消費者基本計画の実施状況に関する検証・評価及び計画工程表の改定に向けての意見

2016年2月24日
消費者委員会

消費者基本計画の実施状況に関する検証・評価及び計画工程表の改定に向けての意見

消費者基本法においては、消費者基本計画の検証・評価・監視について、それらの結果の取りまとめを行おうとする場合は、消費者委員会の意見を聴かなければならないとされている。このため、当委員会としては、計画の実施状況や計画に盛り込むべき新たな課題等に係る検討を調査審議の重要な柱の一つと位置付けてきた。

昨年3月に閣議決定された消費者基本計画(以下、「計画」という。)においても、「消費者委員会は、消費者行政全般に対する監視機能を最大限に発揮しつつ、本計画に基づく施策の実施状況について、随時確認し、KPIも含めて検証・評価・監視を行う」とされていることから、昨年秋以降、消費者庁から、計画工程表の各施策の進捗状況についてヒアリングを重ねてきた。

また、昨年12月8日及び同月15日、本年1月27日の消費者委員会本会議において、「電気通信サービスに係る消費者保護」、「商品先物取引法の不招請勧誘規制緩和後の現状」、「高齢者向け住まい」、「基礎ぐい工事問題」の4つのテーマについて、実施状況や今後の取組等について、関係省庁からヒアリングを行ったところである。

当委員会としては、本関係省庁ヒアリングの結果を踏まえ、計画の実施状況に関する検証・評価において、特に留意すべき事項や計画工程表の見直しに向けて具体的に検討すべき課題について、下記のとおり意見を述べる。関係省庁等におかれては、下記の各項目について十分に検討の上、可能な限り計画工程表の改定案等に反映されたい。

なお、当委員会としては、本年2月24日に実施した「美容医療サービスに係るホームページ及び事前説明・同意に関する建議」に関するフォローアップや、本年3月に予定されている「電子マネーに関する消費者問題についての建議」及び「商業施設内の遊戯施設における消費者安全に関する建議」に関するフォローアップについてのヒアリングの結果等も踏まえ、今後、消費者庁において策定される改定計画工程表の素案に対し、更なる意見表明を行うことを予定している。

1.電気通信サービスに係る消費者保護

今回、取りまとめられた電気通信事業の利用者保護に関する省令等の整備案において盛り込まれた、説明義務の充実や、書面交付義務の導入、勧誘継続行為の禁止、代理店に対する指導等の措置について、事業者において適切に対応され、消費者保護が図られるよう、「電気通信事業法の消費者保護ルールに関するガイドライン」の改定について、工程表に明記されたい。併せて、整備案において盛り込まれた措置の実施状況のフォローアップ等、制度の実効性の確保のための取組について、工程表に明記されたい。(総務省)

2.高齢者向け住まい

高齢者が安心して入居し生活できるようにするため、消費者保護の制度を整備することが重要である。こうした観点から、以下の事項を含め、工程表に明記されたい。(厚生労働省、国土交通省)

  • 有料老人ホームの前払金の在り方について、平成26年度までの実態把握を踏まえた今後の具体的な検討の項目・スケジュール等
  • 前払金の保全措置を講じていない事業者に対する一層の指導強化等
  • サービス付き高齢者向け住宅を含め、消費者が選択にあたって必要な情報が入手できるような分かりやすい情報提供等
  • サービス付き高齢者向け住宅を含め、事業者の破産及び事業の廃止等についての実態把握や、事業者の破産等により居住の継続が困難になった場合における入居者の居住の安定を図るための措置の一層の取組
  • サービス付き高齢者向け住宅を含め、高齢者の居住安定のため、実効性のある利用者保護が図られるよう、地方自治体において、福祉部局と住宅部局の連携を促進する取組

3.基礎ぐい工事問題

建築物の安全性を高め、消費者が住宅を安心して購入、生活できる環境を整備するため、以下の再発防止策に関する取組のスケジュール等について、工程表に明記されたい。(国土交通省)

  • 建設会社が基礎ぐい工事に際して一般的に遵守すべき施工ルールである「基礎ぐい工事の適正な施工を確保するために講ずべき措置について(告示)」及び今後策定される予定の建設業団体による自主ルールについて、実施状況のフォローアップ等の実効性確保のための取組
  • 工事監理者が基礎ぐい工事における工事監理を行うにあたって留意すべき点が示されている「基礎ぐい工事における工事監理ガイドライン」について、その実効性を確保するための取組
  • 建築基準法に基づく中間検査における工事監理状況の確認等、より一層、信頼性の高い建築確認・検査の在り方の検討
  • 建築物の施工に関する情報についての消費者へのより適切な提供の在り方の検討
  • 基礎ぐい工事問題に係る消費者からの相談対応体制の強化

なお、商品先物取引法の不招請勧誘規制緩和については、関係省庁ヒアリングにより、昨年6月1日の改正商品先物取引法施行規則の施行以降、同規則第102条の2第3号に基づく勧誘(ハイリスク取引未経験者に対する勧誘)を行う事業者が未だ出ておらず、これによる消費者被害が発生する状況にはないことを確認することができた。しかし、同規則が、真に消費者被害の防止に効果があるかどうか、引き続き注視が必要である。今後、勧誘に関する苦情相談が増加に転じる兆しが少しでも見えたときは、直ちに同規則を見直すことが必要である。

(以上)