の自由度の向上、学びたいときにはいつでもどこでも学ぶことができる仕組みの高度化によるキャリア形成の実現等を背景として、男女ともに子育て者や高齢者、障害者、海外人材等を含むあらゆる人々が、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を達成し活き活きと働ける社会が実現されている。

また、バリアフリー(体の不自由な人でも支障なく活動できるような生活環境)・ユニバーサルデザイン(障害者や高齢者等も含め、誰にでも使いやすい形に設計すること)化や職住接近の実現、自動翻訳等により、障害者や高齢者、子育て世代が元気に仕事を続けることができるとともに、海外人材を含めた協働が容易になっている。

テレワーク(在宅勤務等、ITを活用した場所と時間にとらわれない柔軟な働き方)の普及により、自宅で仕事をしながら子育てができる生活が実現されている。家庭内無線ネットワークの高度化とそれにつながった人工知能を有するロボットにより、家事・育児にかかる時間の多くを自分の時間として持つことが可能となって、一人ひとりが自らの希望に沿った形で、地域の活動や自己啓発等、様々な活動に従事できることで日々の生活が充実し豊かさを実感する。

高齢者の現役時代とは異なるビジネスへの従事や、社会貢献・趣味活動への参加等多様な働き方・生き方の選択が可能となっている。そのために必要な学習システムが整備されている。さらに、いつでもどこでも最新のニュースが見られるような携帯ディスプレイ、自ら危険作業に対処できるロボット等により地理的制約や身体的制約を受けることなく働ける環境や、日常的買い物・金融機関の利用が容易な生活と安全確保が実現されている。

また、あらゆる世代との連携や次世代への知の伝承を地域社会で行うに際して、高齢者の経験知やコミュニケーション力が有効に発揮できる地域の生活が実現されている。

4.世界的課題解決に貢献する社会

省資源・省エネルギー技術、水素利用・燃料電池技術、人工光合成技術、植生再生技術、超電導超高速輸送技術(リニアモーターカー)等の世界トップレベルの環境・エネルギー技術を活用し、政府や企業のみならず一般市民も共同し、地球温暖化ガスの劇的な削減、資源・エネルギー問題、廃棄物処理問題、水・食料問題等の地球規模の環境問題の改善に世界のトップに立って貢献している。

環境やエネルギーについて学ぶ機会が小学校の段階から多く設けられ、様々な形で都市緑化が進み、国民は、以前に増して自然環境に接し、環境保護に興味を持ち、生活の中で省エネルギーや3R(リデュース・リユース・リサイクル)に積極的に取り組み、子供から大人まで積極的に環境ボランティア活動に参加している。企業もそういった活動をする社員に対して休暇を与える等の支援措置をとることが普通になされている。

日本の持続可能な循環型社会は海外でも羨望され、多くの国々から知識・経験を学ぶために多数の研修者が来日する。アジアの若者が日本の大学、企業等で環境について学び、帰国してから母国の環境調和型経済を推進していく姿が数多く見られるようになる。

環境技術革新で環境ビジネスが拡大するとともに、日本企業の国際競争力が向上し、アジア・世界の環境市場を牽引する社会となっている。

5.世界に開かれた社会

自動翻訳機の普及等により、誰もがあらゆる国の人々とコミュニケーションを行うことができ、相互理解が深化している。

我が国が誇る人、モノ、技術、伝統、文化について、国民が深い知識を持ち、世界に発信するとともに、特に日本語の壁を乗り越えて、大勢の海外の人が観光や仕事・留学等で直接日本(人)と接触する機会が増え、海外の人たちと一緒に生活することがごく普通の姿になっている。

また、バーチャルリアリティ(仮想現実)技術が進化し、家に居ながらにして現実社会を実感できるようになっている。日本人が海外の文化・歴史遺産等を実感できるとともに、世界中の人々も日本のそれを実感できるようになっている。そうした経験を基に、世代を超えて海外で活躍する日本人が増大しているとともに、日本を訪れ日本で活躍する外国人の数も飛躍的に増大している。

なお、これら5つの社会像は主として生活者の視点から整理したものであり、これを別の側面から見ると、様々なイノベーションを誘発する新事業・新産業の創出等を通じた生産性の向上(既存産業の生産性の向上も含む)、それによって達成される強い国際競争力を有する経済社会、と言うことができる。

さらに、国民一人ひとりの生き方、という面からは、諸々の既成概念が破壊され、個人の能力が最大限発揮され、長い人生の中で生きがいを持ち続けられ健康に過ごせる社会、少なくともそうした機会が皆に均等に提供される社会である。

ここに示した20年後の日本の社会は、物質的な面だけでなく、真の豊かさを我々が実感でき、世界とともに共存、発展していく姿である。

こうした「2025年の日本の姿」の実現のためには、技術面、制度面、社会面等で大変高いハードルを乗り越えていかなければならない。従来型の取組では乗り越えられない位の高いハードルであるが、この高いハードルを越えてこそ、新たな付加価値を伴う大きな社会変革を実現できることを、国民一人ひとりが肝に銘じておくべきである。

注1: 国民の意見募集
2006年10月27日から12月31日まで、内閣府ホームページ等にて「イノベーションでつくる2025年の社会」について幅広く国民から意見を募集したところ、合計385件の意見が寄せられた。詳しい内容は、「イノベーション25ホームページの意見募集の結果」を参照。
注2: 日本学術会議提言(2002年9月)
注3: 日本学術会議声明(2005年4月)
注4: 日本学術会議報告書「科学者コミュニティが描く未来の社会」(2007年1月)
日本学術会議は、2006年10月に高市イノベーション担当大臣からの協力要請を受け、「イノベーション推進検討委員会」を設置し、約3ヶ月かけて日本学術会議会員・連携会員2,200名の自発的個別提案を集成。
注5: 科学技術予測調査
文部科学省科学技術政策研究所が2003年度から2年間の計画で実施した科学技術の中長期発展に係る俯瞰的予測調査。延べ2,500人の専門家が参加。