イノベーション25戦略会議 第1回議事要旨
日時:平成18年10月26日(木)18:00〜18:50
場所:総理官邸4階大会議室
1 開会
2
安倍内閣総理大臣挨拶
3
高市内閣府特命担当大臣(イノベーション)挨拶
4 委員紹介
5
議事
(1)「イノベーション25戦略会議」開催の趣旨について
(2)会議の運営について
(3)フリーディスカッション
(4)その他
6 閉会

1 開会

2 安倍内閣総理大臣挨拶
○安倍総理大臣
皆様方には、お忙しい中「イノベーション25戦略会議」の委員をお引き受け頂き感謝。
私は、総裁選の当時から日本が人口減少局面に入る中で力強く成長していく上でも、明るい未来を創造していく上でもイノベーションは不可欠と申し上げてきた。「イノベーション」とは、単に新しい技術の発明だけではなく、新しい取組や革新的な考え方を含めた幅広いものと考えている。
皆様方には、長期的な視点に立って、将来イノベーションによって出現する社会、そのための施策などについて、あらゆる角度から議論いただきたい。
1901年1月、報知新聞に掲載された「20世紀の予言」の中で、テレビ電話や東京・神戸二時間半の新幹線などのイノベーションが既に予測されていた。まさに「イノベーション25」を通じて、21世紀の技術進歩の状況を予測していただき、必要な政策や、今後の課題に対応するために必要な考え方など、幅広くご検討いただきたい。
○黒川座長
イノベーションという言葉の意味は、従来、製造業がかなり強かったため、技術革新によるものづくりと受け取られる傾向にあるが、もっと新しいアイデアとか、そういう考え方をする人、更にそういう人たちを生かす社会づくりのこと。この点を踏まえ、20年先を考えていただきたい。
3 高市内閣府特命担当大臣(イノベーション)挨拶
○高市大臣
今回、安倍内閣の組閣で初めて「イノベーション担当大臣」という新しいポストが作られ、総理から、「イノベーション25」を策定するよう指示を頂いた。
今後、新しい富の創造というものを行わないと、結局は最低限の福祉を保障することもできなくなる。したがってどんどん挑戦を続けていくとともに、阻害要因があればそれを取り除いていくという社会制度の改革が大きなポイント。
今朝、インテルのCEOから話を聞く機会があったが、例えば、日本では薬事法の関係で病院の病室で無線LANを使うことが禁止されていると言っていた。自分たちは安全だと思うのだが、この規制により、医療の可能性はかなり制約されるとの意見であった。
また、特に大切にしたいのは、生活者の視点。イノベーションが進むとこんなに便利になる、豊かになる、安全・安心になるといった視点も盛り込みながら、夢のある政策を作っていくことで、多くの納税者の方々のご理解を頂きながら、皆が夢を共有し、協力して頂ける環境を作りたい。
今回の会議においては、来年2月末までにまず、長期戦略指針の全体像、「2025年に目指すべき社会の形とイノベーション」を策定し、引き続き来年の5月から6月頃を目途に「これらの社会を実現するための戦略的ロードマップ作り」を行う予定である。これをとりまとめて「イノベーション25」となるが、その発信も、国民の皆様が読んで分かりやすい、共感頂けるような書きぶりで、良いものにしていきたい。
近頃いろいろな人に会うたびに、「20年後にどんな技術があったらいいか、どんなことが実現できていると思うか」と聞いている。宇宙飛行士の土井さんにお会いした時には、「20年後は安く宇宙旅行が庶民にも楽しめる」「太陽エネルギーの利用が進む」「燃料電池が小さくなってパソコンにも入るようになる」などいろいろなお話を伺った。この会議においても忌憚のないご意見を頂きながら進めて参りたい。

4 委員紹介

5 議事
(1)「イノベーション25戦略会議」開催の趣旨
(2)会議の運営について
(3)フリーディスカッション
黒川座長より資料に基づき説明の後、ディスカッション。
○ 黒川座長
20年前、どんなことが起こっていたか考えてみたところ、医薬ではちょうどエイズ患者が出始めた頃。アメリカで1981年に初めて出て、今まで 2,000 万人死亡し、現在は世界で4,000 万人いるという状況。また、胃潰瘍の薬が普及した結果、胃潰瘍、十二指腸潰瘍の手術がほとんどなくなってしまった。
それから、日本発のスタチンというコレステロールの薬が初めてここで出てきて、今、6,000 万人ぐらいの人が飲んでいる。これは遠藤先生という方で、あの先生がノーベル賞を一緒にもらわなかったのは非常におかしいとノーベル賞をもらった人たちに言われたぐらいである。
???? ITについては、ITの恩恵に浴して、例えば、eメールや携帯電話が普及しているのもこの10年のこと。ラップトップも20年前はほとんど普及していないし、携帯電話などはせいぜい10年ぐらい。そう考えると、これから20年先、どのぐらいの想像力が働くかということも大事。
工学でも、ナノテクノロジーとか、フラーレン、ナノカーボンのようなものは全然ないので、そのようなことが20年後どうなるかも是非考えていただきたい。
もう一つは、アジアや世界の状況が大きく変化。20年前は世界の人口は45億人ぐらいが、今は65億人になっている。
アジアの経済も、1986年、20年前は『Japan as No.1 』などという本が出た頃。10年前の1996年は、都銀が全部あったのが、東京銀行と三菱銀行の合併が発表になってから7年で3つになったというぐらい、ファイナンスのイノベーションが進展した。
今日は第1回ということで、委員の先生から、成長してくるアジア、それから少子化、環境問題が大きくなるという状況で、どんなことが考えられるか、順にご意見をお願いしたい。
○ 最近、いじめだとか、北朝鮮だとか、暗いことがあるが、20年後を考えると明るくなるという感じがする。
イノベーションと言う場合、技術的イノベーション、社会的イノベーション、精神的イノベーションの3つが考えられる。社会的イノベーションとは、法律、規制、政治体制をどうするかという問題など。精神的イノベーションについては、今いじめの問題などがあるが、思いやりということを20年後に国民の間に広めるということを考えたらどうか。
いろいろ思いつくままに挙げてみると、20年後にはGDPは1,000 兆円になっているというのも夢がある。また、個人所得が例えば1.5 倍ぐらいになるためには、技術革新が必要で、例えばがんの治癒率が80%になる、アルツハイマーが完治するようになる、定年が70歳になる、あるいはまた農業の立体化が行われるなど。
電池はなくなるのではないか。ソーラー折りたたみパソコン、すなわちパソコンのふたの部分をソーラーにしたら電池は半永久的に換えずに済むようになる。そう考えると、みんなソーラーシステムになっていくのではないか。
もう一つ、20年も経つと、通訳器が物すごく普及してくるのではないか。そうすると、チップを換えるだけでクルド族や中東の人と話せるようになる。
また、自動車を見てもワイパー、自動車のほかのあらゆる部分は進化しているが、ワイパーは進化してない。20年経つとワイパーのない自動車が出てくるのではないか。
そういう元気が出る、夢がここでまとめられるのではないかと期待している。
○ 20年後のあるべき姿を描いてから科学技術開発の在り方というミッションをいただいているという認識で参画させていただいている。イノベーション論については、2つイノベーションを考えている。
1つは、新しい技術によって新しい価値を創造するバリューイノベーション。
それから、社会活動、いわゆる行政、産業のプロセスそのものを変えていくというプロセスイノベーション。
製造メーカーとしては、当然バリューイノベーションというのが研究開発であり、プロセスイノベーションというのが生産、販売、あるいは物流である。
20世紀のイノベーションとは、基本的にはバリューイノベーションがあって、それが世の中を大きく変えてきた。具体的は、産業革命のときは蒸気機関が、また20世紀ではICT技術が世の中の我々の生活を変えてきたと思う。では21世紀というのはどういう姿を描くべきか。今までは物の豊かさを追及してきたが、これからは心の豊かさを追及すべき。とすると、心の豊かさというのは一体何なのかということをまず考えてから技術開発戦略をつくる必要がある。
また、日本がリーダーシップを取り得る技術開発戦略と、国際協調をやらなければいけない技術開発は峻別すべき。そのためには、海外研究者が自由に日本に入れるような環境を作っていく必要がある。
人材の問題について、特に初等教育における理数離れというのは大変深刻。これは裏を返せば、日本の科学技術開発の方向というのがはっきりしていないためではないか。
私見で例証すると、私が期待したいのは20年後に水素社会ができないか。自動車も燃料電池で走る、そのための水素を自由に町で買えるような時代。これはエネルギー、環境面でも非常に大きなポイント。あるいは、テーラーメード医療ということで、遺伝子をすべて解析して医療ができないか。あるいは生活支援ロボットが完全に定着しないか。そんなイメージを描いている。
○ 学術会議ではこれまで『日本の計画』『日本の科学技術政策の要諦』を作っており、日本の30年、50年先の姿については、ある程度のイメージを持っている。
美しい国づくり、国家ビジョンという点に関しては、環境と経済の両立を具体化すべきという観点から、人材育成も不可欠な問題。かつ、我が国だけではなくてアジアも含めた、世界に貢献できる全体的な発展をという観点で今まで議論してきたことから、本戦略会合はいろいろな人たちの知恵を集めるいい機会と考えている。
学術会議は科学技術だけのグループではなく、人文社会系の人たちも含めてイノベーションという言葉を既に出しながら議論を始めている。議論を早急に、拙速でなくまとめる形で、ここで紹介できればと思っている。
○ イノベーションを技術革新と訳すのは間違い。もともとはシュンペーターというオーストリアの経済学者が100 年ぐらい前に言ったことで、利益を生むための、差を生むための行為のことと経済学的には定義されている。技術が差を生むのも事実だが、それだけではない。
私は、イノベーションを3類型で考えるのがいいと思う。具体的にはプロダクトイノベーション、プロセスイノベーション、ソーシャルイノベーションと言っているが、この中で日本が下手なのはソーシャルイノベーションで、プロダクトイノベーションとかプロセスイノベーションは大成功している。日本はソーシャルイノベーション、制度構造改革がうまくいかない。
もう一つ、イノベーションに関してはイノベーション・オブ・イノベーション、すなわち他のイノベーションを生むイノベーションという観点がある。これは2つに分けると、要素型とインフラ型のルーツになる。要素型については、例えば液晶を開発すると、液晶テレビができて、液晶カメラができて、カーナビができるなどとなるが、日本はインフラ型のイノベーションが全く下手で、例えばインターネットのようなものが生めない。ほかにも、高速道路とか、銀行の制度とか、保険の制度も全部外国から来ている。
これは、インフラ型のルーツとなるイノベーションは意識的にイノベーションを行うトップダウン的センスが必要であるが、これが欠けているため。トップダウンに意識を持って行かないといけないのであって、現場の追い込みとか、下の現場でこうだからというのを集めただけでは、こういうものはできない。広い視野で、グランドデザインを持つ構想力が絶対必要。
2番目に重要なことは、今、ICTの世界で起こっているイノベーションは、新技術というよりは、既存技術の組み合わせが多い。例えばWeb2.0など技術は何もなくほとんど組み合わせでできている。それを新しいことに構成する力というのが非常に重要。
最近の話では、YouTubeというビデオ投稿サイトを運営するベンチャーをGoogleが約2,000 億円で買い取った。日本だと、ビデオの投稿サイトなのですぐに知的所有権でもめそうということでびびってしまう。米国ではそのとき、セーフ・ハーバーといって、例えば知的所有権であいまいなものに関しては問題があると指摘されたときに消せば責任をそれ以上問わないという思い切った制度をつくった。法律のつくり方にしても、全部を決めない限りできないのでは、ITの分野では何もできなくなる。
また、テクノロジーは断然我が国の方が強いのに、アップルのiPodのような既存部品の組み合わせでそれ自体は大した技術ではないようなものが成功するのは、やはり背後にある制度のデザインが原因。
イノベーションというのは意識的改革と言うべき。意識の改革ではない。「意識的に行う改革」が重要。
最後に一体何のためにやるのか、これは非常に重要。やはり少子高齢社会を迎えるので、日本は世界で最初の老人のための最強の国――老人天国というか、老人のための最善のインフラをつくる。そのためには、安全・安心と同時に、社会の効率を上げなければいけない。そういうものができれば世界に売れる。アメリカはインフラ・イノベーションを興しそれを世界に売っている。インターネットも、軍事ネットだったものが、あるとき突然経済的なネットワークに変わって、全世界に行った。
また、我が国のように軍事がない国としては、不可欠な技術を20年後に見せつけて、どうしても日本からその技術を買いたいということになれば、国家安全保障になるのではないか。
○ 企業では、企業や企業グループがどの方向を向いて、その先の将来のビジョンをどういうふうな形で発展させていくか、そういうビジョンと、それを実現可能とする戦略がなければ期待はできない。そういった意味では、今回のイノベーション25の議論というのは、この国にとって、大変大事なこと。
先日、若い女性に20年前の話をしたところ、子どものときにドラえもんが外で電話をしているのを見て、こんなことができたら夢みたいだと思っていたとのこと。今や当たり前にできている。民間の研究開発型の企業では、既に20年先、30年先を見据えた研究に入っており、そういった意味では、20 年は遠い先の話ではない。
未来の社会に対する希望について、まず1点は、単に新しいことに挑戦する企業や個人がいるというのではなくて、より多くの人が挑戦したくなる、チャレンジしたいと思うような社会であってほしいということ。
新しいマーケットというか、新しい顧客を創造するということは不可欠。税金とか規制緩和など、そういうことを自由闊達にできるような環境整備がイノベーションを起こすきっかけになる。
2点目、少子高齢化について、高齢者というと大体年金あるいは医療費ということが議論になり、病気になるということが前提。しかし少なくとも生きている間は元気で、心豊かな生活ができる、そういう社会になってほしいと思う。そのためには、むしろ病気にかからないように元気に過ごせるような社会が実現することが大事。
少子化については、日本人はインフラが整備されたということがわかると、対応力が強い。子育てしながら女性が安心して働ける社会的仕組みを整備すれば、少子化問題もいい方に向かっていくのではないか。
また、20年先の日本を考えたときに、移民もいない社会というのはイメージしにくい。実際、既に外国人労働者は200 万人を超えていると聞く。この人たちも含めて共存できる社会システムも必要。
日本は、今、犯罪の増加率が世界でもトップクラスだと聞く。もともと日本のよさであった礼節、規範意識とか安心・安全は、日本の強みとする部分だったが、こういうことを先につくるということは大前提。
○ 20年前のジャパン・バッシングのときに、なぜアメリカは日本をたたくのかということを調べたところ、日本はアメリカからイノベーションを学んで、盗んで、アメリカを逆に攻めているということであった。しかし、アメリカも同じようなことをやっている。したがって、イノベーションというのは、もともとのイノベーションをさらにラジカルに変えていくということ。
アメリカはそういう国として、5つの非常にユニークな考え方を持っている。1つは、この国は新しい実験をやっていくんだということ。
もう一つは、アメリカは特異なイデオロギーを持っている。これは安倍総理の言葉で言うと、美しい国、そういうのは非常に新しいイデオロギーだが、イデオロギーというか、そういうものが国民に無意識にわかってくる。
それから、過去を封じ込める。過去を否定するのではなくて、過去の因習よりは未来にかけるという考え方。それとイノベーション主義。
最後はよそ者主義です。アメリカは移民の国だが、アメリカ人の中でも中心にいる人ではなく、常に横にいる人たちが、この国を先導していくという選択をする。
アメリカのイノベーションの力というのはイギリスを真似しているし、イギリスもフランスを真似しており、みんなイノベーションをやっている。しかし、ユース・ラジカルというか、何に応用するかというのが全く異なる。
日本の20年後を考えた場合に、今まである技術革新の波みたいなものをうまく使いながら、筋肉系(鉄とか石炭など)、神経性(鉄道とかネットワークなど)を一緒に合わせるのがイノベーション。その中でユース・ラジカルが、新しい考え方が必要。
例えば入院患者が電話も使えて、家族とも映像で話し合うことができるとか、あるいは安全に運転ができ、事故のない自動車の開発など、ユース・ラジカルなところに全く新しい日本のイノベーションがあるのではないか。
○ 黒川座長
ありがとうございました。今日の議論でも、やはりイノベーションは単なる技術革新ではなくて、そういうことを生み出していく社会のイノベーション。
もう一つは、そういう人たちが出てくるようなイノベーションというか発想。それをどうやって実現し、世界の人たちが求めるもので経済成長を引っ張りつつ、少子高齢化や安全・安心の問題を抱える日本で住みやすい国を作るか。
今日は時間が少なかったが、今後議論を重ねていいプランを出していきたい。
この後の記者ブリーフでは、皆さんはモノということだけを考えているわけではないということとや総理のご発言も伝えて、議事録については、委員の方々にチェックしていただく。次回は11月9日の午前10時からの開催予定。

6.閉会
