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第32回 消費者契約法専門調査会

日時

平成29年2月6日(月)15:00~17:50

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
山本敬三座長、後藤巻則座長代理、有山委員、石島委員、磯辺委員、井田委員、沖野委員、河野委員、永江委員、中村委員、長谷川委員、増田委員、丸山委員、山本和彦委員、山本健司委員
【オブザーバー】
消費者委員会委員 河上委員長、鹿野委員
法務省 中辻参事官
国民生活センター 松本理事長
【消費者庁】
小野審議官、加納消費者制度課長、消費者制度課担当者
【事務局】
黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 不当条項の類型の追加
  3. 閉会

配布資料(資料は全てPDF形式となります。)

議事録

≪1.開会≫

○丸山参事官 それでは、定刻となりましたので、会議を始めさせていただきたいと思います。

本日は、皆様、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。ただいまから、消費者委員会第32回「消費者契約法専門調査会」を開催いたします。

本日は、所用によりまして、大澤委員、後藤準委員、柳川委員が御欠席、河野委員と永江委員が遅れて御出席されるということで連絡を承っております。

まず、お手元の配布資料の確認をさせていただきます。議事次第下部に配布資料一覧をお示ししております。

もし不足がございましたら、事務局までお申し出いただきますようよろしくお願いいたします。

それでは、山本座長、以後の議事進行をよろしくお願いいたします。


≪2.不当条項の類型の追加≫

(1)消費者の後見等の開始を解除事由とする条項について/解釈権限付与条項・決定権限付与条項について

○山本(敬)座長 それでは、よろしくお願いいたします。本日の議事に入ります。

本日は、不当条項の類型の追加に関する資料として、消費者庁から資料1を御提出いただいています。

本日の進行としましては、まず前半で、消費者庁から資料1の第1から第3までを御説明いただき、その後に、第2及び第3で掲げられた不当条項についてそれぞれ順番に時間を区切って意見交換を行うこととしたいと思います。その後、後半で、資料1の第4及び第5を取り上げることとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

それでは、消費者庁から御説明をお願いいたします。まず、資料1の第1から第3までをお願いいたします。

○消費者制度課担当者 それでは、私から御説明させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

まず、資料をおめくりいただきまして、1ページ目になります。「第1.これまでの検討経緯」で「1.専門調査会における検討」ということで、報告書を簡単に御紹介しております。四角囲みが報告書の概要でして、マル3を御覧いただければと思いますが、「上記マル1・マル2以外の契約条項の類型については、更なる事例の収集・分析を経た上で、類型的に不当性が高いといえるものを抽出し、」少し飛ばしまして、「引き続き検討を行うべきである」とされたところです。

具体的に報告書でどういう条項が検討されていたかと申しますと、それが2ページ目の表になります。「規定を設けることを検討することが考えられる具体的な契約条項」として、aからfの6つの条項が挙げられておりました。その中でもaとcにつきましては、平成28年改正で対応したということになりますので、残りの4つを今回取り上げたいと思っております。もっとも、今回取り上げるものにつきましても、既に専門調査会で御議論いただいておりまして、その上で引き続きの検討となっているところです。そのため、これまでと同じような議論になってしまってもいけないので、事例を収集・分析して検討した結果を踏まえて提案内容を絞り込んだり、また、提案内容自体は同じでも、切り口を変えることで、少しでも議論が前に進めばと思っております。

具体的な条項に入りまして、また1枚おめくりいただきまして、「第2.消費者の後見等の開始を解除事由とする条項」について御説明させていただきます。

宿題となっている条項の中には、事業者に解除権を付与したり事業者の解除権を緩和する条項がありました。これについて事例を収集して分析した結果、一つの案として、こういう条項を設けることが考えられるのではないか、具体的には、四角囲みの中にありますように、「事業者は、当該事業者との間で消費者契約を締結した消費者が後見開始、保佐開始又は補助開始の審判を受けたときは、当該消費者契約を解除することができることを定めた条項は、無効とする」という規定を設けることが考えられるのではないかと思っております。

具体例として、条項例2-1から2-3まで3つを挙げました。2-1は建物賃貸借の条項例でして、大阪高等裁判所が消費者契約法10条により無効としたものです。条項例2-2は、別の契約類型としてインターネット接続サービスの会員規約の条項例を引用しておりまして、条項例2-3は、また別のものとして、宅配クリーニングの利用規約において用いられているものを御紹介しております。

本文に参りまして、これはこの条項に限らず全体の資料のつくりなのですけれども、1.で「専門調査会における検討」を御紹介して、2.で「事例の収集・分析」結果を御紹介して、3.で「検討」として、今回検討した結果を御紹介しております。

時間の関係もありますので、ちょっと先に行きまして、「3.検討」の5ページ以下を御覧いただければと思います。

まず「(1)成年後見制度との関係」ですけれども、ここでは成年後見制度との関係で当該条項が不当ではないかということを書いております。具体的には、「ところが」で始まる真ん中の段落あたりですけれども、判断能力が十分ではなくなった人を助けるのが成年後見制度であるわけでして、それを利用したことでかえって契約が解除されてしまうのは不当ではないかというところを書いております。最後の段落になりますが、昨年、法律ができるなど、成年後見制度を活用するための取組が進められておりまして、こういうことにも沿わないのではないかということを指摘しております。

6ページに参りまして「(2)建物賃貸借について」で、先ほど少し申し上げました大阪高裁の裁判例を御紹介しております。

(3)で「建物賃貸借以外の継続的契約について」書いております。建物賃貸借につきましては、消費者契約法10条により無効にした判決があるわけですが、建物賃貸借以外の契約についても常に不当と言えるのかどうかは、一つの議論のポイントではないかと考えております。この点につきましては、先ほど少し申し上げました成年後見制度を利用することでかえって不利益を受けることはおかしいのではないかという不当性は、基本的に全ての消費者契約に妥当するのではないかと考えておりまして、結論としましては「(4)規定の在り方」にありますように、例外なく無効とする規定を設けることが考えられるのではないかとしております。

後見等の開始に関する条項は以上でございまして、次に、7ページ目以降の「第3.解釈権限付与条項・決定権限付与条項」について御説明いたします。この内容は少し複雑なところがございますので、四角囲みで書かれた提案に入る前に、本文のほうから御説明させていただければと思っております。

まず、解釈権限・決定権限とは何かというところでございますけれども、8ページの「1.専門調査会における検討」を御覧いただければと思います。このすぐ下の1行目に「契約条項の解釈」、これを解釈と呼んでおりまして、その下の行になりますけれども、「法律若しくは契約に基づく当事者の権利・義務の発生要件該当性に関する決定」、つまり、当事者の権利・義務が法律や契約により定められているわけですけれども、それが具体的な事案においてその要件を満たすのかどうか、この決定について、決定という言い方をここではしております。

以上が解釈権限・決定権限の定義的なものでして、その上で、9ページの「検討」を御覧いただければと思います。

まず「(1)基本的な考え方」ですけれども、今、申し上げました契約条項の解釈とか要件該当性の決定の権限につきまして、消費者契約の条項を作成する段階で事業者と消費者がどういう形で解釈・決定するかを決めるわけですが、この場合に事業者のみが解釈とか決定の権限を持って、消費者は解釈とか決定の権限を持たない形にするのであれば、それは不当性が高いので、消費者契約法10条によって無効になる可能性があるのではないか。そういうことを「(1)基本的な考え方」で書いているところでございます。

なぜかと申しますと、このような条項がありますと、事業者としましては、何か問題があれば解釈権限とか決定権限を行使することで、事後的かつ一方的に契約内容を決めてしまうことも可能になってしまう。そういう問題点があるのではないかと考えております。

以上が原則論なのですけれども、(2)に行きまして、以上の原則論の考え方につきましては、最初の「もっとも」という段落で書いておりますが、これまでの専門調査会におきまして、事業者が決定権限を持つべき場面があるのではないかという御指摘をいただいております。この点を踏まえまして、無効とする規定を設ける可能性を探るという観点から、今回、解釈権限・決定権限付与条項につきまして、一定の絞り込みをかけることを考えておりまして、その方法として、マル1・マル2という2つの提案をいたしました。

まずマル1ですけれども、(2)に書いておりますが、事業者による解釈や決定が許されるとしても、それは一次的なものであると考えております。(2)に書いてありますとおり、「条項の解釈や要件該当性の決定を一次的に事業者が行うべき場合もあり得る」、「一次的な解釈や決定が許容される」という言い方をしております。ここで申し上げます「一次的」というのは、事業者が消費者に先んじて解釈や決定を行うという意味で、このような一次的な解釈や決定を事業者が行うことがあり得ると考えておりますが、そのような一次的な解釈や決定であったとしても、許容されるとすれば、それは真にやむを得ない場合に限定されるのではないかということを書いております。そうだとしますと、全ての条項について包括的に事業者が解釈・決定できるとしますと、それは不当ではないかという観点から、マル1の提案をさせていただいたところでございます。

提案内容に戻っていただきまして、7ページの一番上の四角囲みに提案内容を書かせていただいております。マル1というところでございまして、「消費者契約のすべての条項について、条項の解釈や当事者の権利・義務の発生要件該当性の決定は事業者のみが行うものとする条項は、無効とする」という趣旨の規定を設ける提案をしております。

具体例としましては、条項例3-1を想定しております。そこにありますように、「本規約の解釈等に疑義が生じた場合、当社は、信義誠実の原則に基づいて決するよう努め、会員はその決定に従うものとします」という形で事業者が解釈権限を持つものを挙げております。

条項例3-2ですけれども、こちらは条項例3-1と違いまして、「当社は、合理的な範囲で」という枠があるわけですが、言葉としては抽象的であることも考えますと、マル1で提案している条項に該当するという考え方もできるのではないかと思いまして、ここで挙げた次第でございます。以上が提案マル1の御説明になります。

これに対しまして、マル2の御提案は、マル1の提案とは別の切り口で解釈権限・決定権限付与条項を絞り込むものでございまして、具体的には10ページの本文の説明を御覧いただければと思っております。先ほど、事業者による解釈や決定が許されるとしても、それはあくまでも一次的なものであって、消費者による解釈や決定が否定されるものではないという御説明を申し上げましたけれども、そうしますと、事業者が解釈や決定をしたときに、消費者が事業者に対して、その事業者の解釈や決定はおかしいと言えることが必要でありまして、それすらできないとすると、それはもはや事業者のみが解釈・決定権限を持ってしまうことになるのではないか。それは不当ではないかという観点から、マル2を提案しているところでございます。

再び提案に戻っていただきますと、7ページの四角囲みのマル2でございまして、「条項の解釈や当事者の権利・義務の発生要件該当性の決定は事業者のみが行うものとし、かつ、消費者が事業者に対し事業者による解釈や決定について異議を述べることを排除する条項は、無効とする」という規定を設けることを一案として考えております。

条項例としては、3-3とか3-4でございまして、例えば3-3で申し上げますと、オンライン上のフリーマーケットの利用規約にある条項なのですけれども、ユーザーにふさわしくないと判断した場合には解除することができるという条項があり、この条項を事業者が解釈・決定して契約を解除した場合に、消費者がそれに対して説明を求めたとしても、弊社はその理由を説明する義務を負わないものとしますという条項は、これに当たるのではないかと考えております。

条項例3-4につきましても、同様に、説明をしないという点でこの条項に該当すると考えることができると考えております。

私からの説明は以上です。よろしくお願いします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、初めに、「第2.消費者の後見等の開始を解除事由とする条項」について御議論いただきたいと思います。御意見、御質問のある方は、御発言をお願いいたします。

では、山本委員、どうぞ。

○山本(健)委員 御説明ありがとうございました。「消費者の後見等の開始を解除事由とする条項」について、このような規定を設ける考え方に賛成いたします。ただ、これ以外の「事業者の解除権を付与ないし緩和する特約条項」についても10条違反となり得る旨を、一問一答や逐条解説で明記していただきたいと思います。

以下、理由です。日弁連はもともと抽象度の高いグレーリストとして「消費者の解除権を付与ないし緩和する特約条項」の法制化を提言しております。実際に事業者の解除権を付与ないし緩和する特約条項で不当性が問題となっているものは、ほかにも存在しております。

もっとも、この専門調査会では、従前より、主として事業者委員の方から、不当条項リストはブラックリストとして立法すべきであるという御意見が強く述べられております。今回の提案は、そのような御意見に配慮して、適用範囲を絞ったブラックリストとすることで、広くコンセンサスの形成を目指す提案内容と理解しております。

適用範囲が絞られたことは残念ですけれども、提案内容自体は合理的な内容であり、賛成いたします。ただ、他の類型の「事業者の解除権を付与ないし緩和する特約条項」はおよそ有効なのだといった誤った反対解釈を実務に招かないよう、他の類型については個別事案ごとに10条違反が検討されることになるという旨を、一問一答や逐条解説で明記していただきたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

では、石島委員。

○石島委員 ブラックリストとして提案をいただいているように見受けられるのですけれども、もしそうだとすれば、直ちに条項を無効とすべきでない合理的な場面が想定できないのかというのをもう少し丁寧に御検討いただいたほうがいいかと思います。資料にあるように、後見人制度の趣旨を踏まえて不当な利用がされている例は排除しなければならないと思うのですけれども、情報量を持っている事業者のほうが契約の継続に関して合理的な判断をして、理由を持って解除するケースも想定はされ得るのではないかと思いますので、そういった合理的な場面にまで影響が及ばないのかということについては、もう少し検討が必要なのではないかと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

中村委員。

○中村委員 私も、常にこういう条項が有効だということではないとは思うのですけれども、ただ、そもそも論で申し上げますと、事業者同士の契約書の中では、このような条項が入っていることが多いわけでございます。その趣旨としては、破産のような類似の状況で、本人の意思表示が相手方に対して必ずしも有効でない状態に陥ったときに、それにある意味、対応する手だてを講じる機会になるという趣旨において、このような条項が用いられていると理解しておりますので、そういった意味で、そもそも論としては、このような条項がある意味、消費者に特に何か不利益を与えようという趣旨で挿入されているものではないところは、まず御理解をいただきたいと思います。

その上で、賃貸借のような事例においては、賃借人がそれによって直ちに追い出されるとか、そういったことは当然不当な状況だと思いますので、そういった意味で、こういう条項により解除を主張して賃借人を追い出すような形で使われるのだとすれば、それは排除をされてしかるべきだと思いますけれども、個人に注目した契約、ちょっと事例は違いますけれども、例えば私どものテナントとの間での賃貸借契約となりますと、Aさんという方に営業していただくことで契約を締結していただいているわけですので、その後見人というような形の制度を利用されたということだと、後の事業に支障が生じ得るということで、解除の対象となり得ると思いますし、同じような状況は、他の契約においてもあり得ることではないかと考えます。

ですので、後見人制度を利用されたことによって、直ちに解除して契約がない状態にするのがいい場合とよくない場合。それから、後見人制度の利用が開始されたことによって、後見人の方との間での何らかの取り決めがないと、その後の例えばお支払いでありますとか、そういう部分について支障を生ずる場合があるのではないかと考えております。そういうことも踏まえた上で、消費者の後見等の開始を解除事由とする条項が、直ちに全てブラックなのかというところは考える必要があるのではないかと考えている次第です。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

テナントとの契約というのは、事業者間契約とは違って、消費者契約という御趣旨ですか。

○中村委員 事業者間契約ということなのですけれども、消費者契約の事例としては適切ではないのですが、そのように相手方の個性に注目をして、例えばインターネットのモニター契約とか、意思に支障のない状態で契約の相手方になっていただくことが必要な契約において、後見人制度の開始によってその契約が成り立たなくなる場合も、場合によってはあるのではないかという趣旨でございます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見があればと思います。

永江委員。

○永江委員 中村委員の御発言ともかぶりますが、本人の属性等に注目している継続的な契約もございますので、全ての契約において一律に無効とすることについては若干疑問がございます。したがって、無効かどうかについては、消費者契約法10条の解釈、個別具体的な事例に即して判断する余地もあるのではないかと考えておりますので、その点からも御検討いただきたいと思います。

○山本(敬)座長 長谷川委員。

○長谷川委員 既に前回の検討で議論が出ていることかもしれませんが、そもそも解除は、一般的に事業者には解除しないインセンティブがある。取引を継続したいインセンティブがある状況に対する法的な介入は限定的であるべきだと考えております。

その上で、先ほど来何人かの委員の方がおっしゃっていることかと思うのですが、本人の属性に着目した契約というのはあると思います。言ってみればクラブ的なものの消費者契約です。例えば、適当かどうか分かりませんが、音楽鑑賞会ですとか、ゴルフのクラブ会員とか、そういったものがあるのではないかと思っております。ほかにも、先ほど中村委員もおっしゃいましたけれども、モニター契約のような、当該契約当事者が、消費者と言っていいと思いますけれども、消費者が一定の役務を提供することを前提にしている契約、あるいは極度額を考えなければいけない与信契約については、成年被後見人かどうかというのは、それなりに重要な要素ではないかと考えています。

あと、事例として挙げられている2-1と2-2と2-3、資料の3ページのところでございます。2-1は裁判となったケースですが、例えば2-3については、これを理解するところ、基本契約みたいなものがあって、宅配を依頼するときは個別に契約する。そのような取引における基本契約に当たる部分だと理解しております。それについては、成年被後見人になられたということだと、今後の契約がどのような形で行われるのかということもございますので、基本契約と個別の契約からなるようなもので、基本契約に当たるようなところには、こういった条項があってもいいような気がいたします。

同様に、条項例の2-2については、基本契約があって、以後の契約について使うのに応じて従量的に料金が加算されていくものなのかどうかというのは、この事例では定かではないのですが、仮にそういうものだとすると、今後どのような契約をしていくかということに関連して、成年被後見人かどうかというのも重要なことではないかと思うところです。

以上を踏まえますと、一律に規制するということではなくて、10条に任せるという観点から御検討いただくのがよいのではないかと思っております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

井田委員、続いて磯辺委員、お願いします。

○井田委員 先ほどから何人かの委員の方が、被後見状態あるいは被保佐状態、被補助状態になった本人が契約を続けていくのが妥当であるかどうかという観点から見ると、解除するのに合理性があるのではないかというお話もいただきました。もちろんそれはそうだと思うのですが、ここの問題は、恐らく法定解除事由がないことを前提としているにもかかわらず、つまり債務不履行の状態ではないにもかかわらず、後見開始あるいは保佐開始、補助開始と、この事情をもって一方的に事業者側が解除権を持つことの不当性を説いているのだと思います。もちろん、後見人側あるいは保佐人側、補助人側と話合いの上で継続的契約を解除する、それはあると思うのですけれども、ここで問題にしているのは、被後見人側の意思を問うことなく解除事由が発生する、そのことの不当性だと思いますので、分けて考えないといけないと思います。

したがって、私は、後見、保佐、補助開始ということをもって一律に解除事由が発生するという条項は、例外なく不当性のある条項と取り扱ってよいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

では、磯辺委員。

○磯辺委員 同趣旨の意見なのですけれども、成年後見人がついたとか後見開始がされたことだけをもって契約を解除することについて、やはり不当性が高いのではないかと思います。御心配されている個人の属性に着目して契約をしている内容なのだということであれば、後見開始という事態に至るときに、例えば約束どおりの役務を消費者が果たせないとか、グループに参加することでほかの方々に迷惑をかけるとか、そういう事実があったときに契約解除ができるということを定めておけばいいのであって、後見開始したという事実だけをもって解除できるということは、やはり消費者に酷な場合が多いのではないかと思います。この点、実情に照らして判断する余地は当然ほかの条項であり得るわけですから、こういう条項自体をブラックリストにすることは差し支えないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

後藤座長代理。

○後藤(巻)座長代理 先ほどから事業者側の委員の方々の御意見をお聞きしていると、成年後見制度についての誤解があるのではないかという印象を持ちます。成年後見制度は、後見、保佐、補助という形で一定の精神的判断力が低下した者に対してそういう制度を適用していくわけですが、眼目は、それに対してサポートする人がつくということでありまして、後見人とか保佐人とか補助人がつくということは、例えば事業者が成年被後見人に対して債権を持っているような場合に、その債権の確保がむしろできるということなのです。後見人が適正な財産の管理等、あるいは財産についての必要な措置をするということです。事業者委員の方の御意見を聞いていると、被後見人とか被保佐人とか被補助人についてのみお考えになっていて、後見人等がついて適正な法的な運用をしていくのだという認識が欠けているのではないかという印象を持ちました。

先ほど事務局から紹介されましたが、大阪高裁の平成25年10月17日の判決でも、まさにそういう趣旨のことを述べておりまして、こんな言い方をしています。本件解除条項中で成年被後見人、被保佐人の審判開始または申立てを受けたときについては、およそ賃借人の経済的破綻とは無関係な事由であって、選任された成年後見人や保佐人によって財産管理が行われることになり、むしろ賃料債務の履行が確保される事由と言うこともできる。このようなことを高等裁判所の判決でも明言しているということでありますので、むしろその点について御理解いただければ、ブラックリストとして掲げることについて支障はないと私は考えます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

有山委員。

○有山委員 具体的な例としては、認知症のお母さんがチョコレートが大好きで、毎日もしくは2~3日置きにチョコレートを近くのコンビニに買いに行く。月々のチョコレート代が1万円ぐらいになるのですが、年金額からいって問題がないので、後見人であるお嬢さんは、御近所のコンビニに、「ごめんなさいね、気にしなくていいから」といいながら、いい関係を結んでいると話されています。お嬢さんは、チョコレートをある一定量買うことについては合意しています。1万円のチョコレートはかなりの量ですから、それを職場で同僚にお配りになっています。量が多過ぎるので同僚に食べてもらっているのです。後見人がいたとしても、債務が払えない状態でなければ、認知症の御本人は満足しますし、そして、対応していただける方がにこにこと対応していただければ本人の満足度も高いので問題ないというようなお話を聞きます。

そのような場合、やはり後見人がつくということは、その御本人の年金やいろいろな収入から使える範囲を決めて、もし払うのが大変ならば、事業者と早い段階で話し合うなどということができます。このような条項を設けることには賛成いたします。

○山本(敬)座長 ほかに御意見があれば。

丸山委員。

○丸山委員 基本的には事務局の提案に賛成しております。理由としましては、まず懸念として示されている一身専属性や本人の能力の問題ですけれども、例えば民法の653条とか679条のような条文で、そういうことが重要視されて、契約が終了するという規定は、特に事業者が契約に何も書いていなくても適用が排除されるわけではないと思います。そういう点も見てほしいと思います。逆に、成年後見制度の利用があるから事業者が契約を取消せるということが広く普及してしまうと、やはり問題は大きいと思います。こういう条項があると、自分自身で契約の履行能力があっても、あるいは保護者のサポートの下で契約を履行できる人でも排除される可能性があるということになりますので、逆に成年後見制度が利用されない反作用をもたらす懸念がございます。なるべく成年後見制度を利用しながら、契約の履行を実現させるという方向を目指すという点で、今回の事務局の提案には賛成しております。

以上です。

○山本(敬)座長 増田委員。

○増田委員 成年後見制度を広く普及させることが、非常に重要な時期になっていまして、今の段階でも普及していない状況です。そういう状況にあるにもかかわらず、これを無効としないということは、やはり今、丸山先生がおっしゃったような状況になるのではないかと思います。宅配クリーニングにしろ、インターネット接続サービスにしろ、これは必要なことが多いのではないかと思います。特に宅配クリーニングは必要で、自宅にいてお願いするというようなケースだと思います。そういうことが後見人がいることによってそのまま継続することができて普通の生活を送ることができるということは非常に重要で、むしろ後見人がつかないケースのほうが事業者にとっては大変なことなのだろうと思いますので、後見制度を普及させるためにも、賛成いたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

恐らく、事業者にとって契約の趣旨によると解除する必要がある場合と、後見開始の審判等が行われたという事情が一部重なることはあり得ると思うのですけれども、後見開始の審判等が行われた場合の全てがその契約の趣旨によると解除する必要がある場合かというと、そうではない。その意味で、後見開始の審判等を解除事由にすることが広過ぎる、ないしは過剰な条項になっていることが問題点として指摘されていると思います。

それに対して、後見開始の審判等が行われたことそのものが当該契約を解除する理由になり得る場合があるのではないか。どのような場合がそうかということは、まだ御指摘いただけていないかもしれませんが、そういったものがないかどうかを検討すべきであるという御意見も出ているように理解しました。

現時点では、そのようなところと伺ってよろしいでしょうか。あるいは具体的に、この場合はやはり解除事由として挙げる必要が本当にあるという指摘がもしいただけるのであれば、挙げていただければと思います。

中村委員。

○中村委員 御質問というか、今の答えではないのですけれども、逆に後見開始になっているにもかかわらず、事業者が従来どおりの取引でそのまま進めて、そのことが事業者の責任として問われるということはないのでしょうか。先回までの合理的判断の事例とも関連するかと思うのですけれども、そういうことがないのであれば、後見人がついているのだから、後見人の下で行為をしていることについては後見人が責任を持って対応するのだから、従来どおりの取引を継続していても、例えば宅配クリーニングで、そんなことは余りないと思いますけれども、不必要なものまでどんどんクリーニングに出してしまったというようなことについて、事業者が余り注意を払わないでそのまま契約を継続してしまったことについて責任を問われることがないのであれば、事業者として確かにそこで排除をする理由もないのかもしれないと思うのですが、その点はいかがでしょうか。

○山本(敬)座長 どなたかからお答えがあるのであればと思いますが、いかがでしょうか。後見開始の審判等があったことが分からない場合は問題が残るかもしれませんが、分かった場合には、後見人が誰であるかは調べれば分かるとしますと、その後見人と契約の継続について相談等をすれば対応は可能ではないかと一般的には思いますが、いかがなのでしょうか。

それでは、消費者庁からお願いします。

○加納消費者制度課長 中村委員の御懸念は、ひょっとすると、前回まで検討したつけ込み型にならないかという御指摘でしょうか。そうであれば、つけ込み型につきましては、本人の一定の状況を認識しながら不安をあおるような言動をするとか、そんな形で行為類型を切り分けた上で勧誘する場合を想定して提案させていただいているつもりでありますので、成年後見の開始があったと、従前どおりの契約に基づき商品をそのまま供給し続けたからといって、それが取消事由になるというのは、想定しがたいかと思います。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

○中村委員 今のお答えは、特段それに更に何かつけ込みのような故意の行為みたいなものが重ならない限りは該当しないという理解でよろしいのでしょうか。

○山本(敬)座長 どうぞ。

○加納消費者制度課長 そもそも契約締結過程における不当な勧誘に基づきまして取消事由にするというものでありますから、それとまた局面が違うのかなというのがまず第一点として思います。

そうではなくて、例えば先ほど、基本契約と付随契約というような御指摘も長谷川委員からございましたけれども、基本契約ではない個別契約においてどうかとなりますと、そこは勧誘の契約締結過程という局面が出てきますので、そこにおいては、全くないとは言いません。ただ、不当な勧誘があったのかどうかということでありまして、つけ込み型で想定しているのは、先ほど来申し上げたような不当な勧誘行為があった場合を想定しておりますので、成年後見の開始があったと、そのまま継続して購入してもらっていたというだけで取消事由に当たるというのは、想定しがたいかと思います。

○山本(敬)座長 松本理事長。

○松本理事長 今の御疑問の例えばクリーニングなどの場合ですと、これは恐らく民法の9条ただし書きの日常生活に関する行為の典型になると思いますから、成年後見の審判を受けたというだけで、突然クリーニングの契約の取消事由になるということはないと思うのです。ただ、急にとんでもなく高額のクリーニングを出し始めたりするとちょっと問題でしょうけれども、普通の日常的なものであれば、従来どおり契約をしてくださいというのが民法の基本スタンスだと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

後藤座長代理。

○後藤(巻)座長代理 つけ込み型の話が出たのですけれども、私の考えでは、成年後見制度を利用していない場合のほうが、むしろつけ込まれる可能性が高いということであって、そういうことを防ぐ趣旨もあって、成年後見制度を適正な形で利用していく時代だと認識しています。そういう意味からいうと、御心配の内容については、私も全面的に100%安心していいですと言えるほど知識も何もありませんけれども、普通に考えると、御心配には及ばないと私は考えます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

以上ですが、よろしいでしょうか。

それでは、差し当たりのところは、先ほどまとめさせていただいたようなところとさせていただきます。後見開始の審判等を受けたことそのものが当該契約の解除を基礎づける場合がもし例としてあるのであれば、更に挙げていただいて、検討する必要があるということでよろしいでしょうか。

長谷川委員。

○長谷川委員 一点だけ。御議論を伺っていますと、事業者から見て債権の保全とかそういった観点の話と、あとは「属人的」なという言葉で表現されていた話と多分2つあるのだと思います。もっとあるのかもしれませんが、この場で出ておりましたものについて、私の理解ではそのように思っております。

問題になりやすいのは属人的なというところで、それについては磯辺委員から個別の条項で検討したらいいのではないかということで御指摘があったものと思います。仮にそうだとすると、多分それについては、まさに次に議論される個別の条項の解釈権とか決定権ということにも絡むものかなと理解しております。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

山本健司委員。

○山本(健)委員 先ほどからの御議論に関する意見です。

まず、「被後見人のため」という点に関しては、被後見人の利益にならない契約内容であれば後見人の方から解約すると思います。ここで問題なのは、むしろ後見人が被後見人の利益のために契約を続けたいと思っているにもかかわらず、その意に反して契約が解除されてしまう契約条項を有効と見ていいのかという点ではないかと思います。

実際に後見制度を利用するのは、被後見人の財産管理が必要という場合や身上介護が必要という場合だと思いますが、財産管理が必要な場合には、財産を持っておられる方ですので、後見開始を破産等と同視することはできないと思います。また、身上介護のために後見制度を利用したにもかかわらず、条項例2-1のような契約条項によって生活基盤である賃貸借契約が終了させられる事態になるのは、非常に問題であると思います。

後見の開始決定や申立て自体を解除事由として認める合理性はないように思います。信用不安や債務不履行とは性格が違うと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 石島委員。

○石島委員 中村委員の御意見に補足なのですけれども、成年後見が開始されたことを事業者が知りながら、その取引を継続しておくことで損失が拡大しているようなケースも想定されるのではないかと思うのです。例えばFXとかのオートトレードをしているとか、そういう金融商品の取引をしたとして、損失も拡大している、後見人はそれには気付いていないというときに、それを解除することがもしかしたら消費者を保護する手段にもなり得るのではないかというのは、ちょっと気になるところではあるなと思いました。その一点、補足をさせていただきたい。

もう一点、これをブラックリストに追加をすることに関しては、ちょっと細か過ぎる条項ではないかと思っていて、このレベルのものがどんどん追加されていくとなると切りがなくなるような気もしており、例えば逐条解説で、こういうものの不当性が高いとして社会的喚起をあおるとか、そういったプロセスを一回踏んで、それで世の中がどのような反応をするのかというのを見てもいいのではないかと思うところです。

以上です。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、御意見を一通りお出しいただいたということで、これを踏まえて次回、更に検討していくということでよろしいでしょうか。

続きまして、「第3.解釈権限付与条項・決定権限付与条項」についての検討に入りたいと思います。御意見、御質問のある方は、御発言をお願いいたします。

磯辺委員。

○磯辺委員 提案の趣旨の確認なのですけれども、これは解釈権限付与条項・決定権限付与条項を検討するに当たって、マル1のアプローチかマル2のアプローチかいずれかを選択せよという御提案なのか、マル1の規定とマル2の規定と両方並び立ち得るという趣旨での御提案なのかを確認させてください。

○山本(敬)座長 では、消費者庁のほうからお願いします。

○消費者制度課担当者 御質問の点なのですけれども、マル1・マル2はそれぞれ別個独立のもので、両立し得るものと考えております。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

それでは、御意見あるいは御質問があれば、お出しいただければと思います。

丸山委員。

○丸山委員 質問を一点お伺いしたいと思います。

10ページから詳細に解説していただいております、マル2の消費者からの異議を排除することの不当性を問題としている条項のほうなのですが、そこの解説の部分に「事業者による一次的な解釈や決定が許容されるとしても」という一文が出てきます。これに関して確認しておきたいのは、この趣旨は、事業者の解釈がまず優先するという意味ではなく、事業者の考え方がまず述べられることは排除されないけれども、あるべき解釈は、基本的には例えば作成者不利の原則とか、そういう原理の下で裁判官が判断するような解釈がスタンダードとなるという理解でよろしいのかどうかという点、お願いできますでしょうか。

○山本(敬)座長 では、消費者庁からお願いいたします。

○消費者制度課担当者 それにつきましては、御指摘のとおりだと考えております。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

沖野委員。

○沖野委員 確認をさせていただきたいのですけれども、今の御説明の御趣旨ですと、確定的なというか、最終的な解釈権限を与えるようなものは完全ブラックであると。ただ、ここで問題としているのは、第一次的な解釈権限を与えるようなものであり,それが全ての条項に及ぶか、あるいは異議を排除するようなものであればブラックリストに載る、そういう御理解なのでしょうかというのが一つ目です。

もう一つは、そうしたときにマル2の異議を述べることを排除するということの「異議を述べる」ということなのですけれども、そんな解釈はおかしいのではないですかというのは、ある意味誰でも言えると思うのです。それを事実として言うことは封じられないと思うのですけれども、それに対して説明をすることと、一方で、10ページの(3)の3行目です。「不当であればそれを是正する機会が与えられなければ」と記載されておりますが、これは消費者から異議を述べられたら再考して、その異議が正当であるときには考え直すものとしますというようなものであれば、まだここに言う機会が与えられているのかもしれませんが、説明をすることとはずれがあるように思われます。異議を述べるというのはどういうレベルで考えられているのでしょうか。

○山本(敬)座長 消費者庁からお願いします。

○加納消費者制度課長 二点目から、このペーパーをどういう観点から作っているかということでありますけれども、どういうレベルかと言われると、何と答えていいか答えにくいのですが、異議を述べることは消費者としてはできると思います。特に裁判所で争うことはできると思います。こういった解釈権限を事業者が留保するというような条項があったとしても、その解釈が合理的なのかどうかを争うことは封じられないのではないかと思います。

ただ、マル2の提案でお示しさせていただいておりますのは、異議を述べる前提として、どうしてそのように解釈したのかが分からないと、消費者としても異議の言いようがないのではないかということで、むしろ説明が何ら必要ないという点に不当性があるのではないかと考えまして、こういった条項が実例としてありましたから、そういったものについて問題があり得るのではないかということで取り上げさせていただき、その具体的な対応の一つの案として異議を排除するという規定ぶりが考えられるのではないかということでお示しをしたものであります。

一点目でありますけれども、一次的にと書かせていただきましたのは、先ほど消費者制度課担当者から申し上げましたように、まず、該当性等について、事業者が判断をすることにそれなりに合理性がある場合もあるのではないかと。これは専門調査会の中で委員から御指摘いただいたところでありますけれども、セキュリティーを維持するために事業者として緊急に何か対応をとらなくてはいけないというようなことがあるのではないかという趣旨の御指摘であったかと思いますので、そこはそれなりの社会的なニーズがあるのではないかと私どもとしては考えたところであります。

そういう意味で、事業者が一次的な対応をとることを許容するような条項は、許容されてしかるべきかとも思うわけでありますけれども、他方で、それが全ての条項について、危機的な場合というのではなくて、全ての場合について事業者が判断するとなってまいりますと、セキュリティー上の必要性がないところでも事業者が対応することを許容することにつながるのではないかということでありまして、不当性が高いものと考えられるのではないかということでお示ししたものであります。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。

○沖野委員 更なる確認なのですけれども、そうすると、マル2については、異議を述べることを排除するというよりは、理由を全く説明しないことに力点があるという理解でよろしいのかということです。

もう一方の点は、たとえ事業者に解釈権限が与えられていても、裁判所はそれには拘束されないという理解なのでしょうか。一次的なということの意味かと思うのですけれども。

○山本(敬)座長 消費者庁からお願いします。

○加納消費者制度課長 一点目のところは、問題意識としては何ら説明をしてくれないということであれば、消費者としては、その解釈ないし決定が妥当なものかどうかが検証できないのは不当ではないかという問題意識に基づくものでありますが、あえてこの異議を排除するとしましたのは、そうすることによって、例えば非常に抽象的な解釈をしたような、10ページのところで、条項例3-1なども捉えることが可能になるのではないかということで、異議を排除するという形で、より包括的な形での取り込みを意図したものであります。ただ、3-3や3-4について焦点を絞るということであれば、理由を説明しないというところにフォーカスをするほうが、目的からするとより直接的ということかもしれません。

二点目の一次的にということでございますけれども、最終的に何らかの解釈権限あるいは決定権限が事業者に留保されている条項に基づき、事業者が何らかの解釈ないし決定をしたとして、それが何らか当事者間で要件該当性等が争いになって、例えば訴訟によって争われることになりますと、当然その要件が満たされているのかというのを裁判所が見るわけでありまして、その前提として、その解釈が合理的なものかどうか。あるいは合理的でないとすると、裁判所としてその条項をどう解釈するのかというのは、裁判所がまた独自に行うのではないかと思われますので、その点までできないこととするということは、あり得ないというか、ないのではないかと思います。

○山本(敬)座長 あり得ないというわけではなく、あり得るとは思います。つまり、当事者間において当該事項の内容については一方当事者が判断する権限を認めるとすれば、契約自由の原則がそのまま妥当するとするならば、当事者間でそのように合意したのであるから、裁判所もその契約を尊重しなければならない。したがって、裁判所の目から見ればおかしな判断かもしれないけれども、当事者がそれで合意しているのだから、それには介入しない。これが、契約自由の原則からは基本である。このように考えるとするならば、あり得る話ではあると思いますが、消費者庁としては、そのようなことではなく、消費者契約においては、当事者がここで問題にしているような条項を定めている場合であっても、裁判所が最終的に解釈ないしは判断を行うこと自体は排除されてないものとして理解する。こうおっしゃっていると理解すればよろしいのでしょうか。

○加納消費者制度課長 話が混乱してはいけませんので整理をさせていただきますと、沖野委員の問題意識としては、まず、マル1・マル2それぞれについて疑問が示され、マル1については一次的にという点に疑問が示されたと思います。一次的にということで想定しておりますと私が先ほど申し上げましたのは、事業者に一定のニーズがある場合に、まず事業者が判断をすることは、セキュリティーその他の関係で必要な場合はあるのではないかということであります。ただ、あるにしても、それは必要がある場合にそのようにすればいいのであって、全ての局面において事業者が判断するということまでする必要はないのではないかという問題意識から、全ての条項について事業者が解釈・決定をする条項について不当性が高いのではないかという御提案をさせていただいている。

マル2につきましては、異議を排除するということがちょっと分かりにくいという観点の御指摘だったかと思いますけれども、問題意識としては、3-3、3-4に着目しますと、事業者から何ら説明がない、消費者が事業者の判断、解釈ないし決定につきまして事後的に検証する機会が何ら得られないのは合理性がないのではないかということで、そういう局面を捉えて不当条項化することをお示しするものでありますが、射程の範囲を更に広げる観点から、3-1のようなものを取り込む観点で異議を排除するというようなお示しをしている。提案の趣旨についてはそういうものであります。

それから、座長の御指摘の、私的自治の範囲で当事者間で合意するのはもちろん私的自治の原則であり、その合意が合理的なもので、かつ有効なものであれば、当然裁判所はそれに拘束されるということだと思いますけれども、私が先ほど申し上げたのは、合意した解釈権限ないし決定権限条項ではありますが、それに基づいて非常に不合理な解釈をしてしまう、あるいは不合理な決定をしてしまうということがあった場合には、それは裁判所として当然、解釈ないし決定が不合理であることを別途判断する余地は残されるのではないかという趣旨で申し上げました。ですので、私的自治の話と特に矛盾、抵触するものではないのではないかと考えております。

○山本(敬)座長 山本健司委員。

○山本(健)委員 御説明いただきまして、ありがとうございました。

条項例3-1のような契約条項を念頭において不当条項リストを考えるのであれば、「事業者が行う解釈や決定の内容に消費者が法的に拘束される条項」というふうに規定するのが、ストレートではないかと思います。そのような契約条項も私的自治の原則からすれば一見有効であるように見えるけれども、不当条項として法的効力がないのだという不当条項リストの方が分かりやすいように思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御質問あるいは御意見があればお出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。

中村委員。

○中村委員 今回の御提案につきましては、事業者の意見に配慮してある程度絞り込んだ形でお示しいただいたものだとは思うのですけれども、具体的な条項にしたときにどこまでが含まれるのかというところが若干まだつかみ切れないところがございます。

例えば先ほど御紹介いただきました7ページの条項例3-2には、「当社は合理的な範囲でその解釈を決定できるものとします」という規定が紹介されておりまして、恐らくこの会社の意図としては、例えば裁判所が判断するだろうという方向性をにらみながら、お客様に対して会社としての判断をある意味信じてほしいというような趣旨で決められているのではないかと思うのですけれども、そういった趣旨の条項はそれなりにあるのではないかと思います。また、例えば会員向けのサービスというものについて、会員権の権限について、無料のサービスということが主な想定ですけれども、そこの会員の権利を最終的にはその会社が判断する。会社として非常に困るような行為をされる、あるいはほかのお客様に迷惑をかけるような状況があるときに、そういう方を排除する権限をやはり確保しておきたい。そういった要請は事業モデルとしては当然あり得ることだと思います。例えばこの契約のあらゆる条項について、とにかく条件なしに会社が判断したものに従ってくださいというものについては、確かに不当なのではないかという感じがするのですけれども、そこが合理的であるとか、法に基づきとか、そういうものが入ってきたときにも、それが本当に問題なのかというところは少し議論が必要ではないかと思うところでございます。

マル2の御提案でございますけれども、こちらにつきましては、先ほど異議を述べることを排除するのか、説明しないということなのかというところが若干御議論になっていたかと思うのです。異議を述べることを排除する、一切異議を述べさせないということは認めなくてもいいのかなという気もいたしますが、説明ということに関しましては、先ほどの会員資格のようなものに関しては、例えば3-4の事例で、品位を著しく損なっていることについて事細かく説明するのは事業者としてはしにくいとか、そういうことはあろうかと思います。それとか、ある程度は説明したのだけれども、それでは納得できないというときに、どこまでやらなければいけないのかというようなことが、事業者側としては非常に気になるところだと思いますので、その程度論の部分をどのように表現するかが課題なのかなと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ほかに。

河上委員長。

○河上委員長 マル1もマル2もほとんどざるに近いものでして、「全ての」条項について事業者が行うというのであれば、私であれば、10個ぐらい条項を並べておいて、1個だけ、私はこれを決めませんけれども、あとの9個は決めますというふうに書いてあったらオーケーだという話になりかねないということで、この「全ての」という言葉は、ほとんどこの規定を無意味にする可能性があります。

もう一つ、これは沖野先生がおっしゃったことですが、マル2のほうは、異議を述べることは述べてもいいが、最後は私が決めるというのであれば、ほとんど意味がないことであって、異議を述べさせることだけを認めたからといって、それが有効になるというのは、ここも大きな穴になっている気がします。もうちょっと中身を詰めないと、規定としては不完全ではないかという気がします。

○山本(敬)座長 ほかに。

長谷川委員。

○長谷川委員 ありがとうございます。

先ほど中村委員がおっしゃったことと似ているかもしれませんけれども、多分、条項例3-3とか条項例3-4は、事業者として何か主催しているアリーナみたいなものがあって、それに参加する要件というか資格みたいなものがある。それについての該当性みたいなことについて、主催者たる事業者が判断するというようなタイプのものは、そのアリーナの管理上必要なのではないかと思っています。例えばそういう特徴を持ったものもございますので、一律に考えていくのはいかがなものかと思います。

あと、先ほど来の議論、消費者庁と沖野先生とのやりとりを伺っておりまして、思いましたのは、マル2のほうの異議を述べることを排除する条項というのは、むしろ説明にポイントがあるのだということだとすると、これは説明義務が課されるのと同じことなのではないかという気もいたします。そうだとすると、やや負担が重いなというのと、あと、中村委員がおっしゃった例以外にも、例えば反社会的勢力の排除のための条項を適用する局面で、それを逐一説明するということだとすると、そこはなかなか難しいものがあるのではないかと感じているところであります。

あと、私どもの内部で議論する中で出てきたのは、当該条項自体は消費者の利益となる条項で、その条項の解釈権を事業者に付与しているものもあり得ることから、そういったものについての配慮もいただきたいということでございます。

それから、説明義務になってくるのではないかということの関連で、結局これは異議を認めないだけではなくて、実質的に異議を認めないものが全部入るということであれば、どこまで広がっていくのか。外縁が定かではなくなってくるのではないかと感じているところでございます。

以上です。

○山本(敬)座長 石島委員。

○石島委員 これまでの議論をもし踏まえていないところがあったらお許しいただきたいのですけれども、そもそも基本的な考え方というところに、実質的には事業者が契約の内容を事後的かつ一方的に決めることを許容する結果となり、消費者の権利・利益が侵害されるおそれがあるとありますが、一方的解釈によって消費者の権利・利益が侵害された事例がどの程度あるのかと、立法事実の有無という点がまず非常に気になるところです。

消費者契約法というものが事業者と消費者の根源的な情報格差があるという前提に置かれた法律である以上、提供するものやサービスについて、事業者側に豊富な情報があるのは絶対的な前提であって、消費者はある商品やサービスを一度しか利用しない可能性が高いのに対して、反復継続して提供する事業者側に経験や情報が蓄積されていくのは自明のことであると。毎回同程度の情報を持って契約に至れるような仕組みがあれば、消費者契約法なんて要らないということになるので、そうではなくて、事業者側に情報がある、事業者側がある程度の合理的な裁量を持って契約の内容について運用を行うことについて、消費者の権利・利益を侵害するおそれがあるという一面的な評価を行うこと自体が、ちょっと行き過ぎなのではないかと思います。

濫用的解釈に当たる場合は争い得るわけですし、事前紛争の防止という御趣旨としても、実際にどこまでそれが必要になる事例があったのかという点は、まだお示しいただいていないところだと思いました。

あと、まさに今、河上委員長からおっしゃっていただいたとおりなのですけれども、これは「全ての」と書いてあるので、全てに解釈権限があるのだということにしなければ大丈夫ではないですかと御提案いただいてはいるのですが、これはおっしゃっていただいたように、逆に、判断、解釈をしなければいけないところについては解釈権限を持ちますよということを一々書くのですかと。これは実務的にもちょっと考えにくいところなので、やはり無理があるのではないかという印象です。

二番目のお示しいただいている異議を述べること自体を排除しますということがこの文言どおり、先ほどから議論がありますけれども、この異議を述べること自体を排除しますということはさすがに不当かなと思いますが、やはり個別の不当条項として取り入れるにはこれも細かい話なのではないかと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 後藤座長代理。

○後藤(巻)座長代理 マル1に関しては、先ほど河上委員長がおっしゃったことと同じことでありまして、全ての契約条項について、事業者に解釈権限・決定権限があることを不当条項の要件としているということですので、一部の条項でも事業者に解釈権限・決定権限がなければこれでよしという反対解釈がなされるおそれがあるという点で疑問であります。

マル2についてでありますけれども、これは異議を排除するということがどういう趣旨なのかということで先ほどから議論がありまして、課長からも御説明があったところですが、私はこれを拝見して、異議を述べることを排除するというのは、本来、裁判所にあるべき解釈権限や決定権限を奪うような趣旨のものだと理解しました。

ここでは解釈権限付与条項と決定権限付与条項が明確に区別できるかどうかということについて、考え方が分かれる可能性がありますけれども、いずれにしましても、解釈権限・決定権限とも、本来は最終的に裁判所に与えられているものであるのに、契約条項の解釈権限・決定権限を一方的に事業者に与えるならば、まさにこれは消費者側からの異議を排除するということですので、そういう意味での決定権限・解釈権限を事業者に与えるならば、消費者の法的地位は著しく不安定かつ不利益なものになる可能性があるということであります。そういう観点から、解釈権限や決定権限を事業者に与える条項、しかも消費者からの異議を排除する条項、これを不当条項としてリスト化することが検討されるべきだと思います。

ただし、事業者の提供するサービス等の内容によっては、例えば緊急時の一時的な対応として、事業者が自らの解釈や決定によって迅速にサービスを停止する等の必要があることも考えられます。一例でありますけれども、マル2の案を当てはめて考えると、例えば事業者の解釈や決定によるサービスの停止が問題となった場合に、それが債務不履行または不法行為に該当するかどうかが問題になってくるかと思います。この債務不履行とか不法行為に該当する場合には、消費者の異議を排除するという条項は実質上、消費者契約法8条の適用を受ける条項となり、消費者契約法8条と区別して、特にマル2の条項をリスト化する必要はないということになろうかと思います。

この点では、先ほど山本健司委員がおっしゃった最終的な御提案の中には、現在リスト化されているものと重なって、そちらで処理できるものもあるのではないかと思います。また、仮に事業者の解釈や決定によるサービスの停止が正当である場合には、債務不履行または不法行為に該当しないということになりますから、そういう場合には消費者契約法8条の適用はないということになりますが、そういう場合も含めて、マル2の条項をリスト化することの意義があるのではないかと思います。

つまり、このマル2の条項は、解釈権限・決定権限を事業者に与えることが正当な場合と正当でない場合、言い換えると、こうした条項を有効とすることに合理性がある場合を含めてリスト化できる。そういう意味では、グレーリストかブラックリストかをある意味先送りというのでしょうか、当面ここでは決めなくていいというメリットがあるのではないかと思います。

ただ、そうは申しましても、本来こういうリストがブラックリストなのか、グレーリストなのかを決めていくのが本質的な議論でありますので、ここでは異議を排除する条項という形でリスト化するとしても、現時点ではまだブラックかグレーか決めることが確定できない、そういうものに限定して使うことが考えられると思います。

そのような使い方で、ブラックかグレーか現時点では決められない場合に、消費者の異議を排除する条項としてリスト化が考えられるものはほかにもあるのではないかと思います。

いずれにしても、マル2の案は、そういう意味で非常に巧妙というか、よく考えられているという印象を持ちまして、私自身はマル2の案に非常に魅力を感じておりますが、最終的に裁判所の権限を奪う条項という形で私は理解したのですけれども、先ほど課長の御説明の中で、そこまでは言っていないのだというような御理解もあるということですので、その辺についてはまた御説明なり御検討なりいただいたほうがいいかとも思いますけれども、今、申し述べたような意味で理解するとすれば、マル2の条項については、私は賛成という立場であります。

○山本(敬)座長 山本健司委員。

○山本(健)委員 「解釈権限」「決定権限」という言葉の意味について、必ずしも認識が一致しないままに議論がなされているのではないかと感じております。例えば、ある契約条項に曖昧な文言がある場合に、その文言の解釈について、事業者はAという解釈をして、消費者はBという解釈をすることで見解が分かれる場合ですとか、給付された物や提供された役務が契約内容に適合しているかどうかで争いが生じ、事業者はCという主張をして、消費者はDという主張をして見解が分かれる場合において、一方当事者が自らの立場から行う文言解釈の主張とか、要件該当性に関する主張について、それを「解釈権限」とか「決定権限」とは言わないと思うのです。

この論点における問題の本質は、事業者が主張するAという文言解釈の主張やCという要件該当性の主張について、相手方である消費者が法的に拘束されてしまうことであると思います。「解釈権限」「決定権限」という言葉については、事業者の文言解釈に関する主張や要件該当性に関する主張が特約条項によって消費者を法的に拘束するとされている場合というふうに、用語の整理をする必要があるように思います。

そして、結論としては、ワーディングについては推敲の余地があるかもしれませんが、先ほども申し上げましたように「事業者が行う解釈ないし決定の内容に消費者が法的に拘束される条項」をブラックリストとして規定するのが分かりやすいと考えます。

以上です。

○山本(敬)座長 松本理事長。

○松本理事長 話を聞いていまして、私はこの問題と次のサルベージ条項の問題は大変共通点があると思うのです。どこに共通点があるかというと、いずれもなるべく契約条項を明確にしておくのが望ましいのだと。素人である消費者との間の契約においては、なるべく具体的な状況をきちんと定めましょうということであって、サルベージ条項はそこにどばっと投網を打って、オーケーと言われるところまで適当に絞って、後の効力は残りますよというわけだから、条文化の努力を放棄して、事業者にとって最大限のメリットを享受しようということ。それは好ましくないということですね。

こちらの解釈権限付与条項も、いろいろな場合があると思うのですけれども、一番極端には、めちゃくちゃ抽象的で曖昧な文言にしておいて、紛争が起これば、実はこれはこういう意味なのですよということで、事業者にとって大変都合のいい条件だったのだというふうに言うことです。もしそういう条件だということをあらかじめ想定しているのであれば、それを表に出して契約をするべきだと。それをしないで、後から実はこうだったのですよというのは、それはずるいことであって、サルベージ条項と共通していると思います。

そういう場合に、そういう条項がそもそも無効だという条文を入れることにどんな意味があるのかということで、消費者庁の説明では、不当な解釈の排除、あるいは不当条項の排除のために裁判所が介入することを排除しないのだということであれば、結局、解釈の争いがあれば、最終的には裁判所で決着がつくことになります。それはあらかじめ不当と思われる条件が明示されていて、それが将来の紛争で争点になる場合と、ある意味で共通しているかなという気がいたします。この第3も、第4も、どちらかというと行為規範的な機能を持っていて、それを期待して、一見裁判規範であるかのような装いをもって表されているのではないかなと。これを本当の意味での裁判規範として機能させるためには、どのように条文化するかが相当難しいのではないか。どんなに事前に想定できる場合に備えて契約条項を書いておいても、必ずぴったりではないケースが出てくるわけです。そういう点では、この文言の解釈はどうなのだ、あるいは当てはめとしてどうなのだという紛争は必ず起こるわけで、それは最終的には裁判所で解決するのですよということであれば、ここで提案されているものは余り積極的な意味がないかもしれない。

ただ、消費者には、裁判で争えるなどということを考えていない人がかなりいて、事業者から、ここにこう書いてあって、私はこう解釈しているので、これであなたは縛られるのですよと言われると、へえと言って、そのとおりにする人がかなり多いかもしれないので、それを少し牽制するという意味はあるかと思いますが、やはり裁判規範というよりは、そこも行為規範的な機能かなという印象を持っております。

○山本(敬)座長 磯辺委員。

○磯辺委員 条項例3-3とか3-4を見ますと、こういう条項は非常に多いなというのが実感としてありまして、例えばウエブサイト上のオンラインゲーム等で、非常にアイテムを蓄積して購入しているのだけれども、あるときアカウントが全く停止されて、それまで購入したアイテムが全部使えない状態になる。それでどうしてアカウントが停止されたのか聞いても、この条項で教えてくれないという怨嗟のような苦情が入ってきます。せめて条項を盾にして全部を説明しないということではなくて、こういう類型が定められて、あなたはこのところに当たっているのですよというフィードバックがされれば、そのことで該当性みたいなことが少しやりとりできる可能性もあるかと思うのですが、こういう条項で一切シャットアウトされる例は、よく聞く話です。

そういう場合、消費者が裁判にまで訴えて権利を回復するというところまではなかなか想定できませんので、約款で定めているだけで権利を奪ってしまう実情があるということで言うと、何らか対応ができないかなと思っていまして、そういう意味では、マル2みたいな規定が入って、そういう効果が3-3や3-4にも及ぶのであれば、私としては賛成したいなと素朴に思っているところです。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

永江委員。

○永江委員 先ほど石島委員からも若干ありましたが、1のところは事項例2-1の具体的な裁判例に基づくものがありましたが、そもそも専門調査会の報告書で、さらなる事例の収集・分析とございましたが、これは世の中にどのような条項例があるかを探してくるのではなく、具体的にその条項例を基にトラブルになった事例を検討することだと思っておりました。今回の資料で挙げていた条項が問題になった具体的な事例、裁判例もしくは具体的な相談事例でも結構なのですが、それを挙げて検討すべきではないかと考えます。

今回挙げて頂いた条項例が、業種・業態、提供される業務の内容等に係る個別具体的な検討を無視して一律に無効を導く条項を創出するための立法事実となるかどうかは若干疑問がございます。

また、先ほども事業者側委員からありましたが、特に実務では暴排条項について具体的に説明せよというのは事業者にかなりの負担を課すものだと思いますし、スポーツクラブ等で品位を著しく損なう非行があった場合等についても、具体的な説明義務を課すのは非常に酷なのではないかと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ほかによろしいでしょうか。

議論がかなり多岐にわたり、少し整理が必要なところもあったように思いました。特に何人かの方から指摘されていて、必ずしも明確でないかもしれないのは、解釈権限付与条項・決定権限付与条項が、裁判所による解釈や決定の判断を排除するような意味を持つものなのか、そうでないものを今問題にしているのかという点は整理する必要があると思いました。消費者庁からの御説明では、後者を問題にしておられたように思いました。前者の、つまり裁判所による解釈や決定についての判断を排除する、その意味で事業者が行う解釈や判断が消費者を法的にも最終的に拘束するような条項が無効であるべきであるという理解がその背後にあるのかもしれません。実際に、そのようなものは無効であるという御主張も出ていました。しかし、その点について、そこまで一般的に言えるのかどうかという御指摘もあったようにも理解することができました。

他方で、そこまでに至らないけれども、なお不当条項としてブラックリストに挙げるべきものとして、マル1・マル2が提案されているとしますと、マル1については、全ての条項という形での要件がすべて備わるものが不当であるということは恐らく御異論が出ていなかったように思いますが、そのような形で限定することにどのような意味があるのか。思わぬ結果をもたらさないかという指摘もあったところです。ただ、資料の中では、そのような問題は10条の問題として、不当条項として無効になる余地はあるとされていまして、これは誰も否定しないところだろうと思いました。

マル2に関しては、とりわけ異議を述べることを排除するという形での要件設定が本当に適切なのかどうかという点は、更にその意味を含めて検討する必要があると思います。そして、これも御指摘があったところですけれども、仮にこれを無効とするとどうなるかというと、異議を述べてくるのを排除しないという一種の行為義務のようなものが残ることになる。この意味が、説明をしなければならないということだとすると、説明義務に相当するものが実は残ってくることになるのではないか。その意味で、この条項を不当条項として無効とすることによって何がもたらされるのか、それはどのような機能を持つのかという点も、もう少し整理をして考える必要がある。

さらに、実際に紛争になった事例があるのかどうか。ここに挙げられているような、不当条項の例として収集されたもののみを検討して本当によいのか。実際にこのような解釈権限や決定権限に相当するものが濫用されている事例が現実の紛争でどこまであるのかという指摘なのかもしれませんが、そういったものも視野に入れながら、更に検討する必要がある。

ただ、そのような事例がないからといって、この解釈権限付与条項や決定権限付与条項、とりわけ裁判所による解釈や判断を排除するようなものを本当に有効と認めてよいかという点は大問題だと思います。しかし、そういった紛争事例等が収集できるのであれば、それも含めて改正をどのように考えるかという点についての指標として検討する必要がある。こういったあたりではないかと思います。

まとまりがまだついていないかもしれませんが、考えていく上での問題点はかなりはっきりしたかと思いますので、これを踏まえて次回以降更に検討することができればと思います。

松本理事長。

○松本理事長 一点だけなのですけれども、解釈の部分で裁判所の介入を許さない条項というものと、解釈の余地のない明確な条項だけれども、明確に不当である。しかし、消費者はこれに拘束されて裁判所でも争えませんというものと、質的に同じように思うのです。事前に不当だということが外見的に明確か、それとも事業者側の事後的解釈によって極めて不当な条項に化けるかという違いだけであって、不当な内容で拘束しようとする点は一緒です。契約条項の面で不当であっても消費者は文句を言いませんという条項が無効だとすれば、契約条項の解釈において、いかなる不当な解釈についても文句を言いませんという条項はやはり無効だと思いますから、解釈のところだけ特出しするほどのことはないのではないでしょうか。

○山本(敬)座長 そういう御指摘も踏まえて検討ということになるかもしれませんが、条項自体が不当であり、無効とすべきかという事柄と、実際に解釈や決定を行ったその行為自体の当否の問題という2つ問題があると思います。

結論としては、最終的にどういうことになるのかということですので、両者は、質的に変わらないという見方もあるのかもしれません。しかし、構造的には違う問題でして、今、問題にしているのは、前者の問題であって、条項として不当なのかどうかというところをまず押さえようということではないかと思いますが、あまり適切なまとめではないかもしれません。

よろしいでしょうか。

それでは、次へ移りたいと思いますが、時間もかなりたってまいりましたので、45分まで休憩とさせていただき、45分から続きに入りたいと思います。それでは、休憩とさせていただきます。

(休憩)

(2)サルベージ条項について/軽過失による人身損害の賠償責任を一部免除する条項について

○山本(敬)座長 それでは、ただいまより議事を再開いたします。

資料1で残された第4及び第5について、まず、消費者庁から御説明をお願いいたします。

○消費者制度課担当者 それでは、説明させていただきます。よろしくお願いいたします。

まず、サルベージ条項について御説明させていただきたいと思います。11ページ以降になります。サルベージ条項の定義ですけれども、12ページの「1.専門調査会における検討」で簡単に御紹介させていただいております。そこにありますように、本来であれば全部無効となるべき条項について、その効力を強行法によって無効とされない範囲に限定する、そういう趣旨の条項でございまして、具体例で申し上げますと、「例えば」以下にありますように、本来であれば全部無効になるべき条項なのですけれども、「法律で許容される範囲内において」という文言を加えることによって、無効になる範囲を限定する、それによって有効な条項として使えるようにするというものがサルベージ条項になります。

具体例としまして、11ページで条項例を幾つか挙げさせていただきました。条項例4-1はインターネットビデオサービスの利用規約ですけれども、これは今、申し上げたような形で、2行目になりますけれども、「法律で許容される範囲内において」という言葉を加えることで、サルベージ条項にしている例になります。

それとは別に、条項例4-2のようなものでありまして、4-1が個別の条項に一つ言葉を加えることでサルベージ条項にしているものですけれども、4-2はそうではなくて、独立した条項としてサルベージ条項にしている。具体的には、裁判所において本規約のある規定が無効または執行不能とされた場合には、当該規定は、有効かつ執行可能となるために必要な限度において限定的に解釈されるものとしますという条項を設けることで、サルベージ条項として規約の全部が使えるようにするものが4-2になります。

それから、これまで専門調査会における議論におきましては、サルベージ条項は国際的に活動している企業において用いられているのではないかという御指摘があったところです。確かに4-3は国際的に行われているオンライン上の位置情報ゲームですけれども、ほかにも条項例4-4の国際的な輸送サービスのように、このような国際的な企業において用いられている実態もありますけれども、他方で条項例4-5とか4-6は国内の企業において用いられているものでして、様々な事業で用いられていると言うことができるのではないかと考えております。

13ページの「検討」に参りまして、まず「(1)事業者に対して条項を明確に定める動機付けを与える政策的な必要性」を書かせていただいたところでございます。サルベージ条項は、本来は無効となるべき条項であるにもかかわらず、結局どの範囲で無効になるのかが不明確である点が問題であると考えておりまして、その結果、消費者が条項の文言を見ただけでは、どの範囲が無効になるのかが分からないところが問題ではないかと考えております。現時点では、幾つかの事業において見られているところですけれども、これが様々な事業で使われるようになると、消費者側にとっては、より無効になる範囲が見えなくなるわけで、問題があると考えているところでございます。

専門調査会で以前、集中的な意見受付をしたときにあった意見としましては、特に国際的な活動をしている事業などにおいて御指摘があったところなのですけれども、逐一無効になる範囲を条項に書くのは難しいという御指摘があったところです。他方で、先ほど申し上げたところと重なるわけですけれども、消費者側からすると無効となる範囲が見えないという問題があるわけですので、やはりここは事業者に対して、より条項を具体的、明確に書くという観点から、サルベージ条項において規定を置くことが考えられるのではないかと考えている次第です。

以上が(1)の御説明でして、14ページ目で「(2)事業者が無効の範囲を操作できることの不当性」を書いております。

(2)の一番下の段落なのですけれども、一部が不当である条項について、どの範囲で無効になるのかというものは、最終的には法律もしくはその条項の解釈によって決まる問題ではないかと考えております。したがいまして、一部が不当である条項につきまして、その全部、条項自体が無効になることもあるわけですけれども、それにもかかわらず、サルベージ条項を使うことで、本当は全部無効になるものが一部の範囲に限定されるとしますと、法律とか解釈で決まる問題を事業者の条項作成によって無効の範囲を調整できるという問題点があるのではないかということを(2)で書かせていただいたところです。

提案内容としましては、11ページの四角囲みのところを御覧いただければと思います。一案としましては、「消費者契約法その他の法令の規定により無効とすべき消費者契約の条項について、無効となる範囲を限定する条項は、無効とする」という趣旨の規定を設けるという提案をしております。この規定の意味といいますか、法的効果でございますけれども、要するに、サルベージ条項を使っても法的には意味がない。ここで書いてありますような、無効となる範囲を限定する効果はないという意味を持っている規定になるかと考えております。

そうしますと、例えば先ほど申し上げました条項例4-1で申し上げますと、ここで「法律で許容される範囲において」という言葉を用いているわけですけれども、この言葉は法的には意味がないことになりますので、この部分を除いて条項を判断することで、もともとサルベージ条項が全部無効とすべき条項について使われているわけですから、条項自体が無効という形になると考えております。

繰り返しになりますけれども、サルベージ条項を無効にする規定の念頭に置いておりますのは、条項におきまして、「法律で許容される範囲内において」という言葉を用いるのではなくて、具体的にどういう場面に無効になるのかを規定してほしいと、そういうところを念頭に置いている規定でございます。

以上がサルベージ条項になります。

次に、15ページに参りまして「第5.軽過失による人身損害の賠償責任を一部免除する条項」について御説明させていただきます。

提案内容としましては、四角囲みのところにございまして、人身損害のうち生命侵害と身体侵害のうち、被害が重大なものに限定して損害賠償責任の一部を免除する条項を無効とする、そういう規定を設けることを提案しております。

条項例としまして、人身損害について責任の一部を免除していると考えられているものを挙げております。条項例5-1は、介護関係に使われているものです。ただ、これは本文で簡単に御紹介しておりますが、適格消費者団体が差止めた結果、現在では余り使われていない条項ではないかと考えているところです。

条項例5-2は、ベビーシッターサービスの利用規約でございまして、そこにありますとおり、保険の範囲内において責任を負うという規定になっております。

条項例5-3は、警備業のサービスでございまして、最後にありますように、人的損害、物的損害を合わせて10億円という形で限定しているものです。

条項例5-4は、プロ野球の試合の観戦約款でございまして、直接損害の範囲に限定する規定があるところです。

条項例5-5は、鉄道会社の旅客営業規則を御紹介しているところです。

本文のほうですけれども、「1.現行法の規律及び専門調査会における検討」で、まず、現行法の規律を紹介させていただいております。

最初の段落ですけれども、事業者は、その代表者またはその使用する者の軽過失に基づく債務不履行または不法行為によって生じた損害について、事業者の損害賠償責任の一部を免除する条項は、現行の法8条によっては無効にならないというところが議論の出発点になると考えております。これが現行法の規律でして、現行法におきましては、まず、全部免責条項につきましては無効という規定が定められております。それから、一部免除条項につきましても、故意または重過失によるものは無効とする規定が既に8条に定められています。そうしますと、残ったものとしまして、損害賠償責任の一部を免除する条項について、軽過失によるものであれば、8条によっては無効にならないのが現行法の規定でして、もちろん10条による無効の可能性はあるわけですけれども、8条では無効にならないことを前提に、この損害賠償責任のうち、人身損害については無効とできないかというのがここでの問題であると考えております。

17ページに参りまして、「2.事例の収集・分析」ということで、先ほど簡単に御説明した事例について御紹介しております。

時間の関係もありますので、19ページの「3.検討」に移っていただければと思います。

(1)で書かせていただきましたのは、高度に類型的な不当性があるのではないかというところでございまして、要するに、生命・身体につきましては、法益の重要性という観点から条項を無効とすることが考えられるのではないかということを指摘しております。注の20で、プロ野球の観戦中にファウルボールで失明した事故について札幌高裁判決が出ましたので、簡単に御紹介しております。この裁判例は、人身損害の中でも失明という重大な結果が発生したことも踏まえまして、法10条による無効である疑いがあるということを判断しておりますので、こういった点を踏まえても、生命や身体につきましては特別扱いする可能性があるのではないかということを提案しているところでございます。

次に、20ページで「(2)旅客運送契約についての商法改正法案」について御説明しております。これは、これまでの専門調査会における議論のときにはなかったところなのですけれども、鉄道などの旅客運送契約につきましては、昨年提出された商法改正法案につきまして、人身損害の損害賠償責任に関する規定が設けられております。この点を踏まえて検討する必要があるのではないかというところです。

具体的な条項としましては、24ページに条文を御紹介しております。24ページの一番下で商法の改正法案を紹介しているところでございまして、591条で、原則として特約を禁止している規定が設けられております。1項で、旅客の生命または身体の侵害に対する運送人の損害賠償について、免除、軽減する特約は無効とするという規定が入っております。ただ、これには適用除外と申しますか、例外が幾つか設けられておりまして、1項で運送の遅延を主たる原因とするものを除くというものがありますのと、2項では、1号で震災地における運送とか、2号で急病人の運送については例外とされているところでございます。

20ページに戻っていただきまして、これらの例外につきましては、それぞれどうしてこういう例外にしたのかということで法制審議会で議論がされているところですので、これを踏まえて消費者契約法において規定を設けることについて検討する必要があるのではないかと考えておりまして、ここで紹介させていただいている次第です。

そこで、考え方としまして一つ御提案するのが、21ページの(3)でございまして、生命・身体侵害のうちでも、身体につきまして、被害が重大なものに限定するという考え方を御紹介しております。先ほど御説明しましたように、今の8条で問題になるのが軽過失による人身損害の免責なわけですけれども、軽過失である点を踏まえますと、必ずしも被害が軽微であれば免除を無効にする必要がないのではないかという考え方もあり得ると思いますので、ここでは身体侵害につきまして、重大なものに限定するという考え方を御紹介しております。したがいまして、もしこのような規定にした場合には、被害が軽微である場合には、法10条で対応することになるかと思います。

この点につきまして、そうしますと、身体侵害について重大なものと重大ではないものをどう区別するのかという点が問題になるかと思いますけれども、この点について参考になる考え方としまして、消費者安全法の規定、それから参考条文では消費生活製品安全法について御紹介しておりますので、参考にしていただければと思います。

私からは以上です。よろしくお願いします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

それでは、まず「第4.サルベージ条項」についての検討に入りたいと思います。御意見、御質問がある方は、御発言をお願いいたします。

永江委員。

○永江委員 一点御説明をいただきたいのですが、サルベージ条項の「(2)事業者が無効の範囲を操作できることの不当性」の意味内容がちょっと理解できないので、どういう意味で操作できるとおっしゃっているのかというところの意味内容を御教示いただきたいと思います。

また、事業者がこのような条項を設けているのは、決して不当な意図があるわけではなくて、消費者契約法に照らし無効なこと、または不当なことをしたくない、するつもりはないという積極的な意図もございます。むしろ、そのような意図で挿入しているのがどちらかというと現実だと思いますので、この点も理解の上で検討すべきだと思います。

○山本(敬)座長 では、消費者庁のほうから御説明をお願いできますか。事業者が無効の範囲を操作できるとは、どのような意味かということです。

○消費者制度課担当者 御質問ありがとうございました。

14ページの記載についてだと思うのですけれども、条項の一部が不当である場合について、その条項全部が無効になるのか、その不当である一部分だけが不当になるのかという問題がありますが、これについては、法律や条項の解釈によって決まる問題であると考えております。そうしますと、法律とかの解釈によっては、条項の一部が不当である場合に、条項の全部、条項自体が不当になる場合もあるわけですけれども、そういう場合においてサルベージ条項が使われてしまいますと、不当な部分に限定する、無効の範囲を絞り込むことになりますので、そういう意味で無効の範囲を操作するという書き方をしております。

繰り返しになるかもしれませんけれども、本来は法律とか解釈で決まる問題について、事業者の条項の作成の仕方によって無効となる範囲を狭めることができるというのは、おかしいのではないかと。法律や解釈で決まるべき問題を条項作成の技術で決めていいのかどうかというところが問題ではないかと考えて、このような記載にしております。

○永江委員 事業者が操作できるといいますと、事業者が自ら解釈して、この条項は無効でこの条項はそうではないと一方的に決定できるように感じましたので、どうなのかなと疑問がありました。よろしくお願いします。

○山本(敬)座長 では、長谷川委員。

○長谷川委員 今の点なのですけれども、現行法では、サルベージ条項を設けることは認められているので、操作は別にしていなくて、そのような条項にしているというか、契約にしているということなのではないかと思います。要するに、強行法規に抵触しない範囲のことをやっているということです。言葉の問題だけかもしれませんが、それを操作と呼ぶことには非常に違和感があります。

○山本(敬)座長 では、消費者庁からお願いします。

○消費者制度課担当者 お答えになっているかどうか分からないのですけれども、操作という言葉使いが、操作というと故意に、意図的に調整するというニュアンスを含んでいるようにも読めますが、結果的に無効の範囲を縮減することになる場面でもあるかと思いますので、操作という言葉自体よりも、無効の範囲を調整するというか、無効の範囲を限定する結果になってしまうところが問題ではないかと考えております。

○長谷川委員 その説明は、本来、全部無効とすべきという価値判断に立った上での説明に聞こえます。

○山本(敬)座長 よろしいでしょうか。消費者庁からの説明で先ほどおっしゃっていたのは、本来は当該条項は全部無効であると法により判断されるべき場合である。ところが、サルベージ条項が入っていると、全部ではなく、法律上許容される範囲内で有効になるというように、それが変更されることになる。それを操作と言っているわけであって、そのように法により決まるべきところを、事業者側がこのような条項によってそれを変更するのが不当ではないかということだと理解したのですけれども、それでもなお不明確ということでしょうか。

○長谷川委員 先ほどの消費者庁からの説明は、全部無効なのか、一部無効なのかは解釈の余地があるということを前提に、サルベージ条項ということで一部の文言を入れることによって一部無効という結果を導いてしまうのはいかがなものかということと思っておりました。大変恐縮ですけれども、先ほど座長のおっしゃった、本来全部無効と解釈されるべきであるということではなくて、全部無効か一部無効かも含めて解釈に委ねられている中で、サルベージ条項を入れることによって一部無効の方に結論づけてしまうことを操作と呼ぶということだと理解していました。そのうえで、そういった契約条項の作り方は現行法上認められているので、操作というのは不適切ではないかというのが私が申し上げたかったことでございます。

○山本(敬)座長 中村委員。

○中村委員 今の論点ではないのですけれども、サルベージ条項の範囲を若干確認しながらお聞きしたいのですけれども、一つは、よくある条項として、これは当該条項が限定的に解釈されるということでお示しいただいているのですが、条項の一つが無効とされたからといって、その契約全体が無効となるわけではないという条項は、このサルベージ条項にはならないと考えてよろしいのですね。そこがまず一番確認したかったところなのですけれども、余り抽象的な議論だと分かりにくくて、当該条項規定という話になると、例えば損害賠償の利息や遅延損害金が、裁判所でこれ以上の金額は違法だと判断されたと。けれども、違法とされなかった範囲の損害賠償であったり遅延損害金は有効だと解釈してほしいというときに、このサルベージ条項を使うのは問題なのでしょうか。多分、そういう趣旨でこの条項を企業としては入れたいと思うのかと思うのですけれども、どういう状況だとこのサルベージ条項が具体的におかしいではないかということになるのかが、日本の企業は余り利用していない部分があって、余りのみ込めていない部分があるかなと感じているところです。よろしくお願いいたします。

○山本(敬)座長 利息制限法が適用されるような場合は、利息制限法自体が条項の一部無効を認めていますので、ここでの前提に合っていないところがあります。先ほどの長谷川委員とのやりとりでありましたように、全部無効と解釈されるべき場合を前提にして、それを変更するのがサルベージ条項ですので、今の例には当てはまらないのですが、ただ、御質問の趣旨は、どのような例が一番分かりやすい例かということだったと思いますので、消費者庁のほうから御説明をお願いできますか。具体的な例を基に説明をしていただければと思います。

○消費者制度課担当者 御指摘ありがとうございました。

そうしましたら、一つの例としまして、この条項例で申し上げますと、条項例4-4がそれにちょっと近いものであるのですけれども、例えば損害賠償額は10万円を限度としますという条項が一つ考えられるのではないかと考えております。消費者契約法には、故意または重過失による損害賠償責任の一部を免除する条項は無効という規定があります。ですので、故意または重過失による部分も損害賠償を限定しているところが不当なわけですけれども、サルベージ条項としまして、損害賠償額は法律で許容される範囲内において10万円を限度としますという形で、「法律で許容される範囲内において」という言葉を加えることだけで、8条の適用がある部分に限って無効になるとなってしまうのはおかしいのではないかというところが問題意識でございます。要するに、損害賠償について賠償額は10万円を限度としますと書いた上で、ただし、故意または重過失による場合は除きますというふうに書いてほしい。

結論としましては、賠償額は法律で許容される範囲内において10万円を限度としますと書くのは、賠償額は10万円を限度としますと書いてあるだけと同じことになってしまいますので、賠償額は10万円を限度としますと。ただし、故意または重過失による場合は除きますというふうに、どういう場合に無効になるのかをきちんと書き分けてほしいというのがここでの趣旨になります。

○山本(敬)座長 中村委員、よろしいでしょうか。

○中村委員 事例としては、一つは理解しました。ただ、それが事業者の側からすると、書き落としというか、書くときに、会社としてはそういうものは除きますという趣旨だったのだけれども、書いていなかったということに備えてそういう条文を入れたいという考え方はあるのかなと思うところです。

○山本(敬)座長 山本健司委員。

○山本(健)委員 新たな規定を設けるという考え方に賛成です。

条項例4-1が典型例であり、この事業者に不当な意図があるとまでは申しませんが、ここにいう「法律で許容される範囲」が分からない消費者の権利行使に結果的に大きな萎縮的効果をもたらす契約条項の規定ぶりであると思います。

契約書を作成・使用する事業者の側において、不当な部分を除外した契約条項を定めて消費者に示すのが本来の消費者取引のやり方であると思います。不当な部分の正確な除外が困難という事業者の御意見も聞かれますけれども、それなら当該事業に詳しくない消費者においてはなおさら不当な部分の判断は困難であろうと考えます。サルベージ条項は、法的効力を否定されても仕方のない契約条項であると考えます。

なお、先ほどかかる契約条項が現行法下で認められているという御発言がございましたけれども、日弁連消費者問題対策委員会では、現行法下でも10条違反になる契約条項と考えております。

以上です。

○山本(敬)座長 ほかに御質問あるいは御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

河上委員長。

○河上委員長 一つ参考になるかもしれないので申し上げます。約款の条項が適切であるか、不当であるかという判断をするときに、亡くなられた北川善太郎先生が「無効基準」という言葉を使われたのです。つまり、ぎりぎりここまでのことは許容されるけれども、そこから後はもう無効だというときには、これを無効基準と言うのだと。それに対して、本来、約款は「適正基準」というところで策定されるべきものであって、公正な市場のルールとしては、適正な基準をお互いに探っていくのが本来の筋だとおっしゃっておられたのを思い出します。

その意味では、無効基準というのはぎりぎり、これ以上やったらこれは許されない真っ黒の一歩手前のところまでは認めてくれということを言うわけで、しかも、その判断は自分ではなく裁判所にやってもらおうというのがサルベージ条項の本質なのです。その意味では、例えば消費者契約法8条の一切の責任は免れますというのは完全に無効だとなっていますけれども、そこに一言、法の許す限りと書いて、一切の責任は免れますと書いてしまえば、それであとは許容されるという状態になる。それが本当にいいのかということを考えないといけないのだろうと思います。

○山本(敬)座長 ほかに質問ないし意見があれば。

長谷川委員。

○長谷川委員 これは結局、書き切れますかということに尽きるのではないかと思っております。また、契約書なり約款なりを作成した時点以降、法律が変わることがあります。解釈がどうなるのかというのもあるかもしれません。そのときにどのような対応をするか、契約書や約款を改訂するのかというのも論点としてあるように思っております。仮に契約書の改訂などそれ相当なコストがかかるということであれば、その払うコストに対して、現状どの程度の社会的な不利益が生じているのかということとの見合いなのではないかと思っているところでございます。

○山本(敬)座長 ほかに。

石島委員。

○石島委員 御懸念があるというのは一定程度理解ができるのですけれども、やはり実態としてこれで実際に困っている消費者がいらっしゃるのかという、その精査が必要なのではないかなと。これもやはり立法事実があるのかという点に尽きるのかなという印象を持っております。

今、長谷川委員からもあったところなのですけれども、全ての事業者が法改正を追いながらタイムリーに契約条項を変えていくのは結構困難なことで、反復継続して複数の当事者に適用される契約については、法律の観点で一定程度の柔軟さを備えた契約条件を施行するのもやむを得ません。先ほど申し上げたとおり、それが不当な動機により行使され得る面を強調して捉え過ぎるのはどうなのかなと思うところです。

サルベージ条項が可及的に条項の有効性を担保する手段として、実務上の必要性も一定程度あるのではないかと思われますし、同時に、もともと英米法の実務から取り入れられた概念という側面が強い印象があって、国内の事業者にとっても、消費者にとっても、これを殊更に取り上げるべき実益がある問題なのかというところは、少し懸念のあるところです。なので、消費者の被害事例、実益があるというところの事例があれば、こちらもやはりお示しいただきたいと思うところです。

以上です。

○山本(敬)座長 ほかに。

松本理事長。

○松本理事長 今の御意見であると、むしろ逆に事業者の側で、こういう場合にサルベージ条項を適用されたら不当なことになるというのを挙げていただいて、それを適用除外にする。例えば約款作成後に強行法規の変更があった場合には、その許す範囲内でそれに合わせて解釈しますとかいうようなものを入れておけば、今の問題は解決できるわけです。つまり、なぜこれを置いているのかというと、将来法律が変わるかもしれないという予測の下に置いているのであれば、その前提となる予測を条項の中に書き込んでいけば非常にクリアで、事業者の懸念は解決できることになるのではないか。必要な部分だけ書けばいいのではないか。もともとこんな条項はあったってなかったって裁判所は余り気にしないで普通は解釈するのでしょうから、そういう意味では、念のために置いているのだけれども、普通はなくてもいいという類いのものであれば、むしろマイナスに使われるおそれがあり得るものは、ないほうがいいのではないかという感じで考えたらいいと思うのです。なくてもいいのなら、もう書かないでおきましょうと。

○山本(敬)座長 河野委員。

○河野委員 私自身は、前回の検討も踏まえて、サルベージ条項に関しては新たな規定を設けていただきたいと思っているところです。

先ほど山本健司委員からもありましたとおり、4-1の条項例、本来ならばこれは確実に不当な、「法律で許容される範囲において」さえなければ、消費者側はこれはおかしいだろうとはっきり言えるものが、この一行が書いてあるだけで、私たちは、何が不当であって、どこからが大丈夫なのだろうという判断が大きく揺るがされる。それでなくても契約における知識が脆弱である消費者にとってみると、この一行が入ることによって、私たちの権利が大きく侵害されるというふうにしか受け取れません。

逆に言うと、事業者の方は、この一文を入れることによって、どれだけ必要性といいましょうか、事業にとってこれを置くことの意義をどう考えていらっしゃるのか、説明していただきたいと思います。念のためにとか、これを入れておけば後々便利だからというような、一種のテクニック上の感覚でこれが入れられていることによって、どれだけ消費者が不利益を被るかということは、やはりしっかりと、真っ当な事業者でいらっしゃるならば、ちゃんと考えていただきたいと思っております。

先ほど例として出された、ではどこまで書けばいいのかという点ですが、いっぱい書かなければだめなのかということとか、改訂もされるかもしれないから、改訂に備えますというのは、必要十分条件とはとても思えません。なぜこのようなものをここに置いておくかという必要性を、もう少し消費者にとっても理解できるように説明していただければと思います。

○山本(敬)座長 ほかによろしいでしょうか。

丸山委員。

○丸山委員 消費者の実害とか苦情という点に関しては、明確に苦情として上がっていなくても、こういった条項が非常に不明確で、そもそも判断がつきにくいというところが非常に大きな弊害なのではないかと思います。これは果たして消費者契約法でどこまで無効となるのか、あるいはならないのかが、やはり素人である消費者には判断しにくいということで、こういう条項の弊害は大きいのではないかと思います。

また、既に御指摘があった点ですけれども、事業者にとっての必要性を、むしろ積極的に示していただきたい条項でございまして、例えば本来は法律の任意規定では全額損害賠償を負わなければいけないのに、免責条項とかでサルベージが使われるようになると、事業者の計算可能性が高まる訳でもなく、保険でカバーしたりとか、消費者に具体的に対応をとってもらうみたいな対応がとりにくくなる側面もあると思われる。サルベージ条項が必要だと言えるのかという点を教えていただければと思いました。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

後藤座長代理。

○後藤(巻)座長代理 ただいまの丸山委員の意見に非常に賛同します。こういう議論の中で被害実態があるのかとか、事業者にとって便利であるとか、必要性があるとか、そのような話が割と出てくると思うのですが、むしろここでは、この条項が分かりにくいとか、実際に適用されると消費者が、無効の範囲がどこまでなのかということについて認識できないとか、そのようなこと自体、法的には妥当でないと考えることができるのではないかと思います。

そういう意味で、ここでは、事業者の方々の御意見は十分お聞きする必要があるのですけれども、それとともに、むしろ法的妥当性ということを考えれば、少し極端な言い方になるかもしれませんけれども、現在被害が全くあらわれていないようなものであっても、将来被害があらわれる可能性が非常に高いというような状況であれば、それは法的な妥当性から問題があるということで、ここでの議論に加えることがあってもいいのではないかと私は思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

長谷川委員、どうぞ。

○長谷川委員 何度も申し訳ありません。これは以前にも申し上げたことの繰り返しになりますが、一定程度の立法事実が示されていない中で、現状を変更するので、変更する場合に生ずる不都合を述べよというのは、立法論としていかがなものか。ほかの法分野の立法の議論とは相当違う議論が行われている印象がございます。そういう印象を持つのみならず、現状に対する視線をどう考えるかということだと思っております。法的妥当性という言葉を先ほど使われた委員もおられたのですけれども、現実的妥当性というものもありましょうし、そういうことこそ重要なのではないかと思っております。

更に申し上げると、ちょっと理解が十分ではないところもあるので自信がないところもあるのですが、この条項によって、ある種の契約書ないし約款のドラフティング技術を一部縛ることになるわけです。そうなると、事業者に寄っているという批判もあるのだろうと思いますけれども、本来、契約で実現しようと思っているところが適切に表現できないことがあり得るとすれば、問題ではないかと思います。

○山本(敬)座長 問題点が多岐にわたっているところですけれども、議論の前提をまず確認する必要があると思います。最初のほうにありましたように、放っておくと、この条項がなければ、当該条項は全部無効になるべき場合に、サルベージ条項を使うことによって、常に条項一部無効に相当する判断を可能にする。そのような条項の当否が問題になっているということは、やはり確認する必要があると思います。

その上で、サルベージ条項の問題はいろいろありますけれども、資料の中でも示されていましたように、これだけを見ても条項、すなわち契約の内容が消費者側から見て明確ではない。サルベージ条項を使うことによって、どこまでのことが消費者の権利としてあり、どこまでのことが消費者の義務としてあるのかということがあらかじめ明確でない状態になっている。そのようなことを可能にすることが問題なのであるという御指摘があったところです。それに対して、このような条項を使うことが合理的な場合があるということも何人かの方から指摘されていたところですが、それに対してはなかなか十分に納得がいかないという御指摘もあったところです。このあたりをどう見るかということですが、やはり現実にこの条項を使うことの必要性がもう少し明確になる必要があると思います。

それに対して、現状を変えるという御指摘もありましたけれども、現状自体が争いのあり得るところで、先ほど山本健司委員から御指摘ありましたように、消費者契約法10条によって本来無効とされるべき条項の一つではないかというような考え方もあります。その意味で、現状がどうかということよりは、当該条項の評価をどのように行うかということではないかと思います。しかし、その点を含めて、なおまだ結論が出せる状態ではないように思いますので、更に検討する必要があると思います。

松本理事長。

○松本理事長 一点補足なのですが、次の項目がまさに強行法規を変更しようという提案なわけであって、現在使われている契約条項の中に、現在であれば軽過失による人身損害の一部免除は法律上は有効なので、それを書いていた。損害賠償の額は軽過失の場合はここまでに限定しますと書いていた。ところが、この後、消費者契約法が変更された場合に、その条項が物損の部分も含めて全部無効だということになると、困ったことになる。だから、法律が変わった場合に、その法律の許す範囲内で何とか効力を残したいというお考えが一部あるのだということで先ほど御説明がありました。そうであれば、そういうことに特化して条文を一つ入れておくというのはあり得ると思うのですが、そういうことと余り関係なしに、しかも、最初に免責の範囲として書いてあることが現行法から見ると、どうも認められないような大風呂敷を広げておいて、最後に法律が許す範囲内で責任を負いますという書き方は、非常にアンフェアではないかと。

先ほど河上委員長が指摘されたように、8条1項で債務不履行の損害賠償責任を全部免除すると、我が社は一切責任を負いません。ただし、法律が責任がありますよと言っている範囲では責任を負いますというような書き方は、明らかに望ましくないと思うのです。法律が変更になった場合はどうこうというのはあり得るけれども、というのが大原則だと思います。

もともと法律のルールがはっきりしない場合、どういう場合にどうなるかについてのコンセンサスもないし、判例もないし、条文もない場合について、我が社としては、この範囲内で責任を負いますと約款に書くのは自由だと思います。最終的には裁判所でどう判断されるかという問題なので、そこに法律あるいは裁判所が許す限りと書こうが書くまいが、そこに関しては結果は同じことになるので、書いてあることによる事業者側の積極的メリットはないと思うのです。法律変更の場合は確かにあることがあるだろうと思います。それ以外にも必要な場合があれば、そういう場合に限定した形で効力を補正するような文言にされるほうがいいのではないかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ただいまの御指摘も踏まえて、更に検討するということでよろしいでしょうか。

少し時間が押してきましたが、続いて「第5.軽過失による人身損害の賠償責任を一部免除する条項」についての検討に入りたいと思います。御意見、御質問のある方は御発言をお願いいたします。

山本健司委員。

○山本(健)委員 新たな規定を設ける考え方に賛成いたします。軽過失による生命・身体侵害の損害賠償責任の免責条項については、生命・身体という被侵害利益の重大性と事業者側の帰責性の存在に鑑みて、不当条項リストに付加すべきと考えます。

具体的な規定の在り方については、現時点でコンセンサスを形成できる規定内容ということであれば、適用範囲を生命侵害と重大な身体侵害に限定することもやむなしと考えます。ただし、被害が重大とは言えない身体侵害の軽過失一部免責条項についても、有効性を肯定できるような事案は無いか、極めて例外的であると思われます。そのような契約条項が今回のブラックリストから外れることで「およそ法的に有効である」といった誤った反対解釈を実務に招かないよう、そのような契約条項も10条違反となり得る旨を一問一答や逐条解説で明記していただきたいと考えます。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見は。

中村委員。

○中村委員 この条項については、私どもの業界としては、それほど直接的には余り関係がないのですが、書きぶりについてちょっと指摘したいと思うのです。19ページのところに、検討対象である人身損害の損害賠償責任を一部免除する条項について見ると、ちょっと飛ばしまして、事業者としては保険に加入する等により人身損害の賠償責任を負うリスクに備えることができると考えられると書いてあるわけなのですが、今回事例として挙げていただいている中で、例えば医療介護、ベビーシッターであるとか、警備業であるとか、そういったものにつきまして、保険の金額に限定している事例がありまして、保険というのは当然のことながら上限の金額を定めて契約をするものなので、そこの部分で、保険に入ることができるのだから問題ないのではないかというのは、若干いかがなものかと感じました。

あと、例えば医療介護、ベビーシッター等の事例において、介護のサービスとしてなかなか厳しい状況にある中で、責任制限というのが事業が立ち行く上でないと難しいという点も、もしかしたらあるのではないかと感じるところもありまして、その辺のところは、当該業界の実態等も踏まえて決めていっていただきたいと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見、御質問があればと思いますが、いかがでしょうか。

長谷川委員。

○長谷川委員 中村委員と同様、保険の記述についてですが、保険はコストがかかるので、そのコストも当然、取引条件の一部になっております。特定の条項についてだけ着目する議論の中で、取引条件に関わる保険という話を持ってくるのはいかがなものかということが一つでございます。

また、これも中村委員の話と重なるのですが、業態によっては旅客運送契約と同様に責任を一定程度制限する必要があると私どもの会員からも伺っております。それから、これは不法行為に基づくものであり、かつ強行法規でありますけれども、例えば原子力損害賠償法とかでは責任の制限も議論されているところでございますし、宇宙法の議論でもそういった議論がなされていると伺っております。個々の業態によって責任を制限する必要があり得るのではないかと思っているところでございます。

なお、例として挙げられている18ページの「(2)警備業」の条項例でございますけれども、これについては、主要な会社が加盟する業界団体では現在こういった条項例はガイドライン上使っていないということで、主体的な努力がなされていると聞いておりますので、御参考までにお伝え申し上げます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに。

井田委員。

○井田委員 私も山本健司委員と同じく、規定を設けることには賛成です。特に生命または身体の重大な侵害については、一部免責条項は無効とするというところには非常に意味があると思います。重大か重大でないかということの区分けは一つ問題になるかと思いますけれども、安易に軽過失による責任の免除を認めないということを示す意味では、このような規定を設けることに賛成であります。

責任制限は事業者側にとっては必要ではないかというお話もありましたけれども、旅客運送契約に関しましては、別のところでしかるべき議論を経た上でこのような規定ができたことに対して、事業者側の必要性だけをお話の俎上にのせていいのかどうか。もちろん必要性がないという業界は一つもないと思うので、その点も、事業者側の必要性だけで軽過失による一部免責を認めていいのかどうかという慎重な議論は必要かと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 ほかに御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

磯辺委員。

○磯辺委員 軽過失による人身損害の損害賠償責任を一部免除する条項をブラックリストに載せることは必要なことだと思います。ここに整理されているような事例ももちろんありますし、私のほうで以前、第27回で報告をしましたように、フィットネスクラブ等のけが、病気、事故等の場合に人身損害を15万円という限度を設けているといった事例もあります。現在の消費者契約法8条では、なかなか差止めが困難な事例ということにもなりますので、こういったことを明確にブラックリストにする意味合いはあろうかと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに御意見があればお出しいただければと思いますが、いかがでしょうか。

河上委員長。

○河上委員長 生命・身体の完全性についてということなのですけれども、契約条項で合意によって契約で、自らの生命身体の完全性を処分するということは、基本的にはできないのではないかという議論があります。ですから、指1本処分するということを同意でもって、相手からそう言われても、そこは処分権がないとすると、そうした条項に対して同意を与えることは通常の人間としてはあり得ないということになります。つまり、生命・身体の完全性を奪う行為に対して免責や責任制限の同意を与えることは、条項としては異常なことに属します。

ただ、例えば相撲の砂かぶりのようなところへ座るときに、相撲を間近で見て、大変迫力がある。そのときにお相撲さんが自分のところに落ちてきて、けがをするかもしれないことが分かっていながら、そのリスクを積極的に引き受けたと見られるような場合には、そこでは同意があって、危険の引受けによって責任が若干制限されることがあるというような、そういう例外になるのだろうと思うのです。

ですから、一般的に考えれば、重大事故について、自分の身体についての完全性を処分するということは、同意としては考えられないので、ここは無効にしておく。もし必要であれば、ただしということで、消費者の側から、積極的にかつ明示的に危険の引受けがあった場合はこの限りではないというような、何か限定的留保をつけておく形で対応するというのではどうかと思います。勿論、10条は被ってきますけど。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに。

石島委員。

○石島委員 当社も事業者単体としてはそこまで影響はないのですけれども、やはり業種によっては比較的影響があるのではないかと思っておりまして、例えば子供をアドベンチャーランドみたいなところに連れていったときに、すごく広いフィールドの中で、少し整備不良のところがあって、そこで結構大きなけがをしてしまいましたみたいなことも結構あると思うのです。そういったケースの事業者の考え方とか影響具合も聞いたほうがいいのではないかと、端的な事例として思っていたところなのですけれども、今の河上委員長からの御提案のように、積極的に危険を引き受けにいったというところの留保があるケースであれば、もうちょっと前向きに考えられるところではないかと思いますので、あわせて、できれば影響の大きい事業者のヒアリングを進めていただければいいなと思うところです。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかに。

松本理事長。

○松本理事長 若干気になったのは、危険を引き受けてしまえば損害賠償をとれないという話になってしまうので、これでいいのかなと。一部免責がアウトだという話なので、ちょっとやり過ぎではないですか。危険の引受けのロジックで全てやってしまうと、若干危険なアドベンチャーランドに行くのはオウン・リスクですよという話になりかねないから、ちょっと別の議論にしたほうがいいと思います。

○山本(敬)座長 山本健司委員。

○山本(健)委員 例えば19ページの脚注20で裁判例が紹介されておりますプロ野球のファウルボール事故の事例については、折れたバットが客席に飛び込んだという事例を含め、この札幌の事案以外の裁判例はプロ野球球団や球場の損害賠償責任を否定しておりますが、その法的根拠は、危険の引受けではなく、土地工作物や営造物の設置等に瑕疵がない、注意義務違反もないという理由であったと思います。

以上です。

○山本(敬)座長 後藤座長代理。

○後藤(巻)座長代理 私も、危険の引受けについて慎重に考える必要があるという松本理事長の御意見に賛成でして、危険の引受けというのは多くの場合、危険な状況があるからこそ、そこで危険を引き受けて、それでも私はこういうことをやりますと、そういう場面で使われるのではないかと思います。そういう場合に、危険な場面というのは、むしろ事業者側も注意義務が上がっておかしくない。そのように考えると、危険の引受けが生ずるような場面は、事業者の注意義務も厳格に考えなければいけないような状況にある。そういうことを踏まえた上で、危険の引受けを議論するということが必要なのではないかと思います。危険な状況なので事業者の注意義務もきちんと見なければいけないのだというところがなくなってしまって、どの場面で引き受けているかということを捨象するような形の議論になると、危険の引受けの考え方を適用するのは危険だという感じがいたします。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

河上委員長が指摘されたのは、やはり具体的な危険を特定して、それでもなお、あえてこの契約をする必要があるという場合の合意を例外的に尊重することはあってもよいのではないかと、善解しましたけれども、それでもなお問題があるという御指摘かもしれません。

増田委員。

○増田委員 消費者から見ますと、事故があったときに軽過失なのか、重過失なのかというところが分かりにくいのが実情ですので、少なくともこの提案に関しては、被害が重大であるということを条件にしているということであれば、軽過失の場合の、一部免除を無効とするということに賛成したいと思います。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

ほかにいかがでしょうか。

このような条項を必要とする業種・業態があるのではないかという御指摘がありましたが、更にその点はヒアリング等を通じて具体的に見ていく必要があると思います。その際に、身体の侵害、特にそれについて重大なということがどこまでのものを指すかということはありますが、それとは概念上も実際上も別のものとして、死亡、つまり生命侵害があります。生命侵害をした場合でも、この軽過失一部免除条項がなお有効とされなければならないニーズがどこまで本当にあるのかという点も含めて、実際のところを見ていく必要があると思います。

ほかに御意見あるいは御質問があればと思いますが、いかでしょうか。

河上委員長。

○河上委員長 今、山本座長がおっしゃった生命侵害の件ですけれども、これはかなり早い段階で無効にすべきだということが言われておりました。というのは、自分ではなくて、むしろ遺族の請求権を処分してしまうことになるので、その意味では、生命侵害に関しては、最初からこうした免責条項は認められないというか、無効にすべきだという議論です。この点は、かなり早い段階で、1970年代に出ていたものと記憶しております。解釈論としては、今でも生きているのではないかと思いますし、重大な身体侵害を含め、規定化には意味があると思われます。

○山本(敬)座長 ありがとうございました。

よろしいでしょうか。

この条項につきましては、一般論としては、確かに、生命あるいは重大な身体侵害の場合について軽過失一部免除条項を置くことは必ずしも望ましいことではないという点については一致が得られるかもしれません。しかし、この条項がないと、その事業が成り立たない場合もあり得るのではないか。そして、その事業が成り立たなければ、それに対応したサービスを消費者が受けることができない、ないしは本当にそのサービスを必要とする人が受けることができなくなる可能性がある。これが果たして保険も視野に入れてどこまで合理的な理由があるかということが次の問題である。ただ、この場ではなかなかそれ以上詰めることはできませんので、関連する事業者あるいは事業団体等からヒアリング等をして、更に検討を深めることとさせていただくということでよろしいでしょうか。

ありがとうございました。おかげさまをもちまして、時間前に、といっても10分少しですが、最後まで来ましたので、本日の議論はこのあたりとさせていただきます。

最後に、事務局から事務連絡をお願いいたします。


≪3.閉会≫

○丸山参事官 本日も御熱心な御議論をどうもありがとうございました。

次回の日程につきましては、追って御連絡させていただきますので、よろしくお願いします。

○山本(敬)座長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

以上

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