第220回 消費者委員会本会議 議事録

日時

2016年4月26日(火)14:00~15:54

場所

消費者委員会会議室

出席者

  • 【委員】
    河上委員長、池本委員長代理、阿久澤委員、大森委員、鹿野委員、長田委員、中原委員、樋口委員、増田委員
  • 【説明者】
    公共料金等専門調査会 古城座長
    消費者庁 加納消費者制度課長
  • 【事務局】
    黒木事務局長、小野審議官、丸山参事官、友行企画官

議事次第

  1. 開会
  2. 東京電力の原価算定期間終了後の事後評価について
  3. 官民連携による高齢者の見守りについて
  4. 公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会の第1次報告書について
  5. その他
  6. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○河上委員長 それでは、時間も過ぎておりますので、始めさせていただきます。

今日は蟹瀬委員が所用によって御欠席、中原委員が恐らく今、駆けつけておられると思いますので、よろしくお願いします。

皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。

ただいまから「消費者委員会第220回本会議」を開催いたします。

最初に、本日の配付資料の確認につきまして、事務局からお願いいたします。

○丸山参事官 お手元の議事次第の下部のほうに配付資料一覧を記しております。

資料1につきましては、東京電力による電気料金値上げ後のフォローアップに関係する資料。

資料2-1、2-2につきましては、高齢者の消費者被害防止のための官民連携に関する見守りに関する調査資料。

資料3-1、資料3-2が公益通報者保護制度の実効性向上に関する検討会の報告書に関係する資料となっております。

それから、参考資料の1から3となっております。

不足がございましたら、事務局のほうまでお申し出いただきますようよろしくお願いいたします。


≪2.東京電力の原価算定期間終了後の事後評価について≫

○河上委員長 最初の議題は「東京電力の原価算定期間終了後の事後評価について」であります。

消費者基本計画においては、平成24年7月の東京電力による電気料金の値上げ後のフォローアップを行うこととされておりまして、本件に関する消費者庁への意見について審議を行いたいと思います。

本件につきましては、参考資料1のとおり、4月5日付けで消費者庁長官から当委員会に意見を求める付議がなされております。これを受けて、公共料金等専門調査会で意見の取りまとめが行われました。

本日は、公共料金等専門調査会の古城誠座長にお越しいただいております。

古城座長におかれましては、お忙しいところを御出席いただきまして、誠にありがとうございます。

最初に、審議経過及び意見の内容について簡単に御説明をいただきたいと思います。その後、意見交換を行った上で、当委員会としての意見を取りまとめたいと思います。

それでは、古城座長、よろしくお願いいたします。

○公共料金等専門調査会古城座長 東京電力による電気料金値上げ後のフォローアップにつきましては、今月14日に開催された公共料金等専門調査会において、東京電力ホールディングス株式会社及び東京電力エナジーパートナー株式会社、電力・ガス取引監視等委員会事務局からヒアリングを行い、検討を重ねてまいりました。

これらを受けて、4月20日の専門調査会において議論を行い、意見の取りまとめを行いました。今般、報告させていただく次第です。

専門調査会の意見の内容につきましては、事務局より説明をお願いいたします。

○丸山参事官 それでは、事務局より説明をさせていただきます。

お手元の資料1を御覧いただけますでしょうか。

こちら「東京電力による電気料金値上げ後のフォローアップに関する専門調査会意見」となっております。

先ほど委員長からお話のありましたとおり、消費者委員会につきましては、4月5日付けで消費者庁から付議を受けたということになっております。それを受けまして、古城座長からお話がありましたように、14日に東京電力、監視等委員会へのヒアリングを行い、その結果を踏まえ、上記付議に対しての専門調査会の意見ということで、今般、取りまとめを行ったということでございます。

内容の説明です。

「1.全体的な評価」となっております。

初めの丸でございますけれども、監視等委員会による事後評価におきましては、物価問題に関する関係閣僚会議への付議に向けた協議等が予定はされておりません。消費者基本計画工程表での記載内容を踏まえて実施され、消費者庁による「東京電力株式会社の家庭用電気料金値上げ認可申請に関する意見」のうち、フォローアップ審査に関する記載内容に基づいて、実績が料金原価を上回っている4つの費目について、合理的な理由なく上回る実績となっていないか、監視等委員会の電気料金審査専門会合において、このことについて検証されたということです。

このことは、原価算定期間終了後の事後評価においても、消費者の観点から料金の適正性を確保する姿勢が示されたものとして、一定程度評価できるとしております。また、規制部門と自由化部門の利益に格差が生じた要因、経営効率化の取組状況について、東京電力に対して説明を求めたこと、これも評価できるということにしております。

こうした中「電気料金制度・運用の見直しに係る有識者会議」では、原価算定期間終了後、事業者が料金改定を行わない場合には、事業者が自ら部門別収支ベースで、原価と実績値の比較、これまでの利益の使途、収支見通し等について、具体的に説明することにより、原価算定期間終了後も引き続き当該料金を採用する妥当性を評価することが適当とされております。

しかしながら、今般、東京電力により提示された自ら評価において、収支見通し等に関して具体的な説明は行われておりませんでした。したがいまして、東京電力自ら規制料金メニューの改定を行わないことの妥当性に関して十分に説明はしていないということにしております。

監視等委員会におきましては、東京電力に対しまして、収支見通しに関する消費者への丁寧な説明や情報提供を促すべきだとしております。

今般の東電の電気料金の自ら評価におきまして、今後の料金改定については、柏崎刈羽原子力発電所が稼働しても、直ちには規制料金メニューの値下げを行うということではなく、費用全般の動向等について総合的に判断するとされております。

しかしながら、平成24年に、原発の停止に伴う火力発電の燃料費などの増加のため、家庭用の低圧分野の料金を値上げした経緯等に鑑みれば、仮に原発が再稼働された場合、料金原価に大幅な変更が生じることから、規制料金メニューの値下げを行うべきであるということにしております。

続きまして「2.個別項目」です。

人件費についてですけれども、まず、今般の事後評価における料金原価と実績費用の比較におきまして、人件費は136億円の増加が示されております。その要因につきましては、「新・総合特別事業計画」に基づくコスト削減計画の超過達成分の一部を原資とする「処遇制度の改編」を実施したためとされております。

しかしながら、経営効率化によるコスト削減につきましては、本来、規制料金メニューの値下げに反映されるべきであり、従業員の処遇改善に充当するのであれば、東京電力は消費者の理解を得るため、どのように処遇改善を行ってきたのか、その実績等について情報提供及び説明を行うべきであるとしております。

修繕費等について、こちらは、今般の事後評価における経営効率化の取組において、修繕費につきましては、1,007億円の深掘りが行われたことが示されております。14日の専門会合におきましては、東京電力から原発の再稼働の遅れに対応した緊急避難的な繰延べが多く行われているとの説明がございました。一時的な収支改善のための緊急避難的な繰延べは恒常的なコスト削減とは異なるものであり、今後の料金原価への影響が示されなければ、真にコスト削減の深掘りが行われたのか評価できないということです。

その上で、東京電力はコスト削減の取組につきまして、正当な評価を得るためにも、修繕費も含めた費用の見通しについて、消費者にわかりやすい情報提供及び説明を行うべきであるとしております。

「3.今後の課題」でございます。

本年4月から、小売の全面自由化が始まりまして、消費者による新料金プランへの切り替えが始まっておりますが、当面、多くの消費者は規制料金メニューの利用を継続することが見込まれております。

こうした中、経営効率化や原発の再稼働等が東京電力の規制料金メニューに適切に反映されるよう、監視等委員会におきまして、毎年度実施される審査において適切な監視が行われることが必要であるとしております。

基本計画におきましては、今年度、来年度についても、各電力会社による電気料金値上げ後のフォローアップを行うことが定められております。今後、監視等委員会におきまして、これらの各電力会社に対しまして、算定期間後の事後評価が実施される際には、本意見の趣旨を踏まえて、より厳正な審査が行われることが必要であるとしております。

また、東京電力におきましては、本年4月に分社化が行われましたけれども、規制料金メニューに関わる分社化後の料金原価の構成につきまして、消費者に対するわかりやすい情報提供、説明を行っていくことも要望するとしております。

説明につきましては、以上です。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

古城先生からは、何か追加的な御説明はございますか。

○公共料金等専門調査会古城座長 簡単に言いますと、東京電力は3年前の値上げ分の原価というものを維持しているのですけれども、その内容を見ますと、原発の稼働はもうちょっと前に始まっているはずなのですが、原発が稼働していなかったおかげで、燃料費が大幅に上がっておりまして、そうすると大幅赤字になるのですが、それを相当効率化・合理化努力をしまして、料金査定のときにコスト削減と、それで相殺をして、ちょうど収支とんとんということになっているのです。

ところが、超過達成分の内訳を見ますと、一部に繰延べというものがあるのです。本来のコストというので、修繕を後ろに延ばしておりますから、本当のところは今回赤字です。繰り延べなかったとしたら赤字であって、それは将来要因として残っているということなのです。

そこで出てきますのが、本来赤字なのに人件費の処遇改善をしてもいいのですかという論点なのですけれども、そこは一応指摘だけはしているのですが、余り厳しくは言っていません。

フォローアップについては、今回の原価と料金の関係をお話しするだけではなくて、これからの次期についての見通しで原価を上げるかどうかという説明もしなければいけないのです。それについては不十分だったということを述べています。

将来不安なのは、原発が動いたときに、またほかにも値上げ要因があるからというので、原発が動いても値下げしないという可能性があるので、それは困りますよとくぎを刺したというのが大体の内容です。

○河上委員長 ありがとうございました。

ただいまの御説明の内容について、御質問、御意見のある方は発言をお願いします。

いかがでしょうか。

池本委員長代理、どうぞ。

○池本委員長代理 池本です。

本当にわかりにくい電力料金のことについて、その構造あるいはその評価について端的に紹介していただいて、感謝申し上げます。

この中で、特に今、最後に補足説明されたところに関連するのかもしれないのですが、2ページから3ページで「真にコスト削減の深掘が行われたのか評価できない」の後で「正当な評価を得るためにも、修繕費も含めた費用の見直しについて、消費者に分かりやすい情報提供及び説明を行うべきである」とあります。この「分かりやすい情報提供及び説明」というのは、先般ヒアリングをされたところでの説明の中身をもって、それを一般に情報提供すれば足りるということなのか、まだそれでは不十分だから、更にもう一歩、論拠を明確にしてほしいと読み取ればいいのでしょうか。

○公共料金等専門調査会古城座長 先般のヒアリングの当初は、東京電力としては、すごく値上げ要因があったのだけれども、頑張って過剰達成して相殺したということを言って、それはある程度評価できるのですけれども、中に、繰延べ、緊急避難的なものがある。本当のコストは次期に払うというので、その内容を額が幾らになるかをなかなかきちんと説明しないのと、それを今後どうするのかというのもきちんと説明しないので、将来の問題点になる可能性があります。次期に値下げ要因があっても付け替えがあるのだから値下げできないとか、いろいろな材料になりますので、もうちょっとちゃんと将来どうするのかを説明してほしいです。

ですから、東京電力の言うことを全部否定するわけではないのですけれども、コストの繰延べによって今回は収支とんとんに抑えたのですから、今後についてどうするのかというのを、そんなに楽観はできない内容なので、今後問題が出てくる可能性があるので、それについてもちゃんと説明してほしいということだと思います。

○池本委員長代理 ありがとうございます。

○河上委員長 専門調査会での説明では、まだ不十分な部分があったという認識でしょうね。ですから、更に踏み込んで説明をお願いしますということになります。

ほかにはいかがでしょうか。

○公共料金等専門調査会古城座長 事情がわからなかったのですけれども、ほかの電力会社のフォローアップのときは、もうちょっとその点は厳しく情報を出してもらうようにしたいと思います。

○河上委員長 本来であれば、東京電力自ら、そこはきちんと出すべきであったということなのでしょうけれども。

ほかにはいかがでしょう。

よろしいですか。

ただ今、調査会から、ご報告をいただいたところですけれども、委員会として、諮問に対して意見を発出したいと思います。意見案を配付いたします。

消費者委員会意見の案でございますが、消費者委員会は、本日、公共料金等専門調査会から、本件に関する意見の報告を受けたということで、「本意見を踏まえて、消費者庁においては、意見表明を検討することを求める」という趣旨でございます。

前回と違いまして、消費者庁と経産省とで共同で付議をする仕掛けの中でのフォローアップではございませんので、これは消費者庁に向かって、消費者庁にこういう形で意見を表明するように努力してほしいということを、意見として出す形になっております。

よろしゅうございましょうか。

それでは、この「(案)」を取っていただいて、本日の日付を入れて、これで意見を発出したいと思います。

古城座長におかれましては、本当にお忙しいところを審議に御協力をいただきまして、誠にありがとうございました。

(公共料金等専門調査会古城座長退席)

≪3.官民連携による高齢者の見守りについて≫

○河上委員長 続きまして「官民連携による高齢者の見守りについて」という議題でございます。

当委員会では、昨年の8月に「消費者行政における新たな官民連携の在り方に関する調査報告」を公表いたしました。

この調査報告は、消費者行政における官民連携に係る考え方について、いわば総論のような形で取りまとめたものでございましたが、複合的・広域的に発生している多様な消費者問題に対応するための具体的な官民連携には、さまざまな形が考えられるところであります。

そこで、当委員会では、とりわけ高齢者の消費者被害が増加している状況を踏まえまして「高齢者の消費者被害防止のための官民連携による見守りの在り方」を当面のテーマとして、引き続き調査を実施し、官民連携の在り方の具体化を試みることといたしました。

調査に当たっては、各地域において、官民連携による高齢者の見守りを行っている行政の関係者あるいは事業者及び有識者等へのヒアリングを実施いたしまして、更に当委員会として初めてでございますが、ワークショップ形式を採用したシンポジウムも開催いたしました。

それらの成果を踏まえて調査審議を重ね、今般、昨年の調査報告の各論に相当する部分を補うものとして、特に「高齢者の消費者被害防止のための官民連携による見守りの在り方」について、取りまとめを行ってきたところでございます。本日、この取りまとめを行いたいというわけでございます。

担当は、地方消費者行政の切り口から、池本委員、樋口委員、増田委員、官民連携の切り口からは、蟹瀬委員、中原委員、樋口委員と私が携わってまいりました。

それでは、樋口委員から報告書案についての説明を、大変恐縮ですけれども、15分程度でお願いできればと思います。

よろしくお願いいたします。

○樋口委員 樋口でございます。

担当委員として、報告書案の内容について御説明をいたします。

まず、お手元に資料2-1と2-2というものが関係の資料として配付されておりますが、2-1は報告書案についての概要版でございまして、これについては、適宜リファーいたしますが、基本的には資料2-2が報告書案でございますので、これに沿って御説明をしたいと思います。

今、委員長からもお話がございましたけれども、今回の報告書をまとめるに当たりましては、問題意識としまして、昨年の8月に消費者委員会として「消費者行政における新たな官民連携の在り方に関する調査報告」というものを取りまとめたわけでございます。

その中で、資料で言いますと報告書案の1ページでございますが、その辺りの経緯をまとめてございますけれども、消費者問題は極めて多様で、複合的・広域的に発生していることから、行政機関だけで対応するのはなかなか難しいということで、人的資源・専門的知見等において、官民連携による補完が必須であること、消費者行政においては、多様な民間の主体が消費者の視点の強化のために、それぞれ強みを生かしながら連携できるようにすることが重要な目標であることという2点について、特に指摘をいただいております。

1ページの中では「保障行政」という言葉が使われておりますけれども、保障行政というのは、報告書案の上から8行目辺りで「民間の主体が公益のために活動する役割を担い、行政はそのための枠組(制度)を設定し、状況を観察して必要な関与を行うこと」という、そういう行政手法についても昨年8月の調査報告の中で提言をいただいたわけでございます。そういった提言を踏まえまして、官民連携の在り方の各論として、具体的に当委員会では「高齢者の消費者被害防止のための官民連携による見守りの在り方」をテーマとして調査審議を実施いたしました。

高齢者の見守りをテーマにした理由でございますが、2ページを御覧いただきたいのですが、現在の状況を見ますと、第1に、我が国は高齢化の進展は当然のことでございますが、その中で、例えば高齢者の独居化が進んでいる。その結果、被害が見えにくくなり、悪質事業者に狙われるような状況等があるということ。

具体的には消費者相談件数、これは資料の3ページから5ページに図が入っておりますけれども、相談件数は2007年を底に増加傾向にある。それから、5ページ、図4ですが、被害金額も高額になっている状況がございます。

こうした状況を踏まえまして、行政関係者、事業者及び有識者からのヒアリングや調査を実施して、それぞれの地域に応じた官民連携による高齢者の見守り事例を収集し、考察をいたしました。

本報告書の構成でございますけれども、いろいろヒアリングをし、調査をした結果については、報告書の第4のところを見ていただきますと「官民連携による高齢者の見守り事例集」という形で、調査結果が11の事例としてまとめられております。

皆様、概要版の資料2-1の最後のページをお開きいただきますと、ここにその具体的な項目が一覧になっております。第4の見守り事例、これが今回の報告の一番基礎になる部分でございまして、具体的な事例を収集して、皆様の参考にしていただこうということでございます。

第4の事例集は、3つの大きな柱から成り立っておりまして「多様な主体と行政の連携による消費者被害防止の取組」が5つございます。「消費者被害防止につながる見守り活動」が4つでございます。そして「ICTを活用したコミュニティの再構築」が2つ、合計11の事例を紹介しております。

こうした事例を踏まえつつ、先ほど委員長からもお話がありましたが、本委員会としましては、本年3月に「官民連携による見守りシンポジウム~高齢者の消費者被害防止に向けて~」を開催いたしました。この内容については、本委員会でも報告したところですが、これは概要版、資料2-1の5ページ、第3のところに簡潔に整理してございます。

官民連携によるシンポジウムは、2部構成でございまして、第1部においては、ヒアリングにより収集した全国の見守り事例の中で、特徴的な活動をされている団体に御参加いただいて、発表とディスカッションを行いました。これにより、高齢者の見守りの在り方や、新しいアイデアについて情報を共有し、発信を行うことができたと考えております。

第2部ですが、これが今回のシンポジウムの新たな試みの一つだったわけでございますが、消費者委員会としては初めて、ワークショップを開催いたしました。会場の傍聴の方々も参加して、高齢者が地域とつながりを作るにはどうしたらよいかという共通の問いかけに関して、理想の未来を具体的に描いて、それを実現するためにどういう方法があるのか、これを考えるという作業を参加者全員でいたしました。そして、具体的な新しいアイデアを生み出す方策を実践いたしました。

第2部は、多様な視点による多くのアイデアを得るということが目標でしたが、この場におきまして、行政の担当者、消費者問題に関する専門家、見守る側と見守られる側、さまざまな立場の異なる参加者が立場を超えた形で議論をすることができたということで、さまざまな情報、アイデアを参加者が共有することができたのではないかと思います。

したがって、この第3、第4というのは、私どもが調査の中で取り組んできた具体的な中身でございます。第3は21ページから、第4は109ページから、関連する資料が報告書に添付されておりますので、是非ご参照ください。

以上のような取組を踏まえて「高齢者の消費者被害防止のための官民連携による見守りの在り方~現状と可能性~」について、第2の部分、7ページから20ページで整理してございます。

これにつきましても、概要版のほうで言いますと、3ページに「1 取組の現状」。

4ページに「2 今後の可能性」ということで、一覧になっていますが、以下、本文に沿ってお話をしたいと思います。

本文は7ページからでございます。

「1 取組の現状」のところでは、取組の主体や連携の仕組みの違いなどに着目しまして、4つほどの分野について検討しております。

(1)は、「消費者行政部門が行う官民連携による高齢者の見守り」です。

(2)は、消費者安全法を踏まえまして「行政による高齢者の見守りネットワークづくりの促進」です。

(3)は、福祉部門や警察等「多様な行政部門で行われる官民連携による高齢者の見守り」です。

(4)は「民間主体となる高齢者の見守り」、この4つに分けて現状を整理しています。

まず(1)の「消費者行政部門が行う官民連携による高齢者の見守り」につきましては、香川県における振り込め詐欺等の特殊詐欺による被害に早急に対応し被害の拡大を防止するため、警報を発令して関係機関に情報を周知する制度等を取り上げています。

資料では8ページ、(2)ですが、消費者安全法を踏まえた見守りネットワークについては、改正消費者安全法が本年4月から施行されたということで、消費者安全確保地域協議会の設置や安全法に基づく情報共有について触れております。

安全確保地域協議会の設置につきましては、自治体によりさまざまな形があり、既存のネットワークをうまく活用するケースや、他方で既存の複数のネットワークからどれを活用すべきかということ等に苦慮しているケースも見られました。そういうことで、まだ立ち上がりの時期でございますが、その現状について整理してございます。

10ページでは、(3)の論点として、多様な行政部門で行われる官民連携による高齢者の見守りの現状について整理をしています。

福祉部門で、主としてこれまで見守りネットワークというものが構築されておりました。あるいはその他のつながりを活用した消費者被害防止の取組に着目をいたしまして、地域の商店街と連携して、振り込め詐欺による被害防止策を行っている事例や、警察が中心となって高齢者と日常的に接する機関、例えば接骨院や理髪店などが見守りに参画している事例等を紹介いたしました。

(4)の「民間が主体となる高齢者の見守り」については、 資料では11ページの中段から下のところで、見守りの対象である高齢者が行政からの情報を活用して、同世代の高齢者の消費者被害防止の見守りを行っている例など、行政と連携して高齢者の見守りに積極的に取り組む民間団体について触れております。

こうした取組の現状を踏まえまして、12ページ以降は「2 今後の可能性」ということで議論をしています。

まず一番重要な点としては「コミュニティの再構築」ということを掲げていまして、このコミュニティの再構築については、本報告書では3点を指摘しております。

第1は「コミュニティの再構築の重要性」です。

言うまでもないことですが、今日において、これまで地域のつながりとして結成されたコミュニティが希薄化する状況の中で、これをどう再構築していくかということでございます。

ヒアリングやシンポジウムを通じまして、高齢者の被害防止を考える上でコミュニティの再構築の必要性、重要性というものについて皆様から御指摘があり、この点について、本委員会でも非常に重要であると認識いたしました。

消費者被害防止のためには、地域のコミュニティを再構築しようという視点が不可欠です。高齢者の消費者の被害のみならず、地域全体の課題解決のために、行政と民間の主体ができることを整理していくべきだと老人クラブが指摘をされましたけれども、これは大変示唆に富んだ御指摘ではないかと考えおります。

また、これらの高齢者の活動の場として、高齢者がやりがいを持って地域のために活動に取り組めるよう、地域が掲げる課題をビジネスの手法により解決するという考え方も重要と考えております。

13ページ、コミュニティの再構築に関して、その重要性、意義を論ずるだけではなく、具体的な手法として、「地域サポーターの活用」ということが注目されるのではないかと考えております。

地域サポーターというのは、専門家よりも身近な存在として、地域住民への啓発活動などを行っていますが、こうしたサポーターが高齢者を地域で見守り、異変に気づいた際には、専門家につなぐ役割を担っていくことが期待されております。

行政におきましては、消費者啓発講座の受講者や団塊の世代の退職者等を含めて、地域サポーターの担い手を育成していくとともに、基礎自治体や消費生活センターと連携して、その主体的な活動を支援することが求められております。

そして、13ページの下のほうですが、3番目に「地域や人とのつながりと高齢者の見守り」という問題がございます。

個人が尊重され、自治会、町会といった地域団体への参加者も減少し、時代の潮流は地域や人とのつながりが弱まる方向に向かっているとも言われております。しかし、ヒアリング等を通じて高齢者の効果的な見守りのためには、地域と人とのつながりを取り戻すことが求められていると強く感じた次第でございます。地域サポーターとさまざまな手法を通じてネットワークを再構築し、つながりを取り戻していくということでございます。

「2 今後の可能性」の(2)として「ICTの活用と人とのつながり」ということでございます。

これについては、14ページの中段以下「ICTの活用と人とのつながり」という項目がございます。

例えば、行政が住民に情報を届ける場面において、情報を民間の主体が利用しやすい形で提供することにより、民間が効果的に必要な人に情報を提供できるといった視点もございます。

また、ICTをうまく活用することによって、人とのつながりを円滑にすることや、遠方の人でも見守りを行うことを可能にすること、さらには、地域の問題解決の場を構築し、多様な主体の参加を可能にすることを指摘しております。

16ページ「2 今後の可能性」の(3)として「継続的な官民連携のために」とありますけれども、コミュニティの再構築や官民連携の取組を継続していくということをどうしたらいいかということでございまして、行政内部の縦割りにとらわれることなく、あらゆる分野において連携が不可欠であるということを指摘しております。

また、民間の主体との継続的な連携を行っていくためには、参画する民間主体が、本来的な事業や活動を生かして無理なく実施できることや、主体的に実施できることを分担する仕組みであることも重要であると考えております。

以上のような現状及び可能性を検討しまして、最後に、この報告書では、高齢者の消費者被害を防止するためのさまざまな取組を、地域によって状況は異なりますが、地域の状況に合わせてうまく活用していただくということが重要ではないかと指摘しています。そういう意味で、報告書の第4では、先ほど申し上げましたように11の事例を紹介しております。

あるいはシンポジウムの中では、事例を紹介するだけではなくて、新たに手法を生み出すためのワークショップについても詳しく述べておりますので、そういったものをうまく活用して、地域の関係者がそれぞれの地域の実情に即して今後の在り方というものを考えていただき、新しい仕組みを構築していくことができれば幸いだと考えております。

以上でございます。

○河上委員長 ありがとうございました。

それでは、ただいまの説明の内容について、御質問、御意見のある方は発言をお願いしたいと思います。

いかがでしょうか。

長田委員、どうぞ。

○長田委員 とてもいいまとめをしていただいていると思います。地域における見守りは対象がいろいろあったとしても、とにかく地域に期待されているものというのはとても大きくて、それが官民連携で行われるということはとても大切だと思います。

今、御紹介いただいた中のICTを利用した見守りのところで、一言だけ申し上げておきたいと思いましたのは、とても有効で、特にこれから団塊の世代がもうちょっと高齢になっていけば、普段から使い慣れているものにもなるかもしれなくて、それは有効だと思うのですけれども、例えばシンポジウムの、これはワークショップのところの資料になるのでしょうか、45ページに書いてあるのですが、PCのフリーズに対応できるというようなところが紹介されているのですけれども、タブレットにしろ、スマートフォンにしろ、パソコンにしろ、使い出したときは大丈夫でも、だんだん高齢になって、機械がこの間までは大丈夫だったのにということはいろいろ出てくると思います。

ICTを利用した遠い地域の人とも気楽につながっていって、それが見守りにつながるとともに、現場で本当に困ったときに手が差し伸べられる近いつながりというものが絶対的に必要だというのは感じていて、対面でのつながりというものをどう確保していくかというのは、特に過疎の地域についての大きな課題だなと思っています。

○河上委員長 ありがとうございました。

ほかにはいかがでしょうか。

大森委員。

○大森委員 とても参考になる事例などが紹介されていて、いいまとめだと思うのですけれども、実際に同じようなことを取り組もうと、行政がいろいろなところでやってもらわないことには、せっかくやったことが無駄になってしまうので、これをいかに行政の方々に周知していただくか、こういう必要性があるのだということを市町村のレベルの方にでもわかっていただくような方策というものが、今後の課題だと思います。

○河上委員長 これは特に名宛て人がいなくて、今回の場合でしたら、高齢者の見守り活動に参加しているあらゆる人に読んでもらいたいということです。せっかく作った資料ですから、できるだけ生かしてもらえるようにということで、何か情報を行き渡らせるために考えないといけないかもしれないですね。

○大森委員 官民連携のヒアリングのときにお聞きした中でも、いろいろなところで実施できますかとお聞きしたときに、行政の方の温度差によって、スムーズにいく、いかないということがあるというお答えが返ってきましたので、是非担当のいろいろな行政の方に周知できる方策を考えていきたいと思います。

○河上委員長 池本委員長代理、どうぞ。

○池本委員長代理 今の大森委員と同じ問題意識なのですが、この消費者庁ができて以降の6、7年の間に、交付金によって事業費は少し余裕ができてきて、いろいろ事業ができるようになっているのですが、実は、消費者行政の担当職員というのは全然増えていないのです。むしろ若干減っているのです。

これまで消費生活センターを作って相談員を配置してというところまでは、いわば交付金によって維持ができた、あるいは啓発の資料とか、それを配ってくださいというところまではできたけれども、地域の中で官民連携の新しい動きを作るとなると、これこそ職員が動かなければ動きがとれない、とりわけ市町村の職員が地域の中の関係団体、関係者に声をかけて集まってもらったり、情報提供をしたりしなければいけないし、あるいは消費生活サポーターのような行動できる人を養成していかなければいけない。それが、職員が十分配置されていない多くのところは、兼務であれもこれもやっているということで、ここから先が恐らく熱心に動くところとそうでないところの格差がもっともっと出てくる恐れがあると思っています。

その意味では、例えば国民生活センターでの職員研修、また、それを都道府県レベルでも職員に向けて研修をするとともに、実は一番悩ましい、難しいことなのですが、消費者行政の担当職員を実質的に増やすために、国から自治体へどう働きかけたらいいのかということも考えていく必要があるのだろうと思います。そこがなければ、もちろん専任をぱっと一挙に増やすことはできなくても、兼務であってもそれを少し減らして、消費者行政の時間を割けるようにしていくためにどうするのかを考えていく必要があると思います。

ちなみに、私がこの中で注目しているのは、消費生活サポーターという、民間で消費者問題に取り組もうという人を養成し連携することなのですが、都道府県レベルだと、30ぐらいの自治体で養成しているのです。ところが、本当にその人たちが市町村の消費生活センターなり消費者行政とつながり、地域の団体とつながって活動ができているかというところがまだまだ不十分なのではないか、その辺りは消費者委員会としても引き続き、具体的な実情を調べていく、あるいは国民生活センターなり消費者庁なりにお願いして、そこからきめ細かな調査をして新しい動きを作っていく必要があるのだろうと思います。

以上です。

○河上委員長 人間の問題になると、資金的にはなかなか難しいところがあるという感じはしないではないのですが、消費生活は市の行政のあらゆるところに本当は関わっているはずなので、本来であれば、それぞれの部門の人の消費者マインドのようなものをきちんと掘り起こしてやっていけるようになるのが一番です。いろいろヒアリングをしていても、本当に消費生活課の課長がかなり大胆にいろいろなさっていたとか、あるいは警察の市民生活課の方が中心になっていろいろなことをなさっていたというわけで、そのための専門家ということでなくてもできるはずなので、そこも含めて、職員研修の場でちゃんとした活動ができる人を育てていくことが大事なのかという気がいたします。それにしても、サポーター役になれる方の絶対数が少ないことは間違いないですね。

ほかには。

増田委員、どうぞ。

○増田委員 ありがとうございました。

企業の問題として、今回のこの報告書をよく理解するということと、先日発表されました消費者志向経営の報告書もありますけれども、それと非常に近いところにあるのではないかと思います。両方を理解することによって、高いレベルの消費者対応というものが期待できるのではないかと思いますので、両方を企業の方によく理解してもらうような周知方法をお願いしたいということと、サポーターに関しましては、サポーターの方たちは一般の方たちなので、どうやって活動していいかわからないでいるものの、活動したいと思っている方たちもいらっしゃることを確認できています。

したがって、非常に時間と労力がかかる作業ではあるのですけれども、そこは継続的に行政あるいは消費者団体が協力して、そのサポーターの方たちのバックアップ、あるいは誘導してくいということに力を入れていく必要があるのではないかと感じています。

○河上委員長 ありがとうございました。

ほかにはいかがでしょうか。

樋口委員、どうぞ。

○樋口委員 報告をまとめていて、特に痛感したのですけれども、コミュニティの「再構築」とか、地域と人とのつながりを「取り戻す」というのは、決して「過去形」の話、昔に戻るということではないと思っています。ここの部分は、ICTの問題あるいは継続的な官民連携という全体を含んだ問題とも関連しますが、例えば13ページから14ページにかけて、中学生や大学生が高齢者の方とのつながりを求めている、あるいは老人クラブが同世代の方々とつながりを求めていくということが報告書にも記載されていますけれども、そういったことは、古いコミュニティに戻るのではなくて、これから新しい時代にふさわしい体制作りをすることなのだということについて、我々も、もう一度認識を新たにしておく必要があるのではないかと思います。ここは知恵の出しどころですので、ICTの話もそのためにここに書いてあるわけですから、是非このワークショップ方式などをうまく活用して、できれば全国の方々が新しい知恵を出して、新しいコミュニティを構築していただくことができれば、「取り戻す」以上の成果があるのではないかと痛感いたしました。

○河上委員長 ありがとうございました。

官民連携の切り口から、中原委員も参画していただきましたけれども、何か御意見はございますか。

○中原委員 前回の総論的な報告では、保障行政という理論的な観点から、行政のできることに限界がある中で官民連携をどう工夫していくかという問題が論じられましたけれども、今回の報告では、その具体化として、興味深い事例がたくさん示され、また、ワークショップなどによっていろいろなアイデアも出されたところですので、今日の御議論にもありましたように、これから現場で実現されていくことを期待したいと思います。

○河上委員長 ほかによろしいでしょうか。

それでは、この報告書案の内容については、皆様の了解をいただいたということで、原案どおり取りまとめたいと思います。

先ほど申しましたけれども、これは名宛て人が特にないわけですが、およそ消費者行政に携わっている方々、皆さんに読んでいただいて、是非参考にしていただければありがたいと思います。

恐らく、消費者行政にとって地方消費者行政をどうやっていくかというのは、これからの非常に大事な鍵になるだろうと思います。もちろん、ここで出したいろいろなケースがそのまま使えるということではなくて、それぞれの地方の実情があるでしょうから、その実情に合わせた形で参考にして活用いただければということでございます。

先ほど、大森委員からもありましたけれども、せっかくの調査報告書ですので、できるだけいろいろな方に読んでいただいて、参考にしていただけるように、周知方法を事務的にも検討をしないといけないと思います。

それでは、この報告書の内容については、このような形で取りまとめをさせていただきます。どうもありがとうございました。

(消費者庁着席)

≪4.公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会の第1次報告書について≫

○河上委員長 次の議題は「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会の第1次報告書について」であります。

公益通報者保護制度については、昨年3月に閣議決定をされた第3期の消費者基本計画において「制度の見直しを含む必要な措置の検討を早急に行った上で、検討結果を踏まえ必要な措置を実施する」こととされております。そのため、消費者庁では昨年6月から本年の3月まで「公益通報者保護制度の実効性の向上に関する検討会」を開催し、10回にわたって公益通報者保護制度の実効性向上のための方策の検討結果について、去る3月30日に第1次報告書として取りまとめ、公表をいたしました。

本日は、消費者庁にお越しいただいて、この報告書の概要を伺った後、意見交換を行いたいと思います。

消費者庁におかれましては、お忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございます。

それでは、大変恐縮ですけれども、15分程度で御説明をお願いいたします。

○消費者庁加納消費者制度課長 消費者庁の加納と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

お手元、資料3-1、3-2になっているかと思いますが、先ほど御紹介いただきました検討会の第1次報告書が3-2でありますけれども、その概要が3-1であります。

まず、3-1を御覧いただきますと、この公益通報者保護法とはどのような法律か、その概要を御紹介しております。

これは、制定当時に食品偽装問題でありますとか、さまざまな、いわゆる企業不祥事がその企業の内部からの通報を端緒として発覚したことから、そういった通報者の保護を適切に図りつつ、法令遵守を図ることを目的とした法律であり、平成16年に成立しまして、平成18年4月に施行され、10年ほどたっている法律であります。

「2.公益通報の対象」ということでマル1からマル7まで書いておりますけれども、こういったさまざまな要件を満たすものをこの法律の保護の対象としているところでありますが、例えば「労働者(公務員を含む)が」となっておりますけれども、現役の労働者ではない人、退職者が通報した場合はどうかとか、役員が通報した場合はどうかといった問題があります。

また、例えばマル4の「通報対象事実が」というところでありますけれども、※印で刑法、食品衛生法など、一定の法律の刑罰規定違反という形になっておりますが、こういった形で通報対象事実を絞り込んでいるのですけれども、これが一般国民からするとわかりにくいのではないかといった御指摘もあるところです。

「3.公益通報者の保護」でありますけれども、現行法は解雇無効などのいわゆる民事効を規律しているものであります。これについては、後ほど御紹介いたしますが、抑止効を高める観点から、罰則などの導入を検討してはどうかといった指摘があります。

下のほうに通報者の保護の要件ということで、事業者、行政、報道機関、その他第三者ということで、3方向に矢印が出ておりまして、それぞれ吹き出しがありまして、例えば事業者に向けての矢印のところですと「(1)内部通報の保護要件」ということで、アで「不正の目的の通報でないこと」といったことが要件とされております。

「(2)行政機関への通報の保護要件」となりますと、アに加えましてイで「通報内容に真実相当性があること」といった形で、要件が加重される。左側の報道機関、その他の第三者の場合には、ア、イに加えてウといった要件が更に加重されるといった形で、段階的な要件立てとなっております。

2ページ、検討会の内容であります。

「背景」のところに書かせていただいたことは、先ほど少し触れさせていただいたとおりでありますけれども、2段落目に書いてありますように、近年における不祥事といったケースも、非常に著名な企業における内部通報がうまく機能しなかったと思われるケースというものが残念ながら散見されるわけでありまして、最近、そういった企業不祥事においては、第三者調査委員会というものが設けられまして、弁護士等が調査をする、その調査結果が公表されておりますが、そういったものを見ますと、当該企業において、通報隠しのようなことが行われたのだとか、そういった指摘もあるところであり、適切な内部通報制度の機能強化を検討しなくてはいけないのではないかと思われるところであります。

「また」と書いておりますけれども、行政における不適切な例というのも残念ながらあるところでありまして、通報を受け付けた側の行政における適切な対応というものが必要ではないかと考えられるところであります。

そこで、有識者委員から成る検討会を立ち上げまして、昨年から今年の3月にかけて検討会を開催してきました。その第1次報告書、第1次というのは第2次が予定されているということでありまして、その点については、後ほど御紹介をしたいと思います。

報告書は検討会の内容、検討状況を踏まえてまとめたものでありますけれども、大きく3つの内容から成っておりまして、1つ目は「民間事業者の取組の促進」ということであります。

企業不祥事がある場合に、企業自らその是正を図ることが望ましいことは言うまでもありません。そこで、企業が自主的にそういった通報を適切に処理して、自ら違法行為の是正を図ることが望まれるわけでありまして、残念ながら現状におきましては、先ほど申し上げたように、企業における自浄作用が発揮されなかったと見られる事案が散見されるといったことでありますとか、上場企業におきましては、通報制度はかなりの割合で整備されてきておりますけれども、中小企業においては、数値的にはまだ低い状況であるということであります。

それへの対応ということで、矢印でマル1マル2と書いておりますけれども、マル1は従業員等が安心して通報・相談できる内部通報制度を整備するといったことを促進する観点から、具体的には、今、消費者庁では、事業者向けのガイドラインというものを設けておりますけれども、これを改正して、より具体的な内容を盛り込むことによって、事業者が内部通報制度を積極的に整備していく環境整備を図っていきたいと考えております。

具体的な内容としましては、例えば匿名性の確保、これがないと従業員としては安心して通報できないということだと思いますので、その方策として、例えば外部窓口を積極的に活用するでありますとか、あるいはいわゆる社内リニエンシーでありますけれども、幾つかの企業ではこういった先進的な取組がありますが、そういう手当を社内において講ずるといった事柄。

それから、経営幹部から独立した通報ルートというものもありまして、企業トップ自らが不祥事を主導していたという残念な例もありますので、そういった場合でありますと、経営幹部からの独立した通報ルートというものが必要ではないかと考えられるところでありまして、そういったことも盛り込んでおります。

また、中小企業でありますけれども、例えば企業グループというものがあるのであれば、子会社の通報も親会社において受け付けるとか、そういった取組は既に幾つかの企業においてされているところでありますが、ガイドラインの中に盛り込むことを検討していきたいと考えております。

2のインセンティブの問題であります。企業として自主的に取り組む上で、さらに、インセンティブを与えることも重要ではないかと思われるわけでありまして、1つは認証制度のようなものを設けて、ガイドラインに沿った十分な通報体制が整備されている企業について認証していくことを検討していきたいということであります。

また、国の行政機関、地方公共団体に対して、調達・契約等において、こういった体制が充実しているということを加点事由にするなどの積極的な評価ということについても検討したいと考えております。

次に「行政機関の取組の促進」でありますけれども、先ほど少し触れましたが、残念ながら問題となる事例というものもありまして、通報の放置でありますとか、ずさんな調査、通報に関する秘密の漏えいといった事案があったということでありますので、こういった点につきましても、ガイドラインの改正によって、しっかりとした対応を図っていきたいと考えておりまして、具体的な方策として、例えばフィードバックの問題でありますとか、モニタリング、あるいはマル3に書いてありますように、行政の対応に対する意見や苦情などの受付といったことを検討していきたい。とりわけ、このモニタリングや苦情受付等につきましては、消費者庁が一定の役割を果たすことを検討していきたいと考えております。

地方公共団体でありますが、これも中小企業と似たようなところがありますけれども、残念ながら数値としては低い。理由としては人の問題、お金の問題が大きいと思われます。

そこで、こういったところにも通報体制を整備していくといった環境整備を図っていく必要があると思われるところでありまして、1つは、赤印で書いてありますような地方公共団体向けのガイドライン、これは今、中央省庁向けのガイドラインはありますけれども、地方公共団体向けというものはありませんので、ここはまず整備をして、それを参考に地方公共団体において窓口を設けるといった動きを促していきたい。

さらには、地方消費者行政推進交付金も一定の範囲内では、この通報窓口の設置に活用できることになっておりますので、そこを積極的に周知していきつつ、活用を促していきたいと考えております。

右の「通報者保護の要件・効果」の点であります。

これは「1 通報者の範囲」以下、幾つかの論点を掲げておりますけれども、制度的な手当の必要があるものでありまして、現状では、この検討会の議論は両論併記にとどまっておりまして、更に専門的観点からの詰めた検討が必要であろうという状況であります。

そこで、この検討会のもとにワーキング・グループを設置しまして、そこでこういった法的な観点からの検討を加えた上で、しかるべき時期に取りまとめをして、検討会としての第2次の報告書につなげていきたいと考えております。

主な論点は、1から4まで幾つか書いておりますけれども、例えば通報者の範囲につきましては、現行制度では労働者となっておりますが、退職者等の問題がありますので、こういったところについて検討を加えていきたいと。

悩ましいのは、これらについてどういった法的保護を与えるかという点につきましては、詰めた検討が必要だと思います。

「2 通報対象事実」でありますけれども、政令で列挙する形になっているものについては、一般的にはわかりにくいのではないかという指摘がありますので、わかりやすいメルクマールを設定するなど、わかりやすさという点も踏まえた検討が必要ではないかと思われます。

「3 不利益取扱い禁止に違反した場合の効果」でありますけれども、先ほど申し上げましたように、現行法は解雇無効等の民事効を規定しているということでありますが、裁判で長期間争うという事例もありますので、抑止効を高める観点から、刑事罰や行政的措置の導入というものも考えられるところでありますが、当然、刑事罰ということになりますと、可罰性あるいは犯罪構成要件をどう検討するかといった点について、慎重な検討が必要な状況であります。

また、行政的措置につきましても、どういう機関がどういった措置を講ずるのかといったことについては、慎重な検討が必要かと思われます。

「4 その他」はこの四角の中に、例えば資料の持ち出しの免責の問題でありますとか、外部通報の保護要件の緩和の問題でありますとか、幾つかの論点について書かれておりまして、どれ一つとっても非常に重たい論点でありますけれども、こういった点につきまして、引き続き検討を重ねていきたいという状況であります。

結論としましては、右下に書いてありますように、運用改善で対応可能なもの、ガイドラインの改正などによってできるもの、あるいは周知をすべきものといったところもありますので、そういった点につきましては、早急にやっていきたいと考えております。

それ以外の制度的な手当が必要な事項につきましては、更にワーキング・グループにおいて検討を重ねた上で、取りまとめたいと考えております。

現状は、以上であります。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

それでは、ただいまの説明内容について、御質問、御意見のある方は発言をお願いいたします。

いかがでしょうか。

大森委員、どうぞ。

○大森委員 2点質問させていただきます。

私たち一般消費者から見ると、最近は内部の通報により消費者にとって不利益な事実が明るみにされたと思って、公益通報者保護制度が機能しているのだろうと喜んでおりましたが、消費者庁の評価では、十分機能されていなかったということになるわけですね。その辺を、もう少し詳しく教えていただけたらと思います。

あと1点、資料3-1の1ページのところに、公益通報者の横に吹き出しのように(1)(2)(3)となっております。内部に通報する場合、行政に通報する場合、その他外部のマスコミ等に通報する場合で要件がいろいろついているわけですけれども、この要件をクリアすれば、(1)(2)(3)の順でなくても通報していいのかどうか、その辺を教えてください。

○消費者庁加納消費者制度課長 まず2点目は、そのとおりであります。順番は関係ありません。

1点目でありますけれども、この制度が機能していなかったのかというと、全く機能していないとは思いません。公益通報者保護法ができまして、内部通報による一般国民の意識というか、そういうものはかなり変わったのではないかなと見ておりまして、最近でもいろいろな企業不祥事はありますけれども、内部通報によって発覚するものがあります。その場合に、通報を適切に処理することによって企業が自ら是正した例もありますので、そういう意味では機能している面もある。

ただ、十分機能していない面もあるのではないかという点で、最近の幾つかの企業不祥事の例を御紹介いたしました。個別に具体的にどの企業がどうだということは申し上げませんけれども、先ほど申し上げた第三者委員会の調査報告書などを見ておりますと、例えば通報を抑止するような取扱いが社内であったとか、そういった残念な例も見られるところでありますので、その点については、それを踏まえて検討が必要ではないかと思われるところです。

○大森委員 ありがとうございました。

○河上委員長 ほかにはいかがでしょうか。

増田委員、どうぞ。

○増田委員 通報者の範囲につきまして、退職者に関しては、よく退職されてから通報するケースは多いのではないかと思います。消費生活センターにも、退職されてからの通報というものも過去にございまして、それをどういう形で処理していったらいいのかというところも消費生活相談員の中では難しい問題ということもありまして、ですから、退職者の方については、是非入れていただきたいということと、そういう通報がある場所が、消費生活センターにもあり得ることだと思いますので、公益通報のことについては、よく相談員が理解すべきことだと思いますから、よろしくお願いしたいと思います。

○消費者庁加納消費者制度課長 まず、この公益通報者保護法につきましては、通報者を保護する側面と、通報を受け付けた行政が適切な処理をすることによって法例遵守を図るという2つの側面があります。

例えば、センターのほうに、退職者からにしても、通報があった場合に、行政としては、退職者であろうとなかろうと適切に処理をすべきだと思います。そういった通報があって、消費者被害の恐れがあるという通報があれば、真摯にそれに向き合うというのが、行政として果たすべき役割だと私は思います。

それとは別に、退職者ないし通報した人の保護をどう図っていくかというところについてはまた別途の問題がありますので、それを通報者保護法の中でどこまで保護するかという問題設定でありますが、センターにおいては、退職者であろうがなかろうが、通報があったら適切に処理するのが当然であると思います。

○増田委員 消費生活センターでできることというのは、それをPIO-NETに入力するということが第1に必要だと思います。それはやりますので、データとして入ると思うのですけれども、その後の処理について、どこまでそこの消費者生活センターが対応するのかというところについては、なかなか明確ではないのではないかと思うのですけれども、その辺について教えていただければと思います。

○消費者庁加納消費者制度課長 それは、そのセンターとして果たせる範囲内では果たすべきだと思います。

要するに、端緒情報としてあったわけですから、これは従業員であれ、同業者であれ、一般国民であれ、何であれ関係ないわけでありまして、そういった情報を適切に処理する。その中で処分、その他、注意喚起の必要があるというのであれば、そういうことをすればいいわけですし、センターとしてできる範囲内で対応するということではないかと思います。

○河上委員長 よろしいですか。

大森委員、どうぞ。

○大森委員 先ほどの件なのですけれども、資料3-1の1ページで、順番はどうでもいいということであれば、(1)(2)(3)と書かれると、まず内部に通報してうまくいかなかったら行政に、それでもうまくいかなかったらマスコミにと段階を追ってやらないといけないと誤解される可能性があるのではないかと思いまして、できれば、この番号を外していただくとか、どこからやってもいいよという一言を入れていただくなどしていただいたほうが、大事なことが遅くなって後手に回ることが考えられます。御検討ください。

○消費者庁加納消費者制度課長 この(1)(2)(3)という書き方がいいのかどうかということだと思いますので、直す余地はあるのかなと思うのですけれども、大森委員のおっしゃったことは、実はこの立法のときからさんざん繰り返し説明して、その都度順番ではないのですということを周知してきているという状況でありますが、それでもなお足りないということがあるのかなと。足りないのであれば、そこは違うということを更に周知しなくてはいけないのかなと思いました。

○大森委員 議論に参加された方はごく専門的な一部の方で、この公益通報者保護制度というのは、一般の人にいろいろ使っていただく必要があるかと思うので、そういう議論までくまなく知っている一般消費者はほとんどいないと思いますので、よろしくお願いします。

○河上委員長 ほかには。

では、長田委員、その次に鹿野委員、お願いします。

○長田委員 概要のほうにもありますけれども、消費者庁が通報の窓口になる場合で、概要を見ると「各省庁の通報窓口のほか消費者庁に通報窓口を設置すること等、消費者庁が果たすべき役割を検討」と、通報対応状況のモニタリング、行政機関の通報対応に対する意見・苦情等の整備促進の部分について、消費者庁が果たすべき役割を検討ということですね。

報告書の27ページを見ると、消費者庁はそれに加えて、直接調査権限を持つべきではないかという意見もあったのではないかと思いますが、私はそうでなければ、各省庁にあなたのところのですよと振り分けて、ちゃんとやっていますねと幾ら外から見ていても、救えない場合が出てくるのではないかと思います。

これまでのケースでも、真摯に通報されているものを、報告書にも書いてありますけれども、国のほうでそのまま名前を企業に伝えてしまったとか放置したとか、企業の中で退職にまで追い込まれた状態になって、役所に通報した場合、退職者は保護対象ではありませんと放置されたケース等もあったと思います。

公益通報でなければ絶対になかなか表に出てこない不正、企業ぐるみ、化血研のケースなどはそうだと思いますけれども、外から幾ら別に調査をしてもなかなかわかりにくいものというのはいっぱいあると思いますので、そういう場合のことを考えても、消費者庁に調査権限を置くというところまで、この後の検討になるのだと思いますけれども、是非取り組んでいただきたいと思います。

○消費者庁加納消費者制度課長 まず、先ほどの増田委員の御指摘にも関係すると思うのですが、通報を受け付けた行政としては、真摯に対応すべきだと思います。これは国であれ、センターも含めた地方公共団体であれ、同じと思います。

長田委員の調査権限でありますけれども、調査権限というのは、何らかの行政措置ないし行政処分をするために調査権限があるのが通常でありまして、消費者庁が調査権限を持つ、では、何の処分をするのかということとセットでなければならない。難しいのは、通報者保護のための行政処分とは何かということでありまして、ぱっと思いつくのは原状回復命令などの処分ということになるわけでありますが、これは労働行政そのものであります。それを消費者庁がやるのが適当かどうかという点については、よく考える必要があると思います。

○河上委員長 退職者の場合に「保護する」というと、退職者自身に対する損害賠償のようなものを考えておられるのですか。

○消費者庁加納消費者制度課長 例えば、退職者の場合でしたらそういう措置も、それは民事的な話だと思いますけれども、よくありますのは、例えば解雇をしたときの措置としては、原状回復命令のような形でそれをするのが、行政がやる処分としてはあり得るのではないかということであります。

○河上委員長 これは退職者と言わなくても、通報の結果として解雇されてしまった場合は、労働者でも構わないわけですね。

○消費者庁加納消費者制度課長 労働者が何ですか。

○河上委員長 先ほどの枠組みでいくと、役員であるとか退職者であるとか、今までの枠では捉え切れないような人を取り込む必要があるのではないかという話がありましたね。特に退職者の保護の問題になるということになったときに、やめたことについては問題ないのだけれども、今、更に保護する必要があるという話なのでしょう。

○消費者庁加納消費者制度課長 ですから、退職者が通報した場合に、退職者が何らかの不利益を被ったということが通報を理由としてあった場合に、保護を図る必要があるのではないかと、その保護の図り方としては損害賠償というものがあると思いますけれども、そのほかに。

○河上委員長 不利益措置があったときに。

○消費者庁加納消費者制度課長 退職者の場合ですので、不利益措置というのは、例えば地位の降格などはもはやないわけです。そういう場合は想定されないのですけれども、だから、基本的には損害賠償などの処理をするのかなと思いますが、例えば労働者というのがあるわけです。労働者は今でも保護の対象になっている。労働者の場合、解雇されたあるいは配転された降格されたといった不利益取扱いを被るわけですから、それに対する救済措置は何ですかということになると、一番わかりやすいのは、原状回復命令ということになるのではないかと思います。それは結局、労働者保護行政なわけです。

○河上委員長 では、鹿野委員どうぞ。

○鹿野委員 この公益通報者保護制度は、先ほどから御意見としても出されましたように、内部しかわからないような不祥事が、この制度によってより明るみに出てきて、それが消費者の利益につながるという意味で非常に重要な制度だと思いますし、それがうまくいくケースももちろんあるとはいえ、不適切な形で、この通報者保護制度の本来の目的が阻害されるようなケースもかなりあったように伺っておりますので、そういう意味では、今回これをもっと機能するように改善していこうという取組については、非常に望ましいと考えているところであります。

私から2点質問させていただきたいのですが、1点目は、そもそもの現状のことを教えていただきたいのですが、これは通報者、労働者がこの制度を十分に知っていて初めて通報という、通報もこういう場合だったらこうだという形で要件立てがされているようですけれども、通報という行動に出るのだろうと思います。

特に労働者として、例えば私がこれはまずいと感じたときに、どこかに言わなくてはということになったときに、まず、どこに言えばいいのかがわからない状況もあり得たかと思うのですけれども、それで何となく想像ですが、多くの場合は、この内部で起きていることを自分の直接の、小さなことであったらまだしも、大きな問題であればあるほど、内部の人に何か言うということについては、非常に困難を覚え、ただ、外部的などこに言えばいいのか、最初の段階ではすごく悩むことがあるのではないかと想像するのです。そういう場合に対処するために、恐らくこの制度ができたときに、相当いろいろなところで周知が図られてきたのではないかとも思うのですけれども、今までどういう形で周知がなされてきたのかについて教えていただければと思います。

それと関連して、地方公共団体では窓口を設けているところが29%にとどまっているということですけれども、そういう場合については、地方の企業などでそういう問題が起こったときは、窓口がないけれども、行政のどこかに電話するなどして相談するという状態だったのでしょうか。それが第1点です。

第2点は、より具体的にこの概要のところでいきますと、2ページ目の右側のところですけれども、通報者の範囲というものを現在は労働者のみで、それを広げようということの検討が考えられているということですけれども、このマル3の取引事業者というのも確かに考えられると思うのですが、この取引事業者を加えて、これは公益のための通報だから、一定の保護を与えるという趣旨でここに書かれているのではないかと思うのですけれども、この方向性について、まだ今後専門的な観点からより精緻な検討が必要だということではありますが、今までの議論で、何かその点について具体的な点がありましたら、教えていただければと思います。

以上です。

○消費者庁加納消費者制度課長 まず1点目は、しっかりとした周知を図るというのは当然でありまして、この制度の周知につきましては、先ほど大森委員からも指摘がありましたけれども、これまで法が制定されてから、いろいろとさまざまなシンポジウムをやったりとか、周知教材を作って配布したりとか、あるいはDVDのような動画を作って消費者庁のホームページに載せておりますけれども、そういうことをしたりとか、あるいは行政機関向けの研修会を行うなど、いろいろな周知はしてきたつもりでありますけれども、なお、十分でないところがあるのではないかという御指摘があったかと思いますので、そこは引き続き一生懸命やらなくてはいけないと思います。

地方公共団体の点でありますけれども、地方公共団体が何らかの権限を持っているということがありますので、そういった場合には、そこが通報先となるわけです。都道府県に通報窓口というものが仮にないとしましても、例えば何々県の何とか部局というところがあれば、そこに対する通報というのは、この公益通報者保護法の保護の対象にはなってきます。

消費者庁では特商法だとか景表法だとか、幾つかの法執行をやっております。例えば景表法なら表示対策課という課がありますけれども、そこに対する通報というのは、それはそれでこの公益通報保護法の保護の対象になってきます。ただ、消費者庁には別途、通報窓口というものがあります。これは総務課というところに置いておりますけれども、また、各省庁においても、そういった窓口を置いて、ここに来てください、ここに来たら、そこからいろいろと割り振りますといったことはやっておりますので、そういうものが、まだ地方公共団体においては少ない状況であります。

取引先事業者の点でありますけれども、典型的なのは関連企業で下請などといった場合で、発注者側の企業が変なことをやっているということを下請企業が探知することがあるわけであります。その場合に、これはおかしいのではないかと言って、行政などに通報したら、それを理由に契約関係を切られるということがあったわけであります。それは、言うならば従業員に対する解雇と同じようなものでありますから、よくないのではないか、保護の必要があるのではないかと思われるわけでありまして、そういう問題意識は検討しているわけであります。

難しいのは、解雇の場合でしたら、解雇無効というのは確定した判例法理がありますので、比較的要件立ても明らかであります。労働契約法でも既に規定があります。これに対し、契約関係の終了ということになりますと、継続的契約関係の終了という場合にどういう場合があるのかとか、信頼関係の破壊のような類似の状況があった場合に初めて契約解除が有効になるのだといった議論があるわけでありますけれども、私が見る限り、解雇無効の確定判例ほど継続的契約一般における確定した理論があるのかどうか、解雇の場合には、労働者と事業者という形で、その契約関係は割とシンプルでありますけれども、下請でありますとか、更にフランチャイズとか、さまざまなバリエーションがある中で、継続的契約関係の終了に関する規律はどうあるべきか、これはかなり難しい議論が必要だと。これは債権法改正の議論の中でも似たような議論があったのですけれども、そこで見送られた経緯もあるということも踏まえて検討しなくてはいけないという状況であろうと思います。

○河上委員長 池本委員長代理、どうぞ。

○池本委員長代理 先ほど途中の説明でもちょっとあったのですが、2点質問します。

一つは、関係の行政機関が通報を受けたときに適切に対処することに向けたガイドラインを改正し、その関係行政機関に周知するというところの御説明はあったのですが、そもそも事業者に向けた周知というものは、消費者庁が一般的に各分野に向けて周知するということはもちろん必要だと思うのですが、それぞれの所管する、まさに通報を受けるあるいは主たる業務の監督省庁自体が、各事業者に対して内部の公益通報体制を整備せよとか、この公益通報者保護法についての周知を、それぞれの行政機関が所管する事業者に向けてやるという仕組みないし、そういう働きかけということは予定されているのかどうか。それがないと、事業者に向けた周知といっても極めて漠然とした広報をする、宣伝をするというぐらいにしかどうも見えないのではないかという心配が一つあります。

もう一つは、今後のスケジュール感のことなのですが、54ページの「おわりに」というところを見ますと、既存のガイドラインの改正、新たなガイドラインの策定など、対応可能なものは早急に実現を図るということと、消費者庁の果たすべき役割や法の改正が必要なものについて、学識経験者や専門家による検討を引き続き行うこととして、その結果に基づいて改めて本検討会で検討するという記載があります。できるだけ早く実現するというガイドラインの策定、改正などをどのぐらいのスパンで考えておられるのか。そのことと、学識経験者や実務専門家による検討、これは同時並行で進めるのか、それともガイドラインが終わって、次にやるということなのか。そして、その専門家による検討の後、改めて本検討会で検討し直すというのは、どのぐらいの時期を目途に検討を予定されているということなのか、その辺りのスケジュール感をお伺いできればと思います。

以上です。

○消費者庁加納消費者制度課長 まず、1点目の観点は、消費者庁でそういった観点からの周知は余りやったことがないということですので、是非検討していきたいと思います。各省庁の協力を得た上で、やることはどこまでできるのかということだと思いますので、例えばかつて消費者庁が所管しておりました個人情報保護法は主務大臣制というものをとっておりまして、主務大臣の責任において、それぞれの業界における周知広報を図るということはやっておりました。公益通報者保護法は主務大臣制というわけではありませんので、どこまで各省庁が責任主体たり得るかというのは分けて考えないといけないのかなという気はいたしますけれども、ただ、その協力を得た上でやるほうが効率的なこともあると思いますので、御指摘を踏まえて検討していきたいと思います。

今後のスケジュールでありますけれども、これは中身をしっかり議論する必要がある。先ほどのいろいろな御指摘、例えば取引先事業者の保護の要件一つをとりましても、これはかなり難しい論点だなと思っておりますので、検討を重ねた上でできるだけ早くやっていきたいとは思っております。

まず、ガイドラインにつきましては、改正等につきまして、できるところから早くやっていきたいと考えています。ワーキング・グループの検討と同時並行でガイドラインの検討は、それはそれでやって、ワーキング・グループの検討は同時並行でやる。このワーキング・グループは今週の28日の木曜日に第1回を開催いたしますけれども、同時並行でやっていきたいと思っております。ずるずると先延ばしにするのではなくて、どこかのタイミングで検討状況については、取りまとめを得たいと考えております。

○河上委員長 大体の見通しみたいなものはあるのですか。

○消費者庁加納消費者制度課長 やってみないとわからないというのが正直なところなのです。たとえば、先ほどの取引先の事業者の保護の一つについても、私は現時点でどうするのかというのは、定見は持ち合わせておりませんし、罰則の検討等につきましても、可罰性がどこまであるのかというのは、まだ私もよくわかりませんので、具体的にいつかというのはわかりませんけれども、一つ想定していますのは、今年の夏ぐらいまでを目途にまずは検討してみて、そこである程度出来上がるのだったら、それをまた踏まえて検討したいと思いますし、結局よくわからない、難しいという論点も多々あろうかと思いますので、その場合にはどうするのかというのを、その時点でまた考えなければならないと思います。

○河上委員長 ありがとうございました。

ほかにはいかがでしょうか。

いろいろ伺いたいことはあるのですけれども、1点だけいいですか。

不利益変更があった場合に、通報と不利益変更の因果関係、これは推定を働かせるということをしないとなかなか難しい場面があるのではないか。特に先ほどの長期的な取引関係が切られたという場合でも、公益通報をしたら長期的な取引関係が切れた、それは因果関係があったからだと推定していかないと、なかなか内部での雇用の問題だけではなくて、外との関係に関しても難しい問題がたくさん出てきそうです。その辺りの推定の規定を考えるということについては、何か議論があったのですか。

○消費者庁加納消費者制度課長 まさに、そこは論点の一つになっておりまして、今日の概要の資料の3-1の2ページの「4 その他」という論点の中に、因果関係の推定規定というものは論点として掲げられているところであります。

私も実務的な感覚として、こういうものがあると非常に救済に資することは理解するのですけれども、当然推定規定ということになりますから、その推定の前提となる事実を何と捉えるのか、それは経験則に照らして、そういった前提事実があれば推定される事実というのが、経験則上、推認されるのだといった整理がないと、なかなかここはハードルが高い気がしておりまして、単純に何かあったら推定できるとするのがいいのかどうかというのは、これはいろいろな議論をしないと難しいなという気がしています。

何でそれが推定事実なのですか、推定されるのですかといったところに答えなければならないという問題があろうかと思いますので、そこは御意見があれば、それも参考にさせていただきたいと思いますけれども、結構難しいという印象を持っております。

○河上委員長 不利益変更があったということと公益通報があったという2つがあれば推定をさせるということにしても、そんなに難しい問題ではないかなと思ったのですけれどもね。

○消費者庁加納消費者制度課長 何で不利益取扱いをしたかということですね。それは通報なのか、そのほかに勤務成績不良があるのかとか、あるいは就業規則違反の事由があるのかとかということがあり得るわけでありまして、例えばこれが解雇でも何でも、訴訟で争われたとなった場合に、なぜ解雇したのか、解雇理由は何ですかと事業者側に聞いたときに、こういうマイナス事由があったからですと主張されることが予想されるわけです。その場合に、それではなくて通報だと推定できるのはなぜかというところだと思います。解雇するのは、普通、不利益取扱いがあったからだという経験則があるのだったらそれでいいと思いますけれども、そこまでは言い難いのではないかという気がします。

そこは、気持ちとしては理解できないところはないのです。実務においては、解雇が争われたときには解雇事由は何かというのは事業者側で大体言うことは言うのです。言うことは言うのですけれども、それは事実上の訴訟の運営としてはそうだということであって、立証責任の転換になるかというと、そこはまた別の議論が当然あるわけであります。

ここは推定規定とは何ぞやとか、あるいは訴訟における認定がどうなっているのだとか、そういったところも踏まえて検討する必要があって、なかなか難しいところがある。裁判実務においては、事実上の推定がかなり活用されているのではないかと推測されるところもありますので、この因果関係の推定規定がどこまで必要なのかといったところ、検討会の中では、そういった観点から御指摘される委員もおられました。

○河上委員長 恐らく解雇などの場合もそうですけれども、2面からやらないといけないですね。事業者に対する抑止のためには行政的な措置をとって、サンクションを与える。例えば罰金を科すとか、行政罰を与える。もう一つは保護ということになるのでしょうけれども、保護のところになると個別に争わないといけないですから、その訴訟がうまくできるかどうかという辺りを考えて、推定が働けば、その反証を出させることで、それを争わせるということができそうな気もするのです。通報者にとっては、この点が最も通報をためらわせる事情ですから。このような話をここでぼそぼそやってもしようがないので、これ以上はいたしません。

今般、消費者庁において取りまとめられた報告書は、検討会の第1次報告書とされておりまして、ガイドラインの改正等に必要な事項については、具体的に検討されている一方で、法改正が必要な事項については、今後の検討課題として残されております。そして、引き続き検討を行った上でとなっているわけでありますけれども、消費者庁におかれましては、制度の運用を改善すべきとされた点については、できるだけ早期にガイドラインを改正するなど、必要な対応をしていただきたいと思います。

また、今回の報告書で積み残された事項については、通報者保護に係る要件・効果など、制度の実効性向上のために極めて重要な論点が多く含まれておりますので、しっかりとした検討が望まれるところでございます。

当委員会におきましても、本制度をより消費生活の安全・安心に資するものとするために、消費者庁における取組状況について、引き続いて注視してまいりたいと考えております。

消費者庁におかれましては、お忙しいところ審議に御協力いただきまして、ありがとうございました。

(消費者庁退席)

≪5.その他≫

○河上委員長 それでは、最後ですけれども、議題「その他」といたしまして、消費者委員会に寄せられました意見等の概況について、事務局より御報告をいただきまして、委員の間で若干の意見交換を行いたいと思います。よろしくお願いいたします。

○友行企画官 それでは、参考資料2を御覧いただけますでしょうか。

平成28年の1月1日から3月31日までの間に消費者委員会に寄せられた要望書、意見書、声明文等の一覧でございます。

全部で80件寄せられておりまして、一番最初から見てまいりますと、最初が取引・契約関係となっておりまして、消費者契約法・特商法関係が24件となっております。

特商法関係につきましては、Do Not Call制度の導入などの勧誘規制を求める要望が多く出ております。

消契法につきましては、専門調査会の報告書を受けまして、法改正を行うべきとされた事項についての速やかな法案提出などが要望の中心となっております。

6ページ、同じく取引・契約関係で、2件、特商法以外のものでございまして、一つはサーバー型電子マネーについての意見書でございます。もう一つが、景表法の関係でございます。

さらに、7ページ、食品表示関係でございまして、機能性表示食品制度に関するものでございますとか、廃棄食品の不正流通に関する意見というものが出されております。

消費者安全の関係でも2件ほど出されておりまして、薬の関係となっております。

8ページ、地方消費者行政関係では、消費生活相談員に関することの要望が出ておりまして、最後のところが移転関係でございますけれども、49件出ております。

要望につきましては、全体は以上でございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

その都度、意見書は委員間で共有しておりますので、お読みになったものがほとんどかと思いますけれども、御意見のある方は簡潔に御発言をお願いいたします。

特に、今次の委員会において目下進められている調査審議のテーマが順次取りまとめられつつありますので、新たなテーマ等の御提案もあれば、是非御意見をお聞かせいただければありがたいと思いますが、いかがでしょうか。

よろしゅうございますか。

特商法、消契法に関しては、今、まさに国会でいつ審議ができるかということが問題になっている段階で、あとは見守るほかないのですけれども、できるだけ早く成立をして、消費者契約法に関しては、積み残した論点もございますので、引き続き議論を再開したいと思います。

特商法の不招請勧誘、Do Not Call等々についてもお話しいただいていますけれども、これはもちろん問題としては我々も十分認識していて、特商法の意見を取りまとめる際も、あれはやむなくおろしましたが、しかし、その制度が有用ではないかという意見はずっと持っておりますので、今後引き続き可能性については追求していきたいと思っております。

池本委員長代理、どうぞ。

○池本委員長代理 先ほど、高齢者の見守りネットワークの報告書を取りまとめ、前々回には、相談窓口の充実のことについて報告書を取りまとめという形で発信しておりますが、この4月に消費者安全法改正法が施行されて、地域における消費者安全確保地域協議会の設置状況がどうかということは、消費者庁でも今、情報収集をしておられるらしいのです。そういった改正消費者安全法の施行のタイミングで、各地で消費者行政がどう進み、あるいはどこが更に課題なのかという辺りは、いきなり専門調査会を作ってというのではなくても、例えば安全法施行を受けた5月なり、6月なり、早い時期に消費者庁から状況を集約したところを報告していただいて、私たちもその認識を共有する必要があるでしょうし、その先に何が必要か、場合によっては検討チームを作るなりということで進めていく必要があるのかなと思います。

その先の問題意識は、例の消費者行政推進交付金が平成29年まではいろいろ記述はあるのですが、その先は見えないということがあります。地方自治体の職員の人は、そこを非常に不安がっておられるところもありますし、平成29年度になってから議論するのでは遅いと思いますので、その点を視野に入れて、検討課題に位置付けていただきたいと思います。

○河上委員長 ありがとうございました。ほかにはいかがですか。

その他で、消費者庁等の移転関係に関する御意見をたくさんいただいております。まち・ひと・しごと創生会議のほうで一定の方向が示され、この問題については、庁でも試行を踏まえて、8月ごろまでに結論を出す方向で作業をされているということであります。御意見もさまざまあろうかと思いますけれども、この件に関しましては、試行の結果なども注視して、消費者委員会として、どこかの段階で意見を述べることが必要かとは思っております。まずはその試行の状況について情報収集していきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

委員会に寄せられました意見書、要望書等については、今後とも全委員で情報共有するとともに、定期的に委員間で意見交換を行う機会を作ってまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。


≪6.閉会≫

○河上委員長 本日の議題は以上でございます。最後に事務局から今後の予定についての説明をお願いいたします。

○友行企画官 次回の本会議の日程や議題につきましては、決まり次第、委員会のホームページ等を通じてお知らせいたします。

なお、この後委員間打合せを行いますので、委員の皆様におかれましては、委員室にお集まりください。

○河上委員長 それでは、本日はこれにて閉会とさせていただきます。お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございました。

10分後ぐらいに委員間打合せを始めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

(以上)