河上消費者委員会委員長 記者会見

2014年4月1日
消費者委員会

日時

2014年4月1日(火)17:00~17:19

場所

消費者庁記者会見室

冒頭発言

(事務局) それでは、ただいまから河上委員長の記者会見を行います。
 まず委員長からお願いいたします。

(河上委員長) きょうは報告事項1件でございます。景品表示法における不当表示に係る課徴金制度等に関する専門調査会の中間整理についてであります。
 資料が配付されているかと思いますけれども、2月6日の第1回開催以来、本日まで計7回、検討会議を合同会議のような形で開催してここまでまいりました。これまで消費者庁における消費者の財産被害に係る行政手法研究会での検討成果や、その後の検討状況等について説明を受けまして、課徴金制度を導入することの必要性、あるいは導入するとした場合の趣旨、目的、要件、手続等について審議を行ってきたところでございます。

また、事業者からのヒアリングとか既存の課徴金制度の運用状況についてのヒアリングも実施いたしました。
 本日のものは、今後さらに検討を深めるに当たって、これまでの調査審議における各論点の検討状況を中間整理としてとりまとめたものでございます。
 具体的な内容はお手元の資料のとおりですけれども、大まかな要点だけ申し上げますと、まず景品表示法に課徴金制度を導入することの必要性につきましては、その必要性が高いということで委員の意見が一致しております。

次に、課徴金制度を導入する場合における制度の趣旨・目的についてですけれども、主たる目的は違反行為の抑止という点にあるということでは委員の意見が一致しております。ただ、消費者の被害回復も制度趣旨として加味すべきかについては、そういう視点も排除されるべきではないという指摘があったところでありますけれども、なお、さらに検討を要するところであります。
 他方で、事業者からのヒアリングでは、課徴金制度の目的というのはあくまで違反行為の抑止に限定すべきであって、消費者被害の回復というのは別途考えるべきであるという指摘がございました。被害回復のあり方に関する検討、あり方に関する検討というか、課徴金制度とその被害回復のあり方との関係についての検討は、これは要件、手続等の検討をした後に、改めて検討の機会を設けて十分な審議を行うことにしております。
 さらに、次に課徴金の賦課要件の対象事案のうち、いわゆる優良誤認表示、有利誤認表示を対象とすることについては異論はございません。指定告示に係る表示は対象としない方向におおむね意見の一致が見られます。
 これに対して少し議論があったのが、不実証広告規制に係る表示についてでありまして、これは積極的に否定するという意見は見られませんけれども、ほかの要件設定における議論を踏まえてさらに検討したいという意見もございまして、中間整理後に引き続き検討する必要事項として掲げております。
第2番目に、主観的要素をどうするかということですが、これは要件とすべきではないという意見や、行政処分の場合には主観的要件は課させないのが通常であるという指摘もございましたが、不当表示の抑止という目的に照らして主観的要素はやはり必要であるという基本的な認識に立ちながら、不当表示がなされた場合においては原則としてこれはもう主観的要素を満たしているということにした上で、例外的に主観的要素を欠くことが証明された場合については、対象から除外するという折衷的な結論をとる意見が比較的多かったかなという状況であります。

第3番目の規模基準の問題でありまして、どのくらいの規模の損害が問題になるのかというときに、一定の裾切りは要るのではないかということでありまして、これはおおむね意見の一致が見られた。ただ、どのぐらいのレベルで裾切りをすべきかという点については、これは実際の立法趣旨といいますか、法の趣旨を損なわないようにするために、さらに検証が必要だということになります。
 除斥期間については、これも一定の合理的期間を設けるべきであるという方向でおおむね意見が一致しております。

第2に、「賦課金額の算定の基本的な考え方」につきましては、原則としては、やり得相当額を基準とすべきであるという意見が出されたわけでありますけれども、ただ、その算定については行政の事務効率等々を考えますと、やはり個別に算定するというのではなくて、ある程度一律に定めるべきであるという方向で、おおむね意見の一致が見られるところであります。

第3に、「加算・減産・減免措置」についてでありますけれども、加算措置については加算事由に関する意見が幾つか出ておりますが、立法事実に関する検証が必要であるという指摘もございましたし、加算事由設けるということにするかどうかは、今後の議論の余地があるということであります。
 減産・減免措置については設ける方向で検討してよいのではないかという意見が多く、概ねそちらのほうに向かっているかと思います。
 次は、「対象期間」です。賦課金額を算定する際の対象期間については、一定の合理的期間に限定すべきであるということについても、おおむね意見の一致が見られているところであります。若干問題なのが裁量性の採否でありますけれども、かえって現行の措置命令の執行に差し支えるのではないかとの懸念もございます。そういう事態を招来しないようにとする観点から、導入を検討すべきであるという指摘もありましたけれども、他方で予測可能性とか透明性、公平性、迅速性といった観点からは、むしろ採用には慎重であるべきであるという意見も多くございまして、どちらかと言うと慎重論のほうに傾いているのかなと思われます。

第5に、課徴金の賦課手続については、現行景品表示法における排除命令に係る手続と同様の手続にのっとって行われればよいではないかということで、意見が一致しているかと思います。
 今後はこの中間整理を踏まえまして、事業者等からさらなるヒアリングを行うとともに、これまで検討した論点も含めまして、さらに検討が必要と考えられる論点について必要に応じて引き続き調査審議を行うことになろうかと思います。特に課徴金制度の精度設計上において被害回復のあり方をどう考えるかということについては、要件、手続の検討後にさらに検討の機会を設けて、十分な検討をする必要があろうかということで、そのように予定しております。最終的には本年6月をめどに消費者委員会としての答申を取りまとめたいと考えているところでございます。 私からの御説明は以上でございますので、あとは質問を受けながらお話をさせていただきます。

質疑応答

(事務局) では、御質問をお受けします。

(問)何点か済みません。毎回、拝見はしてきているので議論の流れは全部理解しているつもりなのですけれども、まずすごい形式的なところからですが、これは本日、専門調査会で、最初たしか案がついていましたけれども、中間整理案をまとめて、それを本委員会で了承したということになるのですか。

(答) はい。合同会議としてやっておりまして、案をとったということで、合同会議も含めてこれは整理としての案をとったというふうに私は理解しております。

(問) 案から変わった部分はありますか。表現など。

(答) 基本的には余りなかったのですが、7ページ目の5行目「また、加算措置については」の後に、すぐに「さしあたり」となっていたのですが、その前に「抑止効果を高める意味でも」という言葉が挿入されました。

(問) 少し戻りますけれども、きょうは専門調査会も本委員会も同時に中間整理を取りまとめたということになるわけですね。

(答) はい。

(問) あと、中身の点で被害回復の点は当然議論になると思うのですけれども、要件、手続を検討した後にというのが、つまり6月までに答申をして、そこに被害回復の手段あるいは被害回復の是非を含めてなのでしょうけれども、入るのか。それとも6月の答申より後にまた議論を続けるのか、どちらなのでしょうか。

(答) そうではなくて、最終答申を出すまでの間にその問題についても議論はしましょうということになります。

(問) あと「結びに」のところが被害回復のところだけ抜き出されてかなり言及されていますが、これは何か意図がおありなのですか。

(答) これは最初の段階、1ページ目のところにも出てきているのですけれども、最初からこれは制度設計において、被害回復のための制度としての意味というのを強調する見解が一方でありましたので、それについてはここまでの6回の段階では議論の対象から外しておいて、最終的にそれをどういうふうに制度の中で生かしていくかは、後半のところで検討しましょうという趣旨でありました。

(問) 最後に1点。消費者委員会として、例えば賦課金額を一律にするにせよ、3%、10%という議論、どこまでのという意見はされていますし、除斥期間をどれぐらいにするかとか、数字が最終的に制度設計するのに必要になると思うのですけれども、消費者委員会として何パーセントぐらいが適当だというところまで踏み込むのですか。

(答) それは一度質問が出たことがあって、どうしましょうかということがあったのですけれども、ただ、座長からも話がありましたが、具体的な数値まで出せるかどうかというのは、その数値が重要な意味を持つ場合には、もちろん委員会として出さなければいけないのですけれども、そうでないときには、むしろ実際に法案を設計する消費者庁等で実証的な検討もしていただいた上で出すということになろうかと思います。

(問) ありがとうございます。

(答) ほかにはいかがですか。

(問) 中間整理については、現時点の意見を取りまとめたものという理解ということでしたが、必要性については必要性が高いという今回まとめですけれども、その方向性は今後もかわらないという理解でよろしいですか。

(答) その方向性は恐らく動くことはないのではないかと思います。既に御承知のとおり、本日も話が出ましたけれども、法案が閣議決定され、そこで1年以内に課徴金制度については導入の方向で検討することが規定され、実際に国会の審議に入っているわけです。ですから、それについて消費者委員会として、これは重要な制度なので諮問を受けたわけですが、諮問を受けた以上は前向きな方向でこれをサポートする趣旨がメッセージとして出したということになったのではないかと思います。

(問) わかりました。
 不実証広告規制なのですけれども、今後検討するということですが、委員長としてはどのようにお考えですか。

(答) 私個人ですか。個人的な見解というより、全体で決めていただくことが重要だと思います。ただ、本当に個人的な見解になりますけれども、事業者の行為規範として考えたときには、自分がその商品にについて一定の表示をしようとする場合は、当然に、合理的な根拠を持っているべきであると思います。ですから、そうした合理的な根拠を持たないまま、いわば漫然と顧客を引き寄せるために実証もされていないような表示をして集客するというようなことをすること自体、市場において非難されるべき行動だろうと思います。ですから、これは入れるべきだと思います。

(事務局) ほかはいかがでしょうか。

(問) 課徴金導入は必要性が高いことはわかったのですけれども、実際に措置命令と一緒に課徴金を課すことの執行力と言うのでしょうか、役所側の実際問題でそんなに人数がいるわけではなくて、課徴金を課すことで執行力が落ちるのではないかと思うのですけれども、その辺はどう考えているのですか。

(答) 前に独禁法の運用状況のところで公取にその質問をして伺ったのですけれども、確かに大変になったというふうにはおっしゃっていましたが、だからと言って執行力は落ちたとは思わないという返事を聞いて、少し安心しました。消費者庁がもしこれをやるとなると、それは今の体制でやるのは大変だろうと思いますから、何らかの体制整備は必要になると思いますけれども、あとは頑張ってもらう必要があります。マンパワーがどうこうという話だけで本来のあるべき制度をあきらめるというのは、筋が違うと思います。

(問) 当然、都道府県も同じ力を持つと思うのですけれども、都道府県がやっていけるか。その辺とどう思われますか。

(答) 都道府県は難しいのではないかと思います。表示の問題の特殊性ということもあるのですけれども、表示では地域的に限定された表示ということは余りないはずです。ですからどうしても2県、3県と広域にまたがってしまいますから、消費者庁の役割というのは相対的には大きくなるのだろうと思うのです。意見書というか中間整理の中でも、今後、都道府県との連携の仕方とか関係のとりかたについては、さらに検討する必要があると書いておりますけれども、これはやはりこれからの大きな課題だろうと思います。

(問) わかりました。

(事務局) ほか御質問ないですか。よろしいですか。では、これで記者会見を終わります。

(河上委員長) どうもありがとうございました。

(以上)