松本消費者委員会委員長 記者会見

2010年7月23日
消費者委員会

日時

2010年7月23日(金)16:30~17:10

場所

消費者庁6階記者会見室

冒頭発言

 先ほどの消費者委員会で、提言を全員一致で採択いたしました。内容は大きく2つに分かれます。
 1つ目は消費者安全法上の措置についてということで、先週の委員会の審議でも明らかになりましたように、消費者安全法の施行後の危険情報が事故情報データベースに入っているにもかかわらず、きちんと追跡調査されていないのではないか。もし、それが窒息事故であることが本当に明らかになっていれば、消費者安全法上の消費者庁の権限発動が可能になるわけでありまして、そこの部分をもう少しきちんと調査をして、必要な措置を取れるようにしろというものが1つ目です。
 2つ目が、食品の形状・物性面についての安全確保をするための受け皿となる一般的な法律がないという状況は大変問題なので、それについて、そのすき間を埋める法整備を早急に行う必要があるという内容です。そこでは必ずしも食品衛生法だけに限って改正しろというふうに絞る内容にはなっていなくて、特別法の制定も視野に入れて、すき間を埋めることが第一に重要であるという趣旨で提言をまとめております。
 以上です。

質疑応答

(問) それでは、幹事社の方から質問をさせていただきます。
 まず、今回は提言という形で落ち着きましたが、当初は建議という形になるのではないかというふうに見られておりましたけれども、提言に落ち着いた経緯について委員長の口から御説明願います。

(答) 3点ぐらいあるかと思うんです。
 1つは建議という法律上の文言ですが、定義が何もないので、どういう内容であれば建議であり、どういう内容であれば建議と呼べないのかについては、特段の基準が何もない状況下で我々は動いています。そういう中で、建議の方がかなり具体的な内容の行動を促すもので、提言の方がもう少し幅のある広目の行動を促すものというような感じで、一応、前回の未公開株についてはそういう整理でやってまいりました。
 今回、最初、建議でどうかという議論をしたのは、食品衛生法の改正をかなり正面に据えて、したがって、主として厚生労働大臣に建議をするというような感じの議論をしていたので、建議でいいのではないかということだったわけですが、実際に法律をつくる、あるいは法律を執行するに当たって、従来の食品衛生法を担当していた厚労省だけでできるのかというような点等もあって、もう少しここは広めに考えて法整備を内閣全体として考えてもらった方がいいのではないかということで、少し幅のある内容の法整備を求めるということにしたという点が1つ目です。
 これの前提には、建議というものを非常に厳格に考えておられる委員もいたということです。その点は本日も発言されましたが、これは、結局、建議をどう定義するかという問題に戻ることになります。
 2つ目の理由が、今、言ったことと関連しておりまして、建議について定義もない中で、それでは、こういう内容でも建議で出すべきであるという意見が多いということで、反対の人がいても多数決でやってしまうのがいいのかどうかということです。つまり中身の問題よりも形式的な面で、表題を建議とするか、しないかで反対する人がいて、委員会が分裂している状況になっているというのはあまり好ましいことではないのではないか。内容面で一致できるのであれば、委員会としての意見を早く外に出した方がいいのではないか。これが2つ目の理由です。
 3つ目は、消費者安全法上の措置についてというものが今回、かなり大きく取り上げられたわけです。これは、先週の委員会で、消費者安全法の発動も場合によっては可能ではないかという議論がかなり進んだことを受けて、加えられたわけです。この点では、消費者安全法第20条の勧告ということで出してもいいのではないかという意見もあったぐらいでありまして、ここの部分は建議というよりは、どちらかというと、勧告そのものではないけれども、勧告に近いような内容になっているというところがあります。
 つまり、この提言の2.は、勧告ではないけれども、勧告にやや近い内容になっている。3.は建議とは呼んでいないけれども、中身的には従来、建議で出そうと言っていたことに割と近い内容になっているということから、この意見自体が言わばいくつかの組み合わせになっているということもあって、そういう点で、それでは建議ではなくて提言という形でくくるのが適切ではないか。これが3つ目の理由かと思います。

(問) あとは、各社からありましたら、お願いします。

(答) どうぞ。

(問) 厚生労働省に対して食品衛生法の改正を求めるという建議案であったということなんですけれども、それが厚生労働省だけでできるのかわからないということで建議をやめたというふうにおっしゃられたと思うので、その辺をもう少し詳しく教えていただきたいんです。

(答) それが唯一の理由ではありませんが、食品衛生法のみにターゲットを絞って提言をするということに対して慎重論が委員会の内部にもあって、ほかの形の立法も考えられるのではないかという意見があったということです。したがって、1か所だけに絞る形にものにはしないということになったんです。

(問) どうして慎重であるべきであるという話になったんでしょうか。食品衛生法の改正が難しいのではないかという根拠は何だったんでしょうか。そもそも、厚労省は難しいと言っていて、それを何とかこういう形で直しなさいという建議だったのではないかと思うんですけれども、それを自分から下げた理由は何でしょうか。

(答) 反対があったからです。1つの省庁のみに特定の法令の改正を迫る内容の意見に対しては反対があったということです。

(問) それは調査をされていないということですか。それで反対があったということですか。それとも、そもそも、それは絶対にできないんだという話になっているんですか。

(答) 絶対にできないんだということではないと思いますが、行政実態等の調査も踏まえないでやるのはけしからんという意見があったということです。

(問) 提言というものは、これは何か法律上に基づいた言葉なんですか。

(答) 基づいておりません。

(問) 一番強いのは勧告で、その次が建議で、その次が提言という枠組みがあったりするんですか。

(答) 勧告と提言が強い弱いという意味ではなくて、勧告というものは消費者安全法に基づく消費者委員会の権限ですから、消費者安全法の一定の要件が満たされている、つまり現在の事件でいけば、こんにゃく入りゼリーでもって実際に事故が発生していて、消費者庁が一定の権限を発動すれば対応可能なのに発動しないといった場合に、内閣総理大臣に対して一定の措置を取るように勧告できるというものですから、具体的な事件での具体的対応を消費者安全法に基づいて勧告するという内容になります。
 それで、建議の方はもっと広くて、これは設置法上の規定なので、自ら調査審議して、内閣総理大臣とか関係大臣に建議ができるというふうな書きぶりです。建議はこれぐらい具体的な内容で、調査がこれぐらい伴っていなければならないといったような定義は、法律上は何もありませんが、昨年の通常国会で設置法の政府提案が議員修正されて、消費者委員会が新たにつくられることになりました。その際、消費者委員会の権限についての書きぶりが、従来ですと意見を述べるという書きぶりだったものが、建議するというふうに変わった際に、修正をした議員の方々の意向としては、意見を述べるよりは建議の方が言葉としてはよりフォーマルな印象を与えるということで使われたようです。そうなると、それに合わせて、単なる意見よりはもう少し根拠のある、調査を伴った内容でなければならないという考え方は十分あり得ると思います。

(問) それでは、この提言というものはだれに向けて出されたもので、この提言に何か法的な拘束力やそういうものはあるんでしょうか。

(答) 建議であっても、拘束力は何もありません。

(問) この提言はだれに向けて出されたもので、何日までにどこが返事をしなければいけないというものがあるんでしょうか。

(答) そういうものはありません。あて先は、基本的に消費者庁を担当している内閣総理大臣、それから、厚生労働大臣、農林水産大臣等を考えておりますし、特に形状・物性での安全性という点では、経済産業省の製品安全担当部局の知見というものはかなり活用できると私は思いますから、そういう点では経済産業大臣にもこれについての消費者委員会としての意向を届けるということになるかと思います。

(問) わかりました。
 あと、最後に3.は、この前、泉政務官が言ったこととかぶっているのではないんですか。

(答) かぶっているという点では、かぶっています。

(問) かぶっているのに、またさらに何を提言するんですか。

(答) かぶっていることは提言してはいけないですかと逆に言いたいですが、泉政務官もそう考えていらっしゃるし、我々もそう考えているんだというだけのことだと思います。それだけ多くの人が必要であると考えているということです。

(問) わかりました。ありがとうございます。

(答) どうぞ。

(問) 最初の質問に関連するんですが、指摘があったように、当初、食品衛生法の改正を求めるという案が1つ大きくあったと思うんです。委員長がおっしゃったように、それを1つに絞って責めるのはどうかという反対意見があったというふうにおっしゃいました。
 ただ、その反対意見というものは、委員全体からするとわずか1人ないし2人程度であって、特にお一人の方が強硬に反対したのは聞いておりますけれども、ほかの委員の皆さんは、委員長自らがおっしゃったように、建議に定義がないという中では、より具体的に調査審議をした上でできるのなら、より具体的にした方がいいというのはわかりますけれども、十分、こんにゃく入りゼリーの窒息リスクがあるという、いろんな知見がそろっている中で、あるいは海外の実情もある程度調べられているという中で、なぜ引っ込めたのかというのがもう一つわかりづらいんです。そこはどうしてですか。
 まして、委員会が割れているような印象がどうのこうのなどという話は、はっきり言って国民からすればどうでもよくて、それはより消費者マインドを持った委員の皆さんの多数決なり考えで委員会としてこうするんだという結論はあってもいいかなという気はするんですが、その辺の説明をお願いします。

(答) ぎりぎりのところに行けば、そういう判断もあり得るかと思います。内容面において絶対に反対であるという方が一部いらっしゃって、他の委員の大部分がこの内容でいいということであれば、そういうようなこともあり得るかと思いますが、今回これで内容的に反対だという委員はいなくて、ここの中には食品衛生法の改正という選択肢も十分入っているわけです。したがって、より多くの委員が賛成していただけるような内容であれば、それでいいのではないかと私は思っています。
 あえて、特定の文言にこだわっている人を切り捨てていくというような形ではなくて、中身の点で一致できる部分があれば、それで委員会としてのコンセンサスはここにあることを示す。しかし、それぞれの委員は別のことをさらに付け加えて考えておられる。そこは今日の発言の中からも明らかになったと思いますから、それはそれで、それぞれの委員が今後のこのフォローアップの場で、またそういう観点から発言されていくことになると思います。

(問) おっしゃることはわかるといえばわかるんですが、ただ、設置法に基づく建議と、ぼやっとした提言とでは、出す方の重み、あるいはそれを受けとめる側の重みも随分違ってくると思うんですけれども、その辺は関係ないんですか。

(答) ですから、その重みを極めて重視する立場から、こんなものでは、建議ではだめであるという反対論が出たわけです。ですから、逆に建議に重みをつけ過ぎた結果として、建議のハードルが非常に高くなったということかもしれないです。

(問) でも、ハードルを上げていたのは一部の委員だけではないんですか。

(答) ですから、そこが法律に何の要件もないことについてどういうふうに考えていくかということなんです。そこで一部の委員を切り捨てていいのかという話です。

(問) 建議の方と、もう一つ、2.について、消安法の勧告でもいいのではないかという意見がかなりあったとおっしゃられたんですが、その点、勧告にするのに反対というのはどのようなものがあったのかを教えてください。

(答) 勧告にもなり得るのではないかというのは、この2.の部分ですね。当該こんにゃく入りゼリーの事故について、こんにゃく入りゼリーに焦点を絞って、消費者庁に対して消費者安全法上の措置を取れというものが勧告ですから、その前提要件として、消費者安全法が施行された後で重大事故等が発生しているという要件が必要である。
 そこで、この1件の危険情報が一つの手がかりになるわけですけれども、まだこの危険情報がどういった内容のものであるのか等の確認が全然取れていないというのが先週の消費者庁の言い方であったわけです。そこが明らかになれば1つ目の要件はクリアーしている。つまり、消費者安全法が施行された昨年9月1日以降に重大事故等が発生しているという要件がクリアーできている。
 あと、2つ目の要件としての消費安全性を欠く、危険であるという点については「食品SOS対応プロジェクト」の評価は消費安全性を欠くというふうに言っているに近い内容であったわけで、これも恐らくクリアーしている。
 最後の3つ目は、今後、すぐにでも事故が発生する危険性がかなり高いかどうかという評価に入っていくわけです。
それで、入口の1つ目の部分がまだはっきりしないという状況下で、そこをまずはっきりさせるべきであって、そこがはっきりすれば消費者庁としては、特に最後の部分ですね。今後も発生しそうなおそれがあるという部分の評価を踏まえた上で、消費者安全法に基づく措置、例えば法令に基づく事業者に対する勧告。これは、今は自主的なお願いとしてやっていることですが、それを法律上の勧告として消費者庁が事業者に対して行うということが可能になってくるわけです。そういうことも考えろというのが、この内容です。

(問) その内容は理解しているんですけれども、2.の内容について、提言という形ではなくて、消費者庁に措置を取るよう勧告するという。

(答) それは、1つ目の要件が満たされているかどうかは、今、我々としては判断できないからで、それが判断できれば勧告という形で消費者庁に対して出すということは十分あり得ます。ですから、今後の消費者庁側の調査、あるいはその他の、例えばメディアの皆さんの調査等から具体的な事件の事実関係が明らかになってくれば、そういうものを踏まえて消費者委員会として勧告を出すという選択肢はあり得ると思います。

(問) それでは、今回、勧告するかどうかという点については、消費者委員会ではまだ情報が足りないので判断できないので、今回は勧告はせず、提言の中に込めるということですね。

(答) そうです。法律上の勧告ができるだけの要件を満たしているとは、まだ消費者委員会としては判断し切れないということです。

(問) ごめんなさい、関連で、今、1つ目の重大事故等が入る。それで、2番目の消費安全性を欠くというものも入る。3番目の被害拡大に関しては、消費者庁は泉政務官の会見の中で被害拡大の可能性は現在ないと判断している。政務三役でそう判断したとおっしゃられているんですけれども、そこが消費者委員会とは考え方が違うということでしょうか。

(答) いえ、消費者委員会はそこの議論は別にしておりません。

(問) そうすると、それでは、仮に重大事故等に入るとしても、すぐに消費者庁に対して勧告はできないのではないんですか。

(答) ですから、3つ目の要件を満たしているというふうに消費者委員会として判断をすれば、消費者庁に対して勧告をするというのはあり得るわけです。ただ、消費者庁は勧告が出ますと、その勧告に対してどういう措置を取ったかということを委員会の求めに応じて報告する義務が出てきます。ただ、そこで消費者庁側が被害拡大の可能性はないんだというふうに判断しているのであれば、そういうふうに判断したから措置を取らないんだという答えが返ってくることになるわけで、そうなりますと、消費者委員会と消費者庁の間で評価が割れたということになるわけです。ただ、消費者委員会が消費者庁と違った判断を必ずするかどうかは、議論をしないとわかりません。

(問) 関連なんですけれども、今、消費者委員会としては、消費者安全法施行後に新しい案件が発生していないので第1の要件をというふうにおっしゃいましたが、泉政務官の説明の中では、過去にすでに事故事例が山のようにあるということで、そこの部分はすでにクリアーされていて、結局、問題としては今後の発生頻度を再現されるかどうかが一番の問題になったというふうな発言がありまして、法解釈上、私もどちらが正しいのかはわからないんですが、こだわられたところはそういうところなんですか。

(答) 今、言ったのは、消費者委員会がこだわっているのではなくて、消費者庁の見解です。泉政務官のその時の見解と消費者庁事務当局の法律解釈が異なっているということであると思います。その点は先週の議事録を確認してもらえればわかります。私、何回も野村課長に確認をしております。

(問) 3.のところで、食品衛生法についてなんですけれども、食品衛生法は基本的に公衆衛生のという大前提の考え方があるんですが、そうではなくて、製品安全等の視点なども盛り込んで、もう少し広い食の安全というものにしたらいいのではないかということなんだと思うんですけれども、ただ、それならばといいますか、要するに食品衛生法とか厚生労働省の行政の限界があるということになると思いますので、それならば改めて早急に食品安全庁をつくるべきであるというような要求とか、その際に幅広い意味での食の安全をカバーする食品安全法的なものを早急につくるべきであるというような要求はされないのですか。

(答) 食品安全庁については、個人的には委員の皆さんいろんな考えを持っていると思いますが、消費者委員会としてどうこうという議論はしていなくて、たしか消費者基本計画の中に食品安全庁の設置を検討しますという文言が入ったことについて若干の意見交換があったということです。
 私個人としては、食品安全に関する役所が一元化されて、法律的にもきちんとすき間のない法律ができるのが望ましいと思っています。

(問) 今後、そうした議論を具体的に委員会の方で進めていこうというようなお考えはありますでしょうか。

(答) 消費者基本計画の実行状況をレビューする、監視をするというのが消費者委員会の一つの仕事として与えられておりますから、食品安全庁の設置を検討するという基本計画の項目について、今、どういう議論をやっているのか。さらに消費者庁とか農水省とか厚労省が、その計画の実現に向けてどういう議論をしているのかについてヒアリングをする。その中で消費者委員会としての意見を述べていくというのは十分あり得ると思います。

(問) 嫌がっている厚生労働省に対して無理やり食品衛生法を変えようというようなことをやるよりも、もっと幅広い法律をつくるということの方が発想としてはいいような気がするんです。

(答) 幅広い法律をつくれといっても、今の食品衛生法を一切なくしてしまって、全く白紙で新しいものをつくるというのはなかなか大変なことだと思いますから、それよりは食品衛生法をベースにして広げていくか、あるいは食品衛生法プラスαでもう一つ特別法をつくってやっていくか、どちらかが一番、実現可能性は高いと思うんです。その場合に、どの役所が担当するのかというのは、もう一つ、別の問題になります。

(問) 今、お話しになっていたもので、特措法というようなものをつくるということを提言されるとか、そういうことの具体的な議論とかは今後はなさらないんですか。

(答) 特措法というのは、こんにゃく入りゼリーのためのですか。

(問) よくわからないんですけれども、何かそういうものに関しては。

(答) 選択肢は大きく2つないし3つあると思うんです。
 1つは、食品衛生法を広げて、対象を衛生上の危害よりはもう少し広げるということです。
 2つ目が、食品の形状・物性に起因する安全性を確保するためだけの法律をつくるということです。
 3つ目の選択肢としては、経済産業省が主として所管をしております消費生活用製品安全法という法律があります。この法律は適用対象の定義の中で、食品衛生法第4条第1項に規定する食品を除くと書いてあるんです。ですから、食品はすべて製品から落ちるということで分担しているんですが、そこの適用除外の部分を少し制限して、食品衛生法第4条第1項で規定する食品の衛生上の危害の部分だけを除くとかというふうにすれば、消費生活用製品安全法でもって食品の形状・物性をカバーするということは、法律上は可能になります。
 今は消費生活用製品安全法からも食品が丸々落ちている。他方、食品衛生法からは衛生上の危害以外は落ちているということで、完全に法律のすき間になってしまっているわけですから、それを食品衛生法サイドで広げるというものと、消費生活用製品安全法サイドで広げるというものと、すき間の部分について特別の法律をつくって埋めるというものと、大きく言えば3つあるということです。
 ただ、食べて体内で消化してしまう食品、こんにゃくは消化できないかもしれないんですが、そういう食品の中の物性・形状だけを消費生活用製品安全法で経済産業省がカバーするというのは、法律の仕組みとしては少しグロテスクな感じがいたしますから、そういう点では従来の製品安全で培ってきた知見、おもちゃの安全性についてはいろんな議論をしてきているわけで、スーパーボールがのどに詰まったという事例が食品SOS対応プロジェクトの報告に出ておりましたけれども、ああいうものは恐らく製品安全の世界では相当議論をしているはずなので、そういう知見を、従来、厚生労働省がきわめて困難だと言っているところの食品の物性・形状を考える際に活用すれば、一定の基準値が出せるのではないかというふうに私は期待しています。

(問) 委員長は次の御予定があるということなので、あと1問ぐらいで終わりたいんですが。

(問) すみません、冒頭で、建議の方が具体的に行動を促す。それで、提言はもう少し広目に行動を促す。さらに、建議はより根拠がなければならないという感じとおっしゃったのは、委員長御自身のお考えなのか。それとも、委員の皆様の間でコンセンサスが取られているものなのか。どうなんでしょうか。

(答) コンセンサスがあるかといいますと、多分ないと思います。

(問) それでは、これはあくまでも委員長のお考えということですね。

(答) いや、そうではなくて、そういう考えもあるということです。
 それと、未公開株についての意見を出すときに提言と名付けた際は、今、言ったような感じの議論をしました。ただ、その後、なぜ法律上にない提言などという形にしたんだという批判も聞きました。建議というものは別に何の定義もないんだから、建議という形でどんどん出していってもいいのではないかという意見もありましたので、どういう場合に建議にするかということについては流動的だと思いますが、建議をかなり厳格に考えている方もいらっしゃるということで、そういう方の賛同も得るために、提言ということでやったという面もあります。

(問) それでは、建議というものは明確な定義がなく、みんなはこんなものかなと思っている中で、みんなが何となく合意できたら建議になるということですか。

(答) 法律上の定義はないわけですから、そういうことになると思います。ほかの法律でも建議という言葉を使っている場合もあるようで、かなり幅広く使われていると聞いています。

(問) 今回、建議が何で提言になったかというのは本当によくわからないんですけれども、私の場合は建議で出るということで報道しましたので、結果的に誤報になっていますから、それは検証しなくてはいけないんですけれども、その過程でどうしてもわからないところは、消費者委員会の打ち合わせ会なんです。公開の消費者委員会があって、平場での議論ではなくて、打ち合わせ会の中でどんな議論をしているのか。打ち合わせ会の議事録というものはあるのか、ないのか。それで、その議事録や議事概要にしても公開されていませんので、何で公開しないのか。これはすごく、今のお話の中でもそうですが、出てくるのは建議に対しての反対の言葉だけであって、公の中での公開の場になっていませんので、そこのところは何でですか。

(答) 委員間打ち合わせは、制度的な位置づけとしては、正式の委員会ではないということです。言わば、委員が個人的に集まって意見交換をしている場、あるいは事前に勉強している場であります。

(問) そこで決まる今回のこんにゃく入りゼリーは前日まで、見出しは知っておりましたけれども、ある種、確信を持ってそういう建議というものはあったんですが、わずか何時間の打ち合わせ会の中で決まっているような気がするんです。
 ですから、前回の16日のときは、公の場ではその経緯も説明されませんでしたし、そういうことが何で、要するに打ち合わせ会の重要なことが出てこないのか。これはやはり、消費者にとっては、見る人にとっては政策決定過程が非常にわかりやすい。それで、実際に意見を届けるということをずっと消費者委員会は言っていますので、そういうことをぜひ、今回の件についても、やはり明らかにしてほしいという気持ちがあります。

(答) わかりました。

(問) すみません、最後でお願いします。

(問) 消費者庁は、先日の「食品SOS対応プロジェクト」のまとめで、繰り返しですが、こんにゃく入りゼリーというものは消費安全性を欠く。あるいはお餅やあめよりも、一たび窒息すると重大な被害を起こしかねない。そのようにありながらも、結論を先延ばしにしました。それに対する失望感というものは一部消費者団体始め広がっているところではあるんですけれども、消費者庁の行政を監視する立場にある消費者委員会が今回、このような提言にとどまったということで、より消費者の安全を守る立場から議論をし、意見を述べるべき消費者委員会が、この問題に対してきちっと向き合うメッセージを国民に対してちゃんと発することができたのか。役割を果たすことができたのかということに関して、委員長はどうお考えですか。

(答) 委員の個人の意見という点では、さまざまな方が発言されています。今日もさまざまな意見が出ました。提言の内容は基本的に支持するけれども、さらにこうすべきであるという意見がいっぱい出ているわけですから、そういう形で委員が意見を発信しているということであります。
 ただ、行政組織としての委員会が委員会としての一定の決断を下して何かをやるとすれば、それは法律の枠があるわけですから、それにのっとってやらなければならないということになります。そういう点では歯がゆいと思われる部分があるんだろうと思います。そこはやむを得ないと思います。

(問) すみません、もう一問だけいいですか。

(答) どうぞ。

(問) この間の未公開株の件も提言にとどまり、今回も提言にとどまった。両方、最初は建議とか勧告を目指していたはずだと思うんですが、今回もそういうものにとどまったというのは、今後も何回やろうとしてもまた提言にとどまってしまうのかなという感じもしてきているんですけれども、根本的に調査権限とかそういうものが足りないのかとか、いずれも意見が一致しなかったというだけなのか。どちらだと考えますか。

(答) 中身において意見が一致していない部分は少なくて、建議という法形式を非常に厳格に考える立場と、そうでない立場があるということの違いだと思います。したがって、私は表題が何かよりは、消費者委員会として中身におけるコンセンサスをとって発信していくことの方が現段階では重要だと考えています。
 もちろん、厳格に考えられている方の要求を満たすぐらいの調査がきちんとやれれば、それに越したことがないわけですが、そのためには調査部門のスタッフをうんと増やしていかないとなかなか大変だろう。現在、自動車リコールについてはかなり綿密な調査をしておりますから、これはそういう厳しい基準を持たれている方から見ても、建議としての基準をクリアーした内容になるだろうと思っています。そういうふうに評価していただけると思っています。

(問) 各社、よろしいでしょうか。
 それでは、ありがとうございました。

(以上)