第284回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2018年8月31日(金)10:00~11:58

場所

消費者委員会会議室

出席者

  • 【委員】
    高委員長、池本委員長代理、大森委員、蟹瀬委員、長田委員、樋口委員、増田委員、山本委員
    (高委員長の「高」は、正しくは「はしごだか」)
  • 【説明者】
    全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会団長石戸谷弁護士
    全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会幹事永田弁護士
    全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会幹事中根弁護士
    日本弁護士連合会副会長・札幌弁護士会太田弁護士
    日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長・愛知県弁護士会加藤弁護士
  • 【事務局】
    黒木事務局長、福島審議官、坂田参事官

議事次第

  1. 開会
  2. ジャパンライフ事件の被害実態と預託法の問題点について
  3. いわゆる「預託商法」につき抜本的な法制度の見直しを求める意見書(日本弁護士連合会)について
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○高委員長 おはようございます。定刻を過ぎてしまいましたけれども、ただいまから「消費者委員会第284回本会議」を開催させていただきます。

本日は、お忙しいところ、御出席いただきまして、ありがとうございます。

本日は、受田委員、鹿野委員が御欠席となります。

それでは、配付資料の確認につきまして、事務局よりお願いいたします。

○坂田参事官 議事次第に配付資料一覧を記載しております。

もし不足がございましたら、事務局までお申し出いただきますよう、お願いいたします。

よろしゅうございますでしょうか。


≪2.ジャパンライフ事件の被害実態と預託法の問題点について≫

○高委員長 最初の議題は「ジャパンライフ事件の被害実態と預託法の問題点について」でございます。

預託の仕組みを用い、高い利益還元をうたって高齢者を始めとする消費者の経済的不安につけ込む商法が繰り返し発生し、多数の消費者に高額かつ深刻な経済的被害をもたらしております。

消費者庁は、ジャパンライフ株式会社に対し、平成28年12月から29年12月にかけて業務停止命令等計4回の行政措置を行いました。

また、平成30年1月には全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会が立ち上げられ、同年2月には東京地裁に破産申し立てを行い、3月には破産手続開始決定がなされたところでございます。

こうした現状を踏まえ、同様の被害の再発防止に向け、委員の間でも意見交換を行うなど検討を進めてきたところでございます。

本日は、全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会から、団長の石戸谷豊弁護士、幹事の永田有香弁護士、幹事の中根祐介弁護士に御出席いただき、ジャパンライフ事件の被害実態と預託法の問題点等について御説明をいただき、意見交換を行いたいと思っております。

皆様、お忙しいところ、御出席いただきまして、ありがとうございます。

それでは、大変恐縮でございますけれども、20分程度で御説明をいただけますでしょうか。

○全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会団長石戸谷弁護士 御説明させていただきます。

本日は、ヒアリングの機会を設けていただきまして、ありがとうございました。

大型な被害を出し続けている取引類型でありますので、是非、これを契機に止めなければいけないと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

初めに、私から全般的な話を御説明しまして、被害実態につきましては二人から後ほど御説明いたします。

お手元の資料1-1ですけれども、「第1 はじめに」のところには弁護団発足の経緯について述べておりまして、そこに書いてあるような流れでありますけれども、かなり長期間、被害が表面化しなかったという特徴がありますので、その点については後ほど言及いたします。

破産に至る手続が第1の2でありまして、本件の特徴は、110番をやりまして初めて弁護士が被害の相談を受け付けるというか被害者の声を聞くというのがほとんどでありまして、中部が先行してやっておりましたけれども、全国的に見ますとそういう状態であったということですので、当然ながら、判決に至っている債権が全然ないので、破産申立てについては、破産申立てをする債権、当然ながら争われる場合には先に裁判等で債権の存在、額を確定するようにとなりますので、争われると破産手続に至らないということになりますから、全債権のうち非常に明確なものをピックアップいたしまして、22名、4億5,000万で申立てをいたしましたということです。

その後の経緯は書いてあるとおりです。

2ページ、被害の概要ですけれども、ここは現在、破産管財人が業務をやっておられるので、そのまとめを待たないと正確なところは明らかにならないわけですけれども、概略としては、一般的に挙げられている預託契約の金額の総額、これはジャパンライフが行政処分を受けたときに、命令に従って公認会計士の外部監査を受けるということで、公認会計士がその時点である資料に基づいて留保付きで28年度末で1,843億。総負債はもっと大きいわけですけれども、いわゆる被害額といえばこの数字だろうと。

契約者ですけれども、刻々と解約する人がいて、新規に契約を取ってくるということで、かなり流動的でして、業務停止を受けていますので、後ろになればなるほど解約数が増える。どの時点を取るかというのが問題になってくるのですけれども、ジャパンライフが店舗ごとにまとめた数字がありまして、それによると、29年7月27日現在で6,315人というのが一応あるのですけれども、これもそのまま信用して良いのかどうかということと、少なくとも海外の被害者、香港支店に2,000人程度の被害者がいるということで、これについては既に管財人で対応されておりまして、国際的な問題になっているということでありますので、全体像は管財人の報告を待たないと分からない。

なお、破産手続の抗告審では、29年7月末時点の契約者数で約7,000人と認定しております。

以上が概要ですけれども、日本弁護士連合会から預託法それ自体についての意見の説明があると思いまして、我々としても、基本的な考え方としては日本弁護士連合会と一致しておりますので、破産申立ての周辺的なことで預託法以外の問題点として検討すべき点、それから日本弁護士連合会意見の前提となっている、あるいは補充すべき点を中心にまとめております。

まず、「第2 大型の消費者事件の破産申立て等に関連する諸問題」ということで、予納金の問題を挙げております。非常に大型の消費者事件が目立つわけなのですけれども、その場合に問題になってくるのが予納金でして、債権者破産の場合に、大型の場合の例ということでそこに挙げてありますとおり、数千万程度、予納金が必要な実務になっております。

米印にありますような大型の事件については、会社側が自分から民事再生や会社更生を申し立てて破産に移行していますので、債権者破産で行く場合は、これが非常にネックである。ジャパンライフの場合は、後で御説明がありますとおり、根こそぎ金融資産を持っていかれてしまっていますので、こういった予納金を用意するということは全く無理であるということで、破産の準備と並行して、各地の弁護団、研究会から心ある資金を集めて、2月9日に予納金1,000万を納付しております。

なお、保全管理処分が同日に出ているのですけれども、これは予納金の納付を前提とした処分でありまして、納付があったのを確認して初めて決定が出るという扱いであります。

こういうことでありまして、本件の場合、そのような形で予納金を調達いたしましたけれども、こういう具合に行くのはまれなケースでありまして、多くの場合、予納金を納めるのは無理であるということで、正式な破産手続に至らないというのが非常に多いわけですし、また、予納金を何とか積もうという場合でも、その資金を集めるのに長期間掛かってしまって、その間、財産が散逸するということがあるので、これは非常に問題であるということがあります。

2のところで挙げましたのが特定適格消費者団体と破産申立ての点でありまして、一応、これは検討はしていただいたのですけれども、結局、消費者裁判手続特例法を使った集合手続は無理であるということでした。自転車操業でありますので、全被害者のための損害賠償をやると当然ながら潰れるわけですけれども、破産申立権がないのでうやむやに終わり、特定適格消費者団体は経費倒れに終わるということになるので、結局使えなかった。これは大きい問題ではないかと考えておりまして、ここの手当ても検討されるべきであると。

予納金の問題が生じるのは、この場合も同じですので、そこの手当ても必要であろうと。

仮差押えについては、国民生活センター法の改正で、対応がされています。

2-3のところは、そもそも個々の消費者は何とかして根こそぎ持っていかれた老後の資金を取り戻そうと思って弁護士に依頼するわけですので、当然、損害賠償請求をするとなると、損害の回復が目的なわけでして、それに対して、潰して、破産してしまおうよというのは矛盾した行動になるというところが大きな問題で、今の破産法の立て付けは非常に具合が良くない。

今回の破産申立てに至った経緯は、始めに申し上げたとおりでありますけれども、このように行くわけではないというのは、例えば豊田商事事件の場合に、先物取引被害全国研究会で議論を始めたのが1982年3月の第1回の研究会でありまして、いろいろと議論があったのですけれども、結局、破産申立てをしたのが1985年6月でありますので、3年少し掛かっている。

その間、何をやっていたのかというのは、非常に多くの被害者の方からの個々の損害賠償請求が出ている。当然ながら、被害回復のためにやるわけで、そういう中で、破産して、全部清算してしまおうというのは、それまでの依頼者の利益と相反関係に立ってしまうということで、それで良いのかということで、非常に激しい議論が続きました。結局、最後まで研究会として一致して破産申立てという決議を上げるに至らなかったのですけれども、殺人事件がありまして、こうなったら破産しかないということで破産を申し立てたという経緯でありますので、消費者側から申し立てるというのは非常に難しい面があるということを御理解いただければと思います。

そこで、4ページですけれども、「3.消費者庁の破産申立権」です。今までお話ししたようなことは、実は消費者庁で設置した消費者の財産被害に係る行政手法研究会で検討した問題であり、平成25年6月にまとめが出ておりまして、現在の破産申立て手続については次のような問題があるということで、(ア)から(エ)まで、今まで申し上げたことは既に指摘してあるところです。

3-2で、報告書においては、公益性の観点から消費者庁に破産手続開始申立権を付与することは考えられるということで、その後、課題の検討に入っているのですけれども、そこで止まっているということなので、是非、これを具体化していただければと考えております。

ジャパンライフの場合、特に行政処分で業務停止の期間が長かったので、その間、財産が非常に散逸してしまったということなので、早期の破産申立てがあるとかなり状況は違ったと思っております。

預託法を金融商品取引法の適用対象にするということにしますと、破産申立権は金融庁にあるわけなのですけれども、特商法その他、同じ問題がありますので、是非御検討いただきたいと思います。

消費者庁の適切な権限行使という点からしますと、被害弁護団として言及しないわけにいかないのは天下りの問題でありまして、再就職等監視委員会が、ジャパンライフを担当した元職員がジャパンライフに再就職しているのは国家公務員法106条の3第1項違反であると認定していることがありまして、これは被害者、全国の弁護士に非常に衝撃が走った問題であるのですけれども、私からすると、国家公務員法違反であるという個人の違反の認定もさることながら、再就職等監視委員会がまとめに付記した意見でありまして、消費者庁に対して、分かったはずなのに防止できなかったということを取り上げて、それが問題だと。必要な対応を取ってほしいということを指摘してありまして、これは個人の問題ではなくて消費者庁の問題、組織の問題であるので、私はこちらが深刻だと受け止めております。

しかしながら、国会審議等を見ましても、ここを重く受け止めて、真摯に検討して、どういう対応をしたのかというメッセージが出ているようにはうかがえないので、ここは是非信頼回復のために明確な情報を出していただければと思います。

これは、消費者庁の監視役である消費者委員会の問題でもあるのではないかと思っていますので、関心を払っていただければと思います。

最後に、苦情情報の共有化のところです。長い間、顕在化しなかったのがなぜなのか。それを防止するにはどうしたら良いかという問題があると思います。

ジャパンライフの場合は、解約に応じて、解約したい人には返金する。消費者センターが介入すると返金するといった状態が続いていて、外部にその問題が表面化して出てこない。数がないかというと、国会審議を見たところ、年間150件程度の苦情はあった。10年間で見ると1,000件以上の苦情が寄せられていたということなので、このぐらいの数になっているのであれば、取引が違法だ、違法でないという問題とは別にして、なぜこうなっているのかということを、検討を解明する仕組みがあってしかるべきではないかと思います。

生命身体の事故の場合には、消費者庁で頻繁に概要を公表して、欠陥商品の場合だと製品の回収等、様々な対応がされるわけですけれども、財産の場合に、情報というものがもう少し活用されるような仕組みが考えられてしかるべきではないかと思います。

適格消費者団体や特定適格消費者団体が権利を行使するにも情報がないとやりようがないので、少なくともそこには情報提供すべきであるし、消費者庁には当然、行っていると思うのですけれども、そこがうまくないと考える場合は、2014年改正行政手続法で行政処分等申出制度というのができており、申し出ることができるのですけれども、そもそも情報がないとどこに問題があるか分からない。特商法で前から申出制度はあったのですけれども、今度、行政手続法で一般的制度ということで導入されて、これは非常に意味がある制度だと思うのですが、このために情報が必要だなと。

第3の法規制の在り方の項目については日本弁護士連合会から意見の詳細が述べられると思いますので、それを支持するという観点で、重複は避けますけれども、導入の部分だけ述べさせていただきますと、ジャパンライフの場合に、なぜ根こそぎ預けてしまうというか被害が巨額になるのかという点なのですが、元本が保証されていて6%の金利が払われるというと非常に高い定期預金と同じような感じになってしまうので、実質、金融取引なのに物の取引という形態で、実質脱法されているというような問題がある。

投資のルールですと、そもそも元本保証ということ自体が禁止されて、そのこと自体が罰則の対象ですので、有り得ない取引であるのにも関わらずということだと思います。

そこで、集団投資スキームなのですが、これを導入したいきさつなのですけれども、被害が幅広く出ているので、対応しなければいけないというところが発想の原点になっておりまして、旧大蔵省のときの業界育成指導行政から金融庁が市場行政に金融行政が大きく転換しておりますので、公正なルールで利用者保護というのが眼目の一つになっております。

旧証券取引法は、伝統的な有価証券を適用対象とし、それを広げながら対応してきたのですけれども、事業への投資は入らないということで、平成電電だとかワールドオーシャンファームだとか、前に大型予納金のところで見ていただいたような被害が出てくるということで、法の隙間をなくさなければいけないということで導入した概念であります。

金融審の「投資サービス法(仮称)に向けて」という金融商品取引法を制定する基になった答申にもはっきりと、最近も多数の一般投資者を対象とする匿名組合形式の事業型ファンドに関する被害事例が報じられていることを考慮すると、投資サービス法の主要な目的の一つである利用者保護ルールの徹底を図る観点から、ファンドについては実効性ある包括的・横断的規制の整備が必要と考えられるということで、これに基づいて法案が整備されております。

参入規制、定義、その他については、日本弁護士連合会から詳しく説明があると思いますので、そこは省略いたします。

(4)の上の無登録業者による未公開有価証券の売り付けについての民事効果なのですけれども、これは第1次の消費者委員会において未公開株対策でやるべしという提言を受けて、金融庁で法改正して、入った規定でありまして、金融庁もそれなりに対応してやってきている。破産申立権ももともとなかったのですけれども、2010年に更生手続特例法を改正して、金融商品取引業者全般に破産申立てができるようにということで対応してやってきているということでありますので、是非、そういう形でと思います。

その他については省略しまして、出資法の関係だけ付言させていただきます。元本保証して、年6%というと、正に出資法違反ではないかと。だから、預託法と出資法を併存させれば、こういうのは防げるのではないかという疑問が生じかねないので、一応、現在の実務ということで付加しておきました。現在の実務は9ページの下の段落にあります鶴田氏の判例研究が明快に述べている。これは司法研修所教官・検事という肩書で捜査研究に運用の在り方ということで載せたもので、これはマンションの共有持分を販売して、引き渡さないで業者が賃借して、賃借料を出して、一定期間が来たら業者が買い戻す。だから物は全然動かないという形で元本保証しているのですけれども、これは契約どおりであれば出資法違反にならない。ただし、それが仮装であれば、預かり金になるということを述べていまして、このような形で運用するということを示しております。

実際、和牛商法で一連の出資法違反の摘発事件があったのですけれども、牛がいない事件です。安愚楽は牛が一定程度いましたので、出資法ではなくて預託法違反で摘発をして、有罪になっている。民事判決でありますけれども、損害賠償事件で大阪高裁の判決で、損害賠償を基礎付ける違法性の中の一つとして、牛が契約数の6~7割程度の状態しかなくて、恒常的に不足していた時期以降、そこについてはもう実態がないので出資法違反としており、現在の実務はそうなっております。したがって、これを前提にいろいろ考えなければいけないということだけ付け加えさせていただきます。

長くなりまして、済みません。

○全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会幹事中根弁護士 引き続いて、お手元の資料1-2の被害実態のところを少しお話しさせていただきます。

「1 勧誘の手口と被害状況」なのですけれども、ジャパンライフ社がメインでやっている契約というのは、レンタルオーナー契約という今、出てきた元本保証で年6%の利率が付くようなものなのですが、そもそもの発端で最初に勧誘を受けるのは、無料でエステが受けられるからといったような名目で支店に連れていかれて、まず、ジャパンライフ社というのが非常に良いところだという印象を植え付けられて、その後にオーナー契約を勧誘されていくというパターンがよくみられると思います。

ジャパンライフ社(J社)は保険や資産に関するセミナーを頻繁に開いて、そこに来る方は将来の資産についての不安を一定程度持っている方が想定されるわけですけれども、その場で金融資産の見直しを私たちがしてあげますよといったような名目で、その顧客の方がどのような流動資産をどのくらい持っているかを詳細に把握する。一般的な預貯金であれば、利率が現在ではほぼ全くつかないという状況がありますので、インフレになったらまずいのではないですかといった形で不安を様々にあおりまして、J社がやっているレンタルオーナー契約であれば、年6%のレンタル料収入が得られるし、短期契約という場合であれば、好きなときに解約して、元本の返金が受けられますよといったようなセールストークであったり、長期契約でも、元本返金ではないにしても、レンタル料は20年間保証されますよといった形で、あたかも一般の金融資産に対する投資の条件が利率だけが良くなったものであるかのような言い方で勧誘をするところに特徴があるかなと思っております。

高齢者に対してのもう一つの不安ということで、相続税対策であったりとか、年金しか収入がなくなったらちゃんとやっていけるのであろうかといった不安に絶妙につけ込んでいって、年金以外の収入が得られる状態になりますよという形で、金融資産を取り崩さないで生活できますよという勧誘をしていくということになって、このような勧誘を恒常的に受けていく結果、被害に遭われた方々は、ジャパンライフ社の商品は利率が良くて安全な預貯金のようなものだという捉え方が非常に多く、私たちに相談が来る際であっても、ジャパンライフにお金を預けていたという表現の仕方をする契約者の方が非常に多数見られます。

実際には、レンタル事業をして、レンタル料が入ってくるという説明なのですけれども、括弧の中にあるように、実際に消費者庁の調査では12%程度しかいなかったことが後に判明するのですが、顧客向けにはレンタルユーザーは殺到しているので、レンタル料が払われなくなることはないですよといった形で、心配ないですよという勧誘をしています。

このようなやり方を通して、顧客の資産を出せるだけ他の流動資産、預金や保険から全てJ社のオーナー契約に資金を回させようという目的を持って活動していますので、根こそぎつぎ込まされてしまうということで、現状では破綻しているわけなのですが、弁護団に相談したいけれども、その費用も全くなくなってしまった。余裕がなくなってしまって、どう生きていけば良いのか分からないと途方に暮れている非常に悲惨な被害が多数生まれているというのがこの件の特徴だと考えています。

○全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会幹事永田弁護士 それでは、実際に弁護団にあった相談を、統計から見た説明をさせていただきたいと思います。

弁護団の中で、中部弁護団は去年の9月27日からできていまして、随時、相談を受け付けているのですけれども、これまでにあった相談件数は、電話相談ですけれども247件ありまして、その相談の中で把握した被害者数が286人になります。これは家族からの相談で、両親が契約しているだとかそういうことがあって、一人一人カウントすると286人の被害者を把握したという形になります。

契約額は、100万円から、多いものだと6億2,000万円といった非常に高額な契約額になっておりまして、これは相談を聞いていてもすごく異様な事件だなと思ったところです。

家族からの相談で、契約額がよく分からないという方を除いて、契約額がこのくらいだと分かっている方の平均なのですけれども、電話相談があった中でいくと4,659万円と、これも非常に高額で、高額な契約をしている人が電話相談などをしてきやすいということはあるにせよ、非常に高額だなという印象です。

契約者御本人の年代としては、やはり60代以上が非常に多くて、年齢を聞き取っていない部分もあるのですけれども、聞き取っていて、分かった部分から分析すると、このペーパーにあるような割合で非常に高齢者が多いという特徴があります。

被害額が大きくなったのは、元本保証で安全な運用先に、預けるかのように誤信させられたというのが多くて、御本人は余りリスクの認識がなくて、家族の人等が危ないのではないかと心配して、相談してくるケースが多くて、破綻した後は結構、本人からの相談もあったのですが、やはり家族の方から、本人がまだ信じていてという御相談が多かったり、御家族の方から、本当に洗脳みたいで、洗脳が解けないのだと御相談があったケースも結構多いというのが特徴的な感じでした。

高齢の契約者が多いので、御本人が動きにくくて、相談も家族からが多かった印象です。

なので、高齢なこともあって、御本人が被害回復のために動くことが難しく、被害回復が図りにくい印象なので、拡大し切って、被害が広がってから、資金繰りが苦しくなって、返金が滞って、破綻間近というようになってからでは非常に遅くて、被害を防止するために実効的な法規制を是非お願いしたいところであります。

私からは以上です。

○高委員長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明に関しまして、御質問、御意見がございましたら御発言ください。

池本委員長代理、どうぞ。

○池本委員長代理 現場で被害者の相談を受けておられたということなので、その実情についてお伺いしたい点が一つ。あと、現行法の適用に関連しての質問と二つさせてください。

ジャパンライフについては、先ほど冒頭の紹介にもありましたが、消費者庁が4回行政処分をやっている。平成28年12月、29年3月ですね。特に29年3月のときには、契約した商品がなくて、運用している実態もなく、大幅な赤字であるというような不実の告知で行政処分をし、しかも既存の契約者にその旨を通知しなさいという指示処分まで出して、そういう通知を出したと聞いています。

普通ならばそれで、これは大変だということで被害の相談が出てきておかしくないのではないかという見方もあるのですが、被害者の受け止めがどうだったのか、あるいは事業者が何か対策を講じていたのかという点が実情についての質問の1点です。

それから、現行法の活用ということで、先ほど石戸谷さんからの説明にもありましたが、商品を販売し、預託して運用するという契約がそのとおりであれば、預託取引には当たるにしても、直ちに違法ではないかもしれないけれども、その商品がないあるいは運用して収益を上げるという実態がないとなれば、そもそも詐欺罪ではないかという評価の仕方と、少なくとも出資法に違反する、預り金の禁止に違反するのではないか。さらには、金融商品取引法の集団投資スキームのうちの金銭拠出型の集団投資スキームと評価もできるのではないか。

日本弁護士連合会の意見書で、購入商品拠出型へ取り込むべきだということで、こちらの弁護団のレジュメでもその提案がありますが、そもそも商品がないのだから金銭拠出型に当たるのではないか。現行法でそこへ取り込めるのではないかとすると、平成29年3月の行政処分の時点までの実態解明で現行法の今の出資法違反、金商法違反で対処できたのではないだろうか。なぜできなかったのだろうかという辺りの現場での受け止めについてお伺いできればと思います。

○高委員長 まず、最初の指示処分を受けたときの被害者側の受け止めについてというのが1点目です。

○全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会幹事永田弁護士 被害者側の受け止めとしては、文章で来ていて、A4用紙1枚ぐらいで文字がびっしり書いてある長い文章であり、高齢者の契約者が多いので、それでよく理解できなかったという部分もあるとは思います。

もう一つは、ジャパンライフ側でこの人には送って良いとか送ってはいけないとか選別していて、途中で止めるようなこともしていたらしいので、それもあるとは思います。

あと、意外と報道がされなかったなというのがありまして、それは何でだろうということはその当時は非常に疑問に思っていました。

ジャパンライフ側も、これは消費者庁との行き違いで、消費者庁の見解が間違っているみたいなことを顧客側に説明して回っていたということもあるみたいです。そういう話を聞いております。

○全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会団長石戸谷弁護士 2点目は、それは弁護団に聞かれても困るわけでして、弁護団としては、なぜそれでやってくれないのかという立場なので、おっしゃるとおりだと思うのですけれども、今の実務は詐欺の場合でいきますと御承知のとおり全く事業者に返済の意思もないし能力もないという以降のお金を出させた分について、詐欺としているので、例えばはれのひでも、結局、成り立たないということが普通に見れば分かるはずであるけれども、詐欺罪で立件できずに、銀行に対して虚偽の融資をさせたというところを捉えて立件しているわけでして、安愚楽についても、一般的に見ると実態がもうなくなってしまって、事業として成り立たないことが分かるではないかと思うのですけれども、詐欺で告訴していたものが結局、不起訴になっている。返済の意思も能力もないのにという故意の立証のところがぎりぎりの段階で、非常に厳格に立証を求めて、実務をやっているということです。

ですから、はれのひが分かりやすいですね。はれのひも、事業を成り立たせるようにいろいろと金を借りたり、いろいろな方策を採ってやっていた。返済の意思も能力もないと十分な証拠で認定するのは難しいみたいな判断で見送っているわけなので、そこは何を詐欺とするかで、学説上はいろいろと論争はあるのですけれども、実務としてはそうなっているということです。

出資法についても、言われるとおりで、全くそのとおりでございますと言うしかないのですけれども、実務として、例えば安愚楽として、かなり早い段階から契約の牛の頭数と実際にあった牛の頭数が乖離していて、足りないことが分かっていた時期以降、民事の判決では出資法違反としていますけれども、刑事事件では結局、出資法違反ということにはしないで、預託法だけでやっているということなので、実態がある程度あったのだけれども、出資法でやりましたという例が、預託法が出来た以降あるのか。私が調べた範囲では、預託法ができて預託法で行ける場合はむしろ、安愚楽のように預託法で行っていて、出資法は触らないとなっているのではないかと見ております。

一連の和牛商法を調べたのですけれども、牛が全くいない時期あるいは牛が預託法の対象として指定される前は出資法でやっていましたけれども、預託法の適用対象になった後について、出資法でやった例はないと思うのです。刑事で着手したところまでは行ったのだけれども、立件はしていないと思います。だから、実務的にはそうなっている。

お手元の資料で現代消費者法の論説は、そういう問題関心もあって挙げたものなので、後ほど参照していただければと思います。

○高委員長 ありがとうございます。

どうぞ。

○全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会幹事中根弁護士 一つ目の質問で、1点補足をさせていただきたいのですが、3月の行政処分後に、先ほどあったように被害者にそもそも行政処分の認識自体が誤りだというアナウンスを会社側がしたということもありますし、直ちに業務提供誘引販売取引のような形を変えるような対応もジャパンライフ社も取ったりして、行政処分逃れという様子も見られています。

この会社については、そういった対応が非常に特徴的に見られて、破産手続が開始した後でさえも、また別会社を作ったりした上で、元の会社の役員の方が元の商品を顧客から引き取ったり、また買い取ってもらうことをお願いに回ったりとか、いろいろな活動をしているというのがあって、そういうこともあって、最初にこのジャパンライフ社というのは良いところだと思い込まされてしまっている被害者の皆さんからすると、そこの信頼にすがりたくなってしまう気持ちを巧みに利用していたようなところもあるかなと、現場で見ていると感じているところです。

○高委員長 ありがとうございました。

確認させていただいてよろしいですか。資料の9ページで、出資法との関係と書いてあって、先ほどの質問と関連するのですけれども、「現行預託法の下でも」とちょうど真ん中辺りに書かれていますね。出資法を適用することによって対応できるという解釈もあるのではないかと言いながら、次の段落では、実際のところそれは難しいと言う。これが石戸谷弁護士の理解であって、むしろ金商法の集団投資スキームの中で考えるべきだというのが申し上げたいことになるのでしょうか。

○全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会団長石戸谷弁護士 そのようなことです。

現在の実務運用を前提としないと、立法というのはうまく回らないと思いますので、委員長がおっしゃったとおりだと思います。

ただ、個人的にはこの運用が正しいとは思っていないのですが、それを言っても立法のときには始まらないので、それは一応さておいて、今の運用を前提とすると、おっしゃるとおりだと思います。

○高委員長 運用を前提とすると、むしろ集団投資スキームの中で考えるほうが合理的だということですね。

○全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会団長石戸谷弁護士 そういうことです。

○高委員長 ありがとうございます。

そういう意味で、日本弁護士連合会の報告書と意見は一緒だということなのですね。

○全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会団長石戸谷弁護士 そういうことです。

補充です。日本弁護士連合会の意見書は出資法に触れていないので、一応、そこを言及しておいたということです。

日本弁護士連合会の意見が出てこないと議論がしにくいところもあると思うので、そこはまた後で。

○高委員長 ありがとうございます。

それでは、他に。

増田委員、どうぞ。

○増田委員 消費生活相談には確かに相談が寄せられていていましたが、解決してしまうということと、件数がたくさん寄せられるということはないという状況が長く続いていたのは、私どもも相談員として体験しています。

取引が家庭訪販であったり、アポイントであったり、SF商法的であったり、業務提供誘引販売であったり、こういうレンタルオーナーということだったり、同じ時期であっても人によっていろいろと変わっていて、どのように解決して良いのかということ自体も非常に難しいケースでした。

センターが入ると解決しましたが、商品が余りにも高額で、苦情がたくさんあるかないかということとは別に、商品が暴利行為ではないかというくらい本当に根拠のない金額がつけられている。そういうところから、財産被害の解決ができないか、端緒情報として切り込みできないかというのは当時からずっと思っていたところです。

法律の改正もそうですけれども、行政の処分の在り方として、社名公表をするとか、行政処分をするとかといったときに、商品性の問題をもっと強く考えていただきたいというのが現場としては感じているところなのです。

もう一つ、おっしゃったとおり直接の担当者との信頼関係が非常に強く、これが高齢消費者の特性ではあるのですけれども、依存関係が非常に強い。消費者契約法は改正されましたけれども、今の消費者契約法においては、いわゆるつけ込み型が課題として残っていますので、そういう意味では、解決できない問題だと思います。

この依存関係が、いわゆる消費者庁の情報が届きにくいということと相まって、今回の処分が長引いたにも関わらず、相談が寄せられなかったのではないかと思っているのですけれども、その辺りについて、同じ感覚をお持ちかどうかというところを教えていただければと思います。

○高委員長 お願いできますか。

○全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会幹事永田弁護士 暴利行為でないかというようなところは、私も顕在化する前からというか、何件か受けたことはあって、思っていたところで、そういう内容証明を書いて送ったりということもしていたのですけれども、つけ込み型といえば確かにそういう形なので、法整備されてくれば、その辺りも対応できるようになるのかなという感じはしています。

○全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会幹事中根弁護士 おっしゃるとおりの感想をある程度、持っていたところで、依存性が強いというのは正にそのとおりなのかなと。直接の担当者に対するものもそのとおりだと思いますし、ジャパンライフ社というのは都心部には余り支店を置かずに、地方都市みたいなところに展開していることが多いのですけれども、そういうところになってくると、同じ顧客同士の間でもコミュニティーがあったりする関係で、自分だけ突出して被害回復を求めるのはどうなのかといった形のちゅうちょも出てきてしまったりして、あの人たちが行くならば相談に行っても良いのだけれどもという御意見も、電話を聞いていると多くあるので、そういう特殊性もまた一つあるのかなという感触を持っています。

以上です。

○高委員長 ありがとうございます。

他に御質問はございませんでしょうか。よろしいですか。

それでは、特にないようであれば、先に進ませていただきます。今日、御説明をいただきました現行の預託法の問題も、既存の破産開始申立手続にいろいろ問題があるという御指摘を最初にいただいたかと思っております。だから、破産申立て権限というのは、どこかの主務官庁が持つべきではないかという御提案をいただいたかと思います。

それから、長い間この問題が表面化しなかったということで、いろいろな背景はあったということを説明いただきましたけれども、これは結果論になってしまいますが、わずかながらでも情報があったにも関わらず、苦情があったにも関わらず、対応できなかったことに対する問題指摘をいただいたと思っております。

石戸谷弁護士の個人的な考え方からすると、これはもう元本保証でもって、出資法でも対応できるような話ではないかということなのでしょうけれども、金商法の中で考えていくほうが実務的には合理的ではないかという御指摘をいただきました。ありがとうございました。

本日いただきました内容を踏まえて、今後、同じような問題が再発しないような制度作りを考えていきたいと思っております。

石戸谷弁護士、永田弁護士、中根弁護士におかれましては、お忙しいところ、審議に御協力いただきまして、ありがとうございました。なお、次の議題にも御同席いただけるということでございますので、引き続き、よろしくお願いいたします。

(日本弁護士連合会着席)

≪3.いわゆる「預託商法」につき抜本的な法制度の見直しを求める意見書(日本弁護士連合会)について≫

○高委員長 次は、「いわゆる「預託商法」につき抜本的な法制度の見直しを求める意見書について」でございます。

日本弁護士連合会におかれましては、ジャパンライフ事件の被害などを踏まえ、本年7月に意見書を発出されております。

本日は、意見書の内容について御説明をいただき、意見交換を行いたく思います。

御出席者は、日本弁護士連合会副会長・札幌弁護士会太田賢二弁護士、日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長・愛知県弁護士会加藤了嗣弁護士でございます。

お忙しいところ、御出席いただきまして、ありがとうございます。

また、前の議題に続いて石戸谷弁護士、永田弁護士、中根弁護士にも御着席いただいております。

それでは、恐縮でございますが、20分ほど御説明をいただけますでしょうか。

○日本弁護士連合会副会長・札幌弁護士会太田弁護士 日本弁護士連合会副会長の太田です。

最初に私から、資料等の説明をさせていただきます。

資料は今ほど御紹介がありました、本年7月12日付けで取りまとめた、いわゆる「預託商法」につき抜本的な法制度の見直しを求める意見書の他に、この意見書のサマリー、それからもう一枚、意見書に基づくポンチ絵があります。

既に私どもの前にジャパンライフの弁護団から、今回の事件についてはいろいろと御説明があったものと聞いております。預託商法の事案について言えば、古くは豊田商事事件をよく御存じだと思いますし、その後も安愚楽牧場事件もありまして、この間に、特定商品等の預託等取引契約に関する法律を制定し、その都度、日本弁護士連合会としては、必要な法改正等を提言してきたところであります。

しかし、今回のジャパンライフ事件については、既に御報告があったと思いますけれども、消費者庁が4回にわたる業務停止をしたにも関わらず被害が発生し、また、実在の商品に裏付けがないということで、抜本的な規制のやり方を変えなければいけないのではないかということで、今回、預託法ではなくて、金融商品取引法による規制が必要ではないかという形で意見を取りまとめました。

以下、加藤弁護士から御報告をさせていただきます。

○日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長・愛知県弁護士会加藤弁護士 加藤でございます。

いわゆる「預託商法」につき抜本的な法制度の見直しを求める意見書につき、私から趣旨と内容につきまして御説明を申し上げます。

まず、意見の趣旨ですけれども、先ほど申し上げましたとおり、今回の意見は預託商法のうち、事業者による物品の販売と、販売業者またはその関連業者が収益の配当を約して当該物品の預託を受けることが一体的に行われている形態につきまして、金融商品取引法の「集団投資スキーム」に該当すること並びに登録制及び行為規制の適用対象となることを明確にするよう、金融商品取引法及び関連法令を改正すべきであるというのが趣旨の第1項でございます。

その上で、第2項といたしまして、被害抑制のために更なる規制を課すべく、金融商品取引法及び関連法令を改正すべきである。具体的な中身としましては、投資型ファンドと同様の運用規制を導入すること。加えまして、不招請勧誘の禁止を導入すること。これが意見の趣旨でございます。

以下、内容及び理由について御案内を申し上げます。

預託商法でございますけれども、そもそもどのような商法かと申しますと、皆さん御承知のとおり、消費者が購入した商品を販売業者やその関連会社に預託して、運用を委託する。そして、運用に基づく配当その他の経済的利益を受けるという取引でございます。

古くは豊田商事もそうでございましたが、安愚楽牧場事件、これは牛を消費者に購入していただいて、それを預かって肥育をし、これを販売するなりして利益及び元本の償還を行うという取引でございます。

こういった商法は、このような大規模消費者被害だけではなく、いろいろな商材で幾つもの被害が報告されております。そして、その商材についても非常に様々でございます。一例として挙げておりますが、最近ではパチンコ型スロットマシン、いわゆるパチスロ機であったり、太陽光の発電パネル、カード決済端末機、コンテナ等が紹介されているところです。

このような預託商法なのですが、もともと消費者が自分で持っている商品を預託するという形態のものはほとんどございません。多くは預託あるいは拠出することを前提として、物を購入させるというものがほとんどです。そうしますと、消費者としては、もともと個人の需要なり必要があって保有している、あるいは購入するという商品ではございませんので、物そのものには基本的に関心はありません。関心は何かといいますと、その物を用いて行う例えばレンタル事業であったり肥育事業であったりするわけですが、こういう事業をすれば、それなりの配当が見込めるという業者の話がそれらしく聞こえるかどうか、にしか関心がございません。

すなわち、商材としては何でも良いわけです。要するに、こういうものを使って、こういう事業をして、こういう配当が見込めますよということがそれらしく聞こえれば、消費者としては物が何であるか、どういうものであるか、どこにどうあって、どう管理されているのかといったところについては、比較的関心が薄いことになります。

そうしますと、実質、物を買って、預けるということを言いながら、お金を出して、何らかの運用をしてもらって、配当してもらうという投資商品に非常に性格が近似してくるという形になります。

業者からしますと、このように消費者は物そのものには関心がございませんので、必ずしも物の実在とか特定性といったところにはどうしても無頓着になってくる。極端なことを言えば、契約書面上に商品の名前と型番だけがある。これだけが、商品が介在しているというかすかな形跡という格好になってきたりもします。

こうなってくると、結果としてペーパー商法が横行いたします。そして、ある日、配当が止まって、被害が顕在化する。このパターンがいつも繰り返されているのがこの商法の実態でございます。豊田商事事件に始まり、安愚楽牧場が起こり、今回またジャパンライフが起こったということでございます。

以上からしますと、現行法の不備は明らかではないかと思います。

さて、そこで翻りまして、現行法でございます。御承知のとおり、預託法がございます。ただし、規制対象は指定商品でございます。先ほど言ったとおり商材は何でもよろしいわけですから、指定商品制というのは基本的に被害を効率的に抑止することができないことは明らかでございます。

また、参入規制がございません。登録等はありませんので、入口での規制がかかっておりません。立入検査権とか報告徴求権等はありますけれども、そもそもどこでどういう業者がどういう商法をやっているのかということが、主務官庁も事前にはほとんど把握しておりません。では、どうやって把握するかといいますと、各地の消費者センターに被害申告が来て、初めて問題のある業者を認知するという格好でございます。

さらに、現行法では金商法がございます。金商法の集団投資スキームというのが、有価証券の一つとして規定されております。これはどういうものかといいますと、金銭等を出資し、出資を受けたファンドがこれで事業を営み、そしてそれに基づいて配当を出すという三つの要件で、法形式は問わないとされておりますので、広く網をかけられる立て付けにはなっております。

こちらには登録制があり、恒常的、継続的な監督権限も整備されておりますし、あるいは、先ほど申しました投資取引としての側面に則した行為規制も課せられております。

ただ問題は、金商法の集団投資スキームは、出資するのが原則として金銭とされております。その上で、施行令及び定義府令等で、金銭の類似物というのが定められてはおりますが、現行法では、物の拠出は競走用馬しか規定されておりません。先ほど申しましたとおり、預託商法は形式的には消費者に物を買わせて、その物を拠出するという形式を取りますので、したがって、条文を形式的判断すれば集団投資スキームには当たらないということになってしまいます。

もっとも、先ほど申しましたとおり、物の実在性、特定性は非常に希薄化しておりまして、極端なことを言えば、契約書面上の表示でしかございませんので、こういった実態を踏まえれば、実質的には金銭出資と同視できるという格好で、金商法の集団投資スキームに該当するという判断も法解釈上は可能ではございます。

また、裁判実務でも、そのような判断をして、預託商法につき金商法の集団投資スキームに当たるという判断を下した裁判例があることも承知はしております。ただし、これは、お金の流れといったものを精査した上で、証拠を調べその他の審理を通じて、実態的判断としてそういった認定ができるということでございまして、例えば、登録業務の段階でそういった踏み込んだ実態判断をして、その適否、金銭出資による集団投資スキームに該当するか否かを判断できるかというと、これは実務上、困難が伴うだろうというところは容易に想定されるところでございます。

したがいまして、整理いたしますと、現行法では預託法がある。しかし、先ほど申し上げたとおり、指定商品制であり参入規制もなく、恒常的なモニタリングもない。そして、業務停止等の権限はございますけれども、破産申立権限等の強力な規制は付与されておりません。

金商法につきましては、登録制を前提とした恒常的なモニタリングはありますし、行為規制についても定められてはおりますし、破産申立権限もあるということではございますが、先ほど申し上げましたように物の出資については競走用馬に限られているという、こういった条項があるために、集団投資スキームに当たるということが実務上、解釈論としてはあり得るところではありますが、行政の登録業務として、それがそのままやれるかというと、非常に困難が伴うといった問題があるというところです。

今のところを踏まえまして、では、どういう規制が必要なのかというところでございます。まず、どういった形態の取引を規制対象とすべきか。預託商法はいろいろございますけれども、先ほど申しましたようなペーパー商法が横行しがちな形態は、すなわち消費者がもともと保有している物を預かるのではなくて、消費者に物を買わせて、それを預かる。預かることを前提に、不要不急な物を買わせるという、販売と預託・拠出が一体化した形態です。このような取引は、やはりペーパー商法の潜在的危険性が非常に大きいということで、この形態の取引を規制対象とすべきであるというのが当連合会の意見です。

このような販売・預託一体型を規制対象とすることで、従来型の集団投資スキームとの整合性も図れます。例えば、お金を出資して、それで牛を肥育して配当を出すということであれば、現金出資でございますので、これは集団投資スキームに当たります。そこを、牛を買ったことにして、その牛を預かるという形態にすることで、金商法のスキームから形式的に外れるというのが預託商法でございます。

しかし、その形態の違いがあるとしても、消費者の要保護性といった点は何ら変わるところはありません。

そうしますと、従来の集団投資スキームとの整合性からいっても、物の販売と拠出とが一体化したような形を規制対象とするのがより整合的であろうということです。

それから、物の実在が問題なのであれば、そこを何か端的に要件に取り込めないかという考え方もあり得ましょうが、物というのは出入りもございますし、その確認は実務的には難しいところがあります。

例えば、牧場へ行って牛を1頭ずつ数えるのかといった実務上の問題もございます。更に言えば、預託商法といっても、はなからペーパー商法という形態よりも、アリバイ的にそれなりの物は持っていたりもするのです。そうしますと、物の実在等に着目して、参入規制の際の何らかの要件に組み込むという方向も考えられるわけでございますが、どこまで実効性を確保できるか。むしろ、ペーパー商法の危険性が潜在的に大きい取引類型として、より把握のしやすい販売と預託とが一体化した取引類型を規制対象とするのが効果的であろうというところでございます。

それでは、あるべき規制としてはどういったものが必要なのかと申しますと、先ほど申し上げましたとおり、恒常的なモニタリングが絶対に必要でございますので、その前提として、参入規制、登録制は絶対に必要不可欠であろうと思われます。

その上で、投資取引としての側面がございますので、それに則した行為規制が必要です。さらには、今回のジャパンライフの件でも明らかになったように破産申立て権限といったものが必要です。

このようなメニューが現行法に無いのかというと、既に金商法にはそれが全てメニューとして整備されております。更に言えば、実際の現行の預託商法が限りなく投資取引に近似しているということと、物の拠出というところが形式的な障害にはなっておりますが、これについて手当てをすることで、これを金商法の集団投資スキームに取り込むということで、先ほど申し上げましたような既存のメニューで相当効果的な被害抑止が期待できるというところでございます。

このような見地から、今回の意見の趣旨として、必要法令を改正して、金融商品取引法の集団投資スキームに、先ほど申し上げました物の販売とその拠出、預託が一体化した類型を取り込むということが意見の趣旨の1でございます。

その上で、意見の趣旨の2でございますけれども、ファンドと申しましてもいろいろな形態がございまして、出資した金銭等を預かって事業を行う事業型ファンドもあります。あるいは、有価証券等に投資する投資型ファンドもございます。

現在、50%超を有価証券に投資するという投資型ファンドにつきましては、投資運用業にも該当するということで、投資運用業の規制として、運用規制が課せられております。この内容を申しますと、忠実義務や善管注意義務あるいは自己取引等の禁止、分別保管、運用報告書の交付等が課せられております。

預託商法につきましては、先ほど申し上げましたとおりレンタル事業や牛の肥育などという事業型ファンドでございますので、原則として、投資型ファンドのような投資運用業の登録に基づく運用規制は課せられていないという格好になりますので、こちらにつきましても、法令を改正いたしまして、投資型ファンドと同様の運用規制を何らかの形で預託商法にも適用すべきであるというのが意見の趣旨の2(1)でございます。

さらに、リスク耐性のない消費者が不用意に高リスク商品の取得関係にさらされる機会そのもの等を制限することが、被害の抑止について一番効果的な方法でございます。預託商法が大規模な被害を繰り返してきたという歴史的経緯に鑑みまして、不招請勧誘の禁止の導入も必要であるというのが意見の趣旨2(2)でございます。

私からの説明は以上でございます。

○高委員長 ありがとうございました。

ただいまの説明に関しまして、御質問、御意見はございますでしょうか。

池本委員長代理、お願いします。

○池本委員長代理 御説明ありがとうございます。何点かにわたります。

まず、細かいところから先に一つ確認的な質問です。

意見書の6ページの中ほど、(4)の直前のところの文章で、一回的な処分により全面的な業務停止を可能とする制度が求められるのだというくだりがあります。これはジャパンライフの場合に、預託取引で業務停止をかけたら、業務提供誘引販売に契約形式を変えたり、その後はリースに変えたりということがあったので、契約形式で規制する預託法とか特商法とかの類型ではなくて、契約形式を問わず、金銭を出資あるいはそれに近い購入商品を拠出するという金融商品取引法で規律をすれば、これが事実上、達成できるという意味でお書きになっているという理解で良いのかどうかというのが一点です。

それから、今度は少し踏み込んだ質問です。意見書の記述の中ではっきりしないところの確認なのですが、集団投資スキームの商品がない状態、実体を伴わない状態になった以降は金銭拠出型と評価できるけれども、当初あるいはもくろみ段階で物品を購入して、それを拠出するとなると、購入商品預託型に当たる。そうだとすると、そこが現在、競走用馬だけであるのを広げるべきだという論理展開になっていると思うのですが、その場合、現在の商品預託法は指定商品になっていますね。そこの指定商品群を金融商品の競走用馬以外のところへ取り込めば、当面の問題は解決できるのか、それとも、そもそも指定商品制自体も廃止する必要があるのかどうか。そこについての御見解をお伺いしたい。

もう一点、これは資料2-3の一覧表でも触れていただいたところですが、日本弁護士連合会で2013年3月14日に意見書を出したときには、特定商品預託法の抜本的改正という提言でした。それを拝見したのですが、その中で、登録制あるいは破産の申立権とか、今回、金融商品取引法に取り込んだ場合の規制にかなり近いものが盛り込まれていたように思います。それを、特定商品預託法の抜本改正の再度の提案ではなくて、金融商品取引法に取り込むべきだというような判断をなさったというのはどの辺りにあるのかという点です。

最後にもう一点、金融商品取引法に取り込むべきだとした場合に、今ある預託法というのは不要だから廃止という理解なのか、それとも、何か純粋に商品を預託する取引ということを想定して、それも残しておく必要があろうという見方なのか、これは将来予測のことも入るのかもしれませんが、その辺りについて御意見をお伺いできればと思います。

特に後半の論点は、実態との兼ね合いもあるので、日本弁護士連合会あるいは弁護団いずれかからでも結構でございますので、お伺いできればと思います。

○高委員長 それでは、4点です。1番目は、契約形式に着目するのではなくて、このスキームそのものに着目して考えるのかという質問だったと思います。

2番目は、実質的に商品がない場合であれば、金銭拠出型で捉えられるのではないかという理解なのでしょうけれども、仮にその間に物品が入ってきたときには、たしかこの意見書の中では購入物品拠出型で捉えるほうでいくのか。その場合には、指定制ということをどう考えるのかという御質問だったと思います。

3番目、4番目がありますけれども、まず1番目、2番目からお願いします。

○日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長・愛知県弁護士会加藤弁護士 ありがとうございます。

意見書の6ページの一つ目の質問は、一回的な処分というところの御指摘だったかと思われます。

先ほど御指摘もございましたけれども、ジャパンライフにつきましては、預託法あるいは特商法の連鎖販売取引あるいは業務提供誘引販売といった契約類型に応じて、この契約類型の取引を停止しなさいといった処分がなされております。そうしますと、業者は、中身はほとんど変わらないのに、契約書の書面上を少しいじるだけで、これは前の契約とは違う、預託契約ではないのだと言って、それを強弁して事業を継続してしまうのです。

預託法も契約類型に着目した行為規制でございますので、そういった契約類型別の処分では、どうしても今回のジャパンライフのように確信的にやられる業者については必ずしも有効ではない。

例えば金商法ですと、先ほどの集団投資スキームは権利や法形式の種類を問わないという非常に包括的な規定になっております。そして、実際になされている処分も、例えば平成29年3月30日付で関東財務局がとある業者に対して業務停止をしているのですが、その業務停止の内容は、「金融商品取引業の全ての業務をいつまで停止せよ」という格好になっております。そうしますと、業者が、前のファンドとは違います、これは新しいファンドですと言っても、業務はできなくなるのです。一切の金融商品取引に係る業務ができなくなるといった処分が可能ですので、先ほど言ったような契約類型別で、やれ預託法はやめなさい、あるいは業務提供誘引販売はやめなさい、連鎖販売はやめなさいといった、いわばイタチごっこ的なことではなく、一発ですべての業務を止めることができるといった趣旨でございます。

その意味からも、金融商品取引法の集団投資スキームによる規制の方が、より実効性が高かろうという判断でございます。

二つ目の御質問ですけれども、金商法の集団投資スキームでは競走用馬しか指定されていないのであれば、今ある預託法の指定商品を追加して並べれば、それで良いのではないかという御指摘だと思います。

最初に申しましたとおり、預託商法では、商材は何でもいいのです。例えば、高齢者の方がパチスロ機を個人で持ってどうするのですかという話です。はっきり言えば、これは預託して利益を受けるということを離れて、80歳のおばあちゃんがパチスロ機を保持することに何ら合理的な意味もありません。

商材は何でも良いわけです。要するに、業者がセールストークで、今これはブームですよ、この商品については非常に需要があります、どんどん引き合いが来ていて、レンタル事業をやればこれだけの配当が出せますよ、というストーリーが成り立つような商材であれば何でもいいわけですので、そういった預託商法について、指定商品で対応するのは事実上、不可能だろうと判断しております。その意味からでも、指定商品性を前提としたような規制の枠組みでは、十分な規制は不可能だろういうのが当連合会の判断でございます。

○高委員長 あと2点が、かつての意見書の中では、預託法の改正ということで御意見を出されて、登録制それから破産申告権といったものを主務官庁に与えるべきだという御意見があったのですけれども、それを金商法に移された理由を教えていただきたい。

それと併せて、預託法を今後、どうすべきかというところをお願いできますか。

○日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長・愛知県弁護士会加藤弁護士 三つ目の御質問は従前の意見書との関係でございます。確かに従前の意見書は、預託法の規制強化という趣旨でございました。預託法に登録制を導入し、投資取引としての行為規制を導入する、破産申立権限を付与するという内容で、今回、我々の意見書で必要としているような規制を預託法に盛り込むべきだというのが従前の意見書の趣旨でした。

今回の意見では、預託法の規制強化ではなく、金融商品取引法の枠組みで規制をすべきだというのが御指摘のとおり大きな変更点でございます。

その理由としましては、例えば登録業務一つをとっても、関東財務局のホームページを見ますと、登録に必要な書類、書式がわっと出てきます。結構な大部でございます。業務方法書といったもので、具体的にこのようなファンドをこのような格好でこのような形態でやるのだというところを書いたものを上げさせる。そして、それについて事前のヒアリングから始まって、書面を審査して、問題点があれば指摘し、指導をし、実務として非常に手間が掛かります。預託法を強化した場合に、果たして主務官庁である消費者庁にそのような膨大な事務作業が可能なのかというところです。

さらに、金商法でいきますと、毎年事業報告書というものを業者から徴求します。これについては、例えば今年度にどれだけ募集があったかとか、あるいは残高の推移がこうなっていますとか、そういったところも挙げさせます。そういう情報を年度毎に収集しながら、履歴や推移を見て、ここはおかしくないかというところを把握しています。そして、財務局は証券取引等監視委員会から権限委譲された検査部局を持っております。そこには金融検査官という専門職がおられまして、チームを組んで、今年はこういったところへ検査に入ろう。今度はこういった業者をやろうといった検討作業をして、恒常的なモニタリングと併せて異常を感知したときには、立ち入り検査を行うという業務をしております。

それだけの業務が、消費者庁の今の人的パワーで果たして可能なのだろうかという点については、疑問を持たざるを得ないところです。真に実効性のある規制ということでいきますと、登録制であったり、それに基づく恒常的なモニタリングといった業務は、実際にやってもらわないと意味がないわけで、権限はあるけども十分にやれないというのではどうしようもない。そういう点で、預託法の強化では限界があると判断せざるを得ません。

実際に、財務局は常日頃からそういう立入検査をやっております。第二種金融商品取引業者、いわゆるファンド業者はここに含まれますが、立入検査に入った件数は年間200件ぐらいです。ここのところ少し減って、100件ぐらいにはなっているのですけれども、非常に実績もございます。そして更に、検査結果に基づいた緊急差止め命令や破産申立てについても経験がございます。そういったスキルを持っているところというと、消費者庁よりは財務局、金融庁なのだろうということで、預託法の規制強化ではなく、被害の実効性のある抑止という点を勘案して、今回は金融商品取引法への取込という方法を提言させていただいた次第です。

最後の御質問は預託法を今後どうするのかというところでございます。今回の意見書は、先ほど申し上げましたとおり、販売と預託が一体化した類型、これを金商法の集団投資スキームに取り込むのだという格好になりますので、もともと消費者が持っている物を業者に預託して、利益を得るといった形態のものについては、金商法には取り込まれません。では、この部分をどうするかというところでございます。そういった取引が実際に消費者被害を生む可能性があるのかといいますと、現行では、美術品の収蔵家が収蔵している美術品を美術館に預託して、お金をもらうというような契約はあるようなのですけれども、大規模な消費者被害を生むような潜在的危険性があるかというと、現状のところではそれは乏しいのではないかと考えております。

そうしたときに、販売・預託一体型以外の、消費者がもともと持っている物を預託するという形態の取引のみを規制対象とする預託法、これをどうするかというのは、確かに課題としてあると思います。

ただ一つ言えるのは、現状では、消費者被害を生じさせるような商法が想定し得ないというところはありますが、例えば将来的にネットのマッチングサービスといったところで、消費者個人が自分の持っている資産を遊休時間に貸し出して、何らかの利益を得る。そういったシステムを作ることが、現状ではコストが掛かってできないということなのですけれども、そういったものがネットの技術などで簡単にできるようになって、何らかのビジネスモデルができるような可能性がないわけではないと思います。そうした場合に、そういった取引について何も規制がないという状況にしておくのが良いのか、それとも、現行の預託法の枠組みが少なくともあって、これで何らかの規制の取っ掛かりがあるといった状態を残した方が良いのかといったところでは、いろいろな判断があるところだと思います。

○高委員長 ありがとうございました。

私からも質問させていただいてよろしいですか。

随分いろいろな議論がこの中に入っているので、素人的な質問ですが、いろいろとお聞きしたく思います。

まず、3ページのところに集団投資スキームの類型ということで、三つ書かれていますね。下に「類型としては」ということで、金銭拠出型集団投資スキーム。2番目が有価証券拠出型集団投資スキーム。3番目が購入物品拠出型集団投資スキームの三つである。

商品を介在はしているのだけれども、それをすぐに預託するというもので、実態としてはないというものについては、確かに金銭拠出型と同じだと解釈して良いかなと思うのですけれども、この意見書は、結局、3番目のところの集団投資スキームの中で考えるべきではないか。そうすると、4ページに投資ファンド型と事業ファンド型の二つに分けて説明されていて、分かりにくいのですけれども、集団投資スキームそのものにすれば、登録制が可能であると説明されています。ここにいう登録制とは、あくまでも売り出しとか募集の段階に限った登録という話なのでしょうか。これが最初に聞きたいことです。

そして、仮に購入物品拠出型、いわゆる事業型になった場合には、投資型ファンドと事業型ファンドの説明が下の方に書いておりますけれども、投資型ファンドの場合には、投資運用業について登録が必要であるけれども、もう一方の事業型のものについては不要であるという説明があります。少し分かりにくいので、ここは、かみ砕いて説明をしていただけませんでしょうか。

○日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長・愛知県弁護士会加藤弁護士 御質問ありがとうございます。

3ページのところで御指摘がございました類型としての金銭拠出型、有価証券拠出型、購入物品拠出型ですけれども、先ほど申しましたとおり、集団投資スキームは三つの要件です。金銭等を拠出、出資する。そして、それに基づいて事業を行う。それでもって配当等を行うといった三つの要件でございます。

今、申し上げた類型の三つは、最初に拠出、出資する物が何であるか。原則、金銭です。更に施行例で、金銭に類する物として有価証券等が定められています。さらに、定義府令をもって、物として競走用馬が規定されているということです。

何を拠出するかというところの簡単な類型として、講学上の概念として金銭出資型、有価証券出資型、購入物品拠出型という整理をしているところでございます。

私の説明が拙かったところもあると思うのですけれども、形式的に解釈する以上は、物の拠出型は現行法では競走用馬だけなのです。預託商法は先ほど申しましたとおり、形式的には物を出すわけです。そうしますと、競走用馬ではないので、これは当たらないというのが形式的な条文解釈からするとそうなります。

ところが、実質を見ますと、物の拠出とはされていても実際には契約書に書かれた番号でしかないといったものについては、現行法であっても金銭出資と同視し得るという格好で、集団投資スキームに当たるという解釈が可能だという話ではございますが、それでは、それをもって登録業務ができるのか。預託商法では物の預託と契約書に書いてあるのですね。要するに、健康器具を買ってもらって、それを預けるという預託契約。うちはこのようなスキームでやりますといったときに、これは実質的には金銭出資と同視できるから登録が要るのだというのが事前の判断として可能かどうかというところで、それは無理だろうと。そうであるならば、競走用馬に限られている物を広げて、物の販売と拠出が一体化している場合について全て取り込むということを明示して、集団投資スキームに当たることを明確化せよというのが意見の趣旨でございます。

あと、事業型と投資型ファンドの違いですけれども、これは先ほど申し上げた3要件の二つ目です。出資した物を受けて行う事業の内容が、いわゆる牛の肥育であったり、レンタル事業という実業であれば事業型ファンドということになり、あるいは金銭出資を受けたものを有価証券に投資するといったものについては、投資型ファンドになるという格好になっています。

投資型ファンドは、先ほど言ったような運用規制がかかっているのですけれども、事業型ファンドは現行法では運用規制がかかっておりませんので、預託商法の販売・拠出一体型の類型については、事業型ファンドであっても運用規制を課すべきであるというのが意見の趣旨の2でございます。

○高委員長 そうすると、2番目のところはかなり大きな改定を求めなければいけないような内容になってくるという解釈で良いですね。

○日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長・愛知県弁護士会加藤弁護士 そうですね。こちらは、投資運用業の登録も要るという規定になっておりますので、販売・拠出一体型の類型も投資運用業の登録を要するということを書き加えることによって、可能ではないかと思っております。

○高委員長 他にございますでしょうか。

大森委員、どうぞ。

○大森委員 御丁寧な説明をいただいて、どうして預託法の改正ではなくて金融商品取引法で規制していかなければいけないのかという事情はとてもよく分かりました。

預託法なのですけれども、おっしゃったようにマッチングビジネスとかシェアリングエコノミーとか、新しい事業を展開する可能性があったときに、指定商品性が残るというのは、被害の後追いにならないのかなと思うのですが、その辺りはいかがでしょうか。

○高委員長 預託法についてですね。

○大森委員 はい。

○日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長・愛知県弁護士会加藤弁護士 預託法を残すという判断をした場合の前提の御質問でしょうけれども、その場合でも、指定商品制というのは有効な規制ではないだろうとは思っております。

それでは、指定商品を外した場合にどういう限定をかけるのかというところは、これはこれでなかなか議論のあるところではないかと思います。

○高委員長 他にございますか。

増田委員、どうぞ。

○増田委員 現場からの非常に素人の質問なのですが、お金を払って、レンタルによって配当を得るようなケース。事業者側からすると、商品を販売するという営業行為と、レンタルオーナーを見つけるという営業行為の二つをやらなくてはいけなくて、そんなにもうかるのであれば、レンタルオーナーを自分で見つけて、貸して、もうければ良いのではないかと思うわけです。

そう考えれば、一体型のものについては、そもそも禁止すべきではないかとは思うのですが、それはできないことなのでしょうか。他に何かそれを禁止することのデメリットがあるのでしょうか。

○日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長・愛知県弁護士会加藤弁護士 確かにおっしゃるとおり、これまで大きな消費者被害を生んでいるのはいずれも預託商法なのです。豊田商事もそうですし、安愚楽もそうですし、ジャパンライフもそうですし、被害金額でいえば御三家でございます。この御三家がいずれも預託商法だというところを重視しますと、販売と預託が一体化したようないわゆる預託商法については、全面禁止という御意見も有り得るところであろうとは思います。

実際にそのような意見も、会内では議論されたこともございます。ただし、例えば全面禁止をした場合に、それがアングラ化するといった懸念もあるところではございます。それは政策判断のところだろうと思います。全面禁止にした上で、アングラ化したものをどう拾い上げていくのかという方法でいくのか、それとも厳しい規制の枠をはめた上でコントロールしながら、被害が拡大、顕在化しないように適宜コントロールを行うといった規制の方向を選択するのかというのは、むしろ政策判断に近くなってくるところなのかもしれません。

ただし、こういった商法に何の意味があるのか。経済的合理性があるのかという辛辣な指摘が会内でもあったことは事実でございます。

○高委員長 よろしいですか。

○増田委員 はい。

○高委員長 蟹瀬委員、どうぞ。

○蟹瀬委員 ありがとうございました。

配当金のことなのですけれども、ジャパンライフは6%ということをお約束しての契約ですね。私は普通の消費者として考えたときに、先物取引、株式、この辺りは損をすることもあるという常識が、戦後、随分損をした人たちのおかげで一般にちゃんと流布されていて、確認されている。

そうしますと、今回6%の約束をしているということは、定期預金みたいなものと一緒で、金融商品取引にカバーされるべきだという感覚でずっと思ってはいたのです。なぜかというと、物を預けて、6%入りますよということは、預託している限りにおいては約束できないわけですね。そこを上手に言い丸めてだましていったという話の中で言えば、配当金を約束した時点で、金融商品として扱わなければいけないというような御説明を今日受けて、結構納得しました。今後、金融商品として、先物があり、株式があり、預託商品があるというような大きなカバーをしていただければ、一般の預託とはまた少し違って、消費者がもう少し気を付けるのではないかと思うのです。株式や先物は痛い目に遭っている人がいっぱいいますので、そういう意味での常識が働いてくるのではないかと、私はお話を聞きながら感じていました。

先ほどの指定商品というのがあったのですが、あれもなぜ馬だけかというと、負けるかもしれない、勝つかもしれないとお客様は分かっているわけですね。ですから、指定商品の中に入ってくるのだろうなと預託の中でも思うのですけれども、他のものは分からないですね。パチスロがどうなるのかとか、そういうものは全く分からないですね。ですから、常識の中にあって、これを預託することによってもうかるかもうからないか分からないという世界のものと、今回のジャパンライフは全く違うと思います。先ほどの金融商品として扱っていくという意見の中で、私たちが今、消費者委員会として何を進めていけば良いのか、お考えがあれば教えていただければと思います。

○高委員長 それでは、お二人から。

○全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会団長石戸谷弁護士 ありがとうございます。

そのとおりだと思います。運用リスクと信用リスクがありまして、物を預けて、それを運用して利益で配当しますという部分は、本来的には運用リスクを伴っているので、運用で成果が上がれば配当が来るし、上がらなければ配当はない。元本も毀損するかもしれないという、もともとそういうリスクがある性質である。

運用リスクをルール化しているのが金融商品取引法、投資取引の基本法ですね。ところが、ジャパンライフの場合は、そこを元本保証して、利回りも確定しているというところを投資の基本ルールでやっていないところに問題がある。もともと投資なのだから、投資のルールでやってくださいねというようにすべきであると思います。

出資法の問題は、持ち出すとややこしくなるのですけれども、もともと信用リスクはある。元本を保証して、配当しますと確約すると、運用リスクは上がっても、上がらなくても、とにかく配当しますと。それは潰れるリスクはあるので、信用リスクはある。信用リスクは非常に見えにくいというか分かりにくいという側面があって、元本保証して、出資をしてはいけないというのは本来の出資法なのですけれども、そこは先ほど申し上げたとおり、物が介入していると預り金にならない。もともと出資金をやってはいけないという出資法1条があるわけですから、預り金にならないというのは当然だと思うのです。だけれども今、それらを全部2条でやっているので、実態がないものだけ出資法でいきますとなっていて、信用リスクの紛らわしいところを防止するところが機能していないということであるので、もともと投資の実質を持ったものは投資のルールですっきりといくべきであろうと思っております。

預託法を残すかどうかの問題については、弁護団の連絡会議でも議論いたしましたが、残すべきでないという意見が圧倒的多数というか、ほぼ全員。というのは、金商法と預託法を並べて残した場合には、境界線上にあるようなケースが出てきたときに、どちらがやるのでしょうかという問題が生じて、お互いに、そちらがやれば良いのではないかということになりかねないし、ある部分でカバーできない問題が出てきたときに、どちらが責任を持って、どちらをいじるのですかという問題が生じかねないので、よろしくない。したがって、集団投資スキーム1本で行くべきであろうと考えております。

もともと法律というのは、立法事実があって、立法の必要性があって作るわけで、預託法は豊田商事の再発防止のために作ったということなので、新たなビジネスが出てきたら、新たなビジネスに対応するようなルールを考えるべきで、残すという論法は、順番が逆ではないかとも思いますので、そこはすっきりいくべきであると考えています。

○高委員長 ありがとうございました。

よろしいですか。

○日本弁護士連合会消費者問題対策委員会副委員長・愛知県弁護士会加藤弁護士 御質問ありがとうございました。

確かに御指摘いただいたとおりだと思います。預託商法は、正に実態として投資取引なのです。商材は何でも良くて、これをやると、このような配当ができますよという話がそれっぽく聞こえれば、皆さんやるのです。契約書上に書かれた商品名とか、型番とか、そのようなところはほとんど関心がございません。

こういった実態を踏まえると、投資取引としての規制で、その基本法である金融商品取引法の土俵でやるのが実態にも則しているし、理論的にも則していると判断いたします。

○高委員長 ありがとうございました。

他によろしいでしょうか。

池本委員長代理、どうぞ。

○池本委員長代理 これは、石戸谷弁護士からの報告のところで出ていた、以前に消費者庁で破産申立権の検討をされた。一定の方向性と、更に検討をすべきという提言が出たけれども、そのままになっているということに関して質問したいと思います。

今回のジャパンライフが非常に象徴的ではあるのですが、連鎖販売取引であったり、業務提供誘引販売取引であったりという契約形式を変えれば、他もできるし、業務提供誘引販売取引、連鎖販売取引あるいは訪問販売だとすると、金融商品取引法に取り込むわけにはいかないので、むしろ特定商取引法という世界で対処する。しかし、そこには破産申立権はないという状況があります。

以前の議論は、どの辺りまで進んで、何が検討課題でそのままになっているのかという辺り、何かヒントを教えていただければと思います。

○全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会団長石戸谷弁護士 これは消費者庁でまとめたものでして、資料になっているので、現物を当たっていただくと良いのですけれども、金融庁の破産申立てなども例に挙げているのですが、そちらは登録制であるし、行為規制と性質が違うのではないかとか、破産申立てまで、生殺与奪の権利まではどうかとか、いろいろなことが挙げられているので、どの範囲で、どういうものに対して破産申立権を認めるべきかみたいなものを詰めないといけないのかなと思っております。

その後、特商法の分野でいくと、大変深刻だなと思うのは、行政処分を受けて、業務停止処分を受けたのだけれども、業務停止によって非常に財務状況が苦しくなった。処分が明けた段階で、挽回のためにかえって詐欺行為に走ってしまって、警察が摘発して、刑事事件になっている。これは本来の行政処分の目的に反するような結果になっているわけですね。行政処分して健全化するはずが、かえって悪質に輪を掛けたような事態。それがたまたま一件だけではないように見受けられるので、行政処分として果たしていたような目的が達せられないような事態があるということを踏まえた上で、検討をお願いしたいと思います。

どういう類型にという場合は、参考になるのは、今回のものもそうなのですけれども、行政処分を受けてしまったようなもの。行政処分を受けてやれば、いろいろ調査をやるわけですから、どの程度悪質で、どの程度債務超過が解消できるのかというのは材料が具体的に入るわけですからわかるわけで、一般的に全部認めてくれということではもちろんないにしても、ある程度、類型として線引きもできるのではないかと思います。

○高委員長 他によろしいですか。

ありがとうございました。

まだまだいろいろとお聞きしたいところはあるのですけれども、大体意見書の全体像が見えてきたように思っております。整理させていただきますと、現行の預託法の問題点を整理していただいて、4点ぐらいにまとめられるのかと思います。1番目は、規制が政令指定商品にしか及ばないという御指摘がありました。2番目は、参入規制が導入されていない、登録制がないということ。3番目が、主務官庁に対する業者による定期的な報告義務がない。4番目が、主務官庁に破産申立権限がないこと。これが現在の預託法の問題であるということでした。

これに対して、そもそも今回、問題となった預託商法、特に豊田商事、安愚楽それからジャパンライフに共通するところとしておっしゃっていたのは、これは集団投資スキームと変わらないということ。投資スキームを定義すれば、まず金銭などの拠出がある。事業などの実施がある。それから、配当などの分配がある。だから、これはぴったり集団投資スキームの中に入るのではないかということでした。

もしそこに位置付けられるとするならば、登録制、恒常的なモニタリングも可能になるし、行為規制もかけることができるし、破産申立権限が与えられることになるから、合理的ではないか。

このように整理できるかと思うのですけれども、若干うがった考え方をすると、悪質業者はわざわざ自分が集団投資スキームに乗るビジネスをやっておりますと言って、積極的に自分から登録してくることはないのではないかと思います。もちろん、法律の整理としてはそうでしょうけれども、二重、三重のいろいろな方法、迂回をさせながら、間に物をかますことも考えてくるのかなということも感じまして、先ほど、預託法そのものをどうするのかというときに、これは必要ないのではないかという御意見もいただきましたけれども、そういったいろいろな抜け道を考えることも想定しておく必要があると思います。適切な例かどうかは分かりませんけれども、例えば、風適法という法律がございまして、パチンコホールでは、現金や有価証券を提供することはできない。でも、三点方式という仕組みを作って、要するに、特殊景品を買取り業者に売って、その買取り業者が問屋に売却して、問屋からまたホールが買い戻すというように、他の業界においても、いろいろなことを考えてくるのではないかと思います。もちろん、金商法の問題としても検討しなければなりませんが、それと併せ、預託法をどうするのかということも含めて、今後、議論を進めていきたいと思っております。

規制全体としてどういう方向で行くのかということを、今日いただきました御提言や意見の内容を踏まえて、議論を先に進めさせていただきます。

本日、御出席いただきました太田弁護士、加藤弁護士、また、引き続き御同席いただきました石戸谷弁護士、永田弁護士、中根弁護士におかれましては、お忙しいところ、審議に御協力いただきまして、まことにありがとうございました。御礼を申し上げます。

それでは、御退席いただけますでしょうか。

(全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会、日本弁護士連合会退席)


≪4.閉会≫

○高委員長 本日の議題は以上になります。

最後に、事務局より今後の予定について説明をお願いいたします。

○坂田参事官 次回の本会議は、日程が決まり次第、委員会ホームページにおいてお知らせいたします。

以上でございます。

○高委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところ、御参集いただきまして、ありがとうございました。

(以上)