第1回 消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ 議事録

日時

2018年3月1日(木)11:00~12:00

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
鹿野座長、池本座長代理、高委員長、樋口委員、山本委員
【説明者】
京都大学大学院法学研究科教授 山本敬三氏
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 有識者ヒアリング
  3. 今後の進め方について 等

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、定刻より若干早いですけれども、委員がおそろいですので、会議を始めさせていただきたいと思います。

本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただき、ありがとうございます。

ただいまから「消費者法分野におけるルール形成の在り方等検討ワーキング・グループ」第1回会合を開催いたします。

議事に入ります前に、配付資料の確認をさせていただきます。

お手元の議事次第の下部に配付資料一覧を記載しております。不足の資料がございましたら、事務局までお申出いただきますよう、よろしくお願いいたします。

それでは、鹿野座長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。

○鹿野座長 鹿野と申します。

高委員長から御指名を受けて、このワーキング・グループの座長を務めることになりました。どうぞよろしくお願いいたします。

最初に本ワーキング・グループの運営などについて、事務局より御説明をいただきます。よろしくお願いします。

○丸山参事官 お手元の配付資料の中に、参考資料1がございます。そちらを御覧ください。「消費者委員会 ワーキング・グループ設置・運営規程」となっております。

それから、参考資料2といたしまして、平成26年7月8日の消費者委員会本会議で決定されました「下部組織の会議運用の在り方に関する申し合わせ」をお付けしております。

本ワーキング・グループにつきましては、これらの規程及び申し合わせに沿って運営をしていただければと思います。

次に本ワーキング・グループの目的と構成について述べさせていただきます。

本年2月8日の消費者委員会第266回本会議におきまして、参考資料1にあります「消費者委員会 ワーキング・グループ設置・運営規程」が改正されることにより、本ワーキング・グループが設置されました。

参考資料1の別紙を御覧いただければと思います。本ワーキング・グループの目的につきましては「消費者法(取引分野)におけるルール形成の在り方及びルールの実効性確保に資する公正な市場を実現するための方策並びに行政、事業者、消費者の役割について検討すること」となっております。

また、委員につきましては、鹿野座長、高委員長、池本委員、樋口委員及び山本委員の5名の消費者委員会本委員で構成されております。座長代理につきましては、第4条第3項の規定によりまして、高委員長より池本委員を指名されております。

事務局からの報告は以上です。

○鹿野座長 ただいま事務局から説明があったところですけれども、消費者委員会におきましては、これまで個別法に関する調査審議を重ねてまいりました。この審議における蓄積を基にしつつ、このワーキング・グループでは、もう少し大きな視野から検討を進めてまいりたいと思っております。

既に、約15年前には国民生活審議会消費者政策部会から「21世紀型の消費者政策の在り方について」という報告書が取りまとめられておりますが、ここでは、それ以後の社会の変化も踏まえながら、取引分野の将来のルール作りの基礎になるような考え方について整理をすることができればと思っております。より具体的には、行政規制と民事ルールの役割分担や協働の在り方、あるいは、行政と消費者団体、事業者、事業者団体の役割などについて検討してまいりたいと思います。

それでは、本ワーキング・グループの開始に当たりまして、高委員長から御挨拶をいただきたいと思います。よろしくお願いします。

○高委員長 御指名ですので、一言挨拶をさせていただきます。

先ほど鹿野座長から説明いただきましたとおり、約15年前に、当時の内閣府の国民生活審議会で「21世紀型の消費者政策の在り方について」という報告書が公表されまして、その報告書の中で消費者行政のグランドデザインが提示されたわけでございます。その後、その報告書にのっとって、あるいはグランドデザインに従って、様々な施策や法律の改正、組織の再編などが行われて、消費者行政もある程度の進展があったのではないかと思っているわけでございますけれども、今回消費者委員会で、この15年間の大きな変化を踏まえて、もう一度グランドデザインの在り方を練り直すべきではないかということで、このワーキング・グループを設置させていただいたところでございます。

これは私の思いなのですけれども、多分、皆様方、委員の方も共有していただいていると思いますが、このワーキング・グループの最終的な目的は、公正な市場を形成するために、また、それを実質的に機能させるためにも、システムとして全体として回るようにするために、それぞれのプレーヤー、例えば行政、消費者、消費者団体、事業者、事業者団体、それぞれがどういう役割を担うべきなのかを明確にするのを目指すことかと思っております。

本日とこれから数回でございますけれども、行政規制と民事ルールの関係や在り方についての議論が中心になるかと思いますが、この両者、行政による規制と民事ルールの間の関係をきちんと整理することなくワーキング・グループの議論もなかなか深まり、又は広がっていくこともないかと思います。私も含めて、委員の皆様方には活発な御議論をよろしくお願いいたします。

以上でございます。

○鹿野座長 高委員長、ありがとうございました。


≪2.有識者ヒアリング≫

○鹿野座長 それでは、本日の議題に入ります。

規程第5条第5項の規定によりまして「座長は、必要により、当該審議事項に関して識見を有する者を参考人として会議に出席させ、関係事項について説明を求めることができる」とされております。それに基づきまして、本日は、京都大学大学院法学研究科教授の山本敬三様に参考人として出席していただいております。

山本教授の御専門分野は、私と同じなのですが、民法学で、近年は「法体系における私法の役割」などについて研究していらっしゃいます。

また、山本教授は平成26年10月に設置され、昨年8月まで開催されていた、当委員会の消費者契約法専門調査会におきまして、座長を務められていました。

本日は、消費者法分野におけるルール形成の在り方の重要な論点の一つと考えられるところの立法事実の把握に関する課題や受容可能な規制の実現に関する課題などについて、山本教授からお話をいただきたいと思います。

それでは、山本教授、まずは20分程度でお話をお願いします。

○京都大学大学院法学研究科教授山本敬三氏 ありがとうございます。

本日は、レジュメを配付していただいていますが、「消費者契約立法の実現方法に関する課題」について、お話をさせていただきます。

題目は非常に大きなものになっていますが、今、御紹介がありましたように、合計しますと2年9カ月ぐらいの間、消費者契約法専門調査会の座長を務めさせていただいた経験を基に、消費者契約立法を実現するための課題として感じたことを、まだ記憶に残っているうちにお伝えさせていただければと思います。

今回の消費者契約法の改正については、専門調査会で、合計しますと47回もの会議を重ねました。議事録を御覧いただければお分かりいただけると思いますが、毎回大変活発なと言いますか、容易に収れんしないような議論が続きまして、取りまとめにこぎつけるのも本当に大変でした。取りまとめに至りましたのも、委員の方々、事務局の方々をはじめ、関係者の大変な御努力の結果でして、本当に感謝するばかりなのですが、このように大変だったのは、消費者契約法に関する立法が、とりわけ社会的影響の大きな政策問題に関する立法であるということの証左だと言うことができます。

これは消費者契約法に限らず、このような社会的影響の大きな政策問題に関する立法を実現しようとする場合に広く見られる課題と言うべきなのかもしれませんが、今回の経験を通じて、特に次の2つの課題があるということを痛感いたしました。

一つは、最近よく言われますように、「エビデンス・ベース」の立法を進める必要があるということです。立法をしようとしますと、その必要性を裏付ける事実として、いわゆる立法事実が必要であるということは、最近では当たり前のように言われることですが、社会的影響の大きな政策問題については、特にそうした実証的な裏付けがあるということが、広くコンセンサスを得るために必要不可欠だと言うことができます。

もう一つは、そのような裏付けがあるとしましても、新たに導入する規制が「過剰」になっても「過少」になってもいけないということです。社会的影響の大きな政策問題については、どうしても意見が対立します。そのような中でコンセンサスを得ようとしますと、その内容はぎりぎりのものになります。そこで、もし新たに導入する規制がそうしたコンセンサスを超えて適用される可能性がある、その意味で「過剰規制」になる恐れがあるとしますと、そのような規制は受け入れられません。逆もまた同じです。したがって、そうした「過剰規制」、「過少規制」にならないようにすることが、受容可能な規制を実現するために必要不可欠だと言うことができます。

以下では、この2つの課題について、具体的に何をどのようにすることが求められているか、あるいは考えられるかということをお話ししたいと思います。

第1は、立法事実の把握に関する課題です。これは消費者被害に関する立法事実の把握と、事業活動への影響に関する立法事実の把握に分かれます。

まず、消費者被害に関する立法事実の把握は、言うまでもなく、これまでも力を入れて行われてきているところです。特に裁判例と相談事例に関する情報の系統的な収集・整理は、国民生活センター等によって行われています。

さらに、特定の立法課題がある場合は、その審議を行うための準備として、委託研究や研究会が組織され、その具体的な改正課題に関する裁判例等が収集・分析されています。今回の改正に関しては、レジュメに挙げましたように、調査や検討会の報告書が公表され、裁判例等が詳細に分析・整理されています。私もそこに参加しましたが、特に裁判例に関しては、消費者契約法を直接適用したものだけでなく、不法行為法を適用したものも広く含めて調査していまして、本当に大変な作業でした。

その上で、今回の改正について審議を進める過程で気が付いた課題として、次のようなものを挙げることができます。

まず、裁判例に関しては、確かに現状でも、裁判例に関する系統的な情報収集・整理と、具体的な改正課題に関する裁判例の情報収集・整理が行われているのですが、そこでは、かなりたくさんの裁判例を調査の対象としているということもありまして、それぞれの裁判例の事案と判旨はかなり簡略化した形で要約されています。それによって、確かにどのような事柄が問題になり、結論がどうなっているかということは分かるのですけれども、そこにまとめられている事実がどのような意味で考慮されたか、実はそこにまとめられていない事実も考慮されていないかといったことは、要約からは読み取ることができません。そこが特定できませんと、立法事実として意味を持つかどうかを判定することができませんので、結局、基になった裁判例に直接当たる必要が出てきます。これは、タイトな日程の中で審議を進めようとしますと、かなり大きな負担になってきます。

改善策としては、事案と判旨の簡潔な要約だけではなく、詳細な情報も必要です。場合によっては、一件一件、ポイントを整理したコメント、例えば「判例時報」や「判例タイムズ」などに掲載されている程度のコメントがありますと、調査が容易になります。さらに、基になる裁判書も含めたデータベースが系統的に構築されていれば、立法の作業ははるかにしやすくなると考えられます。

相談事例に関するソースになる情報はPIO-NETですが、これはよく考えますと、偉大なデータベースでして、今、一から作るとなりますと不可能ではないかと思われるようなものです。その意味で、国民生活センター及び各地の消費生活センターに携わる先人たちが築かれた貴重な財産と言わなければなりません。

このPIO-NETには、消費生活センターに寄せられた苦情相談について、最初の聞き取りから相談処理に至る過程の記録を整理した要約が記録として蓄積されています。国民生活センターのホームページの情報によりますと、最近は年平均約90万件の情報が登録され、1984年から2016年5月まで、約32年間の累積件数は、約1,992万件ということです。

今回の消費者契約法の改正に当たっても、このPIO-NETに蓄積された情報が消費者被害に関する立法事実を裏付けるものとして活用されました。ただ、実際に立法事実として活用しようとしますと、課題もあることが分かってきました。

まず、個々の裁判例については、相談員の方に要約を作成していただいているのだと思いますが、これは日々の仕事をこなしながらの作業ですので、恐らく相当な負担になっているのだろうと思います。しかし、立法事実を収集するという観点からは、ここが最も重要な部分ですので、特に立法につながる可能性のある情報は的確に記録していただく必要があります。これを実現するためには、研修など、十分な支援体制を整えていく必要があると思います。これは、今から始めるべきことではないかと思います。

さらに、当該の相談例が立法事実として適切かどうかを後から判断しようとしますと、現状では書かれている以上のことは分かりませんので、もうどうしようもないところがあります。この点は、例えば相談記録を音声ないし機械反訳による文字情報として生の形で集積しておくことも、技術的では可能ではないかと思います。もちろん、お金の問題のほか、特にプライバシーの問題もありますので、容易なことではありませんが、事後的な検証可能性が確保できますと、資料としての価値が増してきますので、検討してみる意味はあるだろうと思います。

以上のような立法事実の収集・分析は、ただ単に事実を眺めていさえすればできるというものではありません。個々の情報が持つ意味を適切に把握するためには、その前提として、情報を意味付けるための理論が必要になってきます。その意味で、立法事実の収集・分析は、消費者問題に関する理論研究と連携しながら行う必要があります。

そうした立法事実を収集・分析するための基礎となる理論研究として特に重要と考えられるのは、消費者問題に関する最近の認知心理学・行動経済学の展開です。これは、消費者契約において、消費者の心理学的なバイアスによって効率的でない契約を締結してしまうメカニズムを明らかにし、必要な法規制を行うための前提となる予測を可能にするものと言うことができます。レジュメに挙げた西内康人さんは、私の京都大学の若い同僚ですが、彼の最近の著書は、正にこのような観点からする研究でして、とりわけ消費者契約立法を行うための基礎的研究として位置付けることができると思います。

このような理論研究は、まず、立法事実を収集・分析する前提となる枠組みとしての意味、つまり、どのような事実を収集すればよいか、収集した事実をどのように意味付ければよいかということを決めるための枠組みとしての意味を持つと言うことができます。

しかし、それだけではなく、例えばそこで指摘されている消費者の心理学的なバイアスが多くの消費者の行動を適切に説明できる場合には、それ自体が立法事実として立法の必要性を基礎付けるという意味も持ち得ると言うことができます。特に相談事例などは、いわば病理事例でして、そこに入ってこないような一般的な消費者の行動に関する問題を把握しようとしますと、データがありません。それをこうした理論研究を通じて把握していくということが考えられます。

いずれにしましても、今後は、このような基礎研究と連携しながら、立法事実の収集・分析を進めていく必要があると言うべきでしょう。

次に、消費者契約について新たに立法をしようとする場合には、事業活動にどのような影響が生じるかということも、重要な立法事実となってきます。先ほどの消費者被害の実態については、新たな立法を裏付ける立法事実として、エビデンスを示すことが強く求められるのが最近の傾向ですが、事業活動に対する影響については、もし新たな立法をするとすればどうなるかという仮定的な予測が問題になることもありまして、明確なエビデンスが要求されていないのが現状です。しかし、合理的な政策決定を行うためには、この側面についても可能な限り実証的な把握を進める必要があると言うべきです。

そのためには、そもそもの前提として、消費者問題への対応に関する事業者の体制が現実にどうなっているのかという実態把握が必要だと考えられます。これはもちろん、企業の規模や業態によって大きく違ってくることが予想されます。同じ業態の同じ程度の規模の企業でも、消費者問題に対応するための体制はかなり違っているかもしれません。

こうした体制に関する調査は、既に行われているのかもしれませんが、恐らく十分とは言えないだろうと思います。例えば、紛争処理のために「お客様相談窓口」があるかどうかという情報だけでは、それがどのように実際に機能しているかということは分かりません。契約書や約款、業務マニュアル等のリーガルチェックが現実にどのように行われているのか、いないのか。さらに、そうしたチェックが現場にどのような形でいかされているかといったことも、事業活動への影響を図る前提として必要な情報だと言うことができます。

もちろん、事業活動への影響に関する立法事実として最も重要なのは、新たな規制を導入することによって、どれだけのコストがかかるかということです。これは、規制への対応に要するコストだけではなく、規制によってトラブルの発生状況とトラブルへの対処コストがどのように変化するかということも大きな意味を持っています。

ただ、言うまでもなく、このような情報を実際に収集するのは相当に困難が予想されます。ありきたりのアンケート調査では、実態を把握するのは難しいでしょう。そうしたアンケートは、相当程度事業者の実態を把握した後でないと、必要な情報を適切に集めることはできないと考えられます。そうしますと、まずはヒアリングやインタビュー等によって実態把握に努める。それだけで限界があるのであれば、事業者サイドの協力を得て共同研究を行うなどの工夫が必要だと考えられます。そのようにして、相当程度知見を集めた上で、アンケート調査等によって統計的なデータを収集していく。そういった段階的な手順を踏んでいく必要があると考えられます。

実は、このような調査は、正に今こそ行うべき時だと言うことができます。と言いますのは、今回、消費者契約法の改正が実際に行われているわけですので、その前後での変化に関するデータは集めやすいと考えられるからです。やるならば、今でしょうということを、特に申し上げておきたいと思います。

次に、受容可能な規制の実現に関する課題に移ります。専門調査会での経験を踏まえますと、そこでは、克服すべき課題として次の2つを挙げることができます。

一つは、新たな規制が「過剰規制」、つまり、コンセンサスを得た内容を超えて適用される恐れがあるという危惧から、新たな規制の導入に反対する可能性にどう対処するか。

もう一つは、「適正な解釈」が担保されていない。つまり、コンセンサスを得た内容と異なる解釈がされる恐れがあるという危惧から、新たな規制の導入に反対する可能性にどう対処するかです。

まず、「過剰規制」が生じる原因として、2つの可能性が考えられます。

第1は、事業者がトラブルの発生を必要以上に恐れて過剰に対応してしまう結果、「過剰規制」が生じる可能性です。この可能性は、専門調査会の議論でも、事業者サイドからしばしば指摘されていました。

ただ、このような「過剰対応」が現実に存在するのか、存在するとして、どの程度「過剰」な対応が見られるのかということは、少なくとも実証的なデータとしてはありません。また、そのような「過剰対応」が存在するとしても、それが発生してしまう原因が分かりませんと、合理的な対処ができません。いずれにしましても、こうした面の実態把握が不可欠だと思います。先ほども指摘しましたように、今回、消費者契約法の改正を実際に行っているわけですので、このような実態調査を行うのに適した時期が今だと言うことができます。

「過剰規制」が生ずるとすれば、第2の原因として考えられるのは、消費者が事業者に要求されている以上の対応を求める可能性です。このような可能性に対する恐れも、専門調査会での議論では、事業者サイドからしばしば指摘されていました。

これはいわゆる「クレーマー」問題と重なりますが、そのような「過剰主張」が現実に存在するのか、存在するとして、どの程度「過剰」な主張が行われているのか。そのために、事業者にはどれだけのコストが生じているかということについて、実証的なデータがあるのでしょうか。また、そのような「過剰主張」が存在するとしても、それが発生してしまう原因が分かりませんと、合理的な対処ができません。いずれにしましても、こうした面の実態把握が不可欠だと思います。

この「過剰規制」の恐れは、次の「適正な解釈」が担保されていない、つまり、コンセンサスを得た内容と異なる解釈がされる恐れがあるという危惧とつながっています。「適正な解釈」が担保されていれば、「過剰規制」も生じにくいと考えられるからです。そうしますと、問題は、このような「適正な解釈」を担保するためには、どのような手法が考えられるかです。

この点については、消費者庁による「逐条解説 消費者契約法」に大きな期待が寄せられていると言うことができます。消費者庁が「適正な解釈」の可能性をあらかじめ示すことによって、「過剰規制」の発生を防ぐことができるという期待です。

ただし、言うまでもなく、逐条解説に示された解釈が、裁判所を拘束するわけではありませんので、これはあくまでも「事実上の担保」としての意味を持つにとどまると言わなければなりません。しかし、それでも実際には非常に大きな意味を持つと言ってよいでしょう。

このほか、新たな規制の導入を受容してもらうためには、事業者が受容可能な解釈の内容を自主規制として定めることを促す手法も考えられます。そうした自主規制がデ・ファクト・スタンダードとして機能するのであれば、受容可能な「適正な解釈」が事実上担保されると言うことができます。もちろん、それはあくまでもそこで客観的に「適正さ」が担保されている限りで、という留保が付きます。

また、行政的規制であれば、行政機関によって「適正な解釈」が担保されるので、新たな規制の導入を受容してもらいやすくなると言うことができそうです。事前規制から事後規制、行政的規制から私法的規制へという流れからは逆行しそうですが、実効的な規制を実現する観点からは、重要な選択肢と言うべきでしょう。ただし、これももちろん、そこで「適正さ」が確保されている限りで、という留保が付きます。

以上のような手法によって、「適正な解釈」が実務的に確立しますと、その後であれば、私法的規制の導入も受容可能になりやすいと言うことができそうです。実際、2017年の民法(債権関係)の改正では、新たに保証人保護に関するかなり踏み込んだ規制が導入されました。しかし、これが可能になった背景には、既に以前から保証制度の利用について金融庁による非常にハードな行政的規制が行われていて、私法的規制を受け入れる基盤が既に形成されていたことを指摘することができます。消費者契約に関しても、同様のことが当てはまるかもしれません。

もちろん、私法的規制が本当に必要なのであれば、それは直ちに導入すべきだと考えられますが、しかし、望ましい結果を実現するためには、少し時間をかけて、手順を踏んで、環境を整備していくという姿勢も求められているように思います。

以上で、専門調査会における経験を踏まえた「消費者契約立法の実現方法に関する課題」についてのお話を終えたいと思います。いろいろ思い付きを申し上げましたが、いずれも相応の予算措置を要するものでして、実現は容易ではないだろうと思います。しかし、それだけに、消費者委員会と消費者庁がスクラムを組んで、関係団体との連携・協力関係を密にしながら、望ましい立法に向けて努力を積み重ねていただければと思う次第です。

私からは以上です。どうもありがとうございました。

○鹿野座長 山本教授、ありがとうございました。

それでは、ここからは意見交換を行いたいと思います。

ただいまの山本教授のお話を踏まえて、御質問、御意見などを出して、自由に御議論いただきたいと思います。いかがでしょうか。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 池本でございます。

非常に具体的で、しかも、説得力のあるお話をいただき、ありがとうございました。

まず、前半のところで、PIO-NET情報に立法につながる可能性のある情報をもっと的確に記録してほしいという点を指摘されたのは、地域での消費生活センターの現場でも、やはりここは大きな課題だと私も感じているところなのです。

一つは、実は相談員が入力してそのままアップするのではなく、職員がチェックをすることにルールとしてはなっているのですが、残念ながら、職員といっても他の部署から回ってきた方で、誤字脱字のチェックはもちろんできますが、その内容にわたり、しかも、現行法の要件や現行法で欠落することとの法的な意味付けでチェックをする役割は果たせていないのが実情なのです。その意味では、山本教授の御指摘は、例えば相談員の中でそういうチェック役を日によって決めるとか、チェック体制で中身を更に向上していくということにつながるのではないかと思います。

さらに、もし可能であれば踏み込んでお伺いしたい点として、現在のPIO-NET情報で公表されているのは相談の概要という500字ほどに要約した部分だけで、相談の処理経過など、細かいところは出ていないのです。そのPIO-NET情報も、先ほどの裁判例も概要、要約ではなくて詳細な情報が必要だというお話がありましたが、PIO-NET情報について、更にこういう辺りの情報があるといいなということがもしあれば、お伺いしたいと思います。

○鹿野座長 お願いします。

○京都大学大学院法学研究科教授山本敬三氏 ありがとうございました。

PIO-NET情報の要約の作り方について教えていただきまして、どうもありがとうございました。大変な作業がそこで行われているのだろうと推測はしていましたけれども、日々の仕事をこなしながらの中では、本当に厳しい状況だろうと思います。

そのような中で、現状では非常に難しいお願いをすることになるのかもしれませんけれども、後で実際に立法をしようとしますと、どのような事実があって、どのような事実が実際の結論にとって大きな意味を持ち得るかということをつかむ必要があります。その意味では、可能な限り実際の事実で、相談員の方にとっては重要ではなかったかもしれない情報も含めて上がっていますと、その事実の全貌を把握しやすくなってきます。したがって、実際の相談の過程で出てきている、その紛争に係る重要な具体的事実を可能な限り拾っていただきたい。一般的にはそういうことになります。

ただ、闇雲に事実を書いてくださいというだけでは非常に困ってしまうわけでして、そこには取捨選択の必要が出てくることになります。そこが一番難しいのですが、これは研修等をしていくということしかないのだろうと思います。つまり、どのような事実が重要な事実となり得るかということを指導する研修のようなものを行っていただく。その前提として、そういった指導をするためのマニュアル等のようなものを整備する。それを見ながら研さんを積んでいただいて、把握すべき事実を的確に把握するようにする。こうするしかないのではないかと思います。

その意味では、相談員の方々に努力をお願いする前提として、どこが作るのかという問題はありますけれども、そういった重要事項というのでしょうか。それがなぜ重要かという説明も含めたマニュアルのようなものを誰かがきちんと作っていくということが、まず前提となるように思います。

○池本座長代理 ありがとうございます。

○鹿野座長 よろしいですか。

他にいかがでしょうか。

高委員長、お願いします。

○高委員長 山本教授、ありがとうございました。多分専門調査会の議論は大変だったのだろうなと、お話を聞いていて感じました。

私からお聞きしたいのは、最初のところで有効な情報をきちんと集めてこなければいけないという話があって、ただし、集めただけではそこから何らかの立法化というのは無理だろう、だから、枠組みが必要だと、こういうお話をされたのですけれども、もう一点、こういう考え方はどうでしょうかということを聞きたいのです。仮説と言ったらいいのでしょうか。まずどのような法規制を作りたいのか、それを作ることでどういう問題が解決できるのかという仮説があって、その仮説を証明するために枠組みを選んで、その枠組みの中でそれを検証するためにデータを集めてくる。そうすると、最初に仮説が演えきか帰納かという話ですが、なければなかなかこういうデータ、あるいは枠組みなども有効に使えないのではないかと思うのですけれども、この点はいかがでしょうか。

○鹿野座長 お願いします。

○京都大学大学院法学研究科教授山本敬三氏 ありがとうございます。

今の御指摘は、私自身は非常にもっともだと考えています。その上で、2段階に分けてお答えをさせていただければと思います。

まず、今日御紹介したものの中では、2ページ目の上のほうに、認知心理学・行動経済学の展開のお話をさせていただきました。そこで、西内さんの業績なども挙げていますが、特にアメリカで盛んに行われている研究を基に日本でも研究されているところです。

そこで、人間の行動に関する分析が行われているわけですけれども、そこで形成されている理論は、もちろん思索を重ねて形成しているという側面もありますけれども、心理学の重要な部門として実験心理学というものがありまして、閉じられた実験室の中で様々な工夫をして実験をすることによって、人間がどのような行動を取りやすいのか、どのような状況の下では客観的には不合理な決定をしてしまうのかを検証して、そこから理論を組み立てていくということが行われています。

ただ、これは実験室の閉じられた、日常的にはそのままの形では起こらないような状況設定の下で実験が行われているわけでして、これが現実の社会で本当にそのままの形で表れるか、あるいは違った形で表れるかということについては、実はデータがありません。個々の研究者がそのようなデータを集めるのはほぼ不可能ですので、これは組織的にやらないとできません。

その意味では、このような領域で実際に示されている消費者の陥りやすい行動パターンを、先ほど言われた一つの仮説として、それが消費者契約ないしは消費者問題に関わる特定された領域において実際にどのような形で表れているのか、あるいは表れていないかということを検証するためにデータ集めをしていく。このようなことはできることですし、してよいことではないかと思います。このような観点からは、理論枠組みとして何らかの仮説がありませんとデータを集めることもできないということがありますので、このような知見を仮説として利用することは、やるべきことではないかと思います。

次の段階が少し難しいのですが、何らかの規制をしようとして、そのような規制の必要を基礎付ける事実、ないしは、そのような規制を導入することによってどのような帰結が生ずるかという事実に関するデータを集めていこうというのは、考えてよいことだろうと思いますけれども、現実には、「このような規制を行う」ということを仮説として示して、それで様々な人たちの協力を得てデータを集めていくというのは、実践的にはかなり大変だろうと思います。できることならばやっていけばよいと思いますけれども、まずは先ほど言いましたような理論枠組みを基に、こういった消費者の行動が実際に裏付けられた。これを立法事実として規制を考えていくというのが、まず第1段階としてやるべきことではないかと思います。

○鹿野座長 ありがとうございます。

高委員長、よろしいですか。

○高委員長 はい。

○鹿野座長 他にいかがでしょうか。

樋口委員、お願いします。

○樋口委員 山本教授、貴重なお話、ありがとうございます。

私は専門ではありませんので、少し雑ぱくな話になってしまいますが、率直に山本教授の御感想を聞かせていただければと思うのです。

一つは、消費者契約法の議論は47回というお話もありましたが、非常に精緻に議論してきたと思うのです。今までの消費者関係のいろいろな規制、特に特商法なども含めて、歴史を考えますと、実際にはかなりアバウトな対応をしてきた面もある。今のお話の方向は、どちらかというと法務省が民事ルールをいろいろ作るというときには、多分、こういうきちんとした作業をしてきたということだと思うのです。消費者行政の場合には、今までの保護行政の中では、むしろ被害が非常に大きくなったときに、それに対して、ある意味結果的な対応なのですけれども、対応してきたという流れがあったかなと思うのです。

質問したいのは、今後こういう形で山本教授から示していただいた方向性については、全く異論ありませんが、こういう立法に向けての一つの作業というか、そういうことが行われていく中で、消費者庁を含めた行政というのはどういう役割を担っていくのかという点が御質問です。

特に、今までの消費者行政は、法務省が民法を議論するときとは違って、実態把握を自ら行いながら、自ら判断してきた要素がある。そういう意味では、行政そのものがここで言う立法事実や関連する情報の収集について、実質的な役割を担ってきたということだと思いますので、こうした消費者行政の機能をどう活用していくか、どう位置付けるかというのが1つ目の御質問です。

2つ目は、山本教授は消費者契約法についておまとめいただいたわけですけれども、並行して特商法の専門調査会がありまして、そういう意味で、私が申し上げたのはどちらかというと特商法のほうに近いのかもしれませんが、この特商法の位置付けというか、特商法と消費者契約法の違い、その点についても分かりやすく教えていただければと。私は経済なものですから、全く法律の素人なので、見取図というか、その辺を教えていただければと思います。よろしくお願いします。

○京都大学大学院法学研究科教授山本敬三氏 ありがとうございました。

まず、前提に係ることを少しだけ申し上げて、それから御質問にお答えしたいと思います。

前提と申しますのは、消費者契約法専門調査会で消費者契約法の改正に関する議論を始める前から、既に公布されていますけれども、民法本体の債権関係に関する部分の大きな改正が審議・検討されて、改正に至っています。その民法の改正に向けた検討の中で、消費者契約に関係する規定を新たに導入したり、あるいは、民法を改正することによって対処する可能性が議論されました。私もそうでしたけれども、鹿野座長もその審議会に出ておられましたが、かなり立ち入った議論をして、その結果として、民法では対応できないということになりました。様々な理由があるのですけれども、その場でよく言われた理由は、消費者契約に関する問題なのであれば、消費者契約の領域で立法すべきであるということでした。民法は消費者に関わらない一般的なルールなので、そこに消費者に関わる特別なルールを持ち込むのは避けたほうがよいのではないかということです。

それならば、消費者契約法を改正するときには、また違った議論ができるのではないかと思って、専門調査会で議論していますと、基本的に、そこでも、民法で検討されていたときとほとんど変わらない議論が行われていまして、特に大きな障害になりましたのは、先ほど申し上げたとおり、「過剰規制」、「過少規制」にならないようにしてほしいというようなことでした。特に「過剰規制」になる可能性があると、新たな規制を導入すること自体が不適当であるということになりますので、かなり大きな障害に行き当たりました。

結局、消費者契約に限ったとしても、民事ルールとして定めようとすると同じことになっていくのではないかというのが、後から感じた実感です。その意味では、行政が関わるわけではないのかもしれませんけれども、民事ルールとして消費者に関わる問題について立法をしようとしますと、今では、今日申し上げたような立法事実の収集・把握、あるいは「過剰規制」、「過少規制」にならないようにするということは避けて通れない。そこをクリアしないと受容可能なものにならない。つまり、立法することができないことになっているように思います。

その上で、御質問にお答えしますと、だからこそ、今、このような経験を経た上で思うところは、段階的な対応をもう少し賢くやっていく必要があるのではないかということです。レジュメの3ページ目に書きましたように、どうすれば受容可能になるかということを考えたときに、行政的規制は、少なくともより積極的に活用する方向を考えてもよいのではないかと思うようになりました。

その最大のポイントは、民事立法よりも立法しやすいというようなことよりは、レジュメに書きましたように、少なくともユーザーサイドから見て「適正な解釈」が確保されやすい。つまり、行政機関が実際の運用を支えますので、そこで余りにおかしな解釈が行われるということはないであろうという信頼感が現実には存在しているだろうと思います。その信頼を裏切らないようにする必要はもちろんあるわけですけれども、そこで「適正な解釈」が担保されているということで、一定の規制が多くの人たちによって受容されるのであれば、それが拠点になっていくだろうと言うことができます。

もちろん、民事立法ができるのであれば、それに越したことはありません。民事立法を導入しませんと、個々の消費者の被害の救済はできません。その意味では、民事立法は不可欠なのですが、それを一足飛びに実現することができないのであれば、手順を追って考えていくということも考えてよいことです。そこでは、従来の行政規制に関する様々なノウハウ等も活用することができると思いますし、そして、そういったものは特商法などではより一層活用しやすいのではないかと思います。その意味では、そういったところから実現していくということは考えてよいことではないかと思います。

今回の消費者契約法の改正でも議論されたのですけれども、特商法では不実表示ないし不実告知というのでなく、故意に黙っている場合でも、特商法の要件を満たす限り、消費者の救済が得られるという規定が置かれています。こういったものが実際にワークして定着していけば、より広く民事立法にも使っていけるようになるのではないかと思います。その意味では、既に段階的な試みが行われているわけでして、そのような手法を今後もっと積極的に活用していくべきではないかと思った次第です。

○樋口委員 ありがとうございました。

○鹿野座長 今のことと関連してでも、他の点からでもいかがでしょうか。

山本委員、お願いします。

○山本委員 御報告いただきまして、ありがとうございました。大変いろいろな点で勉強させていただきました。

一つは非常に雑ぱくな感想で、一つは御質問です。

雑ぱくな感想から申し上げますと、この間にどちらかというと規制を緩和しようという方向に関しては、その手法が、例えば規制影響評価、もっと広く言えば政策評価、最近ではサンドボックスなどの議論もありますけれども、そういったような形で、かなり実証的な基礎に裏付けられた議論がされるようになってきているのではないかと思います。それに比べると、どちらかというと、規制を入れようという側から、あるいは充実をさせようという側からの方法論が、いま一つ、それに比べると弱かった面もあるのではないかという感じがいたしました。

これは、今ある規制をどうするということに関しては、割とデータを集めやすいのに対して、これから規制を入れようということになりますと、今日もいろいろお話が出ましたけれども、現実にどういう問題が生じているというところは集められるかと思うのですが、そこから先は、どうしても細かいところになると仮定的な議論にならざるを得ないところがあって、難しいということかと思います。もう少しこの辺りの考え方を整理していく必要があるのではないかという気がいたしました。その点で、今日御報告をいただいた特に前半の部分は、これから考えていく場合の基礎として大変貴重な御報告だったのではないかと思いました。これが感想です。

御質問は、最後のほうで適正な解釈を担保するための手法というところで、自主規制の話が出てまいりました。これは私も非常に関心があるところなのですけれども、そこで、適正さが担保される限り、実効的な規制となり得るということを主張されているわけですが、この自主規制における適正さの担保に関してどういったことが必要なのか、今、欠けているのではないか、あるいは現在こういうものが適正さを担保するものとして十分機能しているのでないかといった辺り、この自主規制における適正さの担保という点について、お考えがあれば伺いたいと思います。そちらで考えてほしいと言われる可能性はあると思うのですけれども、その点は置いて、是非御意見を伺いたいと思います。

○京都大学大学院法学研究科教授山本敬三氏 先回りして言われてしまいましたけれども、むしろそちらでお考えいただければありがたいと本当に思います。

私自身は本当の素人ですので、妙案も何もないのですが、やり方としては、抽象的に言えば少なくとも2通りのやり方があると思います。一つは、実際に作られた自主規制を事後的に何らかの形でチェックする方法です。もう一つは、自主規制を作る段階で、何らかのチェックを入れる方法です。大きく分けると、このような2つの方法があるだろうと思います。

前者の、作られたものに対する事後的なチェックというのは、もちろんそれを公表させて、公の議論にさらすということがすぐ簡単に思い付くことですが、それだけで機能するのかという問題ももちろんあります。あるいは、自主規制として何らかのルールができたとするならば、それを単に公表するだけではなくて、一定の人たち、あるいは様々な人たちがそれを客観的な観点から適正かどうかを判定して、それを公表する。もちろんそれは拘束力も何もないですけれども、そのような意見が出ていることが、ある種の事後的な変更を促す可能性がある。強制になりますと自主規制になりませんので、そういった形で適正さを担保する仕組みを導入していくということは、あり得る方法ではないかと、思い付きですけれども、思います。

しかし、恐らくそれよりも実効的なのは、自主規制を作る段階で適正さを担保する可能性を組み込むというものだと思います。内容自体には関わらないけれども、自主規制を作るときには、例えば専門家、客観的な、その業界そのものに関わらない、その意味で中立的な人たちを必ず、それも一定数入れて、そういった規制を作るというように誘導を行うということが考えられる道ではないかと思います。

もちろん、それでも内容の適正さが担保されるわけではないかもしれませんけれども、そういった形で強制にならないような形で適正さを担保していくことは、方法としては考えられるだろうと思います。それが受容されるかどうかは次の問題ですが、より適切なルールが実際に行われていれば、トラブルが減るということが、これもまたデータ等によって実証されるのであれば、それは、事業者サイドにとっても適正なルール作りを行うインセンティブになっていくだろうと思います。そのようなウイン・ウインの関係が形成されませんと、規制というのはどうしてもうまくいかないだろうと思います。その意味での、やってみようと思わせるような環境作りを誰かがしてくれるわけではありませんので、行政が音頭を取って仕組みを作っていくということは、十分あり得ることではないかと思います。

全く畑違いで、お考えくださいとしか申し上げられないのですけれども、以上のとおりです。

○鹿野座長 ありがとうございます。

今の点について、山本委員、御自身で何かございますか。

○山本委員 今日は私が話す場ではないので。

○鹿野座長 よろしいですか。自由に御議論をということで開きましたが、よろしいでしょうか。

池本座長代理、お願いします。

○池本座長代理 今の議論の延長になるのかもしれませんが、お話しいただいた中で、新たな規制の事業活動への影響をどう把握あるいは検証するかとの関係で、紛争処理のための体制や、あるいはそういう自主規制をまずきちんとやっていれば、影響は少ないはず。そういう体制が不十分なところには影響はもちろん多いわけで、そこをきちんと調査・把握して、事業者は事業者で、自主規制で一定の体制を作っていただければ、このくらいの規制はそんなに影響はないでしょうというところが把握できれば確かにいいなと。先ほどやるならば今でしょうとおっしゃったところ、全くそのとおりだと思います。

そこで、お伺いしたいのですが、これは制度論になるのか、その先になるのか分かりませんが、一定の水準の自主規制をやっているところとそうでないところなどはランダムに調査をして、さらに、その苦情の発生状況なり、苦情窓口の問題が営業の方法へフィードバックされているかどうか。そういうことを調査するという趣旨でお伺いすればよいのかということが一点です。

あるいは、こういった消費者トラブルの多い分野について、これまでは個別業法の中で一定の体制整備なり義務付けというものがありましたが、特定商取引法、例えば訪問販売とか、そういった分野は、業規制はありませんので、一定水準の自主規制あるいは紛争処理の体制を作ってもらうための誘導策というのですか。というところをどう作ればいいかということも、私自身もまだ整理できていないところなのですが、何かヒントをいただければありがたいのです。

○鹿野座長 お願いします。

○京都大学大学院法学研究科教授山本敬三氏 ありがとうございます。

もう答えにくいことばかりで、むしろお考えくださいとまたお返ししたいぐらいなのですが、冷静に考えてみますと、この種の調査というのは、これまでは正にそうだったと思うのですけれども、問題が生じてからそれに立法的な対応、あるいは行政的な対応をするかどうか、あるいはどのような対応をするかを判断するために調査を行うというパターンだったのだろうと思います。その意味では、問題のあるところを取り上げて、どのような問題があるか、どのようにして問題が生じているのかを調査していくということが中心だったのではないかと思います。時間もコストも限られていましたので、どうしてもそうなるだろうと思います。

しかし、冷静によく考えてみますと、それだけでは不十分で、むしろうまくいっているところ、ないしはうまくいくようになったところを取り上げて、それを調査するほうがより合理的な情報が収集できる可能性があるとも思います。

特に何らかの変化によってうまくいくようになったところについて、そのメカニズムが明らかにされれば、それが他にもどの程度応用可能かということを考えていくことができるようになるかもしれません。その意味では、平時の調査というのでしょうか。そういったものも、時間とコストの関係でなかなかできないということはよく分かってはいますけれども、中長期的な戦略として、そういったものをしっかりやっていくということもあり得ることではないかと思います。

今回の消費者契約法改正が本当にうまくワークするのであれば、これによってどれぐらいのコストをかければトラブルが減るという意味で、どのような成果があるか、あるいは事業者からしますと、トータルでのコストが増える、減る、もしそれを確定することができるのであれば、今後の改正あるいは規制を考えていく上で有益な情報が得られるとも思います。

その意味では、うまくいくようになったところをピックアップできるかどうか。ピックアップしたとして、果たしてそこでデータを集めるだけの、どのようなデータをどのようにして集めればよいかというノウハウが恐らくほとんどないだろうと思いますので、それをどのようにして開発するかということも含めて、今からで結構ですので、お考えいただければと思います。

○鹿野座長 ありがとうございました。

ほぼお時間になりましたので、この辺りで意見交換を終了したいと思います。

今日は山本教授に立法事実の把握に関する課題と受容可能な規制の実現に関する課題の両面からお話をいただきました。

前者については、立法事実の関係で、立法事実をどうやって適切に収集していくのかということに関して貴重な御指摘をいただきました。特に相談現場でデータが収集される際、そのデータをどのように統一的なデータベースとして作り上げていくのかということで、研修等も含めた支援の必要性ということも御指摘いただいたところです。

もう1点重要なことは、理論研究との連携の必要性ということについて御指摘いただいたところだと思います。

さらに、実態把握ということに関しては、今がチャンスだというようなことも御指摘いただきました。正にこのワーキング・グループも、消費者契約法等が一段落した今、立ち上げて、今後のことに結び付けていければと考えているところです。

大きく第2点としましては、過剰規制とか過少規制に対する懸念と、それを回避するための手法、あるいは表現を変えると、規制を受容可能なものにするという課題についてお話をいただきました。ここでは、適正な解釈を担保することが必要だということで、そのための手法として、複数の観点からの担保の在り方を御指摘いただいたところです。

最後のほうでは、自主規制などについても、その重要性と、それをうまくワークし、適正なものとするためにどういうことを考える必要があるのかということについても御指摘いただきました。いずれも大変貴重な御指摘であり、改めて感謝申し上げたいと思います。

山本教授におかれましては、お忙しい中、御出席をいただきまして、ありがとうございました。

≪3.今後の進め方について≫

○鹿野座長 最後に、本ワーキング・グループの今後の進め方について、事務局から御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○丸山参事官 お手元の資料2の「検討事項(案)」ということで記しておりますペーパーがあるかと思います。

こちらの「2.検討事項のイメージ」を御覧になっていただければと思います。本ワーキング・グループの設置に際しまして、これまでの専門調査会等での調査審議による蓄積を基に委員の皆様で検討すべき項目ということで議論していただきたい項目について、今回事務局において整理させていただいたものでございます。こうしたイメージを参考にしていただきまして、次回以降、このワーキング・グループでの検討項目について、御議論いただければということで考えております。

同じく資料3「今後の進め方(案)」ということで資料を御用意させていただいております。

本ワーキング・グループの今後の予定につきましては、次回以降も有識者あるいは関係団体の方からお話を伺いたいということで考えております。その上で、委員の皆様の間で御議論をいただきまして、8月を目途に中間整理を行いまして、その後、更に必要な検討をいただいた上で、年内には取りまとめということで行っていただくというスケジュールを考えております。

以上です。

○鹿野座長 ありがとうございました。

今の御説明について、何か御質問等はありますか。よろしいでしょうか。

それでは、本日の議事は以上です。


≪4.閉会≫

○鹿野座長 最後に、事務局から事務連絡をお願いします。

○丸山参事官 今日も熱心な御議論をどうもありがとうございました。

次回の日程につきましては、改めて御連絡をさせていただきます。

○鹿野座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

(以上)

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