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医療機関債に関する消費者問題についての提言

2012年9月4日
消費者委員会

 医療機関債の勧誘に関する消費者からの相談が、昨年度より各地の消費生活センターに多く寄せられている。医療機関債の勧誘をめぐっては、平成23年8月に、独立行政法人国民生活センターが、消費者からの相談件数が増加しているとして注意喚起を行っている(注1)。また、平成24年1月には、消費者庁が、一部の医療法人が医療機関債の発行にあたり、強引な勧誘や虚偽の説明等の不当な勧誘行為をしたとして、消費者安全法(平成21年法律第50号)に基づく注意喚起を行っている(注2)。このように、昨今、医療機関債に関しては、消費者が不審、不満に感じる事案が顕在化しつつある。

 医療機関債は、厚生労働省による医療機関債発行等のガイドライン(平成16年10月25日医政発第1025003号。以下「ガイドライン」という。)において、有価証券には当たらず、金融商品取引法(昭和23年法律第25号)等の適用外とされている。しかし、ガイドラインには、悪質な医療法人が返済の目途のないままに医療機関債を発行した場合を想定した、消費者保護規定が十分に設けられているとは言い難いなどの問題があり、今後も同様の事案の発生が懸念されるところである。

 このため、消費者委員会としては、医療機関債に関する消費者問題について、被害の拡大を未然に防ぐとの観点から、次のとおり提言する。また、本提言への対応について、必要に応じて、今後、関係省庁からの報告を求めることとする。


(注1) 独立行政法人国民生活センター「新手の儲け話、医療機関債の販売トラブル!」(平成23年8月25日)
(注2) 消費者庁「「医療機関債」の勧誘に関する注意喚起」(平成24年1月20日)


1 医療機関債の発行実態等の把握

 医療機関債に関しては、ガイドラインで発行から償還に至るまでの各種手続き等のルールが定められているものの、医療法上、医療機関債発行時の都道府県への届出等の行政手続は義務付けられておらず、また、発行実態を行政当局が把握する仕組みも設けられていない。

 他方、独立行政法人国民生活センター(注3)によれば、医療機関債に関する相談は、平成22年度以前は年間数件程度であったものの、23年度には386件と急増しているとされる。加えて、不特定多数の広範な消費者に対して勧誘を行っている可能性が高く、また、既払いが確認できた事案の9割は支払額が100万円以上に及んでいるとのことである。更に、東京都からも、医療機関債発行の医療法人に対する監視システム構築の必要性が指摘されている。

 また、既述の消費者庁による注意喚起の対象となった法人については、出資の受入、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和29年法律第195号。以下「出資法」という。)に抵触している疑いが認められるなど(注4)、ガイドラインに違反していた疑いがある。

 以上を踏まえ、厚生労働省は、まずは、消費者から相談が寄せられている医療機関債発行法人等について、医療機関債の発行実態及びガイドラインの遵守状況について調査・把握し、都道府県に対し、その結果を踏まえ、必要に応じて早急に改善指導を行うよう要請すべきである。


(注3) PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)平成24年7月31日までの登録分(平成24年8月21日消費者委員会における国民生活センター説明資料より引用)
(注4) 注意喚起の対象となった医療法人社団真匡会等に対しては、平成24年7月17日に大阪府警が出資法第2条(預り金)違反の疑いで家宅捜査を行っている。


2 関係機関間の連携の推進

 医療機関債をめぐる消費者トラブルに適切に対応するためは、医療法人を所管する部局と消費者行政部局等が密接に連携を図り、医療法に基づく措置等を講ずる必要がある。

 このため、消費者庁は、都道府県において消費者行政を所管する部局に対し、当該部局が医療機関債の勧誘に関する消費者問題を積極的に把握するよう努め、把握した場合、速やかにその情報を医療法人を所管する部局に提供するよう、要請すべきである。

 また、厚生労働省は、都道府県において医療法人を所管する部局に対し、消費者行政を所管する部局からの積極的な情報提供を求めるなど両者が緊密に連携することにより、例えば、長期間に亘って経営実態がない医療法人が医療機関債を発行している場合など不適切な医療機関債発行の早期把握に努め、その是正のための医療法に基づく措置等を迅速かつ厳正に行うよう、要請すべきである。併せて、医療機関債の発行が出資法(注5)に違反する疑いがあると認められた場合等には、警察とも積極的に連携して対応するよう要請すべきである。

 また、東京都から、消費者庁が注意喚起の対象とした不当な勧誘行為に関して、都道府県の消費者行政部局が積極的に消費者安全法に基づく措置を講じることができる仕組みを構築する必要性が指摘されたところ、同法に基づく法執行を強化し、迅速に注意喚起を行うことは、医療機関債の発行に関する消費者問題の被害拡大の防止のために有効であると考えられる。

 消費者安全法では、内閣総理大臣の権限の一部(報告徴収・立入調査等)は、都道府県等に委任することができると規定されているものの、運用上、重大事故等(消費者安全法第2条第6項)のみが委任の対象とされ、本件のような財産被害はその範囲に含まれていない。また、重大事故等に関しても、委任に同意している都道府県等は39団体(31都道府県、8政令市)となっている。このため、同法が改正され、重大な財産被害を生じさせる事業者に対する行政措置等が強化されたことを機に、同法の執行強化に資するよう、委任の範囲の拡大等当該委任を積極的に活用することが有効であると考えられる。

 以上を踏まえ、消費者庁は都道府県が消費者安全法の運用に参加できるような環境を整備すべきである。


(注5) 出資法では、第1条で出資金の受入制限、第2条で預り金を禁止している。このうち、第2条の預り金の禁止について、金融庁の「事務ガイドライン」では、次の4つの要件のすべてに該当する場合に「預り金」に該当するとされている。(1)不特定かつ多数の者が相手であること、(2)金銭の受け入れであること、(3)元本の返還が約されていること、(4)主として預け主の便宜のために金銭の価額を保管することを目的とするものであること


3 消費者保護の観点からのガイドラインの見直しの検討

 ガイドラインでは、医療機関債を「医療機関を開設する医療法人が、民法上の消費貸借として行う金銭の借入れに際し、金銭を借入れたことを証する目的で作成する証拠証券をいうもの」と定義している。また、通常の社債や社会医療法人債は金融商品取引法等の適用対象であるが、同ガイドラインによれば、医療機関債は、金融商品取引法等の対象外となっており、金融商品取引法等に準ずる消費者保護の規定も設けられていない。

 しかしながら、昨今、消費者が医療機関債の勧誘をめぐるトラブルに巻き込まれる事案が見受けられるところであり、前述の問題も生じている。

 このため、厚生労働省は、上記1の調査結果を踏まえ、必要な場合には、消費者保護の観点から、医療法人の監督を行う都道府県の意見等も聞きつつ、ガイドラインに消費者保護規定を追加すべきである。


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