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地方消費者行政の持続的な展開とさらなる充実・強化に向けた支援策についての建議

2012年7月24日
消費者委員会

 地方消費者行政の抜本的強化を通じて、消費生活センターによる全国ネットワークを構築し、消費者の意見をできるだけ政策に反映していくことは、平成21年9月に消費者庁及び消費者委員会が設置された際における重要な基本理念の一つであった。消費者にとって身近な地方自治体は、消費者行政の基盤を成すものであることから、自治体による消費者行政への積極的な取組を実現することは、最重要の課題であるといえる。このため、消費者委員会はその発足以来、地方消費者行政を活性化するための様々な方策について調査審議を行ってきており、平成23年4月には「集中育成・強化期間」後において地方消費者行政を引き続き強化していく上で必要となる各種の施策を「地方消費者行政の活性化に向けた対応策についての建議」としてとりまとめ、内閣府特命担当大臣(消費者)、総務大臣等関係各大臣に対して、これら施策の早急な実施を求めてきた。
 その後、集中育成・強化期間にあわせて造成された「地方消費者行政活性化基金」(以下、「活性化基金」)が本年度で終了することを受けて、消費者庁は本年7月12日に「地方消費者行政の充実・強化のための指針」(以下、「指針」)を策定した。また、当委員会としても、建議事項のフォローアップの一環として、全国20か所の地方自治体(注1)や有識者に対するヒアリング調査を実施し、活性化基金終了後の対応の在り方について検討を行ってきた。
 当委員会としては、これらの検討の結果を踏まえ、集中育成・強化期間終了後における地方消費者行政の持続的な展開とさらなる充実・強化を実現するために必要となる国からの支援策について、内閣府特命担当大臣(消費者)、総務大臣等関係各大臣に対して、下記の通り改めて建議を行う。
 当委員会は、本建議への対応について、内閣府特命担当大臣(消費者)及び総務大臣に対して、平成25年1月を目途にその実施状況の報告を求める。また、「消費者基本計画」の検証・評価・監視活動の一環として、本建議に対する関係各大臣の対応状況について、定期的にフォローアップを実施する。

 (注1)うち10か所は都道府県、10か所は市町村。対象は消費者行政担当課または消費生活センター・相談窓口。

(主な建議事項)(注2)

  • 地方に対する新たな支援策を策定する前提として、国によるこれまでの支援策について、より詳細な検証・評価を早急に行い、その結果を公表すること。【建議事項(1)関係】
  • 活性化基金で新設・増設した相談体制を維持するため、自主財源確保が困難な自治体が行う基礎的な取組を下支えするための財政支援を確実に行い、当面の間継続すること。【建議事項(2)関係】
  • 自治体が主に国の政策的要請に基づいて行っている業務に係る負担の実態を把握した上で、その業務の遂行に要する財源をより確実に消費者行政担当部局へ配分するために必要な国からの財政負担の在り方について、国庫負担金や補助金等を含めて幅広く検討を行い、必要な措置を講じること。【建議事項(3)関係】
  • 消費生活相談員の雇止めの抑止に向けて、一律に任用回数の制限を設けることは適切でないことについて、自治体への周知を徹底すること。また、消費生活相談員が「任期付短時間勤務職員制度」の対象となり得ることを明確化するとともに、より柔軟な専門職任用制度の在り方について検討を深めること。【建議事項(4)関係】
  • 消費者行政担当職員・消費生活相談員のレベルアップを図るため、現場のニーズを踏まえた多様な研修機会・プログラムを提供すること。また、研修を補完するための一方策として、国レベルで「基本マニュアル」や「相談事例集」等を体系的に整備・更新し、自治体に提供すること。【建議事項(8)、(9)関係】
  • 消費者教育推進法の国会審議等の動きを踏まえ、消費者教育・啓発に係る自治体の取組に対する支援を強化すること。【建議事項(10)関係】

(注2)建議事項の詳細については、「2.集中育成・強化期間終了後における国による支援策の在り方」を参照。


1.集中育成・強化期間における支援策の評価と今後の展望

(1)支援策の成果と課題

 集中育成・強化期間における活性化基金(注3)等を通じた支援等により、地方自治体において消費生活センター・相談窓口の設置件数や消費生活相談員の人数が飛躍的に増加するなど、地方消費者行政の体制整備は大きく進展した(注4)。また、消費生活相談員への研修、消費生活相談の窓口機能、消費者教育・啓発といった内容面においても相当の充実・強化が図られた。当委員会が自治体に対して行ったヒアリング調査においても、ほぼすべての自治体が同期間中に地方消費者行政が大きく前進したことを高く評価しており、当初の政策目標の一定程度は達成されたものと考えられる。
 しかし、集中育成・強化期間中に、自治体の自主財源を強化することを目的として、消費者行政に係る地方交付税措置が拡充(注5)されたが、この間、特に規模の小さい自治体における消費者行政予算は活性化基金に大きく依存し、交付税措置の拡充に対応した自主財源の増加は見られなかった。また、自治体において消費者行政を担当する職員数もほぼ横ばいとなっている。さらに、平成22年度補正予算に計上された「住民生活に光をそそぐ交付金」(1,000億円)のうち、地方消費者行政に充てられたのは25億円に止まった。
 各自治体において消費者行政を推進するための自主財源や担当職員の確保が十分に進んでいないことは、集中育成・強化期間終了後において地方消費者行政を持続的に展開する上での大きな制約となることが懸念される。

(注3)平成21年度から23年度の3年間で223億円。1年間延長し、平成24年度に5億円積み増し。
(注4)消費者庁の「指針」によると、平成21年から平成24年にかけて、消費生活センターの設置件数は220か所、消費生活相談員の数は555名増加し、消費生活センター・相談窓口を設置していない市町村の割合は22.4%から6.9%に低下し、市町村における消費者相談に係る人口カバー率は95.0%から98.9%に上昇したとされている。
(注5)平成21年度に自治体の消費者行政に係る基準財政需要額を90億円から180億円に倍増し、さらに平成23年度に225億円へ引き上げた。


(2)集中育成・強化期間終了後における自治体の対応の見通し

 以上のような懸念は、当委員会が地方自治体に対して行った現地ヒアリング調査結果からも浮き彫りとなっている。同調査結果によれば、集中育成・強化期間終了後に消費者行政推進のための自主財源確保の見通しがある自治体は一部に止まっており、十分な見通しがない自治体との間で大きな格差が存在することが明らかになった。
 自主財源確保の見通しがあるのは、活性化基金以前より消費者行政分野で相応の実績の積み上げがある自治体か、ある程度の財政的基盤を前提に、消費者行政に対する「首長の理解と積極性」、「担当職員の資質と熱意」、「相談員の経験・スキルと熱意」をはじめとする様々な要件をクリアできた自治体に限られるといえる。一般財源全体にシーリングがかかる中で、同期間中にようやく消費者行政の充実・強化の足掛かりを得たばかりの自治体や、窓口新設直後で目に見える成果を出し切れなかった自治体を中心に、多くの地域において消費者行政に係る自主財源・人員の確保が困難な状況に陥ることが予想される。
 このため、各自治体が持続的に消費者行政に取り組み、どこに住んでいても消費者の権利が守られる体制を整備するためには、国が財政・人材・制度・情報のそれぞれの面から、新たな支援策を講じることが不可欠であると考えられる。


(3)消費者庁が策定した「指針」について

 消費者庁が新たに策定した「指針」は、集中育成・強化期間後における地方消費者行政の充実・強化に向けた「消費者庁の取組」と「自治体への期待(提言)」を示すものである。具体的には、「どこに住んでいても消費生活相談を受けられる体制づくり」、「法の厳正な執行と連携強化」、「地域社会の消費者問題解決力の向上」との基本的方向性の下、地方消費者行政に積極的に取り組む自治体を引き続き支援し、自治体での取組を下支えできるよう、必要な財源確保に向け、最大限の努力をしていくとしている。
 「指針」が示すこのような方向性は大筋としては是認されるところであるが、地方消費者行政に係る自主財源確保の見通しが十分に立っていない現状の下で、「自治体への期待」や「積極的に取り組む自治体への支援」に止まれば、「どこに住んでいても消費生活相談を受けられる」最低限の体制を維持する上での国からの支援策が不十分になるのではないかとの懸念が残る。
 また、当委員会が昨年4月にとりまとめた建議においては、特に早急な検討・実施を求める事項として、i.国による地方に対するこれまでの支援策に係る検証・評価、ii.相談ネットワークの充実(広域連携への支援)、iii.PIO-NET(注6)の入力費用に対する国の一定の負担の検討、iv.地方における法執行体制の強化を掲げている(注7)。
 このうち、ii.については集中育成・強化期間中の取組によって大きく進展しており、今後はその維持・拡大や運用改善に向けた支援を継続することが求められる。また、i.についても「指針」において、地方消費者行政予算や消費生活センター・相談窓口設置数といったインプット・アウトプット指標をもとに全体的な傾向を分析しているが、今後の効果的な支援策の検討に資するため、これまでの国からの支援策の成果に関するさらに詳細な検証・評価を行うことが求められる。
 他方、iv.については、研修・情報共有や連携等を通じた支援は行われているが、都道府県の執行権限の強化につながる大きな進捗は見られない。また、iii.については、国による一定の負担の在り方についての具体的な検討は行われていない(注8)。
 「指針」については、必要に応じて随時見直し、改定するとされているが、集中育成・強化期間終了後における国からの支援策を真に実効あるものとするためには、以上のような課題について、改めて掘り下げた検討を行うことが必要である。

(注6)全国消費生活情報ネットワークシステム(Practical Living Information Online Network System)。
(注7)同建議をとりまとめる上での基礎となっている「地方消費者行政専門調査会報告書」(平成23年4月)においては、さらに詳細な対応策についての提言を行っている。
(注8)なお、昨年4月の建議を受けて、消費者庁では「PIO-NET刷新に関する検討会」を設置し、i.消費生活相談員の入力負担を軽減する、ii.情報分析機能を向上させる等の観点からPIO-NETの見直しを行い、平成27年3月末までにシステム刷新を行うことを目指している。


2.集中育成・強化期間終了後における国による支援策の在り方(建議事項)

(基本的な考え方)

 地方消費者行政は、消費生活の「現場」である地域において消費者が安心して安全で豊かな消費生活を営むことを支えるため、本来、各地方自治体が自主的に行う「自治事務」であることから、自治体自らが予算・人員の配置に努めることにより、その充実・強化を図ることが基本である。しかし、それと同時に、消費生活センターを一元的な消費生活相談窓口と位置づけ、緊急時の対応や広域的な問題への対処等のために全国ネットワークを構築することは、国の政策的な要請に基づくものでもある。とりわけ、消費者庁及び消費者委員会の設置と同時に施行された消費者安全法において、自治体による消費生活センターの設置が法的に要請され(注9)、同法に基づく消費者事故等の国への通知義務等の法定受託事務的な要素が強い業務に係る自治体の負担が新たに発生したことに鑑みれば、国は自治体に対して、応分の財政負担を行い、自治体における基礎的な取組を支えることが必要であると考えられる。
 また、活性化基金を活用して新たに消費生活センター・相談窓口を立ち上げたところなど、芽が出たばかりで十分な成果を示せていない自治体においては、一定のサービス水準を維持するための予算・人員確保の見通しが立っていないことが多いと考えられる。これを放置すれば、消費生活センター・相談窓口や消費者行政担当組織の縮小・整理が進み、地方の消費者行政が今後、急速に後退する可能性が否定できない。これを回避するためには、各地域において少なくとも最低限の体制を堅持するための当面の財政支援をしっかりと行うととともに、これら自治体の早期の自立を促すための施策を重点的に講じるべきである。また、自治体間における格差を是正するための支援策についても、さらに拡充すべきである。

(注9)都道府県においては必須、市町村においては努力義務。


(具体的な建議事項)

  • (1)国による地方に対するこれまでの支援策に係る検証・評価(消費者庁)
     地方消費者行政への支援策をより効果的なものとするためには、PDCAサイクル(注10)を実践することが不可欠である。集中育成・強化期間終了後の新たな支援策(Act)を策定するためには、同期間中における支援策の検証・評価(Check)が極めて重要となる。「指針」において大まかな検証・評価は行われてはいるが、アウトカム(成果)指標(注11)や自治体間における指標の格差に関する定量的な分析、自治体へのヒアリング結果等の定性的な分析も含めたより詳細な検証・評価を早急に行い、国が重点的に支援を行う必要のある地域やその直面する課題等を明らかにした上で、可能な限りその結果を公表すべきである。

    (注10)計画(Plan)、実行(Do)、検証・評価(Check)、改善(Act)の4段階を繰り返すことによって、事業の継続的な改善を図ること。
    (注11)相談処理・あっせんの件数、相談内容、被害救済額、法執行数等。
  • (2)活性化基金で新設・増設した相談体制維持のための財政支援等(消費者庁、関係省庁)
     活性化基金を活用して新たに消費生活相談体制を立ち上げた地方自治体を中心に、活性化基金終了後における体制維持のために必要な予算確保の見通しが立っていないところが多いと考えられる。活性化基金終了後の新たな局面へのソフトランディングを図るため、自主財源確保が困難な自治体が行う基礎的な取組(注12)を下支えするための最低限の財政支援については確実に措置するとともに、自立に向けた道筋がつくまでの当面の間においてはそれを継続すべきである。
     また、厳しい財政状況の下での相談体制の維持や、より効果的な取組を行うための体制整備を目的として、広域連携や「よろず相談窓口」化などを模索する自治体が増えると考えられる。このため、先進事例の発掘・紹介などの情報提供をさらに強化するとともに、これらの取組を円滑化するための財政支援や制度的措置を講ずることにより、自治体における自助努力を積極的に促し、これを後押しすべきである。

    (注12)相談員人件費、研修費用、啓発費用等。
  • (3)地方消費者行政に係る国からの財政負担の在り方の検討(消費者庁、関係省庁)
     消費者庁の設置以降、消費生活センター・相談窓口の設立・運営、PIO-NETの追加配備に伴う相談内容・結果等の精査と入力、消費者安全法に基づく消費者事故等の国への通知、広域的に活動する悪質事業者への法執行等、法定受託事務的な要素が強い業務に係る地方自治体の負担が増加している。これに対して、地方交付税措置の拡充による一定の手当てが講じられているが、実際にはこれに対応した予算・人員の配分が行われていないことから、各自治体の消費者行政部局において、慢性的な繁忙化や機能低下といった問題が生じている。
     このような状況を是正し、地方において持続的に消費者行政を展開する上での基礎を確立するため、自治体が主に国の政策的要請に基づいて行っている業務に係る負担の実態を把握した上で、これらの業務の遂行に要する財源をより確実に消費者行政担当部局へ配分するために必要な国からの財政負担の在り方について、地方財政法第10条に規定する国庫負担金や同法第16条に規定する裁量的な補助金等を含めて幅広く検討を行い、必要な措置を講じるべきである。
  • (4)消費生活相談員の雇止めの抑止・処遇改善等(消費者庁、総務省)
     消費生活センター・相談窓口の現場を担う消費生活相談員には専門知識や経験の蓄積等が求められるにも関わらず、そのほとんどが臨時・非常勤職員(注13)として任用されている。相談員の専門性が高まったところで雇止めとなれば、相談員や地方自治体、地域住民のそれぞれにとって大きな損失となる。雇止めの抑止に向けて、消費生活相談員について一律に任用回数の制限を設けることは適切ではないことについて、自治体に対する周知を徹底すべきである。また、雇用期間・処遇面での改善を図るための選択肢の一つとして、消費生活相談員が「任期付短時間勤務職員制度」(注14)の対象となり得ることを明確化するとともに、専門性を要する消費生活相談員の雇止めを抑止し、適切に処遇するためのより柔軟な専門職任用制度の在り方(注15)について、検討を深めるべきである。また、消費生活相談員の専門職としての評価を高めるための資格制度やその法的な位置づけの在り方についても、早期に成案を得るべきである。
     なお、消費生活相談業務の民間委託や指定管理者制度の導入については、その業務特性(注16)や住民に対するサービス水準への影響等を十分に検証した上で判断されるべきである。

    (注13)任期1年で、更新回数に制限があることも多い。
    (注14)任期が「原則3年、特例5年」と臨時・非常勤職員よりも長く、雇用が相対的に安定しているほか、各種の手当も支給される。
    (注15)例えば、「任期の定めのない短時間勤務職員制度」の導入等。
    (注16)専門知識や経験の蓄積等の重要性、個人情報等の取扱いや自治体との密接な連携の必要性等。
  • (5)地方消費者行政に係る自主財源・人員確保等に向けた働きかけ(消費者庁)
     地方消費者行政の充実・強化を図るために、地方交付税措置が大幅に拡充されたにも関わらず、その位置づけや政策的重要性に関する認識が十分に浸透していないことから、地方自治体においてそれに対応した自主財源や担当職員が配分されていない。自治体における予算編成や人員配置においては首長によるリーダーシップや議会の後押しが重要であることから、国から自治体の首長等に対して、地方消費者行政の位置づけや政策的重要性について改めて理解を求めるとともに、自主財源・人員の確保に向けた働きかけをさらに強化すべきである(注17)。
     あわせて、警察・消防・福祉・教育など自治体の関連部局間における横断的連携体制の強化等を通じて、消費者行政を総合的かつ効果的に推進することについても引き続き要請を行うべきである。

    (注17)例えば、自治体ごとの消費者行政に対する基準財政需要の増加と実際の予算措置状況を明らかにすることや、消費者行政の体制整備について人口や相談需要等に応じた「目安」を示すこと等により、自治体の担当部局が予算・定員要求を行いやすい環境を整えること、地方6団体の会議等で担当政務から自治体の首長や議長等に対し直接要請を行っていただくことなどが考えられる。
  • (6)消費生活センター・相談窓口機能における自治体間格差の是正(消費者庁)
     開設間もなく、体制整備が不十分な消費生活センター・相談窓口等においては、相談の受付日数や処理能力等の面で制約があることから、支援・バックアップ体制(注18)をさらに改善・強化すべきである。また、消費生活相談員資格を有する相談員の配置には自治体間において大きな格差が存在することから、同資格をより取得しやすくするための措置を講じるべきである(注19)。
     なお、東日本大震災・原発事故の被災地においては、被災者の生活支援、震災にまつわる悪質商法の排除、放射性物質に係るリスクコミュニケーション等、消費者相談へのニーズが高まっているにも関わらず、自治体機能の制約により十分な対応が行えない場合もあることから、財政・人員面での支援を含め、格別の配慮がなされるべきである。

    (注18)国民生活センターによる経由相談、巡回訪問事業、消費者庁による「相談員の窓」等。
    (注19)例えば、消費生活相談員養成講座の開催回数や地方での開催機会の拡充等が考えられる。
  • (7)都道府県における法執行力の強化(消費者庁、関係省庁)
     悪質商法等への対策を講じるにあたっては、国とあわせて都道府県における法執行を強化することが重要であるが、その実績には各都道府県間で大きなばらつきが見られる。都道府県における法執行の強化に向けて、都道府県の執行権限、執行体制(注20)、国や関係自治体との連携、国からの人的・技術的支援等の各面における充実・強化を図るべきである。また、一つの都道府県で処分された悪質業者が他の地域で営業をするといった例が多発していることから、当該都道府県における処分の効果を全国に及ぼすことができるような制度の在り方について検討を行うべきである。

    (注20)職員の増員・専任化、警察OBの活用等。
  • (8)消費者行政担当職員・消費生活相談員のレベルアップのための研修の強化(消費者庁)
     地方自治体における消費者行政担当職員や消費生活相談員の専門能力・意識の向上を図るためには、国民生活センター等が開催する研修への参加が有効であることから、現場のニーズを踏まえた、多様な研修プログラムを提供することが重要である(注21)。その際、研修参加のための出張費用の確保が年々厳しくなってきているとの現場の声を踏まえ、できるだけ地方における開催機会を増やす(注22)とともに、多様な研修手法を提供するため、地域の消費者団体や大学との連携やe-ラーニング等の活用も検討すべきである(注23)。

    (注21)ワークショップや対面型の研修、ロールプレイング等。また、現状では担当職員研修のカリキュラムも不足していることから、その拡充が求められる。
    (注22)都道府県ごとあるいは各ブロックの主要都市における開催等。
    (注23)また、研修以外の手段で担当職員や相談員間における交流を促進するためには、「消費者行政フォーラム」等のイントラネットワーク上で情報交換やアドバイス等を行えるような仕組みを構築することも有益であると考えられる。
  • (9)基本マニュアル・相談事例集等の体系的整備・更新と自治体への提供(消費者庁)
     消費生活相談員や消費者行政担当職員が、消費生活相談や法執行能力を向上するためには研修に参加することが有効であるが、地方の消費者行政・相談窓口の業務運営において共通する基本的事項や全国的に多発している消費者被害への対処方法等については、国レベルで「基本マニュアル」や「相談事例集」等を体系的に整備・更新し、定期的に各地方自治体に提供することによってもある程度代替が可能であると考えられる。特に、立ち上げ間もない自治体においては、このような基礎的資料を提供することによる効果は高いと考えられることから、国や国民生活センターにおいて、その内容や実施方法等について検討を行うべきである。
  • (10)消費者教育・啓発の推進(消費者庁、関係省庁)
     学習指導要領への消費者教育の導入、消費者教育推進法の国会審議等の動きを踏まえ、消費者庁や文部科学省等の連携の下、学校・地域等における消費者教育を推進するための地方自治体の取組に対する支援を強化するべきである(注24)。
     また、消費生活センター・相談窓口の周知や全国的な問題に対する消費者啓発等、国レベルで一元的に実施した方が効率的かつ効果的な事項については、国や国民生活センターがより積極的に実施するべきである(注25)。

    (注24)教育の現場への周知、担当職員の育成と人員の確保、教材の作成・提供、消費者教育推進地域協議会の設立・運営への支援等。
    (注25)政府広報やその他多様な媒体の活用、啓発用資料やその作成用ひな形の提供等。
  • (11)消費者団体の育成・支援(消費者庁)
     消費者団体は、消費生活に係る相談案件の掘り起しや丁寧な情報提供等の消費者啓発活動を通じて消費者行政の基盤を支えている。地方消費者行政の充実・強化に向けた取組を推進する上でも、地域の消費者団体が果たす役割は大きいと考えられることから、消費者団体の育成・支援のための取組をさらに強化すべきである。さらにこの一環として、各地域における適格消費者団体の設立や機能強化のための支援を行うべきである。

3.今後の課題:地方消費者行政の中長期的なビジョンの策定

 地方消費者行政の自立が十分に進まない背景のひとつとして、その目的や位置づけが必ずしも明確化されていないという問題が存在する。どこに住んでいても消費生活相談や情報提供・啓発等を受けられる、ユニバーサルサービスとしての消費者行政を実現するためには、地方自治体の存在が不可欠である。消費者基本法において、国と自治体のそれぞれが消費者政策を推進する責務を有すると規定されていることを踏まえ、国と自治体が車の両輪として連携・協力し、消費者行政の充実・強化に向けて積極的に取り組んでいくことが求められる。
 また、地方消費者行政は、住民と事業者の間における個々のトラブルを助言やあっせん等を通じて解決するためのものであると同時に、消費者にとって安全・安心な市場の形成を通じて、地域を活性化するという公共目的を有している。特に、高齢化や格差の拡大等が進む中で、消費者行政に対しては、社会的・経済的弱者が消費者トラブルに巻き込まれることを予防し、また事後的な救済を図るためのセーフティネットとしての役割を果たすことへの期待が高まってきており、地方消費者行政を地域における消費者の権利を守るための司令塔と位置付け、他の関連施策と一体的に推進していく必要がある。
 地方消費者行政が有する以上のような意義を明らかにし、自治体における消費者行政への取組を後押しするためには、国として財政面を含めた必要な支援措置を講じるとともに、地方消費者行政の中長期的なビジョンを策定することが必要である。具体的には、消費者庁が「指針」の見直し・改定を行う中で、地方消費者行政の目的や位置づけ、提供すべきサービス水準、必要な予算・人員の規模や内容、人材の育成・配置と処遇改善、国・都道府県・市町村間における役割分担と費用負担、自治体間における広域的な連携、警察・消防・福祉・教育など関連部局との連携、地域の消費者団体等との連携・支援等の課題について、地域主権改革の趣旨をも踏まえつつ、中長期的に目指すべき姿を明らかにすべきである。
 当委員会としても、本建議のフォローアップや委員会におけるその他の調査審議を通して、このようなビジョンの明確化に貢献するとともに、地方消費者行政に係る国からの財政負担の在り方や消費生活相談員の雇止めの抑止・処遇改善等、各省庁横断的な課題への取組において、積極的に役割を果たしていく。

以上

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