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科学技術だけではイノベーションは起きない。その成果が国内外の大きな社会・市場へ届けられ経済的効果、社会的効果を生んで初めてイノベーションが起こる。
科学技術牽引型で社会を大きく変える種類のイノベーションにおいては、基礎研究からその成果が社会に届くまでに相当の期間を要することは過去の実例から明らかである。そのため、将来のイノベーションの種となる基礎研究、最先端科学技術への投資を充実させるのみならず、その成果を社会に迅速に届けるための効率的な仕組み(イノベーション・エコシステム)を作っていくべきである。また、イノベーションには常に失敗のリスクが伴っていることから、それにふさわしい投資や実施体制が重要となる。
これまでも、諸施策が講じられてきたが、グローバル時代における国際競争下においては、より大胆でかつスピード感を持った施策が展開されなければならない。
さらに、高齢化社会・人口減少下においては、生きがい・やりがい、生産性の向上等の観点から、全ての働く意欲のある女性がその持てる能力を十分に発揮していくことが社会全体にとって必要不可欠であるとともに、これまで以上に高齢者が社会に積極的に参画することが期待されており、そのための環境整備を図っていくべきである。
また、制定時には適切かつ効果的に機能した各種規制等も、「グローバル化」、「日本の人口減少・高齢化」といった劇的な環境変化の中では、イノベーション創出という観点から効率的に見直していくべきである。
このような考え方の下、以下の取組を実施する。

[1]サービス・イノベーションを促す規制の見直しを含めた環境整備

国民の多くが求める「新たな豊かさ、心の豊かさ」に応える新しいサービスが提供されるよう、イノベーション創出という観点から各種規制等の見直しを含む環境整備を行うため、以下の取組を行う。
- 決済システムの強化や取引所における取扱商品の多様化等、金融市場の国際競争力向上及び利用者の利便性向上等に向けた検討。
- 移動型店舗、子どもや高齢者のみまもり、ロボットによる生活支援、国境を越えた健康管理、電波の二次取引、新世代自動車物流等の新しいサービスを促進するため、関連する技術やアイデアを統合したサービスの構築・実証を通じた、規制の見直しを含む環境整備の検討。
- 個人情報保護に関するいわゆる「過剰反応」等については、「個人情報保護の円滑な推進について」(平成18年2月28日個人情報保護関係省庁連絡会議申合せ)に即した取組を促進し、第三者提供の制限の例外規定等、法制度を周知・徹底。

[2]イノベーションを誘発する新たな制度の構築

公的部門における新技術の活用促進
初期需要を生み出し、また技術革新を加速させるため、公的部門における新技術活用に向けて公的部門が我が国発の新技術・製品・サービスを率先して調達、活用、評価する取組を進める。また、その際、価格だけでなく機能面を重視するよう、評価結果を2009年度中に公的調達の際の総合評価落札方式等に活用することを目指す。

実証研究やモデル事業を通じた規制の見直し
新技術等を活かした新たなビジネスを迅速に展開できるよう、効率的な規制・制度・ルールの見直しを行うため、社会システムの改革を伴うような技術やアイデアを融合した実証研究やモデル事業を推進する。

努力とチャレンジを正当に評価する仕組みづくり
研究開発の優れた成果の事業化や失敗を活かしたチャレンジに対する支援を拡充するため、以下の取組を行う。
- 創業初期にあるベンチャー企業の実力評価事業を実施するとともに、優れたベンチャー企業を広く社会に公表。
- 特許流通・技術移転のための専門家のネットワーク化等を目的としたセミナーの開催等により、知的財産権取引業の育成支援を実施。
- 再チャレンジする起業家及び事業再生に取り組む中小企業者の資金調達への支援や専門的な相談の受付の充実、不動産担保・個人保証に過度に依存しない融資を推進。

デジタル・コンテンツ流通の促進
デジタル・コンテンツの流通を促進するための著作権等の保護や利用の在り方に関する法制度や契約ルールを2009年度までに整備する。

食の安全・信頼の向上に資するシステムの導入
食の安全・信頼性を向上させるため、以下の取組を行う。
- 農産物、食品の生産・流通・加工の各段階におけるリスク低減技術やトレーサビリティー技術を開発し、食の安全・信頼の向上に資するシステムを導入。
- 農業生産や食品加工の現場段階において、GAP(農業生産工程管理手法)や食品製造段階でのGMP(適正製造規範)等の工程管理手法を導入。

安全・安心の確保のための新たな官民パートナーシップの構築
国民生活における安全・安心の確保のため、法令や規制の枠組みを超えた企業等の自主的な取組を促す環境の整備を目的として、事業者団体、消費者団体、労働組合、投資家、その他のNPOの代表、専門家及び行政により構成される「社会的責任の取組促進に向けたステークホルダー円卓会議(仮称)」を開催する等、官と民との新たなパートナーシップの構築を推進する。

[3]新しい「働き方」、「暮らし方」の仕組みづくり

ワーク・ライフ・バランスへの取組
国民一人ひとりが、人生の各段階において、仕事、家庭生活、地域生活、個人の自己啓発等、様々な活動を自らの希望するバランスで展開できる、多様性に富んだ活力ある社会の実現を目指して、以下の取組を行う。
- ワーク・ライフ・バランスの実現のため、人生の各段階に応じた多様で柔軟な働き方とそれを可能にするための支援体制を整備。
- ワーク・ライフ・バランスの意義・重要性等について社会全体の共通理解を形成するため、理解の浸透、推進力強化のための枠組みを構築。企業の取組を社会全体で後押しするとともに、個人の多様な選択を可能にする支援やサービスを展開。
- 子育て中の女性の再就職・起業等を促進するため、全国で女性向け相談窓口等の活用を行うとともに、民間団体との連携による女性向け就労情報提供、就業等も視野に入れた学習・能力開発の機会の充実等についての検討。
- 労働者の価値観や生活様式の一層の多様化に対応するため、育児休業等の取得を円滑化するための環境整備等についての検討。

ゆとりある住生活、自然と共存した都市の実現のための取組
人々の多様な価値観や生活様式に対応した21世紀に相応しいゆとりある住生活、多くの生命を支え癒しや安らぎを与える自然と共存した都市の実現に向けて、以下の取組を行う。その際、省エネルギー等環境への負荷とコストに配慮した世界の先端を目指すものとする。
- 仕事と生活に対する国民の価値観、家族形態の多様化に対応した、周辺の街並みとの調和が図られた良質な住宅ストックを形成するために、住宅の長寿命化(200年住宅)を目指して、更なる技術開発や先導的プロジェクトの支援を行うとともに、超長期に住宅を利用するための維持管理システム・流通システム・金融システムの構築等。
- 都市公園の整備を始め、NPO等による緑化活動の促進、公共公益施設の緑化の推進、都市開発事業における緑地等の創出に関わる民間事業者の取組を評価する制度の開発・普及等、多様な主体による国民運動としての都市緑化活動を展開。

テレワークの推進
2010年までに適正な就業環境の下でのテレワーカーが就業者人口の2割となることを目指し、テレワーク推進フォーラムを中心とした普及啓発活動を実施するとともに、導入サポート・相談体制の整備・充実、テレワークシステムのモデル構築等による環境整備、柔軟で多様な働き方の実現に向け、テレワークの一層円滑な普及に資する労働関連の制度環境整備を図る。

就労機会の拡大
誰もが学歴や年齢によらずにチャレンジ・再チャレンジする機会を拡大するため、以下の取組を行う。
- 誰でもどこでも職業能力形成に参加でき、自らの能力を発揮できる社会(能力発揮社会)の実現を目指す観点から、「職業能力形成システム」(通称「ジョブ・カード制度」)を構築し、職業能力形成の機会に恵まれない人への支援。
- 新たなチャレンジを目指す若者、女性等を支援する観点から、フリーターの正社員化の支援等若年者雇用対策の推進やマザーズハローワーク事業の推進、再チャレンジ職場体験制度の実施をはじめとした子育て女性等への総合的な再就職支援を実施。また、2007年度に国家公務員中途採用者選考試験を開始するほか、各種資格取得の学歴要件及び国家公務員の採用年齢要件について見直し。
- 公的扶助(福祉)を受けている人等について、セーフティネットを確保しつつ、可能な限り就労による自立・生活の向上が図られるよう、就労支援及び受入促進の両面にわたる総合的な取組や、障害者の福祉的就労から一般雇用への移行促進等、引き続き関係機関の連携による支援。
- 高齢者が自らの知識や経験を活かして、就業・活躍できる場を創出するため、奨励金やシルバー人材センターの活用、紹介機能の強化。
- 地域の中小企業の人材確保・定着にも資する地域密着型の職業訓練等の実施。

[4]知的財産戦略・標準化活動の新たな展開

国際知的財産戦略
今後、市場展開を図る際には、広く世界を視野に入れた活動を行っていくことが必要であるため、知的財産戦略について、以下の取組を行う。
- 世界特許システムの実現のため、2009年度までの日米欧三極特許庁における様式の統一化、「実体特許法条約」草案の2007年度中の合意に向けた先進国間での交渉の加速及び審査結果の相互利用の推進。
- 企業の特許出願について、全体で海外出願比率3割の実現を目指した、世界的な視野に立った特許戦略に基づく権利取得の慫慂。
- 特許審査迅速化・効率化推進本部を中心に、特許審査・審判の人的体制の充実、効率の向上、品質管理体制の強化等を通じて、迅速かつ的確な権利付与に向けた取組をさらに強化。
- 植物新品種を活用して我が国農業の国際競争力を強化するため、その審査の迅速化・効率化のためのEU、韓国等との審査協力、東アジアに対する技術協力や人材育成等の推進により、植物新品種保護の国際的共通基盤を整備。

大学等の知的財産戦略の強化
- 大学等における基本特許につながる重要な発明の海外出願、国際的な産学官連携、技術移転、事業化を戦略的に進める大学の主体的かつ多様な取組を促進。また、そうした知的財産の活用を各地域で担う人材の充実と更なる活用を検討。
- 大学の知的財産本部とTLO(技術移転機関)の一本化・連携強化や地域における産学官連携体制の強化、大学間の連携を進める等により、それぞれの大学における知的財産の創出・管理・活用を戦略的、組織的に進める体制を構築。

模倣品・海賊版対策の強化
イノベーションの基礎となる知的財産権を保護するために、模倣品・海賊版対策として以下の取組を行う。
- 二国間の連携、様々な国際フォーラムを通じた模倣品・海賊版対策の強化。
- 国際的ルールを強化するための「模倣品・海賊版拡散防止条約(仮称)」の早期実現への取組。
- 在外公館やJETROを通じた企業に対する模倣品・海賊版対策への支援の更なる強化。

標準化活動の国際展開
国際標準化の活動を抜本的に強化する観点から、以下の取組を行う。
- 国際機関や国際会議の場でリーダーシップを取れる人材の計画的な育成を強化。また、産業界や研究機関・大学等において国際標準人材を適切に評価することを促進し、長期間にわたり同一人物が国際標準分野における交渉に携わることができるような方策を検討するとともに、国際標準分野の優れた能力を有するシニア人材等の活用や、国際規格策定に係る人材の育成を促進。
- 日本が強みを有する環境・エネルギー等の分野において、環境管理会計、電気・電子製品に係る環境配慮設計手法、循環資源の利用等、アジア諸国とも連携した標準化活動の国際展開を推進するとともに、「アジア・太平洋標準化イニシアティブ」を策定・推進する等、国際標準化活動におけるアジア・太平洋地域との連携、技術者の人的交流を強化。
- 国費による研究開発の評価を行うための指針等において、研究成果の国際標準化が期待される分野については、国費による研究開発プロジェクトの事前、中間及び事後評価等における評価項目として国際標準化に関する取組を明確に位置付け、研究開発と標準化を一体的に推進。

[5]世界に対し「オープン」な企業活動等を支える環境づくり

航空・港湾・貿易手続の改革
アジア大交流時代を迎え、日本がアジアの物流拠点となることを目指し、以下のような利用者の視点に立った航空・港湾・貿易手続の改革を行う。
- 羽田空港の更なる国際化、羽田空港と成田空港の一体的運用による首都圏国際空港の24時間化をはじめとした大都市圏国際空港の24時間化。
- 時間、コストの面で、国際的に通用する簡素で効率的な貿易手続や運用を整備・推進。
- 陸海空のシームレスなネットワーク整備の促進。
- 次世代シングルウィンドウの稼働とアジア諸国の通関システムとの連携の推進。
- 輸出入貨物に対する有効な検査機器等の整備。

アジアの共通発展基盤の整備(シームレスアジアの構築)
アジア共通課題を解決する研究・協力ハブ機能の強化、民の力を活用したアジア域内のビジネス環境整備、日本とアジア域内外の壁を感じずにビジネスが可能なシームレスアジアの構築等のため、以下の取組を行う。
- アジア全体の切れ目ない物流ネットワーク構築を目指し、モデル実験の実施等による広域物流網の構築や、人材育成、手続の電子化等を推進。
- 域内外の安全・円滑な情報流通促進に向け、日本主導でICT基盤を整備。
- EPAの枠組みも活用し、各国のビジネス環境整備を官民・各省横断で推進。
- 東アジア域内のIC乗車券の共通化、相互利用の推進。

[6]生活者の視点に立脚したサービス分野の生産性向上に向けた取組の強化

サービス産業の生産性向上への支援強化
産学官の横断的な取組を支援し、サービス分野に活用できる製造業ノウハウの蓄積、品質評価のための顧客満足度指数の開発等を実施する。
また、2007年度を目途に、サービス産業における研究課題の抽出と産学間のコミュニケーションツールの構築等を目的とした、サービス研究ロードマップを策定する。
さらに、サービス産業の生産性向上を目的とする先導的な研究開発・適用実証事業を実施し、その成果を蓄積するとともに、サービス産業全般への波及を図る。

サービス・イノベーションを担う人材の育成
大学等におけるサービスに関する学際的・分野横断的な教育研究を強化し、サービス分野において生産性の向上やイノベーション創出に寄与しうる資質を持った人材の育成を目指す。

オープンでユニバーサルなITインフラの整備等
我が国産業全体の生産性向上・競争力強化を図るとともに、ITを利活用して地域の抱える諸課題の解決が図られるような地域社会(ユビキタス・コミュニティ)を2010年までに実現する観点から、以下の取組を行う。
2007年度以降、ITによる業種や取引関係を超えた情報共有のための広く産業横断的な共通基盤の構築、中小企業等における「IT経営」実践のための環境整備、それらを担う高度IT人材の育成、IT資本投入の拡大やIT投資効率の向上に向けたIT活用促進のためのIT投資の加速を促進。
地域ニーズに配慮しつつ、いつでもどこでも誰でも使えるブロードバンドネットワーク基盤を構築するため、2010年度までに光ファイバ等を整備する。2007年度から、そうしたIT基盤を活用し、児童・独居老人のみまもり等をはじめ、福祉、教育、地域産業、交通、防災等の地域生活に密着した分野において、課題の解決を促進するための産学官民の協働による先進的な取組モデルを構築し、その成果を共有することによる地域特性に対応した生活者中心のIT基盤の全国展開。
2010年度までに電子化された基盤地図情報を整備する等、位置に関する情報を含んだ情報の幅広い共有化や高度な活用を可能とする地理空間情報プラットフォームの構築を行うとともに、公共空間への電子タグやセンサの設置等を通じて、場所やモノに関する情報をいつでもどこでも誰でも入手可能とする基盤を構築。
IT社会の影の部分である不安や障害の解消に向け、「第1次情報セキュリティ基本計画」(平成18年2月2日情報セキュリティ政策会議決定)に基づく総合的な対策の実施により情報セキュリティが確保され、またフィルタリング等により違法・有害情報が青少年に届かない安心なIT環境を整備。

[7]人材の流動化促進

大学・独立行政法人−企業間の移動
研究者に研究活動及び研究成果の事業化の場を提供する観点から、人材の流動化を促進するため、大学や独立行政法人の研究者が元の組織に籍を置いたまま企業の研究開発現場で一定期間研究活動を行うための具体的仕組みを検討し、早期の導入を目指す。

研究チーム単位での流動化
研究チームによる技術と人材の流動化促進の観点から、研究チーム単位で流動化(企業からのスピンオフ、スピンアウト)を促すための仕組みを検討し、早期の導入を目指す。

[8]活力ある地域社会を可能にする取組の推進

地域産業の活性化
地域の独自性を活かした生活者の視点からの地域活性化に向けて、消費者に訴求力のある地域の特性を活かした高付加価値かつユニークな食品等の商品が生産・販売できるよう、障害となっている法制度の見直しや特区の活用等の具体策を検討する。

地域資源を活用した新商品・新サービスの開発・市場化への支援
地域の強みを活かして、地域経済が自立的・持続的な成長を目指すことができる環境を整備するため、中小企業による地域資源を活用した新商品・新サービスの開発・市場化を支援する。

自治体が主体的に取り組む産業集積・クラスターの形成等への支援
地域における産業集積の形成等に主体的に取り組む地方自治体への支援を2007年度から拡充する。さらに、地域における公的研究機関をはじめ、自治体、大学、企業等によるクラスター形成の支援、当該地域を越えた広域連携やネットワークの強化を推進する。

集約型都市構造の実現に向けた推進
都市機能が無秩序に薄く拡散する「拡散型都市構造」の進展に歯止めをかけ、都市機能の集積を促進する拠点(集約拠点)を形成し、集約拠点と都市圏内のその他の地域において公共交通を軸としたアクセシビリティが確保された「集約型都市構造」を実現するために、官民連携による省エネルギー等の環境負荷の削減を図りつつ、総合交通戦略に基づく都市交通施策と集約拠点における市街地整備を推進する。

[9]イノベーションを誘発する社会制度の設計等に関する研究の推進

イノベーション計測・評価の研究の実施
イノベーションの効果的な推進につながる研究成果を効率的に生み出すため、研究開発が社会に与える影響を定量的に計測・評価するシミュレーションモデルを作成する。また、OECDが策定を予定している「OECDイノベーション戦略」の検討に積極的に参画し、イノベーションに関連する施策についての国際的な議論を先導する。

イノベーションを誘発する社会環境に関する研究の実施
イノベーションが起きやすい環境の創出に資することを目指し、異分野の技術・知識の融合活動及びそのための場の形成や融合メカニズムの解明を促進するとともに、技術の進歩や社会の変化に伴う諸課題や、人間の心理、価値観等に関する諸課題等、現代社会における様々な問題の解明と対応に向けて、人文・社会科学を中心とする学際的・学融合的な研究の取組を推進し、その成果を社会への提言として発信する。
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