第271回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2018年3月30日(金)14:00~14:24

場所

消費者委員会会議室

出席者

  • 【委員】
    高委員長、池本委員長代理、受田委員、大森委員、長田委員、樋口委員、増田委員
    (高委員長の「高」は、正しくは「はしごだか」)
  • 【事務局】
    黒木事務局長、福島審議官、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 消費者基本計画工程表の改定素案に対する意見について
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○高委員長 それでは、時間になりましたので、「消費者委員会第271回本会議」を開催させていただきます。

本日は、お忙しいところを皆様、御参集いただきましてありがとうございました。

本日は、鹿野委員、山本委員、蟹瀬委員が欠席となります。

それでは、配付資料の確認につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

○丸山参事官 お手元の議事次第の下部のほうに配付資料一覧を記載しております。

資料及び参考資料となっております。不足がございましたら、事務局のほうまでお申し出いただきますようよろしくお願いいたします。


≪2.消費者基本計画工程表の改定素案に対する意見について≫

○高委員長 本日の議題は、「消費者基本計画工程表の改定素案に対する意見について」という議題一つでございます。

本委員会では、本年2月14日に、消費者庁より工程表の改定素案についてヒアリングを行ったところです。また、本年2月、3月には成年年齢の引下げや地方消費者行政の充実などの個別施策についてもヒアリングを行いました。

本日は、このヒアリングの結果や、これまでに当委員会が行った建議、提言、その他の意見などを踏まえ、今般の工程表の改定素案に対する当委員会の意見を取りまとめたいと思っております。

本日は、資料として意見案を配付しておりますので、まず事務局より説明をお願いいたします。

○丸山参事官 お手元の右肩に資料となっておりますもの、タイトルといたしまして「消費者基本計画工程表の改革素案(平成30年2月)に対する意見(案)」ということで、こちらの内容について説明させていただきます。

構成といたしましては、まず前書きの柱書きというところと、「記」以下のところで第1から第3という形で指摘事項ということで整理をしてございます。

まず、前書きのところでございます。2パラ目からでございますが、今年の2月22日から消費者庁のほうで消費者基本計画工程表の改定素案が公表され、パブリックコメントが開始されました。

当委員会におきましては、3月8日、それから15日、当本会議におきまして工程表の改定素案につきまして消費者庁よりヒアリングを行ったところです。このヒアリングの結果ですとか、これまでに建議・提言、その他の意見等の内容、工程表に記載された個別施策についてのヒアリングの結果等を踏まえて、今般、工程表の改定素案に対し、下記のとおり意見を述べるということにしております。「関係省庁等におかれては、下記の各項目について積極的に検討の上、可能な限り工程表の改定原案等に反映されたい」ということで記載しております。

その上で、当委員会としては本意見の工程表への反映状況、それからその後の実施状況等について引き続き監視を行い、消費者被害の状況が深刻なもの、あるいは取組が不十分と考えられるものなどについては、今後重点的に当委員会の調査審議を通じて取り上げていくとともに、必要に応じて建議等の意見表明を行っていくこととすることにしております。

以下、具体的な指摘事項でございますけれども、先ほど申しましたとおり、第1から第3ということで三つに構成されております。

まず第1でございますけれども、「全体的な事項」ということでございます。こちらにつきましては、従前の過去、平成28年4月、それから平成29年5月に当委員会のほうから基本計画、工程表の改定素案に対する意見ということで、以下に述べるKPI、それから工程表の図について累次、指摘をしているところですけれども、改めて取組の加速化を図られたいということで指摘をしております。

まず「(1)KPIについて」ですけれども、施策の達成状況等に応じて指標の見直し、それからアウトカム指標の追加の設定を検討するとともに、目標の数値等についても不断の見直しを図られたい。いわゆる適宜の指標等の見直しを図られたいということで指摘をしております。

「また、現状のKPIについての検証を行うとともに、それを踏まえ第4期消費者基本計画工程表の策定に向けて、より効果的なKPIの設定方法等について検討されたい」。いわゆるKPIそのものについて、できる限り抜本的に見直しをしていただきたいということで指摘をしているところです。

それから(2)でございますけれども、工程表の図、いわゆる帯表でございますが、こちらにつきましては「年限を区切らずに5年間で取り組むことが示されているものについては、定期的・継続的に実施しなければならないものを除き、可能な限り具体的な取組に分けた上で、当該具体的な取組ごとに期限を明確に設定した上で、図示すべきである」としております。「したがって、取組の進捗や効果が思わしくない施策は、その状況を改善するための具体的な対策を工程表に反映されたい」としております。

また、次期工程表、第4期の消費者基本計画工程表の策定に当たっては、当初よりその点について留意されたいというふうに指摘をしています。

続きまして第2、個別の施策に関する事項ということで、「工程表への反映が必要な事項」ということで、今回は4点という形で整理をさせていただきました。

まず第1点でございますけれども、「成年年齢引下げ対応について」ということでございます。成年年齢の引下げを内容とする「民法の一部を改正する法律案」が国会に提出されたことを受け、新たに成年となる18、19歳の消費者被害の防止・救済は喫緊の課題であるということで、消費者教育の充実や制度整備、それから消費者被害対応の充実等に向けて取組を加速化していくことが必要であるということで認識を示してございます。

「そのため」ということで、引下げに向けた環境整備に対応するため、今般「成年年齢の引下げに向けた環境整備に関する検討会」というものが立ち上げられたということを、ヒアリングで伺っております。こちらの取組と、スケジュール等について、工程表に記載されたいということで指摘をしてございます。

また、上記環境整備に係る個別の施策について、例えば「改正民法の周知活動について」、それから「与信審査について」といったようなテーマが例示されておりますので、こちらにつきましては12月の我々消費者委員会の意見でも指摘したように、民法の改正を待たずに直ちに取組を始められる事項については取組等の内容、それからスケジュール等を工程表に記載されたいということで指摘をしてございます。

次に(1)でございますけれども、「消費者教育の充実等」ということで、消費者庁から「若年者への消費者教育の推進に関するアクションプログラム」というものを関係省庁で策定をしたということで報告がございました。こちらを踏まえた取組について、工程表へ反映されたいとしております。

また、消費者庁からの意見聴取に対する当委員会からの回答、いわゆる成年年齢ワーキング、我々で設置をいたしましたワーキングの報告書を踏まえた大学・専門学校等における消費者教育の推進、それから若年成人に向けた消費者被害対応の充実等について取組を加速化してほしいということで指摘をしてございます。

その際、「特に」でございますけれども、高校生向け消費者教育教材につきまして、消費者庁で「平成29年度に実施した徳島県での授業の実施結果を踏まえた、今後の全国展開に向けた具体的な取組について工程表に明示されたい」としてございます。

「また」でございますけれども、平成30年度以降に実施される、高校生よりも下段階である「小・中学校向け教材の検討、作成のための具体的な取組やスケジュールについて工程表に明示されたい」としてございます。

「さらに」でございますけれども、「地域におけるコーディネーターの育成、支援に向けた取組について工程表に明示されたい」としてございます。

さらに、なお書きでございますけれども、「消費者教育を効果的に推進していくためには、効果測定を行った上でPDCAサイクルを回していくのが極めて有用である」ということで、当委員会で従前から消費者教育の基本方針の改定につきまして累次、意見を述べさせていただきましたが、そのときにも述べさせていただいているように、「そのために有用である適切なKPI設定等に向けて必要な調査を早急に進めていただきたい」ということで指摘してございます。

それから、「(2)特定商取引法(省令)の見直し」ということで指摘もしてございます。消費者庁からの意見聴取に対する委員会の回答、いわゆる成年年齢引下げ対応ワーキングの結果を踏まえて、「成年年齢引下げ対応として検討されることとされていた以下の点について、その検討状況や、検討を踏まえた取組状況について工程表に明示されたい」。特商法の省令については見直しということで成年年齢ワーキングで指摘をしておりましたので、そちらの取組状況について工程表に明示してほしいということでございます。

具体的には下の二つの「・」でございますけれども、まず連鎖販売取引におきましては、従前の省令のところでは未成年者ということは明示的に盛り込まれておるわけですが、若年成人についての記載というのはありませんでした。そこで、「若年成人の判断力の不足に乗じて契約を締結させる行為を行政処分の対象とすること」ということでワーキングのところでは検討を求める次第です。

二つ目のところは訪問販売ですが、こちらにおきましては従前から老人その他というふうなことで、そういったものについての記載というのはあったんですけれども、若年成人というのは明示されていないということがございますので、こちらについても「若年成人の判断力の不足に乗じて売買契約または役務提供契約を締結させることが行政処分の対象行為となることを規定上、明確にすること」というふうなことで改めて指摘をしてございます。

続きまして、二つ目は「地方消費者行政への支援」でございます。

まずこちらの1パラ目ですけれども、地方消費者行政についてはどこに住んでいても質の高い相談、それから救済を受けられ、安全・安心が確保される地域体制を全国的に整備することを目指して、平成27年策定ですけれども、「地方消費者行政強化作戦」が定められ、「地方消費者行政推進交付金」等を活用した計画的・安定的な取組支援が行われ、消費生活センターの整備、それから相談員の配置・増員及び消費者教育の推進等に寄与しておりました。

今般、平成30年度に措置される「地方消費者行政強化交付金」につきましては、従来の推進交付金に相当する「推進事業」が減額される一方で、新たに位置づけられる「強化事業」の補助対象事業につきましては、国として取り組むべき重要消費者政策等となっておりまして、従来の「推進交付金」よりも補助対象は限定的なものとなっております。

このため、地方消費者行政の安定的な運営維持のため、「強化事業」の補助対象となる事業実施のメニューについて増強、それから柔軟な運用が重要であるということで、それに向けた取組について工程表に明示されたいということを指摘してございます。

それから、「加えて」でございますけれども、「地方公共団体における消費者行政の自主財源確保に向け、消費者庁において、各自治体の消費者行政に係る基準財政需要額を試算し、それをもとに各自治体に自主財源拡充の要請を図る等、具体的な取組策について工程表に明示されたい」ということでも指摘してございます。

「なお」でございますけれども、「消費者庁は、地方公共団体におけるスムーズな消費者行政予算策定のために、予算サイクルの時期に合わせた早めの国の予算状況に係る情報提供に留意すべきである」ということで指摘をしております。

それから、「それとともに」でございますけれども、平成30年度の交付金減額に伴う地方公共団体における事業、例えば消費者相談ですとか消費者教育・啓発等への影響を把握・検証し、「その結果に基づいて、「推進事業」の安定的な財源確保等も含め、必要な方策について検討されたい」としております。

それから、「さらに」ということで、「消費者庁は今後、地方消費者行政の取組が後退することのないよう地方消費者行政支援に関する中長期的な支援の在り方も含めた検討を行い、必要な取組を行うべきである」ということで指摘してございます。

それから、「3.適格消費者団体等への支援」ということでございます。消費者被害の防止・回復を効果的に実現するため、団体訴訟制度の主体となる適格消費者団体等の設立促進、それからその活動支援に向けた取組を消費者政策として進めていくことは重要であるということで、適格消費者団体、それから特定的適格消費者団体に対する支援について、30年度の予算案のところでは団体訴訟制度の機能強化のための取組ということで、被害実態調査事業等というのが盛り込まれました。これらを含む活動支援策について、具体的に工程表に明示されたいというふうに指摘してございます。

それから、平成30年度の強化交付金におきまして、適格消費者団体の設立支援というものについてメニューとしてございますので、こちらについても引き続き取り組んでいく旨、工程表に明示をされたいということで指摘してございます。

それから、二つ目の柱の四つ目、最後でございますけれども、「事故情報の収集、注意喚起等」ということで指摘をしてございます。「消費生活において生じた生命・身体に係る事故等に関する情報を活用し、事故情報の分析を深め、事故情報の一層の活用を図ることにより、事故の未然防止等に資する対応をより一層進めることが可能である」ということで、当委員会で8月に発出をいたしました「事故情報の更なる活用に向けた提言」の内容を踏まえて、事故情報の更なる活用に向け、消費者、事業者、事故情報データバンクの参画機関ですとか、関係行政機関が、まずは連携・情報交換をスタートさせる取組について工程表に明示されたいということで指摘してございます。

それから、三つ目のところの指摘事項の柱、「次期基本計画に向けた課題」ということで大きく二つの点について指摘をしてございます。

まず一つ目でございますけれども、昨今のICTの発展によりまして、消費者を取り巻く商品・サービスにおいて、いわゆるIoTですとかビッグデータ、人工知能、AIを活用したものが出現してきております。現在、政府部内でもこれらに関係する施策の検討は急速に進められているところですけれども、これらは消費者に多大な利便をもたらす可能性がある反面、プライバシーの問題等、消費者にとっての課題も有していると考えられます。

そのため、こうしたIoT等の活用には、利便性とともに課題もあるということで、その特質について消費者が理解を深めるとともに、消費者保護に係る取組が必要になることについても留意する必要があるということで、以下、具体的な指摘ですけれども、「次期基本計画策定に際しては、各省庁における施策検討の熟度を見据えつつ、消費者の積極的な議論への参画を得ながら、上記のような特質を踏まえたIoT、ビッグデータ、AIに係る施策を次期基本計画に意欲的に盛り込むことを検討されたい」というふうに指摘してございます。

それから、第3の点ですが、これは二つ目の指摘ですけれども、「また」というふうなことで、SDGsに関連して指摘をしてございます。2015年に国連で採択されたSDGs、こちらと消費者制度の関係につきましては、消費者庁主催の「第4期消費者基本計画のあり方に関する検討会」でも議論されているということで承知してございます。こちらのほうの議論でも生かして、その両省の関係について整理をした上で、「SDGsの趣旨をできる限り組み入れた消費者政策の取組を次期基本計画に盛り込むことを検討されたい」ということで指摘をしてございます。

意見案についての説明は、以上でございます。

○高委員長 ありがとうございました。

ただいま、意見案について説明をいただきました。御意見、御質問のある方は、どうぞ御発言ください。

では、池本委員どうぞ。

○池本委員長代理 まず、この意見案はこの中身で提出することについて内容は賛成いたします。2点、その記述について意見の補足というか、思いを申し上げたいと思います。

2ページ目の成年年齢引下げに関連してですが、「また」以下のところで「改正民法の周知活動について」ということと、「与信審査について」ということを指摘しております。

特にこの与信審査ということについて補足したいのですが、これは平成29年1月の成年年齢引下げに対する対応策の在り方の報告書の中でも指摘しているのですが、成年年齢引下げで新たに成年になる者、あるいは若年者というものはどうしても未熟であるがゆえについ借入れに流れてしまうということが危惧されていますし、マスコミなどでもそのことがしばしば取り上げられております。現行法でも、貸金業法でいいますと年収の3分の1制限とか、あるいは50万円を超える貸付けの場合には収入証明を確認することというふうになっているのですが、若年者の場合、50万と同じ基準では不十分ではないかということが指摘されています。あるいは、クレジットでも支払可能見込額の調査義務というのがあるのですが、30万以下のクレジットカードの発行は調査義務が緩和されているとなっていますが、若年者の場合には同じ基準ではやはり不十分ではないか。

そうすると、若年者の実際の経済的な実情や、それから未熟さゆえの利用に流れがちであるということを考慮して、もう一歩、その与信審査を慎重にしたり、あるいは利用限度額を抑えたり、そういう自主的な取組が必要であるという提案で、しかもその報告書の中では自主的な取組によって効果を奏しない場合には、更なる対応策の検討が必要だということも提案しています。その意味では、行政各担当部署においてもそういう目でしっかりとした自主規制に向けた推進策を取っていただきたい。そういう趣旨で、これに触れているところであります。

もう1点あります。それは3ページの下から4ページで、新たに「地方消費者行政強化交付金」というものが新年度から措置されておりますが、従来の推進交付金の枠が大幅に減額されて、強化交付金になったけれども、利用できるメニューが非常に限定的で、地方自治体の消費者行政部門では、これではなかなか使えない、あるいは従来の推進事業が維持できないという悲鳴が正に聞こえてきています。

どうも消費者行政は自治事務で交付金は一時的なものだというような意識のままでこういう事態を迎えていると思うのですが、そういう本質的な性質論や、あるいは実態の把握、再把握も含めて、各地方自治体での消費者行政がきちんと今後も継続的に発展していくようにということで、具体的な例えば実施メニューの柔軟な運用、あるいは次の補正予算等も含めてしっかりとした対策を講じていただきたい。そういう思いを込めて、この点は指摘してあるというふうに理解していただきたいと思います。以上、2点です。

○高委員長 補足、ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。

どうぞ、長田委員。

○長田委員 今回の意見書の全体的な事項のところですけれども、KPIについて、それから工程表の線表のことは毎回申し上げていることで、なかなかこれが実現していないのが現状だと思いまして、今度、次の基本計画の検討も消費者庁ではされていると思いますが、毎年、今、行われる消費者政策の検証評価がきちんとできなければ、結果的には新しい基本計画を作るにしても、そこに現状が反映されないと思うのです。

頭の中で考えているだけの計画になってしまうと思いますので、今回のこの消費者委員会からの意見を受けて、是非消費者庁では真剣にこのKPIと、それから工程表をより具体的にしていくというところは絶対に実現していただきたいと思っています。以上です。

○高委員長 ありがとうございます。

文案そのものは、そういう意図を込めて書いております。ありがとうございます。解説をしていただいたというふうに理解しております。ほかはございますでしょうか。

既に委員間の打合せで練りに練ってこの意見になっているので、ここで新たな修正をしてほしいという意見は出ないかと思います。したがいまして、この形で了承していただいたということで、よろしいでしょうか。

それでは、この意見書を消費者庁長官及び関係府省宛てに送付したいと思います。関係省庁におかれましては、是非本意見について積極的に御検討いただきまして、可能な限り工程表の改定原案等に反映していただきたく思います。


≪3.閉会≫

○高委員長 本日の議題は、以上となります。

最後に、事務局より今後の予定について説明をお願いいたします。

○丸山参事官 次回の本会議につきましては、日程が決まり次第、委員会ホームページを通じてお知らせさせていただきます。

なお、この後、連絡事項がございますので、委員の皆様方におかれましては委員室までお集まりください。

○高委員長 それでは、本会議はこれにて閉会とさせていただきます。

どうもお忙しいところ御参集いただきまして、ありがとうございました。

(以上)