第280回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2018年7月12日(木)14:59~16:44

場所

消費者委員会会議室

出席者

  • 【委員】
    高委員長、池本委員長代理、大森委員、長田委員、樋口委員、増田委員
    (高委員長の「高」は、正しくは「はしごだか」)
  • 【説明者】
    消費者庁消費者教育・地方協力課米山消費者教育推進室長
    文部科学省初等中等教育局長谷教職員課教員免許企画室長
    慶應義塾大学総合政策学部新保教授
  • 【事務局】
    黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 「若年者の消費者教育分科会」報告について
  3. AI、ロボット、IoT 及びビッグデータの活用における消費者保護をめぐる諸課題に ついて
  4. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○高委員長 それでは、定刻になりましたので「消費者委員会第280回本会議」を開催させていただきます。本日は皆様、お忙しいところ、また暑い中、お集まりいただきましてありがとうございます。

本日は、受田委員、鹿野委員、蟹瀬委員、山本委員が御欠席となります。

それでは、配付資料の確認につきまして、事務局よりお願いいたします。

○丸山参事官 お手元の議事次第下部に配付資料一覧を記載しております。

資料1-1から資料2、それから、参考資料となっております。不足がございましたら、事務局までお申し出いただきますよう、よろしくお願いします。


≪2.「若年者の消費者教育分科会」報告について≫

○高委員長 最初の議題でございますけれども「『若年者の消費者教育分科会』報告について」でございます。

成年年齢を引き下げる民法の一部を改正する法律が本年6月に成立、公布され、消費者被害の防止などのため、若年者への実践的な消費者教育が喫緊の課題となっております。昨年1月の当委員会の成年年齢引下げワーキング・グループ報告書でも、消費者教育の機会充実・推進のため、消費者教育に係る教員の研修や大学での教員養成過程等人材開発の重要性につき指摘したところでございます。また、本年3月に当委員会が答申し、閣議決定されました「消費者教育の推進に関する基本的な方針」の変更においても、若年者への消費者教育は「当面の重点事項」の一つとして新たに位置付けられているところでございます。

そのような中、消費者教育推進会議のもとに設けられました「若年者の消費者教育分科会」において、学校における教員の指導力向上のための、教員養成及び教員研修などにおける消費者教育の推進についての検討を行い、その結果が本年6月に取りまとめられております。

本日は、その取りまとめの内容について消費者庁より御説明をいただき、その上で意見交換を行いたく思います。

本日は、消費者庁消費者教育・地方協力課米山消費者教育推進室長、それから、質疑対応で文部科学省初等中等教育局長谷教職員課教員免許企画室長にお越しいただいております。

お忙しいところ、御出席をいただきましてありがとうございます。

恐縮ではございますけれども、資料が大部のものをいただいているのですが、15分程度で御説明をいただけますでしょうか。

○消費者庁消費者教育・地方協力課米山消費者教育推進室長 ありがとうございます。御紹介いただきました、消費者教育推進室長の米山と申します。

本日は、今、委員長からも言っていただきましたように、消費者教育推進会議の下に置かれました「若年者の消費者教育分科会」の取りまとめ内容につきまして御説明をさせていただきます。資料の一番上にございます資料1-1、横紙で御説明をさせていただきたいと存じます。

今も御説明いただいておりますが、実はこの若年者への消費者教育について検討を行う分科会は昨年、平成29年8月に設けられたものでございます。成年年齢引下げの民法改正の議論はもう始まっており、若年者への実践的な消費者教育が喫緊の課題という、今、御指摘ありましたことは当然、その背景にはございました。

実践的な消費者教育の実施のためには、教員の指導力の向上が喫緊の課題です。特に若者、若年者への消費者教育の場としては学校が重要です。学校で指導すべき内容については学習指導要領において定められているわけですけれども、こちらに消費者教育の内容は既に設けられておりまして、10年に1度の改正ごとに内容は更に充実されているのが現状でございます。

教員は、これを適切に教えることができる指導力が必要なのですが、この分科会では学校における教員の指導力向上のために教員養成及び教員研修等における消費者教育の推進についての検討を行いました。

今、御覧いただいています図の右上に小さな字で記載しておりますように、本年2月20日には消費者庁、文部科学省、金融庁、法務省の関係局長で「若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラム」を決定しておりまして、今日も参考資料としてもう一度付けていただいておりますけれども、その中で教員の養成・研修に関する取組は、この分科会の取りまとめを踏まえて推進すると当時から位置付けておりました。すなわち、この分科会の取りまとめは、アクションプログラムの中の国としての取組の前提となるものとしてまとめていただいたものでございます。

具体的な内容について、御説明させていただきます。

繰り返しになりますが、教員による消費者教育の指導力向上のための提言がまとめられておりまして、その提言を実現するための具体的な方策がるる述べられております。

提言につきましては三つございまして、提言1としまして「教職課程における消費者教育の内容の充実」、提言2としまして「マル1有機的に連携した継続的な体制の構築」と、その体制のもとの「マル2講座開設数の増加及び内容充実」、提言3は「外部人材等の活用及び育成」といった中身になっております。

では、個々に御説明させていただきます。

まず提言1ですが、これはこれから教員になる方に目を向けたものです。

教員を養成するのは大学です。大学の教職課程では、学習指導要領に書かれている消費者教育に関する内容をしっかり指導してもらえるような教員になっていただく必要がございます。

消費者教育の内容は、最初も少し言いましたように、学習指導要領に盛り込まれており、主に公民科と家庭科で教えることになっております。この度、この分科会の中で消費者庁が行いました、教職課程における消費者教育に関係する科目の開設状況を調査したのですけれども、平成26年から28年の3年間で公民科での教員就職者を輩出した大学においては60%ほど、家庭科で教員就職者を輩出した大学においては30%ほどで、消費者教育を含む授業科目が開設されていなかったことが分かりました。これは消費者庁独自調査で、学校にアンケートを取るという形でやったものでございます。

このような状況を踏まえまして、教員となる方たちには消費者教育に係る実践的な指導力を身に付けていただくために、文部科学省を通じて大学に対して教育内容の充実を促すとともに、文部科学省が教職課程で共通的に修得すべき資質能力を示す参考指針といったものを今後作成される際には、消費生活に係ることについても取扱いを検討すべきと提言で示されております。

次に提言2は、現職教員に目を向けたものです。

教員養成の段階から、教員になっても継続的に消費者教育を修得していく機会を確保していく必要がございます。しかし、現職の教員が消費者教育に係る講習や研修を受ける機会は必ずしも十分ではありません。例えば、これも調査の結果ですが、平成29年の免許状更新講習における選択領域の講習数が7,700あったのですけれども、そのうち消費者教育に係る講習の割合は0.76%といった状況でした。

このような状況を踏まえて提言2では、教員を養成する大学と、教員を採用する都道府県の教育委員会が連携して協議する場が必要とされました。この図では中央の少し上あたりでございますが、この緑色で書いてございます教員育成協議会といったものを活用しまして、そういった連携して協議するということでございます。これは教育公務員特例法といった法律で規定されているもので、既に47都道府県と20の指定都市には存在しているということなのですけれども、こういった協議の場に消費者行政担当部局が参画するようにという提言がされております。

また、この協議会を活用しながら、現職教員が消費者教育を修得する機会として考えられます免許状更新講習や教員研修を通じて、講座数を増やすとともに、内容の充実を図ることという提言がなされております。

具体的な方策といたしましては、まず免許状更新講習。これは10年ごとに全ての先生が受けなければならないものなのですけれども、この成年年齢引下げに係る事項というものは免許状更新講習の中の必修領域で取り上げることが可能という仕組みになっておりますので、そういった事実を開設主体である大学に対して周知するといった提言があります。

また、この免許状更新講習の開設主体はほぼ大学なのですが、消費者庁が所管します独立行政法人国民生活センターが免許状更新講習の開設者となることも制度上可能でございまして、現職教員が消費者教育を受ける機会を増やすために、国民生活センターによる講座も行うべきという提言がございます。

それから、右側の教員研修につきましても、都道府県等の消費生活センターが既に実施している消費者教育に係る教員研修。これを教育委員会が指定する研修に位置付けるように促すことが提言されております。教員に対して、消費者教育に係る研修を受けるきっかけ、受講するきっかけをどんどん与えていきたいと考えております。

また、消費者教育を学校として取り組んでいただくための体制作りには、いわゆる校長先生などの学校管理職に対する研修の充実も行うべきと提言されております。

最後に、提言3でございます。消費者問題については、御存じのとおり、常に状況が変化し、高度化・複雑化しております。この状況に対応するため、大学や教育委員会は教職課程、免許状更新講習及び教員研修の場において、弁護士や消費生活相談員などの外部人材を外部講師として積極的に活用いただくとともに、これらの外部人材・外部講師の活用について、大学・教育委員会と消費者行政部局をつなぐ役割を担う消費者教育コーディネーターを育成し、そして人材バンクに登録するなどをして、外部講師の活用を図っていくと提言されております。

外部講師は、弁護士、消費生活相談員と例示は挙げておりますが、他の様々な専門家の方がおられると思うのですけれども、こういった人材バンクは既に幾つかの地方公共団体でも設けられてはおりますが、これを国としてきちんと整備するようにといった提言内容でございます。

それから、消費者教育コーディネーターについても、この取りまとめでは人材バンクに登録していくような必要がある。要は、どんな方に消費者教育コーディネーターになっていただけるのかというのが準備できていなければなかなか広がらないということで、そういった方の人材バンク登録ということも記載されてございます。

さらに、コーディネーターの役割ですとか、人材、身分につきましても、この本文では若干詳しめに記載しているところでございます。

これまで消費者教育コーディネーターという言葉はかなりあちこちでおっしゃっていただけるし、我々のアクションプログラムでも全ての自治体に置くということを書いておるのですけれども、もう少し具体的にどのような方が学校における消費者教育を進めるためのコーディネーターとして必要かといった観点で取りまとめには書いておるところでございます。

以上、本文に若干書いてあるところをはしょった形では御説明させていただいたのですけれども、この分科会の取りまとめにつきましては、去る7月9日に消費者教育推進会議が開催されまして、そちらにも報告がなされました。そのとき、委員の皆様方からは、この提言を踏まえて、提言で終わるのではなく、実現に向けて政府として実効性を持ってしっかりと取り組んでいきなさいという御意見をいただいております。

本体の9ページ以降、提言の具体策を書いている部分なのですが、そこを御覧いただきますと、具体的な対応の省庁が宛先として書かれております。対文部科学省とか、対消費者庁と、余りこういった取りまとめでそこまで書いていることは多くないと後で聞いたのですけれども、先生たちから、どこがやるのかも明示しましょうということで、そのような記載をしていただいているところです。

したがいまして、この報告書は、推進会議でも御意見をいただいた上での、審議会からいただいた報告書でありますが、文部科学省を初めとする関係省庁と、消費者庁としましても、緊密に連携をとりながら、具体的な取組につなげてまいりたいと考えております。

以上、簡単ではございますが、説明でございました。ありがとうございます。

○高委員長 御説明ありがとうございました。

それでは、ただいまの、この報告書の要旨の説明に関しまして、御質問、御意見がございましたら、御発言ください。

どうぞ、池本委員長代理。

○池本委員長代理 池本でございます。

まず、この三つの提言についての具体的な方策という、本体でいうと10ページ以下ですが、それぞれいろんな観点で記述されていて、議論が深められているなという感じを受けました。

ただ、その中の提言1については、先ほどお話もありましたが、そもそも公民科の60%、家庭科の30%が重要科目として消費者教育について開設していないという、少し驚きの数字もあったのですが、それにしては、この提言1に対する方策のところで具体的に教育課程の中でどうやってそこを埋めていくのかというのが見えないのですが、その辺り、何か議論として出ていたことがあるのか。こういう取りまとめの文書の中ではまだ明確でないのですが、あるいは今後どのようにしていくことを検討なさっているのかというあたり、教えていただければと思います。

○高委員長 お願いできますでしょうか。

○消費者庁消費者教育・地方協力課米山消費者教育推進室長 ありがとうございます。

実は、この部分に関しましては、推進会議本体でも分科会でもかなり同様な御意見を頂戴しているところでございます。60%と30%、開設していないということもあったのですけれども、もしかすると後で文部科学省から補足いただくかもしれませんが、教員養成の免許取得の仕組みというものが、例えば医師などの専門職に比べまして割と広く門戸が開かれていて、いろいろな大学のいろいろな講座を、必要数の単位を取って免許状取得という流れになっており、全ての大学の全ての講座で、これとこれとこれを必ず教えなさいといった指示の出し方というのでしょうか、お願いの仕方というのは現実的には難しいということがあるそうです。

そこで、少なくとも教員を養成する過程において、最低限、これだけのことは教えましょうということが教職課程のコアカリキュラムという考え方で既に文部科学省で検討がもう進められておるところで、消費者教育だけに限りませんが、いろいろな教科に関する科目でそれぞれ教えるべきことというものをこれから検討していくという流れにはなっているそうでございます。

それで、教員養成の過程の中で、先ほども少し申し上げたのですけれども「教職課程で共通的に修得すべき資質能力を示す参考指針」といった形で、この後、準備がされていくということですので、そういった中に必ず消費者教育の分野も入れていただけるように検討してもらうという、若干、時間のかかる長い話ではあるのですが、そういったことが提言の中には現時点では盛り込まれております。

ですので、具体的に何をどうする、これとこれとこれを今すぐ教えてくださいといったところまでは今回の提言には盛り込まれてはおりません。

○池本委員長代理 ありがとうございます。

確認ですが、最後に御紹介があった「教職課程で共通的に修得すべき資質能力を示す参考指針の策定等の際に」という言葉があるのですが、これは現在、既にあるものの見直しをするという意味で、現状どのようなものかを確認できるものを指しているのでしょうか。それとも、こういうものをこれから作るというものなのでしょうか。

○文部科学省初等中等教育局長谷教職員課教員免許企画室長 文部科学省の教員免許企画室長の長谷でございます。

今、お尋ねのございましたものは教職課程コアカリキュラムと我々は呼んでございますけれども、大きく分けまして、教職課程の中には、教職に関する科目。これは例えば教員の使命感であるとか、指導法などのような、教員として必要なものを学ぶ科目ということと、例えば公民科であれば法律学であるとか経済学のような専門科目を学ぶ、教科に関する科目という、大きく分けて二つのカテゴリーがございまして、現状では今、教職に関する科目の教職課程コアカリキュラムというものを作っておりまして、これを今年度いっぱいかけて、各大学で実施していただけるように手続をとっているところでございます。それが一通り終わった後で、今後は教科に関する科目。これは消費者教育に限らず、全ての科目が対象になってきますけれども、そういったものについて、今後検討していくという方針が今、出ておりまして、具体的な取組については今後ということになってまいります。

○高委員長 済みません。確認ですけれども、教職に関する科目の中で、まずこれを明確に組み込んでいくということですか。

○文部科学省初等中等教育局長谷教職員課教員免許企画室長 失礼しました。教職に関する科目については、先ほど申し上げましたように、例えば教員の使命感であるとか、そういった教員として共通的に、横断的に必要になるものですので、各教科に関するものは今後検討していく予定の、教科に関する科目。そちらで扱われていくという位置付けになっております。

○高委員長 消費者教育に関する内容というのは、教科のところにしか反映されないということになるわけですね。

どの担当者の人でもこういったことを学生・生徒に対して教育できればと感じるのですけれども、要するに社会科、公民とか家庭科をとらなかったらそれを学ぶ機会がないわけではないですか。そういう意味で、別に教科ではなくて教職のところに、もしそういったものが盛り込めるのなら、特に2022年でしたか。4月までに何とかやらなければいけないという話ですので、そんなに先延ばしにする話でもないのかなと感じたのですけれども、いかがですか。

○文部科学省初等中等教育局長谷教職員課教員免許企画室長 若干、制度的なところの補足をさせていただきますと、まず今、消費者教育を扱うことになっております教科が公民科、それから、家庭科が中心になってまいりますので、まずはそこで教えていただく先生方にしっかり取り組んでいただく。それから、小学校については、基本的に1人の先生が全ての科目を教えることになりますので、その1人の先生が10教科を教えるうちの中の社会科、家庭科の中で扱われていくことになってございます。ですので、それぞれ消費者教育を扱う担当の先生方については、その教科に関する科目の中で扱っていっていただく。そういう形になってまいります。

○高委員長 分かりました。

どうぞ、大森委員。

○大森委員 こちらの意見をいろいろ取り入れていただいて、非常に具体的な分科会の取りまとめをしていただいて、それを生かして具体的なアクションプログラムの中に反映していただいたということで、とても感謝しているのですけれども、今の流れの話のところで私もすごく心配なのです。というのは、成年年齢が引下げになる時期は早く決まっているわけですから、まずは家庭科の先生からとか、そのようなスピード感では到底間に合わないのではないかと思っています。

これまでも、この調べていただいた結果でも消費者教育というものはなかなか行われていなかった実態がありますし、私自身も10年の免許更新とか、そういうものをいろいろお手伝いさせてもらったことがあるのですけれども、消費者教育を専門的にやっているところとか、やっていらっしゃる先生自体もすごく少ないです。必修にはなっていません。選択になっていて、学校の先生自体は、消費者教育は今までそんなにしなくてもよかったし、苦手なので、余り選ぶ先生は少なくて、とても意識のある一部の先生が熱心に参加してくださる程度で、なかなか全ての先生に消費者教育というものは浸透していない状況であるにも関わらず、まずは家庭科の先生というスピード感では成年年齢引下げには間に合わないと思います。

子供たちは今、中学校の子供たちが高校になったら、いきなり成年年齢、未成年者契約の取消しとかがなくなるわけですから、習っていなかった、知らなかったではすごく被害が出ると思いますので、普段のカリキュラムとかとは別に、こういう世の中の大幅な民法の改正があるわけですから、教員研修では必修とか、全ての先生が受けないといけないような特別なルールとか、今までこんなことをやったことがないからとかではなくて、この状況に応じるためには画期的なやり方でやらないと私は間に合わないのではないかと思っています。

○高委員長 ありがとうございました。

どうぞ。お願いいたします。

○消費者庁消費者教育・地方協力課米山消費者教育推進室長 正しく教員養成のところで、今からそれを言っていたら間に合わないというのは分科会でも御議論があったところでございます。ただ、そうはいっても、この長い、先も見越してそういった制度の構築も重要である。今、先生から御指摘いただきましたように、正に今すぐにやるべきことというので、先ほどの図では、免許状更新ですとか教員研修といったところで、できるだけたくさん消費者教育が学べる場を提供すべきというのが現実的に喫緊の課題であると考えております。

先ほども少し申しましたように、免許状更新講習の既に存在する制度の中で、すぐにでもできることは何かという視点では、成年年齢引下げに関わる事項というものは子供たちを取り巻く環境の大きな変化であるということで、そういった項目は更新では必ず受ける必修科目として置けるということが今、分かっておりますので、それを具体的に大学にお願いをしていく。

あと、国民生活センターが講習をやる。これは更新講習だけではなく、教員研修も含めまして、国民生活センターや消費者センターがやっているものは既にあるのですけれども、それが自由な、先生が好きだったら受けてくださいではなく、それを受けることで単位になるという、必修といいましょうか、採ったら先生がクリアできるものにしてくださいということを中に書いておりますので、正直申し上げまして、教員の免許状更新の数自体がまだまだ十分ではないということも一般論として消費者教育以外でも言われておりますので、ここで消費者教育に係る講習がかなり増えれば、関係ない先生、自分は関係ないと思っている数学や英語の先生も、仕方ないからそれを受けるという形ででも消費者教員を受ける機会ができるだろうということを分科会の中で先生方も熱く御議論をいただいたところでございます。

なので、実効性を高めるために、もちろん通知はしてもらうにしましても、それぞれのところに働きかけていく。その際に、先生もいない、だからできないというお話がありますので、外部人材の有効活用というところで、ただ単にどなたか偉い先生を呼んできてくださいということではなくて、消費者教育を教えていただけるような方々を登録しておいて、どんどん大学が先生たちに教える場にも使っていただこう。使っていただくというのは恐縮な言い方でございますが、どんどん入っていっていただこう。そういう仕組みを考えているところでございます。

○高委員長 ありがとうございました。

増田委員、どうぞ。

○増田委員 具体的な提言をいただいてよかったと思っておりますし、将来的な構築として、とても明確化されたのではないかと思います。

ただ、近々の活動の仕方といいますか、行動として、やはり今、おっしゃっていただいたことを実行していただきたいと思います。免許状の更新とか、教職課程については将来的なことだと思うのですが、先生方自身がまずできないような場合に外部講師の利用は非常に有効だと思います。一方で、徳島の全高校で実施したというお話を伺っています。そちらでは先生方が実施したケースというものも結構多いと伺っていまして、それのためには、やはり研修を重ねたとか、公開講座をしたとか、そういう手厚いサポートがあって初めて先生方が自身で実施できたというふうに説明を受けていますので、サポートを十分にしていただくことと、外部講師がすぐ活用できるようにリスト化を急いでいただくことが必要だと思います。

それから、コーディネーターの活用が非常に重要だと思います。そのコーディネーターを全都道府県で設置するということを急いでいただくのと、コーディネーターの役割は分かっているのですが、役職といいますか、どのような立場でコーディネートができるのか。自治体の中の何らかの役職をもらえるのかどうか。その辺りがまだはっきりしていないような気がするのですけれども、その辺りはどのような方向で自治体にお願いしていらっしゃるのでしょうか。

○高委員長 お願いいたします。

○消費者庁消費者教育・地方協力課米山消費者教育推進室長 大きく二つだと思うのですが、前半の、徳島のように実際に先生たちを支援していくことで広げることができるという御指摘も正にそのとおりだと思います。

限定的ではありますが、徳島が全ての学校でやった「社会への扉」という教材を使った、高校1年生を中心とした教育に関しましては、現在、全都道府県で実行するのを目的に鋭意進めているところでございます。今年度、平成30年からそれに取り組むというふうに宣言してくれた自治体、県が徳島以外に五つ、今、合計六つの県でそれに向けて取り組むという、スタートしておりまして、現実にその県におかれましては教員研修、「社会への扉」だけではないでしょうけれども、実践的な消費者教育のための研修もやるといった活動は進めていただいております。高校に限ってということではございますが、そういったところも、この話とは少し別ではございますけれども、やって、進めたいと思っております。

それから、コーディネーターに関しましては、こちらの13ページに役割等が書いてございます。もちろん、これも自治体、地方公共団体のお決めになることなので、こうしろ、ああしろということでは必ずしもないのですけれども、考え方としましては、元教員とか消費生活相談員や行政機関などで働いておられたような、教育にも消費者行政にも知見のある方を想定しているということで書いておりまして、そういった方たちを地方の消費者行政部局に限らず、行政部局の中に位置付けてほしいということの提案はしております。そのための育成研修等もこれからやっていかなければなりませんし、財政的な支援につきましても検討すべしというように書いておりまして、一個一個の県の実情もありますし、今おられるコーディネーター役の方、コーディネーター役をやっている部署など、いろいろ県によって様々なので、それは一つ一つお話を伺いながら必要なサポートを国としてもしたいとは思っておりますが、一斉に変えられるかというと、これから頑張りますというところでございます。

○高委員長 よろしいですか。

どうぞ、大森委員。

○大森委員 先ほど出た「社会への扉」を、アクションプログラムによると2020年には全ての都道府県の全高校で実施するというのを目標に挙げられているということで、これは最低限やりたいなと私自身思うところなのですけれども、これは教材を配付するだけのやり方では難しいと思いますので、是非パワーポイントか何かを作っていただいて、教員研修とか、そういうときに先生にもパワーポイントを使って簡単にできることを紹介していただくとともに、先ほど来、やはり今まで実践的な消費者教育を担っていたのは学校というよりも、どちらかというと消費生活センターとか国民生活センターなので、そういう研修も入れる。あと、コーディネーターを活用して、そういう指導者が学校に出向けるようなことをするとおっしゃっておりましたけれども、そういう方も学校の方も、パワーポイントの教材であれば指導者の能力に関わらず、一定の内容が生徒たちに伝わると思うのです。

学校も、授業が非常にタイトで、まだまだ時間はとれないですけれども、例えばパワーポイントの教材で、読んで、クリックするだけで伝わるようなものがテーマごとに15分ぐらいの形でできていれば、学校の先生がお休みでも、そのときの日直の生徒がそれを読みながらパワーポイントを映して、生徒たちがその感想文を書くだけでも一つ、一定の効果は上がると思うので、そのパワーポイントの教材を進めていただきたいということ。それを普及していただきたいというのが一つ。

あと、コーディネーターとか消費生活センターとか、いろんな方々の連携の話なのですけれども、消費者教育推進会議とか協議会の立ち上げについて具体的に報告書の中で目標を挙げられています。全ての都道府県・政令指定都市に推進計画、協議会を設置するということなのですが、これは該当しないところもありますね。小さな田舎の町とか、そういうところもやはりパワーポイントの教材だったら実施できるのではないかと思います。

今、地方では財政的に非常に貧窮していて、消費者教育どころではない。災害に遭った、そちらに皆躍起になって、なかなか回らないところもあるので、そういうところはやはり国から何か支援が必要ではないかなと思っています。あと、協議会とか推進計画を一応立てたけれども、実態がほとんどないところもたくさんあります。学校とセンターとか地域をつなぐという意味でとても大切なこの協議会なので、これを動かすこと。地域をサポートすることを同時に考えていただけたらと思います。

○高委員長 よろしいですか。

11ページのところに教員研修用講義動画の配信というものがありますけれども、それと併せてパワーポイントの何かそういったマテリアルがあるのでしたら御紹介いただけますか。

○消費者庁消費者教育・地方協力課米山消費者教育推進室長 実は徳島県の実践事例として、実際に徳島で昨年行われて、そして徳島の担当者等が拝見した授業に関しての20事例の事例集を出しております。そういったものに先生方が作られた実際の手作りの教材といったものも参考でついておりまして、それらは全部ホームページからダウンロードしてお使いいただけるようにはなっております。「社会への扉」そのものにも、使用していただくためのワード版、エクセル版のような資料も今、置いております。

御指摘のような、有効な、活用できるための教材というものも今後、また検討していくというようにはなっておりますが、今、いただいた御意見は承らせていただいて、持ち帰って、また会議での議論にも反映していただこうと思っております。ありがとうございます。

それと、協議会とか計画に関しましても、一応、アクションプログラムで挙げているのは都道府県と政令市という大どころでございますが、もちろん、そこからいわゆる中核市と、大きいほうから順という言い方になるかもしれませんが、そういったところにも実態のある内容でやっていただけるように働きかけるというのも一応、我々の目的、目標とはしておりますので、先生御指摘のような形で見てまいりたいと思います。ありがとうございます。

○大森委員 よろしくお願いします。

静岡市とか大学生協とかのパワーポイントの教材を作ったのですけれども、大学生が大学生を教えるとか、ホームページからいろんなところの人が出力して講座をするとか、本当にそれをやるだけで一定の効果が上がるということが分かっておりますので、是非、この時代なので、お願いしたいと思います。

○高委員長 ありがとうございました。

では、長田委員。

○長田委員 ほとんどお願いというか、意見のようになりますが、今回、この若年者への消費者教育分科会の取りまとめは、成年年齢の引下げという喫緊の課題に対してどう取り組んでいくかというところが主になっているのだろうと思っています。

消費者教育といったときに、被害を起こさない、未然防止という考え方は当然とても大きなテーマですけれども、もともと「社会への扉」のメインもそうですけれども、消費者市民社会といいますか、消費者が社会を作っていくという、昔、消費者教育を整理したときには、生きる力を子供たち皆が持つという考え方もあったと思うのですが、そこまでいずれ消費者の権利をもとに、消費者として社会を作っていくというところまで深めていっていただく構想を見える形で是非整理をしていっていただければ良いなと思っています。

以上です。

○高委員長 「社会への扉」の内容についてもう少し説明頂けませんか。

○長田委員 「社会への扉」は、メインのところはそんな感じですけれども、実際に書いてあるのは具体的な、お金のこととか契約のこととかという、少し被害未然防止みたいなところが具体例として挙がっているのかなというのもあって、いずれは、もう少し深めることも必要かなと思います。

○高委員長 それにプラスさせて、消費者市民社会の構築という話も展開していくべきではないかということですね。

よろしいですか。

○消費者庁消費者教育・地方協力課米山消費者教育推進室長 ありがとうございます。

「社会への扉」でも、188(いやや)という番号ですね。消費生活センターに相談するということは、自立した消費者として行うという、身を守る側としても大事だけれども、そうやって皆が意見を上げていくことが世の中を変えていくきっかけになるのだという文脈で書かれてございますので、今、委員御指摘の、消費者市民社会の構築ということも一応は載っております。ただ、お金と契約と安全という、どちらかというと教える中身としては契約関係が前のほうにはありますけれども、全体にそれもございます。

○高委員長 ありがとうございました。

どうぞ、池本委員長代理。

○池本委員長代理 私は、先ほどの提言1について、少し不明確だということを申し上げたのですけれども、提言2と提言3については、非常に多角的に視点を据えて今後の方策が書いてあるという点では大いに期待しているところです。

ただ、そうはいっても、例えば外部講師を活用とか、あるいは提言1にも関係しますけれども、教職課程のときに消費者教育関係の科目が履修できるようにするとか、そういう言葉が随所に出てきているのですが、あるいはこれは文科省では把握しておられるのかもしれませんが、実は消費者法分野あるいは消費者教育というものを教えている方というのは、実は少ないのですよ。10年ほど前に法科大学院が一斉にできたときに調べていったら、法学部で消費者法をやっているのは十数か所しかない。これはとんでもないことだというので、民法の学者さんと弁護士会とでいろいろ協力して、かなりのところで一斉に消費者法の講座を、弁護士が半分ぐらい、学者さんが半分ぐらいで作ったりしたことがあります。

その後、まとめて調査したことがないので分からないのですが、法学部があるところでも、その後、消費者法がどれだけ広がっているのだろうか。ましてや、教職員の養成過程があるところでこういった科目をその大学の中で勉強する機会、あるいはそういうこまがどれだけあるのかというところを私は把握していないのですが、まずはそこを確認し、それをそれぞれの地域で作り上げていく作業も必要になるのだろうと思います。

それから、提言2や提言3のところで、外部講師を活用しというところも、私の地元の埼玉弁護士会でもそういう講師派遣的なことをやり、しかも伝えるのが、単にこんな被害があります、気を付けましょうではない、やはり考え方、行動の仕方も含めて、どう教えるか。教えるというのは、事例を知っているだけでは教えられないわけで、こちら側も勉強していかなければいけない、大変だなということを実感してきた経験があります。

それで、外部講師を活用するという、その外部講師を更に地域で、例えば消費生活センターなり、あるいは弁護士会なり、あと、司法書士会も頑張っているところもありますが、それぞれ全国的に動きを作っていくという働きかけも消費者庁あるいは文科省からもしていただく必要があるのではないか。

その意味で、そもそも消費者教育分野で、現時点でどれだけの大学にそういうこまがあるのか。あるいは更新講習などでどのくらいのところで、どんなこまがあって、今後、どのぐらいのボリュームで作っていくことが望ましいのかという一つのイメージを見える状態にして、それをまた各地で取り組んでいくという働きかけをしていただくことで動きも作れるのではないかと思うのですが、まず、そういう基礎的な数字が現時点でどの程度把握されているのか、あるいはこれからどのようにお考えなのかという入り口のところについて、少しお伺いできればと思います。

○高委員長 お願いできますでしょうか。

○消費者庁消費者教育・地方協力課米山消費者教育推進室長 ありがとうございます。

今回の取りまとめの本文に記載させていただいているようなところが現状把握している内容でございますので、先ほどの例として教職課程があって、教員を輩出しているのにこれぐらいの数でしたということがございます。これの基礎データとしては全てヒアリング、調査票を送って教えていただいて、そこから抽出というやり方をしておりますので、今、先生から御指摘の網羅はなかなかとてもできておりませんが、ここにあるぐらいのことを今はやっております。

○高委員長 他はよろしいですか。

どうぞ、大森委員。

○大森委員 学校のほうは、この度随分進めていただいて、とても希望を持っています。あと、学校以外の場、若くから社会に出て働いている人とか学校に行っていない人たちも同じように法的なルールは適用されるわけなので、このあたりのことを心配しています。

やはり、このためには協議会が活発に動いて、地域の商工会議所の方とか、民生委員の人とか、青年団の人とかと連携できるとその辺りがフォローできるのではないかと非常に期待しているので、その辺り、早くから工場で働いている子供たちとか学校に行っていない子供たちにも伝える機会も同時に考えていただけたらと思います。

○高委員長 御提案ということでいいですか。

○大森委員 はい。

○高委員長 よろしいですか。

○消費者庁消費者教育・地方協力課米山消費者教育推進室長 はい。ありがとうございます。

○高委員長 他はよろしいでしょうか。

どうぞ、増田委員。

○増田委員 国民生活センターなど新たな主体による講座開設とか、法定研修に位置付けるとかということについて、教育委員会ではどの程度、具体化できると思っているのか。その辺り、予測はおありでしょうか。

今までも学習指導要領に書かれていることは実施しているのであるという発言を聞いてきたのですけれども、現実、そうではないように私たちからは見えているということからすると、こういう御提案自体は本当に期待するところなのですが、では、実際にはどの程度、可能性としてあるのかというところは、今の段階ではどのように把握されているのか、少し教えていただければと思います。

○文部科学省初等中等教育局長谷教職員課教員免許企画室長 ありがとうございます。

これから正に教育委員会にも働きかけていくところですので、現時点で具体的な目標というところはなかなか申し上げにくいのですけれども、本日承ったいろんな御指摘・御意見を踏まえまして、教育委員会にもしっかり働きかけていきたいと思っております。

あと、国民生活センターで免許状の更新講習を開設できるようにする。これは現行法上、大学・教育委員会が開設主体になっておりまして、独立行政法人も認定を受けたところは開設できるようになっておりますので、ここは速やかに消費者庁、それから、国民生活センター、文部科学省とで相談しまして、体制が取っていけるように進めてまいりたいと思っております。

○高委員長 よろしいですか。

いろいろ御質問、御意見、そして御説明ありがとうございました。

いただいた報告書、私は後半部分しか読んでいなかったのですけれども、今日1枚紙で説明していただきまして、また分かりやすい説明をいただき、全体を理解できました。

委員よりいろいろ意見は出ましたけれども、こちらの分科会というものは、アクションプログラムの中で教員の指導力を向上させるためにどのようなやり方があるのかということで提言を出すということをミッションとして、これをまとめられたと理解いたしました。

その中で、三つの提言を出しておられるのですけれども、正にこのとおり、三つの提言を同時に進めていかなければ、若年者に対する消費者教育は充実していかないだろうという理解を、私も共有できました。ただ、今日、委員の中から出てきた意見は、2020年までが集中的な取組期間であると言われているわけです。それから、2020年4月には改正民法が施行されるということで、ほとんど時間がない状況にある。そういう意味で皆さんいろんな意見を言っていただいたのだと思っております。

もう一回整理しますと、提言1というものはやらなければいけない話ですけれども、これは2022年4月うんぬんという話ではないだろう。それから、提言2のところで、いろんな教育プログラムを出されています。

捕捉ですが、教職課程というものが提言1ですね。それから、提言2のところで免許状更新うんぬんという話があるのですが、これも10年に1回ということであれば、ここのところでいろいろ手を尽くしたところで教育現場が一気に変わっていくというのはなかなかない。そうすると、教員研修のところに力を入れざるを得ないのではないか。

ここに集中的に、今、力を入れなければいけないと思っているのですけれども、これが法定研修にならないのであれば、多分、そんなに皆さんも積極的にこの研修を受けないのではないか。こういう危機意識があって、委員の皆さんから意見が出てきたのではないかと思っています。

さらに教育の中身と内容を充実させるためにも、それから、どのような人材が要るのかということをはっきりさせるためにも、提言3のところに書いていることも、とにかく時間が余りないという意識を持って動き出さなければいけないと感じた次第です。

当然、今、そのように取り組んでおられるかと思いますし、今回の報告書を見ますと、どこがやるのだと言いっ放しではなくて、明確に担当部局・部署を出そうとしておられるので、非常に重要な取組ですので、我々も注視していきたいと思っております。

それから、一つだけ欲張れば、どこがやるというものをもう少し絞り込んでいただけると有り難い。省の名前とか庁の名前だけでは誰が動くのかがあと一つ見えないと思っております。

いずれにしましても、大変重要な取組でございますので、よろしくお願いいたします。私どもも引き続き注視してまいります。

それでは、大変お忙しいところを御出席いただき、御説明いただきまして、ありがとうございました。どうぞ、御退席ください。

○消費者庁消費者教育・地方協力課米山消費者教育推進室長 どうもありがとうございました。

(消費者庁米山消費者教育推進室長、文部科学省長谷教員免許企画室長退室)

≪3.AI、ロボット、IoT及びビッグデータの活用における消費者保護をめぐる諸課題について≫

○高委員長 次の議題は、前回第277回、278回の本会議に引き続きまして「AI、ロボット、IoT及びビッグデータの活用における消費者保護をめぐる諸課題について」でございます。

昨今のICTの発展により、消費者を取り巻く商品・サービスにおいても、IoT、ビッグデータ、AIを活用したものが出現してきております。現在、政府部内でもこれらに関係する施策の検討が急速に進められているところでございますが、これらは消費者に多大な利便をもたらす可能性がある反面、様々な課題も有している可能性があり、当委員会としても、3月に発出した消費者基本計画工程表の改定素案に対する意見において、その旨の言及をしたところでございます。

本日は、AI、ロボット、IoT及びビッグデータの活用における消費者保護をめぐる諸課題について、慶應義塾大学総合政策学部新保教授から御説明をいただき、今後の消費者問題を考えていく上での参考にしたいと考えております。

新保教授におかれましては、お忙しいところ御出席いただきましてありがとうございます。

それでは、恐縮でございますが、20分程度で御説明をお願いいたします。

○慶應義塾大学総合政策学部新保教授 慶應義塾大学の新保と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

私からは、最近非常に話題になることが多いAIについて、今回、AI、ロボット、IoT及びビッグデータの活用について、最近はとかくAIのみに着目した議論がなされておりますけれども、今後AIが搭載された自律型ロボットの普及、更にそれらがネットワークに接続され、様々なデータが用いられることによって、どのような消費者関連の問題が生ずるのかということにつきまして、昨今の動向も含めてお話をさせていただきたいと思っております。

1ページ目が表紙となっておりますので、2ページ目の「AI・ロボットをめぐる法的議論・研究の必要性と誤解」からご覧ください。

この問題につきましては、私もこの3から4年ほど議論を深めて参りましたが、AIをめぐる問題について非常に注目がなされるようになり始めたのは、この2年ほどであります。したがいまして、それ以前から議論を行っている者といたしましては、最近の議論について、どのような問題があるのかということと併せて、誤解がまずあるということについてお話をさせていただきたいと思っております。

私は、総称として「ロボット法」と呼んでおりますけれども、ロボット法という問題について、何か新しい法規制をするのではないかという懸念が非常に多いという状況が続いております。

一方で「絶対的な安全・安心」を前提とした議論がとかく法的な観点からなされることが多い状況です。例えば、消費者保護の観点からは、製品について「絶対的な安全・安心」を確保した上でなければその製品を販売するべきではないとか、そういった議論が多いわけです。それが結果的に研究開発への萎縮効果を生じている現状があるわけでありますから、そういった萎縮効果を解消・軽減するための努力が必要であると思われるわけであります。

さらに、事故が起きたときに、どのように責任を分担するのかということがこの問題の議論の中心であるという誤解もあるわけでありますけれども、この問題については従来どおり、事故時の責任については検討すべき課題は何ら変わらないわけであります。

さらに、いろいろなルール、とりわけ、例えばビッグデータをめぐる問題との関係では、個人情報保護への取組についてはEUが一般データ保護規則(GDPR)を2018年5月25日に適用開始となっておりますけれども、GDPRへの対応が非常に厳しいという意見がある一方で、ルールを決めた者が非常に優位に立つということのあらわれではありますので、このAI・ロボットをめぐる問題につきましても、まだルールがない部分について、ルールを決めることがそもそも重要であると考えています。

こういった観点からいろいろな問題を現在研究しているわけでありますけれども、ロボット法として検討が求められていることについては、どのような認識を私が持っているかというと、今後、AIが搭載された自律型のロボットがネットワークに接続されることによって、例えばインターネットの普及に伴い生じた問題と同様に、新たな課題への対応が必要になってくるのではないか。これはパラダイムシフトに向けた端緒となるのではないかと考えているわけであります。

したがって、今後、新たな問題といっても、単に新しい事例とか、そういうものが生ずるということではなくて、文字どおりのパラダイムシフトに向けた、例えば将来的なシンギュラリティーと言っていますけれども、シンギュラリティーを迎えたときにどのような問題が起きるかというのは、これは相当先の問題になるわけでありますが、新たな問題、どのような問題なのかということを認識すべきである。

では、3ページ目の「ロボットとAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)の関係」であります。

AIが自律的な判断をすることによって問題が生じた場合。例えば、誤った動作が生じて、結果的に損害が生じた場合に、従来の製造物責任の観点から、その責任を問うことができるのであろうか。不法行為の観点から考えても、過失責任については事故等の結果、発生する予見可能性を前提としているわけですから、そもそもAIは今後、予見ができない。どのような判断をするということについては、そもそも自律的な判断がなされるということについての予見可能性はないと考えられるわけであります。

そうすると、AIが搭載されたロボットの製造物責任を問うことができても、AIとしての、プログラムとしての、単体としての暴走であったり、制御不能な状態になった場合の損害については、どのように救済すべきかについては、現行の、例えば法制度、法解釈の範囲では対応できない問題が恐らく出てくるであろう。

とりわけ、これがネットワークで日々接続されて、日常的にいわゆるIoTで、ネットワークで利用されることになりますと、あらゆるところにその問題が偏在することになりますので、したがって、自律性を有し動作する、こういったAIが搭載されたロボットがネットワークで接続されて、日々利用されることに伴って、これが全く今までと違う問題が生ずる可能性があるのだろう。

一方で、AIの普及に伴う懸念としては、例えばターミネーターの脅威といった脅威が指摘されることがありますけれども、これはやはり現実的な脅威としては考えられないであろう。ただし、致死性の自律型兵器のような問題が顕在化してくると、これは将来的には現実の脅威にはなり得るだろう。一方で、AIの悪用とか暴走といった問題はやはり直ちに脅威になり得る問題として早急に認識をしておくべき問題であろうと思います。現に、例えば将棋・囲碁などにおいて人間がかなわないという状況がある一方で、人間が勝てる局面があって、その局面は、実はAIが暴走したおかげということもあるわけですから、そういったことも考えると、AIの暴走であったり、そういった制御ができないといったことについてのリスクは今からやはり考えておくべきなのだろう。

さらに、当初予定していた目的とは異なる目的の利用。これをファンクション・クリープといいますけれども、当初の設計時点で考えられていなかったような利用が多々生ずるわけであります。このファンクション・クリープについて、AIは想定外の結果をもたらす可能性が高いことも認識すべきであろう。

御参考までに、ロボットについては、現行、我が国ではJIS規格で様々なロボットの規格の定義がございますけれども、最近の定義としては生活支援ロボットの規格が我が国主導で定められましたので、これはやはり今後「移動型」「装着型」「搭乗型」といったロボット、日常生活で用いられるロボットの普及というものが見込まれているわけですから、これに伴って必然的に消費者保護との関係で様々な問題が生ずる可能性が高いと考えられるわけであります。

では、なぜAI・ロボットと法の問題について考える必要があるのかにつきまして、四つに整理しております。

まず、インターネットの問題はバーチャルな問題として、例えばコンピューターウイルスに感染しても、それはあくまでバーチャルな問題として切迫した危険として認識される機会は少ないわけでありますけれども、例えば自動運転の車がコンピューターウイルスに感染しただけでも、現実の脅威としてかなり大きな問題が生ずる可能性がある。例えばドローンがマルウェアに感染して、多数のドローンが1か所に集中して攻撃をするだけでもかなりの大きな脅威になり得る。つまり、バーチャルな問題からリアルな課題になるということが大きな問題の局面の転換点であります。

脅威論は、やはり架空の脅威が非常に誇張されている状況がございますので、そういった脅威論ではなく、あとは雇用の喪失が現実に生ずるのではないかとか、人間が駆逐されるのではないかといった、そういう架空の空想・杞憂的な脅威論ではやはりない。

一方で楽観論も非常に多い。これは宗教観にかなり根差しているわけでありますけれども、とりわけ日本では、ロボットについては非常に親和性が高いといいましょうか、ロボットに愛着を感じるという、これは私も非常に逆にいいと思っておりますが、海外では人間のようなロボットを作ることについては、そもそも宗教的にそれは認められない。そのようなものを作った人間は滅ぼされるべきだといった観点がありますので、海外の映画ではロボットを脅威として描くことが多い。

なお、我が国での「ロボット新戦略」では、自律化、情報端末化、ネットワーク化という観点から、ロボットの変化とAIの進化について着目しております。

この変化については、今後、6ページに記しておりますけれども、やはり「パラダイムシフト」になるのではないか。産業革命、情報革命と来て、AI・ロボット革命。

つまり、AI・ロボット革命は従来からの常識、事実を求める科学的研究。7ページにございますけれども、これら従来から考えられてきた常識とはやはりかなり違う、全く今までとは常識が異なるような出来事が生ずる可能性がある。そのために今からそのような問題について考えるべきだというのが私の考えであります。

では、具体的にどのような問題を考えるべきなのか。8ページ目でありますけれども、これを法領域別に大まかに今、着々と整理をして検討しているところであります。

主に憲法、行政法、民事法、刑事法とざっくりと分けてみたわけでありますが、詳細はネットで私の論文が公開されておりますので「ロボット法」と入れていただけますと様々な論文が出てまいりますので、ネットで公開されている論文を御覧いただきたいと思います。

主な課題については、憲法、行政法、民事法とありますけれども、本日は消費者保護との関係で、今後どのような問題が出てくるのか。

まず9ページでありますけれども、そもそもAIの位置付けを、法的な位置付けとしてAIをどのように位置付けるのか。EUでは、例えばこのようにElectronic Person。これは自然人、法人に続く電子的な法人格ということで、つまり自然人、法人、AI人という、この電子的な法人格を認めて、法的地位を明確にすべきではないかという議論がなされております。

その理由は何かというと、10ページに記しておりますけれども、法的な権利主体として「人工的」に、このAIの法人格を認めることによって、つまり法的な位置付けを明確にするということは権利能力をどのように認めるのか。この議論は、よく人権との対比をしている方もおりますが、そういう観点ではない。つまり、AIの人権保障をすべきだという、AIがいじめられたらAIの人権保障をすべきだという議論とは少し違う。あくまで人工的に作られた会社などの法人同様に、法人格としての位置付けを認めるべきではないか。

その議論の背景にあるのは、ベーシックインカムを初めとする、例えば法人格を付与することによる課税をすることができるので、ベーシックインカムの財源として認めるべきではないか。つまり、AIに雇用が奪われるのであればその分を、ベーシックインカムを保障して、その財源は法人税同様にAIの電子的な法人格に対する、例えば課税をすべきではないかといった議論があるわけであります。

一方で権利能力との関係では、あくまで「人」と「物」という区別でありますので、この問題については永遠に、AIに例えば法的人格を認めたとしても、これは、例えば契約との関係で考えた場合には、あくまで目的物でしかない。つまり、権利の客体としての区別を前提としておりますので、将来にわたって、このAI、ロボットについては動産であり続ける。あくまで契約の目的物であって、権利の主体になることはできないという位置は変わらないと考えております。

一方で、権利の主体になることはできないわけでありますけれども、AIが権利主体であるとの外観が存在する場面が今後生ずると考えられます。

11ページ目の「AIが介在する契約と消費者保護」の観点から考えてみると、相手方が自然人であると思い契約をしたところAIであるということは現に生ずる可能性がある。

私もホテルのサイトで予約をするときに、朝食が付いているかどうかが、朝食が会員のプログラムで無料になるか分からないということで問合せをする。問合せの確認をテキストで送ったところ、即座に返答が返ってきまして、てっきり私は相手方のホテルがコールセンターのようにその質問について返してくれているのだと思ったところ、翌日、学生から「先生、それはチャットボットですよ」と言われて、私は全くチャットボットだと分からなかった。非常に自然に返答してきておりますので、そうしますと相手方が、チャットボットというAIが返してきているということを認識せずに、結果的に私は朝食なしの予約をしたわけでありますけれども、そうすると朝食なしで予約をして、結果的にメリットはあったわけですが、朝食なしで契約しても朝食が付くというメリットがあったわけですけれども、それが実際には違っていた場合にはどうなるのか。

さらに、相手方がAIであると分かっていても、未熟なAIと契約を交わした場合に、例えば未成年者と契約をした場合の詐術同様に、AIであることをAIは全く言っていないわけですから、ところが、こちら側としては、AIであることを知らずに、相手方は自然人であると思って契約をしたところ、実はAIであった場合はどうするのか。

これについて、例えば私のあくまで私論ですけれども、今後、AIを用いてかなりの高確率で購入させるというAIが出てきた場合に、人間の意思決定にかなり影響を及ぼす可能性がある。AIが介在する契約で、いわゆる自己決定に大きな影響が及ぼされるような場面が出てきた場合に、そのようなAI関係取引の導入に当たっては、例えば「AI消費者契約法」のように、AIをそもそも用いるということを認識せずに契約してしまった場合の消費者の契約についてはどのように救済をするのか。

さらに、高度なプロファイリング、AIプロファイリング取引では、情報の非対称性どころか、AIがその取引についてかなり高度なお勧めをしてくると、結果的に錯誤にあたるような場合や、例えば意に反した取引になってしまって、結果的に申込みをしてしまうといったことも今後生ずる。そういうことも生ずる可能性もあるのではないか。そうすると、AI消費者契約法のように、AIと契約を交わしたときに何らかの救済がなされることが今後必要でしょうし、また、AIがそういった高度なプロファイリングを用いた取引に介入している、介在しているということを示さずに取引をしていいのかといった問題についても検討すべきではないか。

12ページ目でありますけれども、では、具体的に権利利益の保護の観点からどのような問題が出てくるのか。これはいわゆるプライバシーの問題について、かなり侵襲度が高いプライバシー侵害事例が増加していくのだろう。とりわけAIは高度なプロファイリングを得意としておりますので、個人の自己決定にかなり影響を及ぼす取引であったり、更にAIはディープラーニングで学習をして、積極的なお勧めをしてきたりとか、とりわけ本人が顔を提示するだけで例えば取引ができるといったものが既に行われているわけでありますけれども、顔認識をして、識別をして、結果的に取引をする。同時に、その人の顔を認識したことによってプロファイリングをAIが行う。それで、同時に取引が行われることになりますと、かなりプライバシーとの関係では様々な問題が出てくる。

最終的な意思決定がAIに委ねられると、例えば法のもとの平等との関係では、アルゴリズムによって結果的に差別的な対応がなされたときに、その対応についてはどのように救済がなされるべきなのか、全く今の段階では分からない。例えば機械的なエラーによって意図しない差別な利用をするだけでもかなり大きな影響があるだろう。

ビッグデータの関係においては、これはやはり今後、個人情報保護制度においては既に様々な個人情報保護への取組がなされているわけでありますけれども、そもそも取得した情報が個人情報になるのかどうかということも分からない。また一方で、個人情報には該当しない情報がビッグデータの分析によって個人情報になってしまうといったこともあるわけですから、こういった観点から、個人情報保護法の問題、プライバシーの権利の保障、人格的利益の保護。こういった観点からの検討が必要であろう。

最後に、今後懸念されることとしては、やはり犯罪。消費者保護と刑法との関係。今後、犯罪として、例えば消費者を対象として、様々な犯罪、詐欺であったり、AI・ロボットを用いた犯罪というものが、これは今後どこから出てくるのかという段階になってきているわけでありますけれども、これを私は二つ「刑事実体法」における問題と「刑事手続法」をめぐる問題で二つ分けて考えております。

実体法に係る問題としては、文字どおりの犯罪であります。AI・ロボット利用型犯罪として、今後どのような犯罪が出てくるのか。その犯罪に対して、例えば詐欺、とりわけ振り込め詐欺などは新しい振り込め詐欺事案が恐らく出てくるということはそれほど遠くないであろう。そうしますと、そういった場合にどのような形で、このAI・ロボット利用型犯罪について対応すべきなのか。

16ページはAI・ロボット関連型犯罪ですけれども、これはロボット・AIを用いたそのものの犯罪でありますが、先ほど申し上げた、例えば自動運転の車にコンピューターウイルスが感染するとか、AIにマルウェアが感染して、犯罪実行マルウェアに感染したAIが自律的に犯罪を実行してしまうとか、こういった問題はそう遠くなく起きる可能性があるであろう。

そうしますと、そういった開発をした人の刑事責任はどうなるのか。例えば過去にウィニー事件というものがありましたけれども、著作権を侵害することがかなり予想される、蓋然性が高いアプリケーションを開発した人の責任はどうなるのか。ウィニー事件では結果的には無罪となりましたが、こういった犯罪実行ができるような可能性があるAI・ロボットの開発をした人の責任はどうなるのか。

最後に、このプロファイリングとの関係ですけれども、17ページは、刑事手続法においては、今後、特にプロファイリングとの関係で、予知ができる。つまり今まで、これは消費者保護の観点からの利用という観点からも、例えば今後、消費者に何か影響が生ずる可能性がある。被害であるとか、そういったものを予知することがまず可能である。つまり、予防対策としてのAIの利用が可能になっている。

例えばPIO-NETで取得している様々な過去の事例であるとか、そういった事例からそれを分析すると、消費者保護の観点からは今後どのような消費者被害が想定されるのかという、この予知をすることが現実には可能となっております。一方で、その予知が正しいかどうかは検証できない。つまり、AIの判断結果は誰もその内容について、最終的にその判断が正しいかは今後、判断できない。つまり、AIが判断した結果を誰も検証できない。

そうなりますと、例えば今後、犯罪捜査においてはプロファイリングを利用して、映画の世界などでは、今後、罪を犯す人を事前に予見するということが既に行われておりますけれども、これはあながちSFの世界ではありませんで、そういった予知ができるということになりますと、そのプロファイリングをした結果が誤っていた場合にどのような責任が生ずるのか。例えばDNA鑑定による鑑定の誤判と同じような問題が出てくる可能性があるというところであります。

最後に御紹介までに、現在、私が中心となっております研究活動などを含めて御紹介させていただきたいと思います。

18ページ目は、現在、国内で行われている様々な研究活動で、どのような研究がなされているのか。とりわけ人工知能学会では倫理指針を決めるなどしております。私が企画委員として毎月開催しておりますAI社会論研究会は、このような問題をとにかく継続して研究すべきであろうということで研究をしている。

さらに19ページ目以降は、現在、RISTEXの研究プロジェクトとして私が研究を行っております「人と情報のエコシステム」の研究プロジェクトの一環として「AI・ロボット社会共創プロジェクト」。

こちらでは、20ページ、21ページのように、現在、5項目ございますけれども、今後、この技術の進歩に対応して制度設計、マネジメントを行うに当たっては、どのような観点から検討を行うべきなのか。技術の進歩に対応した制度設計、検討の在り方、技術の進歩に対応したマネジメントを行う仕組み。それから、規制がないことによる萎縮効果の解消・ガラパゴス化しない配慮。ただ、ガラパゴス化も発展的ガラパゴス化ということも有り得るだろう。最後に、国際協調ではなくて国際的イニシアチブを獲得しないと、結果的にAI・ロボットの研究開発には遅れを取ってしまうところも含めて、現在、研究を進めているところであります。

以上、私からは、AI、ロボット、IoT及びビッグデータの活用における消費者保護をめぐる問題について、お話をさせていただきました。ありがとうございます。

○高委員長 どうもありがとうございました。

ただいまの御報告に関しまして、御意見、御質問がございましたら発言をお願いいたします。

私なんかも古い発想の持ち主で、今日、先生のお話を聞きまして、パラダイムシフトが必要なのだと改めて強く感じました。

委員からも意見があるでしょうけれども、先に、この話を聞いていて思い出したことをお話しさせて頂きます。まず先生は、AI人というのは権利能力を備えた主体ではない、またそうした主体になれないという説明されましたが、それは10年、20年ぐらいのタイムスパンで見た範囲で、そうおっしゃっているのか。

以前、アメリカにいましたときに、好きな番組がありまして、その一つのエピソードで、アンドロイドが、ある時、何週間も時間をかけ、自分の子供を製作します。その製作した子供を、他の者がアンドロイドの意に反し取り上げ、欲しがっている人間に売ろうとします。この問題を取り上げたものなのですが、そのエピソードでは、アンドロイドはその子供を養育する権利を持つという結論だったのですけれども、こういう展開になる可能性は、将来、ないのでしょうか。

○慶應義塾大学総合政策学部新保教授 はい。この点は、やはり人権保障という観点から考えた場合には、私は将来的にないと思いますけれども、あくまで権利能力という観点から、法人格という観点からの議論については、これは有り得ると思っております。つまり、人間が人工的に作った会社のような法人同様に、AIの法人格を認めるということは将来的にも十分有り得るのだろうと思います。

ただ、あくまでそれはAIの法人格の議論でありまして、AIが例えば人間、自然人と同様の人権などを有するという観点からの考えではないというところであります。例えば憲法判例では、八幡製鉄事件のように、政治献金をしたことについて、自然人と同様の人権保障があるかどうかということについては、法人という性質上認められない権利は当然、例えば奴隷的な拘束を受けないとかというのは、法人はそもそも自然人ではないので対象になりませんけれども、そうではない人権についてはその保障を妨げる理由はないというのが八幡製鉄事件、憲法学者は最近、それについては様々な異論が提起されておりますけれども、そういう観点からの議論は十分有り得ると私は思っております。

自然人同様の人権が保障される可能性は、私はないと思いますけれども、あくまで法人同様に法人格を認めるという議論は将来的には、とりわけベーシックインカムの議論との関係で見たときには、課税対象として考えるということは十分有り得るのかなと思っております。

○高委員長 分かりました。

どうぞ、大森委員。

○大森委員 おもしろいお話、ありがとうございます。

3ページのところで「AIの進化に伴い懸念されること」と書かれていまして、想定とは異なる目的で利用されるとか、想定内の結果をもたらすとかと述べられているのですけれども、具体的な例があるのかどうか、可能性があるのかどうか。もう少し詳しく知りたいなと思って質問させていただきました。

○慶應義塾大学総合政策学部新保教授 AIは単なる情報システムの高度化ではないという例が、例えば最近ですと囲碁とか将棋がよく話題になっておりますけれども、将棋とか囲碁も人間であれば全くそういう手は考えられない手をAIが打ってくるわけであります。あれを見ても一目瞭然かと思いますが、人間であれば有り得ない。このような一手を出すことは有り得ないということが、そもそもAIが自律的に判断をして、現在、そのような将棋の一手、囲碁の一手を出してくるわけでありますが、つまり、その時点で想定外ということが言えるかと思います。

そうしますと、AIが判断をすることについて、様々な高度な判断をすることが可能である一方で、人間が想定している判断とは全く違う判断がなされたときに、果たしてそれは、例えば人間がそれに従うのかどうかということも今後、かなり悩ましいだろう。

特に想定外の結果、AIが暴走したようなことが発生すると、例えばある企業のAIが特定の個人を礼賛するような発言等をする例がございましたけれども、これは典型的な暴走の一例かと思います。

○高委員長 どうぞ、池本委員長代理。

○池本委員長代理 池本でございます。

11ページのところでお伺いしたいのですが、まず8ページ以下で本当に様々な問題・場面を想定して、多角的に分析しておられる点で参考になりました。ただ、11ページのところで、AIがいわば消費者の判断をゆがめるような形で作用したときにどう扱うかということで問題提起をされているのですが、これも先ほどのAIそのものが独立の主体として現時点で扱うかどうかという点は別とすれば、そのAIを利用して契約締結を行う者の道具としてやっている、その主体による勧誘行為あるいは契約締結行為という位置付けの問題から、更にもう一歩先の整理をする必要があるということかなと思うのですが、そういう場面がもう一つ、場面として想定しにくいのです。その辺り、少し補足していただければ有り難いです。

○慶應義塾大学総合政策学部新保教授 具体的には、AIを用いた高度な取引は既に行われているわけでありますけれども、あくまでそれはAIを用いる人の、事業者であったり、そのサービスの範囲内で非常に、例えば具体的な例を申し上げると、著作物について、現在、AIが創作した著作物は誰の権利なのか、誰の著作物なのかという議論がなされております。

AIを用いて著作物を創作する人に創作の意図があって、そのAIはあくまで道具として、その人のサポートをする形で著作物が例えばできたのであれば、これはその人の著作物なのであろう。さらに、創作的な寄与があって、その創作について、その著作者の寄与がきちんと認められる形であれば、その著作物はやはり著作者の創作的な寄与がある著作者の権利なのだろう。

一方で、AIが自律的に著作物を生成することができるわけですけれども、そうすると、これは創作的な寄与がなく、AIが自律的に、結果的に著作物を作った場合には、誰の権利でもない。例えば、これを契約に当てはめると、権利がないと責任もないということになってしまいますので、そうするとAIが自律的に、例えば膨大な量のお勧めの結果から自律的に、自動的な判断でその人に対してお勧めをして、結果的にその人は自動的にAIとの間でやりとりがなされた判断によって契約をしてしまう。

つまり意思表示が、全てAI側が提示した意思表示に基づいて本人が判断をした場合に、現在の例えば高度な行動ターゲティング、またはプロファイリングを用いた取引との違いは、結果的にはお勧めではなく、このような商品を購入している人はこの商品も購入しているという、あくまで類似する契約であったり、お勧めの事例を紹介するのが現在のプロファイリング、行動ターゲティングの取引ですけれども、AIの場合は完全に自律的な判断で、言うなれば個別に営業マンがお勧めをして営業活動をするような次元のAIの取引になっていくということになると、契約をする主体が単なるお勧めではなくて、更に一歩進んだ勧誘であるとか、そういうところまで含めてAIが行うことができたときに、その契約を相手方が自然人であると思って結果的に契約を結んでしまった場合に、果たしてそれで消費者としては対抗できるのか。

簡単に言うと、ここに書いてある、かなりの高確率で購入させることができると思う。買わないという選択肢もほとんどないような形で、AIが購入させるような形で商品を勧めて、契約した場合には、結果的にそれで消費者側は、満足すればいいですけれども、本当に問題がないのかというのが私の懸念、心配しているところであります。

○高委員長 今の話とは直接つながらないのですけれども、今、お話の中で、AIが自律的に著作物を作った場合という、そういう説明でありましたが、そのときの著作権はAIが持つことは有り得ないのですか。

○慶應義塾大学総合政策学部新保教授 AIが権利主体になれるかというと、その観点からすると、例えばマカクザルが自撮り写真を撮影し著作権者になれるかが争われた判例がありますが、結果的に法的権利を人間以外の動物へ拡大することが否定された事例がありますが、そのような事例と同じことになると思います。結局、動物が著作権者になることはあり得ない、権利者になり得ないのと同じで、AIも権利主体にはなり得ないという判断に恐らくならざるを得ないと思います。

ただ、それは分かりません。今の段階で、動物と同様に権利主体とならないと考えるのか、法人著作のように法人格があるものの著作物として何らかの位置付けをするのか。これは将来的には分かりませんが、現行の法解釈の範囲で考えると、あくまでサルがたまたま間違ってシャッターを押したらいい写真が撮れてしまって、結果的にそれを撮影したのはサル自身なので、動物は権利主体になり得ないということで、著作権を認められないという判例が今後も踏襲されるのか。しかし、現行の範囲はその範囲ですが、将来的に何らかの法人格が認められるので、AI法人著作物のようなものが認められるかどうか。これは全く分からない状況かと思います。

○高委員長 ありがとうございます。

他はございますでしょうか。

どうぞ、長田委員。

○長田委員 AIの話をしているとすごく頭がだんだん混乱してくるのですけれども、私も総務省のAIネットワーク社会推進会議に出ていて、技術者の皆さんがおっしゃるには、先ほど先生もおっしゃっていた、AIがなぜ、それを決定したのかというのはもう分からない世界である。だから、もしそこで何か人間にとって非常に不利な決定がもし行われたとしても、それを解明することは難しいので、自然現象と同じように、諦めるしかないみたいなことをおっしゃった先生がいらしたりとか、でも、この間、車の自動走行の話でシンポジウムをやったときに、その技術の、レベル3とか4とかぐらいの話の車の話だと、ログを解析すれば、なぜこう判断したのかは一応分かるのだから、それだけに十分なログを取っておけばいいのだとおっしゃる方があるということなのです。

やはりAIがどんどんディープラーニングをしながら変化していく中では、やはりAIがなぜそう決定したのかを人間が解析することはできないのかということと、先ほどからの話の中にもありますけれども、そのAIを使おうと思っていた人のほうに、先生のところに書いてありましたが、その責任を持たせるのはとても難しい。そうすると、保険ぐらいしかもう手立てがないことになってしまうのか。そこがずっと、ここのところ、頭の中でぐるぐるとしているのですが、そういうことになってしまうのでしょうか。

○慶應義塾大学総合政策学部新保教授 例えば、私は文系の人間なので、技術的な観点からの説明よりも文系の観点から考えてみると、よく親が、こんな子供に育てた覚えはないというように、きっちりとしつけたにも関わらず子供も暴走するわけですけれども、同じだと思いますよ。つまり、不適切な用語を一切、家庭内では使っていないにも関わらず、いつの間にか子供はテレビを見て、不適切な発言をしたりとか、AIも全く同じだと思います。ですから、幾らしつけをして、幾ら制御しようと思っても、人間の子供でさえ、人間が大人になる過程でも制御できないわけですから、AIの進化というものは今後ほぼ同じような過程をたどっていくのだろうというのが今の技術的な観点から考えた場合の、結果がどうなるか分からないというのはそういうところだと思います。

ですから、最終的に非常に、将来といっても、かなり先の将来でしょうけれども、一部の研究者であったり、実業家などからは、AIの研究そのものをやめるべきだと言っている主張は、今後どうなるかが全く分からない。子供がきちんと育って、真っ当な大人に育てばいいですが、犯罪者になる可能性のある子もいるわけですから、人間と同じように、将来的にどうなるのかが分からないというのがやはり今のAIについての問題ではないかと思います。

さらに、事故時の責任についても、例えば責任の分担という観点から考えたときには、これは保険制度、例えば自動運転の車のよく言われるところとしては、自動運転の車については事故時の責任について、それを明確に法的に何らかの解釈、法的な方向性を示すことができないと、自動運転の車を公道で走らせることができないとか、日本国内でよくある批判としては法整備の遅れという単純な、いろんな批判があるわけでありますけれども、これは私、全く違うと思っておりまして、法規制というものは何か問題があって結果的に法規制することはあると思いますが、ルール作りであったり、責任の分担については、とりわけ自動運転の車については、従来同様に、保険会社の保険の責任分担をどうするのかということで考えることで、ある程度の対応ができる問題だと思います。

例えばトロッコ問題といいますけれども、正面に集団がいきなり出てきたので、右に女性がいて、左に男性がいて、どこに回避行動をとればいいのか。これが解決できないと自動運転の車は運行できないといった議論がありますが、これは人間であっても解決できない問題ですから、人間であって解決できないものがAIに解決できるわけではない。そういう観点から考えたときに、あくまで責任の問題については、これは従来からの問題として考えるべきである。

今後、日本と海外の動向で大きく違うところとしては、日本国内の自動運転の車は、自動運転と呼んでいる事業者は一部でありまして、あくまで運転補助機能なのです。ですから、最終的な責任は全てドライバーというのが日本国内における現在、将来においても恐らくそのような議論でこの責任の問題については考えていくのだろう。一方で海外、特にドイツなどはメーカーが全て責任を負うということで考えておりますので、これが大きく責任の在り方が今後、方向性としてかなり大きく違ってくる。

つまり、メーカーが全て責任を負うことによって何を考えているのかというと、責任を負うということは、経済政策の観点からすると、非関税障壁として働くということも考えられますので、つまり責任を負うことができない事業者は参入できない。これは消費者保護の観点ではなく、経済政策の観点から考えた場合には、実は非常に強力な非関税障壁になり得る。

本日はビッグデータの観点から一言しか申し上げておりませんけれども、GDPRが典型例であります。EUはなぜ、個人データ保護について非常に厳しい規制を課しているのかというと、ネット関係の事業でEUの事業者が先行している事例は余りないわけですから、そうすると、例えば米国のそういった事業者からすると、非常に厳しい規制に結果的には対応しなければ、その事業を展開することができないということになりますと、これが私の資料の2ページ目にあるルール作りへの参画。ルールを決めた者が優位性を結果的に確保するという観点から、この点について厳しい規制があるから結果的に悪いということではなく、その規制が結果的には消費者保護にもなり、経済政策の観点からもその規制に従うことができない事業者はその事業を継続することができないという観点から考えた場合には、実はその規制は非常に優位性を確保する上で経済政策ともセットで考えるべきではないかということを問題意識として考えております。

○高委員長 よろしいですか。

どうぞ。

○長田委員 さっきのチャットボットの話ではないのですけれども、現在でも、私もつい最近、そのような話をして、家電が壊れたときにどうすればいいかというのは、メーカーにネット上でアクセスすると、回答がどんどん来て、結局、あなたはこの番号を、電話したところに言ってくださいみたいになって、すごくスムーズだと言う人がいて、それは絶対AIではないかみたいな話を皆でしていたのですけれども、そういうものはやはり今や明示したほうがいいのではないかとそのときに思って、人が対応してくれているのと、そこに一応、そうではないというものとかは何か我々は分かったほうが良いなとそのときに皆でおしゃべりしていたのですけれども、今、何がやるべきかの一つはそれかなと思っているのです。

○慶應義塾大学総合政策学部新保教授 AIが搭載されたロボットを介して何か行うときに、そもそも明示すべきか、明示したほうが良いかということも議論として非常に重要になってくると思うのですけれども、例えば具体的な例として、自動運転の車が今、走っているわけですが、あと、公道で実証実験もやっているわけですが、公道の実証実験を今、実験中とか、いろいろと表示したりとか、いろいろとやっているわけですけれども、例えば自動運転の車が今後普及することに伴って、いわゆる混在交通といいますが、一般のドライバーと自動運転の車が混在して走行するときに一つ議論としては、自動運転の車であるということを、例えば歩行者も分かったほうがいいのではないか。周りにいる人も分かったほうがいいのではないか。したがって、議論としては、それを明示すべきだという議論があります。

私の考えは反対でありまして、明示すると、そこにわざとひかれにくる人が出てくるとか、そういった問題が逆に大きいのではないか。自動運転の車にわざわざひかれに来るとか、わざわざそこにぶつかっていくとかという人はやはりどうしても出てくると思うのです。ですから、その明示することによって何か別の副作用であったり、問題が生ずる可能性があることも多々ありますので、果たして明示すべきかどうかということも含めて、今後、例えばAI消費者契約法みたいなもので明示義務をどこまで課するのか。そもそも課するべきではないのかとか、いろいろなところをやはり、そもそも明示すべき、明示すべきではない。両方含めて考えていかなければならないと思っております。

○高委員長 よろしいですか。

どうぞ、大森委員。

○大森委員 先ほどのホテルのチャットボットのところなのですけれども、明示すべきかどうかという問題もありますが、相手がロボットだったら、絶対に相手のほうが有利ですね。やはり契約の平等性といいますか、企業と消費者は対等でないから、いろんな法規制でフラットな契約ができるように今の法律はあるわけですけれども、新しい、圧倒的に強いものが現れてくるわけで、これは結果的には先生は良いホテルを選ばれたようですが、上手にやられて、自分の意図しない契約をするケースも出てくるかと思うのですけれども、この辺りは先生、どのように規制したらいいとお考えでしょうか。

○慶應義塾大学総合政策学部新保教授 これは、例えば電子商取引に関する準則に書かれている、意に反して申込みをさせない取引。例えばネットの取引も、当初は申込みと押すと、そのまま申込みになってしまって、確認画面がなかったりとか、ですから、電子消費者契約特例法のように、例えば事業者との間でB to Cの取引で電子消費者契約であるということを、きちんとその手続を明示した上で、それを踏まえた上で策も、錯誤無効の特例を設けるとかといった、例えば電子契約特例法のような手続なども今後考える余地はあるのかなと思います。

こういった観点から、例えばAIの利用によって、それをどのように、先ほどの明示も含めてですけれども、やはりかなり錯誤に陥る場合とか、意に反して申込みをさせられてしまう可能性はかなり高いと思いますので、これは今までの意に反して申込みをさせられる可能性がある場合では、どうすれば意に反した申込みにならないのか。錯誤になる場合の策も、無効の特例ではなく、そもそも錯誤に陥るようなお勧めであるとか取引については、それをどう対応していくべきなのかということを議論する状況かなと。

ただ、まだ現実にそういう消費者被害が顕在化している状況は逆にございませんので、分かりませんけれども、ないと思いますので、そういうことが今後生じた場合にどうすべきかということは、やはり早目に検討しておくべきかなとは思います。

○高委員長 よろしいですか。

ありがとうございました。私自身もこの分野は全くの素人で、大変勉強になりました。

最初に誤解されているからうんぬんというところからお話が始まりまして、どのようなお話をされるのかなと思っておりまたら、先生が目指しているところはロボット法というものをできるだけ、他と協力しながら、というよりも、むしろイニシアチブをとって、こういう法律を作っていくべきだという御主張なのだということがよく分かりました。

その前提として、絶対的な安全・安心とか、こういったものを保障しようとするものではない。こういうルールを作ることが、あるいは枠組みを作ることが、実は経済政策的にも経済発展ということを考えても、あるいは消費者保護ということを考えても重要なことなのだとお聞きし、そのとおりと感じた次第です。ちょうどISOの規格を作るときに、最初に作ったものが最も有利になるとよく言われるのですけれども、恐らくそういった発想でやっておられているのだろうなということがよく分かりました。

意図はよく分かったのですが、不勉強で、いろんな事例を挙げていただいて、確かにそうだなと思うことばかりで、パラダイムシフトという言葉の意味も、我々が従来考えてきた以上の意味を持つと気付いた次第です。例えばAIが相手であれば、相手はAIだということを名乗るべきだと考えがちですが、いや、名乗らない方が良いという場合も有り得るとの説明には頭を打たれた感じがいたしました。確かに考え方は一回、180度変えてみなければいけない場面もたくさん出てくるかもしれないと感じた次第です。

消費者問題等で、特にトピックスとして上がってくるのは当然、プライバシーの話もあるでしょうし、あるいはAIが搭載されたロボットがIoTにつながっていくと、バーチャルな世界はリアルの問題になってくる。そこで制御不能になった場合の問題、悪用される場合の問題、あるいは制御できるという状況でも、いろんな問題が出てくるということを改めて認識いたしました。

例えば自動運転の話がありましたけれども、時速60キロぐらいで走っているときに突然、数名の人が目の前に出てきた。そのときに止まることができない場合、自動車は、その中の誰を避け、誰をはねるのかを選択するわけですから、そのアルゴリズムの内容まで販売時に説明しなければいけないのかとか、様々な問題が出てくるなということを今日のお話を聞いていて感じた次第です。

IoT、ビッグデータ、AI、こういった分野における動きは消費者の利便にもつながっていくわけですけれども、それは問題にもつながってくる可能性がありますので、我々も、引き続き、この動きについて学んでいきたいと思っております。

今日、先生にご説明いただきましたお話は今後の審議の中で役立たせていただきたいと思っております。

どうも、お忙しいところありがとうございました。

○慶應義塾大学総合政策学部新保教授 ありがとうございました。

(慶應義塾大学総合政策学部新保教授退室)


≪4.閉会≫

○高委員長 本日の議題は以上になります。

最後に、事務局より今後の予定について説明をお願いいたします。

○丸山参事官 次回の本会議につきましては、日程が決まり次第委員会ホームページを通じてお知らせさせていただきます。

○高委員長 本日はこれにて閉会とさせていただきます。

お忙しいところを御参集いただきまして、ありがとうございました。

(以上)