消費者基本計画の実施状況に関する検証・評価及び計画工程表の改定に向けての意見

2017年12月20日
消費者委員会

消費者基本計画の実施状況に関する検証・評価及び計画工程表の改定に向けての意見

消費者基本法においては、消費者基本計画(以下、「計画」という。)の検証・評価・監視について、それらの結果の取りまとめを行おうとする場合は、消費者委員会の意見を聴かなければならないとされている。このため、当委員会としては、計画の実施状況や計画に盛り込むべき新たな課題等に係る検討を、調査審議の重要な柱のひとつと位置付けてきた。

平成27年3月に閣議決定された計画においても、「消費者委員会は、消費者行政全般に対する監視機能を最大限に発揮しつつ、本計画に基づく施策の実施状況について、随時確認し、KPIも含めて検証・評価・監視を行う」とされている。

当委員会としては、これまでに発出してきた建議等や最近の被害の実態等を踏まえ、計画の実施状況に関する検証・評価において、特に留意すべき事項や計画工程表の見直しに向けて具体的に検討すべき課題について、下記のとおり意見を述べる。関係省庁等におかれては、下記の各項目について十分に検討の上、可能な限り計画工程表の改定素案等に反映されたい。

加えて、当委員会が平成29年8月に発出した「消費者契約法の規律の在り方についての答申」、「消費者行政における執行力の充実に関する提言」及び「事故情報の更なる活用に向けた提言」等で指摘した内容について留意の上、可能な限り計画工程表の改定素案等に反映されたい。

なお、当委員会としては、状況に応じ、今後、消費者庁において策定される計画工程表の改定素案に対し、更なる意見表明を行うことを予定している。

1.民法の成年年齢引下げに対する対応について

民法の成年年齢が引き下げられた場合、新たに成年となる18、19歳の消費者被害の防止・救済のためには、消費者教育の充実や制度整備等が必要である。こうした観点から、「消費者基本計画工程表の改定素案(平成29年4月)に対する意見」(平成29年5月23日)でも指摘したように、民法改正を待たずに、直ちに取組を始められる事項については、その取組等の内容、スケジュール等を工程表に記載されたい。(消費者庁、関係省庁等)

2.食品表示について

(1)食品表示制度の理解、周知に係る取組状況について

平成27年4月から施行された食品表示法に基づく食品表示制度に関して、消費者の理解がどの程度かを示す指標をKPIとして記載するとともに、その記載にあたっては、理解度の定義についても充分に検討の上、適切に設定されたい。

加えて、当委員会が平成29年8月に発出した加工食品の原料原産地表示にかかる答申(注1)において言及した消費者、事業者への周知についても具体的な取組について記載するとともに、上記と同様、理解度の定義についても検討の上、適切な指標を設定されたい。

また、消費者等への周知にあたっては、監視体制の強化の観点も踏まえ、都道府県との一層の連携強化を図るなど、より効果的な周知の方法について検討の上、その取組状況についても記載されたい。(消費者庁)

(2)機能性表示食品制度について

平成27年4月から施行された機能性表示食品制度について、施行後2年が経ち、平成29年度に施行後2年間の施行状況について検証し、その状況を踏まえた上で必要な見直し等について検討することとされているところ、その検討の取組や今後のスケジュールについて工程表に明記されたい。(消費者庁)

3.電気通信サービスにかかる消費者保護の推進

消費者保護ルールの実施の徹底に向け、総務省が実施した平成28年度の電気通信サービスに係るモニタリング結果を踏まえ、運用面、制度面等における改善の取組について、以下の事項を含め、工程表に明記されたい。(総務省)

  • FTTH(注2)サービスに係る電話勧誘のトラブル等を内容とする苦情相談件数は依然として相当数あることから、苦情相談分析結果を踏まえた取組
  • 販売現場における料金プランや解約費用の説明不足といった定期調査における電気通信事業者への指摘事項等について、実効性を確保するための取組
  • 消費者トラブルの未然防止に向けた、リーフレット等による効果的な周知方法

4.サーバ型電子マネーについて

サーバ型電子マネーについては、発行者による苦情処理体制の明確化等を内容とする平成28年5月の資金決済法の改正、同年8月の事務ガイドラインの改正等が行われているが、その後も、サーバ型電子マネーを購入させ、IDを詐取する等の消費者被害が増加している状況を踏まえ、電子マネーを販売する店舗における被害防止の取組等、消費者保護の実効性確保に向けた取組について、工程表に明記されたい。(金融庁)

5.仮想通貨について

仮想通貨については、仮想通貨と法定通貨の交換業者の登録制導入等を内容とする平成28年5月の資金決済法の改正、これを受けた事務ガイドラインの改正等の制度整備や、仮想通貨市場における交換業者の業務運営の体制整備状況についてのモニタリング等が行われているが、詐欺的行為を行う事業者による消費者被害が発生していることや、仮想通貨が投機対象として取引されている実態を踏まえ、消費者保護の実効性確保に向けた取組について、工程表に明記されたい。(金融庁)

6.特定商取引法の適用除外とされている法令等

最近、新たに特定商取引法の適用除外とされた住宅宿泊事業法や、不動産特定共同事業法をはじめとする特定商取引法の適用除外とされている法令等について、制度を悪用した消費者被害及び消費者トラブルを防止するため、相互の協力の下で、その運用実態や被害の発生状況等を的確に把握するなど、消費者被害の未然防止に向けた取組について、工程表に明示されたい(消費者庁、関係省庁等)

7.その他

前記1から6に掲げた内容の工程表への記載に当たっては、「消費者基本計画工程表の改定素案(平成29年4月)に対する意見」(平成29年5月23日)で示したように、KPIについては、各施策の実施状況等に応じた見直しや、アウトプット指標だけではなくアウトカム指標の追加設定等を検討するとともに、工程表の図については、可能な限り具体的な取組に分けた上で、当該具体的な取組ごとに期限を明確に設定した上で、図示する等を留意の上、工程表改訂素案に反映されたい。


  • (注1)食品表示基準の一部改正に係る答申(平成29年8月10日)
  • (注2)Fiber To The Home の略。いわゆる光ファイバのインターネットサービスであるが、利用者の共同住宅等内ではVDSL(銅線)やLANケーブルを用いるものも含む。