内閣府 Cabinet Office, Government of Japan

内閣府ホーム  >  活動・白書等  >  審議会・懇談会等  >  消費者委員会  >  記者会見  >  2010年  >  松本消費者委員会委員長記者会見

松本消費者委員会委員長 記者会見

2010年4月9日
消費者委員会

日時

2010年4月9日(金)17:46~18:31

場所

消費者庁記者会見室

冒頭発言

 未公開株等投資詐欺被害ということで、未公開株に限りませんが、さまざまないわゆる無登録業者による勧誘とか、自社株あるいは自社の社債を売り付けるとか、あるいはファンドといったたぐいの被害がたいへんに高齢者を中心に起こっています。そこで消費者委員会として一定の対応を関係省庁に求めたいということで本日の提言をまとめた次第です。
 提言ということで、決め付ける形でのこれをやれという形よりは、もう少し広目のこういう方向でという形になっておりまして、3つの面での施策の充実を求めるという内容になっております。
 1つは、民事ルールをきちんと整備することによって、被害に遭ったとわかったら直ちに被害回復の交渉ができ、かつ、その結論がはっきり出せるような法律をきちんと整備していただきたいというのが第1点です。
 第2点は、刑事罰を中心にして抑止効果のある制裁をきちんと機能するようにしていただきたいということです。
 3つ目が、行政対応としてもっと工夫できることがあるのではないかということで、行政対応の充実を求めるということです。
 この3つのタイプの対策を充実していただきたいということで、消費者庁、金融庁、それから、新たな対策というわけではありませんが、警察による刑法等をきちんと適用して、あるいは罰則法規がありますから、それらを適用した摘発をきちんとしていただきたいということで、金融庁、消費者庁、警察庁それぞれを担当されている大臣あてに、この提言をお渡しするということになり、本日、消費者行政担当の福島大臣、それから、つい先ほど金融担当の大塚副大臣に直接お渡ししてきたところです。
 以上であります。

質疑応答

(問) 提出されたものは、福島大臣と大塚副大臣と、そのほかにも予定があるんでしょうか。

(答) 直接手渡しをして直々に協力を要請してきましたのは、そのお二人の大臣と副大臣ですが、国家公安委員長の中井大臣にも、直接ではございませんけれども、書面をお渡しするということになっております。

(問) それは、機関としては消費者庁、金融庁、国家公安委員会の3機関ということですね。

(答) そうですね。国家公安委員会というよりは、警察庁ということになるんでしょう。
(原事務局長) あと、加えて、この間の消費者基本計画のとりまとめをされた消費者政策会議の方々です。そちらにもお送りしていますので、関係省庁すべてということになります。

(問) 今回、提言ということなんですが、法律上、その建議とか勧告とか、より実効力の強い枠組みもあるかと思うんですが、提言にされた理由を説明していただけますか。

(答) 提言という制度は、法律上はないといえばないですし、ないからやってもいいというあいまいな部分があるんですけれども、消費者委員会ができるいきさつとなった政府案を修正する過程において、もともとの政府案の中には消費者政策委員会が何をやるかということの一つに意見を述べるということがありました。意見申述と言われている制度があったわけですが、与野党の修正協議の中で、それよりはもう少しフォーマルな感じの語感のあるところの建議という制度にそれを変えたということがあります。
 それでは、建議とは何ですかといいますと、建議はこういうものだという法律的な決めはないわけで、意見申述と建議と、結局、そんなに対して変わらないではないかというような言い方をされる方もいらっしゃいますが、我々としては建議の方がよりフォーマルなものだというふうに考えておりまして、建議は言わば特定の大臣、消費者庁長官、あるいは内閣総理大臣に対して、もう少し具体的にこれをやるべきではないですかということを提案する。そして、それをするに当たってはかなりのデータを付けて行う必要があるのではないかというふうに考えておりまして、今回はそこまで綿密な調査とか法律的な吟味とかを経て、この法律のここをこういうふうに変えるべきであるというような具体的な提言は含んでいません。
 どちらかといいますと、方向性を示すようなものになっておりまして、そうであれば法律上の建議というよりは提言という形で出す方がいいのではないかという判断をいたしました。逆に言えば、建議ということになるとフォーマル性が高くなるから、その分、準備もきちんとして、綿密な調査に基づいてやるというような感じになって、少し重いといいましょうか、時間もかかりますし、手続的にも重い。それに対して提言というものは、もう少し軽くやれるものとしてやろうということです。今回、これで一応まとめましたので、もう少し皆様の評価とかを聞いた上で、この種の提言的なものをもっと幾つか出していくということも考えておりますし、こんなものでは生ぬるいから、やはりきちんと建議という形でやるべきだという声が強ければ、少し時間をかけて建議という形にするということも考えておりますので、この辺は委員会としての一つの試みだというふうに見ていただければよいかと思います。

(問) 済みません、その点をもう少しお伺いしたいんですが、建議と提言の位置づけの意味の違いは理解するんですけれども、今回の未公開株のことについて提言でいこうと決めた理由は、試みだから提言でいこうというのか。建議ですと時間がかかるから、早くするために今回は提言という形を取ったのか。もしくは重い調査はできないからなのか。どういう理由で提言を採用したかを教えてください。

(答) 建議も提言も、法律上は何の定義もないんです。ですから、好きにやってくださいという話にもなるかもしれないんです。建議と言いたければ何を言っても建議ですということになるのかもしれないんですが、そこを我々なりにランクを今の段階では付けているということです。建議の方が調査に基づいて、より具体的なことを特定の大臣に対して提案するというもので、提言はもう少し、その前段階的なものとして位置付けている、方向性を示すものということです。

(問) 繰り返しになりますけれども、先ほどのお話で、つまり一定のこれこれすべきという具体的な施策には出せなかったということなんでしょうか。出すべきではないとあえて判断されたということなんでしょうか。

(答) 決めつけはしないということです。幾つかの選択肢がある枠を示しているということです。
 例えば、民事ルールが必要だという点では意見は完全に一致していますが、その上で、それでは、どういうふうにして、どの法律にどういうルールを入れていくのかということになりますと、これはかなりきちんと検討して、さまざまなことを考えなければならないということです。民事ルールの方はまだあいまいもことして、結構いろんなことを言えますが、刑事罰になりますともっと綿密な調査と検討が必要になってまいります。それで、我々が我々の責任でもって、この法律のこの条項をこう変えて、懲役刑をもっと重くしろなどということを軽々しくは言えない。それを言おうと思うと、ほかの法律との均衡性とかさまざまな考慮をした上で判断しなければならないだろうと思いますから、そこの部分は担当している省庁に検討してやってくださいというものが今回の趣旨です。
 ただ、抑止力をもっと強める必要があるではないか。ここは一致しているわけです。そのためには、罰則の強化、懲役刑をもっと重くするというのは効果的だろうという意見がかなりあるわけですが、ここの部分だけ懲役刑を重くすると、ほかとのバランスが取れなくなります。これは立法論的にはなかなか難しいことですから、それでもなお、必要といいますか、それを根拠付けるだけのさまざまなデータをそろえてくる必要があるわけですが、今のところ、我々としてはそこまでやっていないということです。

(問) 今後は、とりあえず各省庁に検討をお願いする。それで、その進捗状況いかんでは、また消費者委員会の方で建議というところまで内容を高めて出すという可能性もあるわけですか。

(答) もちろん、あります。検討を依頼した各省庁が全く検討しないということですと、我々の方からも少し積極的なアクションを起こすということになると思います。

(問) 途中で聞けなかったんですけれども、もし既に説明があったら済みません。
 「2.求められる対策」の「(3)効果的な行政対応」で、金商法を扱っている金融庁として、既に登録済みのファンドの行為でおかしいことをやっていれば、それは公表するとか処分の対象にするみたいなことはやっていますし、これからもやると思うんですけれども、監督官庁のといいますか、そこの官僚の発想として、やはり法律の枠組みに漏れているものに対して何かをやるというのは難しいと考えていることが多いのかなと思うんですけれども、ここに書いてある説明などを見ますと、無登録の業者に対しても積極的に何かをすべしというような感じで書かれているように思えるんですけれども、その辺は。

(答) ここは金融商品取引法の前身の証券取引法の特殊性というところがあって、歴史的ないきさつがあるようなんですが、金融庁のもともとのスタンスは、登録業者を相手に金融行政をやっているのであって、無登録というものはそもそも違法である。しかも懲役3年以下という罰則つきの違法行為をやっているのですから、違法行為を取り締まるのは警察の役割だという意識がかなりあったと思います。
 それで、登録業者の違法行為に対しては金融庁が行政処分をする、登録を取り消すとか、そういうことがあり得るという中で、警察がきちんと無登録の悪質業者をすべて素早く摘発していれば被害はこんなに広がらないわけですが、警察も持てるマンパワーをいろんなところに配置しながらやっているわけなので、この問題に大量にスタッフを投入してということには多分なっていなくて、ときどき摘発をしているということだろうと思います。
 そういう中で、昔の証券取引法、今の金融商品取引法の中に、証券取引等監視委員会が、この金融商品取引法に違反している業者、これは登録業者、無登録業者を問わないんですが、金商法違反の業者がいる場合に、裁判所にその業者の行為を禁止する、あるいは停止する命令を出してもらうことができる。裁判所にそういう命令を出すように申し立てることができるという条文があるんです(金商法192条)。この規定は戦争直後の証券民主化のとき以来あるらしいんです。更に、その申し立てをするために必要な調査ができる。無登録業者に対していろいろ資料を出せとかというような行政処分ができるという規定があります(金商法187条)。ですから、無登録業者に対して何もできないわけではなくて、金融庁はそういう法律上の権限を行使すれば資料を出せとかということが言えますし、裁判所に対して命令を出してくれという申し立てができる。そういうことが、現在の法律で可能なことなんですからやってくださいという趣旨が入っています。
 それで実際、金融庁もその条文が使えるということには気づいておられまして、今国会に既に提出されている金融商品取引法の改正案の中に、その部分を少し強化する改正が入っています。それは、裁判所が命令を出したのに、なお従わないで無登録で業をやっているような場合に、従来、会社に対しては何のおとがめもなかったんです。刑事罰ですから個人相手の制裁なんですが、今回の改正案の中に、会社に対して3億円までの罰金を科することができるという規定が入りましたから、これは経済的な意味で一定の抑止効果の向上が期待できると思います。
 ただし、個人に対して適用される懲役刑の部分は少し不十分なところがあります。といいますのは、もともと無登録で業を行えば懲役3年以下なんです。それに対して証券取引等監視委員会が裁判所に行為の禁止の命令を出してくれという申し立てができて、裁判所が命令を出しますね。それに更に違反をした場合も相変わらず懲役3年以下なんです。もともと懲役3年以下なのに、裁判所から更に命令されてもまだ懲役3年以下というのは少し不十分かなと思うのですが、その従業員がなお勧誘行為をしていたような場合には会社に3億円までの罰金を科するということになりましたから、会社としてあえて3億円の罰金の危険を負ってまで業を続けないかもしれないという抑止効果は少し増えたと思います。

(問) 済みません、行政対応の少し細かいことについてお伺いしたいんですけれども、悪質な無登録事業者に対する情報を早目に公表することとなっていますが、公表するまでの段階に至るまで情報を収集するとなると、既に警察も動いていて摘発にも至れるのではないかという、そのレベルかなと思うんですけれども、早期に公表というのはどのレベルをイメージされているのかというところを教えてください。

(答) 我々としては、刑事的に立件される直前に公表とかというようなことではなくて、そもそも無登録で事業をやる、勧誘をやるということ自体が違法行為であり、懲役3年以下に値する。直罰で禁止されている行為ですから、これは事業者名を公表してもいいのではないかと思うんです。行為を確認できれば、この業者は無登録の業者ですから御注意くださいという情報を出す分には特段の問題はないのではないかと思います。
 それで、無登録かどうかということは金融庁に問い合わせればすぐわかることですし、勧誘しているという事実の確認をきちんと済ませた上で注意喚起の情報を出すというのは、そんなにハードルは高くないと思います。これは別に、制裁としての事業者名の公表というよりは、注意喚起としての事業者名の公表ですから、行政手続的に何か聴聞をやらなければならないというものでもないと思うんです。

(問) つまり、消費生活センターに相談があって、この事業者だというものは即時公表というたぐいでもいいということですか。

(答) 事実を確認する必要はあると思います。実際にこの事業者がやってきて、こういうパンフレットも見せて、こういう条件で契約の勧誘をして、私はそうかなと思って契約しましたというような事実は確認する必要はあると思います。

(問) 未公開株というものは電話勧誘なので、実際に遭うことはほとんどないんです。

(答) ごめんなさい、未公開株という流れの話と無登録業者の話と幾つか走っているもので、今、私も話を混同いたしました。無登録の部分については、違法かどうかは比較的簡単にわかりますから、それは公表ということで注意喚起は簡単にできると思うんですが、未公開株に関してであれば、未公開株の取引自体が禁止されているわけではないわけで、未公開株をだれかが売っているという場合に、それが無登録業者であれば、無登録営業の方で違法行為ですから実名公表をしても問題ないでしょうが、きちんとした何とか証券が未公開株を売っているから違法かというと、そうではないですね。

(問) 実態はそうではなくて、未公開株を売っているところがほぼ無登録で、しかも未公開株から今は社債に変わっているんです。わけのわからない業者が自社株を売るということになっているんです。ですから、そこに社債を売るということに関して非常に法律の壁があるといいますか、自社株を売ることに何の問題があるのか。そこにどういうふうに抑止力をかけるかというところが問題だと思います。

(答) そこの点が、この「(3)効果的な行政対応」の2つ目のパラグラフの「また、不特定又は多数の自社株や私募債の発行、販売を行う者については、金融商品取引法に基づく企業情報等の開示規制を実効的に運用することが必要である」ということです。自社株で、しかも50口未満であれば、50人未満に勧誘するのであれば届け出等が要らないというルールがあるわけですが、そこを脱法的に行っている業者がかなり多い。49口で何回もやるとかというものが多いということで、そこの脱法を許さないような行政対応が必要だという趣旨です。この部分については、金融庁は既に一定の対策を取っておられるというふうに聞いております。

(問) 今の少人数私募債の募集なんですけれども、この間、国民生活センターなどで実名公表をした業者、アフリカントラストなどという会社はまさにこれをやっていて、49人で収まるような、一口10万円で490万円の募集などというものを何百回も募集しているわけです。それ自体は確かに、一つひとつの行為は法律から外れていないといいますか、だけれども、全体で見たらおかしいではないか。だけれども、それでは、金融庁は現状で何かできるかといったら難しいのではないかと、私が取材した人がそう言ったんですけれども、今回、その開示義務が必要になるか、開示義務がないままでいいのかという49人の規制などは、この規制自体は変えた方がいいのではないかというところまでは、今回の提言は触れていないのでしょうか。

(答) その趣旨も、ここの文章の中に入っているというふうに読んでください。具体的にどうしろということは言っていませんが、そこが方向性を示して、検討を促進しているという趣旨なんです。今のところ、我々がこういう法案を出せというような感じで建議できる能力がないわけで、その辺のことは金融庁で考えてくださいということですが、金融庁は、行政運用の仕方としてそのような脱法を許さない形の、この金融商品取引法を金融庁がこういうやり方で運用しますという新しい方針をつくっているというふうに聞いておりますから、そうなれば行政対応として今までよりはより積極的に対応してもらえるということです。
 もう一つは、出資法という法律がございますね。L&G事件は出資法違反だったわけで、それに詐欺罪が加わったからあれだけ重くなったわけですが、出資法違反であれば即、直罰なんです。ところが、社債と称すれば合法的になるというのは何かおかしな感じがするんですが、出資法の条文を見ますと、社債という名目であっても預り金商法をやったら出資法違反だと書いてあるんです(出資法2条)。ですから、この点も言わば警察の積極的な摘発を待たざるを得ないのかもしれませんけれども、社債だと称すれば出資法の適用を免れるわけではないということは法律に書いてありますので、そこも積極的に使ってもらえればと考えています。

(問) 個人的な一記者としての意見を言わせていただければ、やはり消費者庁、金融庁、警察庁と3つの省庁にかなり網羅的なことを言う。しかも提言という形で、法律にない提言という言葉を使うのではなくて、やはり未公開株対策については、どこの省庁がまずリーダーシップを発揮してやっていくんだというところの1つに絞って、更にこれだけは絶対にやってほしいという最重点項目について建議ということでやっていただいた方が私は使いやすいという気がしまして、書いてあることは全部大事だと思うんですけれども、あれもこれもといいますと、なかなかとっつきにくさが先に立ってしまってというのが第1印象としてあります。
 別に、ここの取引・物価対策課の代弁者というわけではないんですけれども、やはり取引・物価対策課としては、特定商取引法での行政処分で最長1年であるということで、やはり限界があるので、金商法で民事ルールをつくって、金融庁が率先してやっていくべきではないか。金融庁には前線部隊もある。消費者庁にはない。旧警察庁の部隊はありますけれども、ですから、やはり未公開株のトラブル対策は金融庁。更に、金商法に民事ルールをつくるやり方でやっておくべきだというふうに話を聞いたんですけれども、まず、どこがリーダーシップを発揮していくべきなのか。委員長はどう思われますか。

(答) この提言を読んでもらえればわかりますが、金融商品販売法という法律がございます。これは、実は民事ルールを定めた法律なんです。今のところは損害賠償についてだけの民事ルールです。リスク性商品について、リスクをきちんと開示しないで販売して、そのリスクが顕在化して損害をこうむった場合の賠償責任を規定した法律なんですが、これの中に無登録業者からの契約についての無効あるいは取り消しうるというような条文を入れるということが一番、法体系に影響を与えないでやれる方法ではないかということで、ここにも金融商品販売法にそういうものを入れるというようなことが考えられるのではないかということを書いております。これは決め付けるやり方ではないですけれども、消費者委員会としてはこういうやり方がかなり実現可能ではないかというふうに見ているということです。
 クーリングオフのことについても書いてありますが、これは言わばもう少し広い観点からのことでありまして、未公開株のためだけに、未公開株取引についてはクーリングオフできるなどという形は少し狭過ぎるのではないかということで、もともとの特定商取引法、あるいはそれ以前の訪問販売法が物品と、物品でないところの金融商品というものを分けていた。そして、役務も権利も別立てにしていた。そういう中で、物品については指定制がなくなりました。役務についても指定制がなくなりました。しかし、物品と金融商品の区別というものは相変わらず残った状況で消費者庁に引き継がれている。これは縦割行政の名残ではないかという問題意識を持っておりまして、そういう縦割行政的でない特定商取引法に衣替えをする必要があるのではないか。
 そうすれば、結果として、今回のような問題は一応カバーできる。ただ、カバーできるといっても大変限定的です。御存じのように特商法というものは、書面をきちんと交付しておけば、わずか8日間しかクーリングオフできないわけです。8日以内に周りの人が気がつけば、あるいは御本人が気がつけばクーリングオフできる可能性がありますが、8日経ってしまいますともうクーリングオフできないわけで、そういう点では非常に効果が限定的です。その点、金融関係の法律の方にきちんと取り消しできるとか無効だという規定を置けば、取り消しであればもっと長いこと、民法であれば5年間は取り消せますし、消費者契約法でも6か月間は取り消せるわけですから、取り消しの方がもう少し長期的な救済には役立つ。クーリングオフは非常に限定的だということもあって、金融庁サイドの方で民事ルールをきちんと整備してもらう方がいいのではないか。
 ただ、それでは消費者庁が何もやらなくていいのかというわけではなくて、縦割を引きずった状態はやはり是正していただきたいという例として、今回、ここにこれを1つ挙げているというような位置づけかと思います。

(問) 「(2)違法行為に対する抑止効果のある制裁措置の検討・導入」のところなんですけれども「現行金融商品取引法の罰則には実効性があるとは言い難い」という表現がありますが、今回、改正法案が出て、先ほど御説明されていたような両罰規定が入ったかと思うんですが、その改正法案でもやはりまだ物足りないといいますか、それ以上のものをやっていくべきだというお考えでよろしいんでしょうか。

(答) 改正法案が成立すれば、今までよりは1つ制裁のためのツールが増えるというのは事実なんですが、クッションがありまして、まず無登録の業者が勧誘する。それに対して金融庁サイドが裁判所に命令を出してくれるように申し立てて、裁判所が命令を出してくれる。それに更に違反をするという、違反の二重構造を前提として、初めていわゆる両罰規定としての3億円以下の罰金が会社に科されるということなんです。そうしますと、もっと最初の段階の、そもそも無登録で未公開株、違法な無価値なものを売り付けるということ自体がけしからぬことであって、それ自身も、金融商品取引法上は3年以下の懲役、または300万円以下の罰金と書いてあるんですが、そこの部分の抑止力が十分働いていれば今のような多数の被害は起こらないわけですけれども、そこが十分ではないのではないか。
 その理由は恐らく、1つは罰金の額が300万円ですから、もうけの額に比べれば小さいですね。ですから、お金で済むのならそちらの方がいい。懲役の方は、実刑判決を食らうとかなり大変ですけれども、3年以下ですと、法律上、執行猶予が付く可能性があります。それで実際、現在のように刑務所が非常にたくさんの受刑者を収容しているという状況下では執行猶予が相当出ていると言われています。そうしますと、検挙されても1回目は執行猶予ということですと少し軽い気持ちになるかもしれないので、もう少し重目の刑罰にしていただければいいのではないかと思うわけですが、ただ、これは最初に言いましたように、さまざまな罰則のバランスというものがありますから、この種の悪質商法についてだけ突出して重くするということはできないというところがあります。抑止力のある罰則をというふうに我々は言いたいんですけれども、それでは、それをバランスよく実現するにはどうすればいいんですかというところは難しいです。

(問) もう一点、罰則以外の制裁措置というものは例えばどのようなものを想定されているんでしょうか。

(答) それは関係省庁で何か考えてくださいということなんですが、1つ議論があるのは、最後の方に書いておりますが、集団被害救済・不当利益剥奪についての研究会を消費者庁の方でやっております。あそこの議論で、集団被害救済という方から行きますと、これは損害賠償ですから、被害を受けた人をたくさん集めてきて取り返しましょうという話ですが、他方で、悪質業者の利益を全部根こそぎ奪ってしまいましょうという剥奪型の方になりますと、やや制裁的な話しになります。課徴金などはそちらの要素が強いですね。
 更に、もうけた利益以上に払わせましょうという、制裁金というような制度を、もし、うまく日本でつくることができるとすれば、それはかなり抑止的効果のある新しい方策かなと思うんですが、そこは日本は伝統的に刑罰とそうでない行政処分とか、あるいは損害賠償をきちんと区別するという発想が強いですから、罰金という制度もある中で別途、制裁的な意味のある金銭支払命令という制度を作るということになりますと二重の処罰ではないかという議論が出てくる可能性があって、そこはまた、憲法論にも関わってくる難しい問題です。私の個人的な見解としては、アメリカのように、いわゆるシビルペナルティーという形で、抑止力のある、罰金ではなくて民事的な制裁金を行政が課すことができるような仕組みというものをうまく工夫して導入していただければと思っております。

(問) 幾つかあるんですけれども、1ページの下から4行目の方に「判断の容易な民事ルールの導入」とありますが「判断の容易な」というものは何を判断するということですか。悪質なということですか。

(答) 悪質なではなくて、お金を取り返せる、取り返せないということです。
 例えば現行法ですと、公序良俗違反の契約は無効であるというルールが民法にあります。ですから、公序良俗違反ということになればお金は取り返せるんですが、公序良俗違反かどうかというのは一義的には決まらないんです。いろんな事情をお互いに出し合って、裁判所が最終的に判断をするということになります。
 その点、例えば無登録の業者から株を買った場合、あるいは未公開株を買った場合、契約は無効とか取り消せるというルールであれば、これは要件がすごくわかりやすいです。登録していない業者でした。私はこういう契約で買いました。100万円払いました。返してください。これは争いの余地がありませんね。あるいはクーリングオフというものもそうなんです。訪問してきた業者から何か買いました。それで、そのときに書面を渡されました。まだ8日経っていません。ですから、契約は解除しますから返してください。これは争いの余地がないんです。
 そういう争いの余地のないクリアーな要件でお金を取り返せるルールがあればいちいち裁判をやらなくてもいいですし、消費生活センターの相談員の人でも簡単にそれを使える。クーリングオフが消費生活センターで一番活用されている制度なのは、わかりやすいからなんです。民法上の無効とか取り消しというものは、争われるとずるずる時間がかかって、最後は裁判をやらないと決着しないということになってしまいます。

(問) そもそも、無登録業者が未公開株を取り扱ってはいけないというわけではないんですか。

(答) 販売してはいけないんです。

(問) クリアーですね。そういうことでいけば、わかりやすいですね。

(答) わかりやすいんですけれども、そういう業者と契約した場合の契約は無効だということはどこにも書いていないんです。
 ですから、例えば白タクに乗った場合の運賃は払わなくてはならないのか、払わなくていいのかとか、そういう問題とも近いですし、運送業者に頼んだところ、本来の路線以外の別のところを通って運んだ場合はどうなんですかとか、そういう行政的ないろんな法律に違反をするような場合に契約は有効になりますか、なりませんかとかという一般的な話になってしまいますので、なかなか一義的な答えにならないんです。

(以上)

内閣府 Cabinet Office, Government of Japan 〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)