消費者団体ほか関係団体等との意見交換会 議事録(2016年3月16日)

日時

2016年3月16日(水)13:00~15:10

場所

消費者委員会会議室

出席者

【委員】
河上委員長、池本委員長代理、阿久澤委員、大森委員、長田委員、樋口委員
【消費者団体ほか関係団体】
全国消費者行政ウォッチねっと
山田 英郎 とちぎ消費生活サービスサポートネット理事
石川 浩一郎 弁護士
全国消費者団体連絡会
松岡 萬里野 代表理事
板谷 伸彦 事務局次長
日本経済団体連合会
斎藤 仁 政治・社会本部長
川崎 茂治 政治・社会本部員
日本司法書士会連合会
小澤 吉徳 常任理事
中里 功 消費者問題対策委員会委員
日本ヒーブ協議会
川口 徳子 代表理事
宮木 由貴子 副代表理事
【事務局】
黒木事務局長、小野審議官、丸山参事官

議事次第

  1. 開会
  2. 消費者団体ほか関係団体等との意見交換について
    全国消費者行政ウォッチねっと
    山田 英郎 とちぎ消費生活サポートネット理事
    石川 浩一郎 弁護士
    全国消費者団体連絡会
    松岡 萬里野 代表理事
    板谷 伸彦 事務局次長
    日本経済団体連合会
    斎藤 仁 政治・社会本部長
    川崎 茂治 政治・社会本部
    日本司法書士会連合会
    小澤 吉徳 常任理事
    中里 功 消費者問題対策委員会委員
    日本ヒーブ協議会
    川口 徳子 代表理事
    宮木 由貴子 副代表理事
  3. 閉会

配布資料 (資料は全てPDF形式となります。)

≪1.開会≫

○河上委員長 それでは、時間になりましたので、始めさせていただきます。

本日は、皆様、お忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。ただいまから、「消費者委員会委員と消費者団体ほか関係団体等との意見交換会」を開催いたします。

本日は、所用によりまして、蟹瀬委員、鹿野委員、中原委員、増田委員が御欠席ということになっております。

まず初めに、配付資料の確認につきまして事務局からお願いいたします。

○丸山参事官 お手元の議事次第下部のほうに配付資料一覧を記載しております。

資料1につきましては、全国消費者行政ウォッチねっと提出資料。

資料2につきましては、全国消費者団体連絡会提出資料。

資料3につきましては、日本ヒーブ協議会提出資料となっております。

不足等ございましたら、事務局のほうまでお申し出いただきますよう、よろしくお願いいたします。

○河上委員長 それでは、議事に入ります。

消費者委員会では、委員会の運営改善等の参考とすることを目的に、消費者団体ほか関係団体等から御意見・御要望を伺うとともに、委員との意見交換を行ってきております。

本日は、全国消費者行政ウォッチねっと山田英郎とちぎ消費生活サービスサポートネット理事、石川浩一郎弁護士。全国消費者団体連絡会からは、松岡萬里野代表理事、板谷伸彦事務局次長。日本経済団体連合会から、斎藤仁政治・社会本部長、川崎茂治政治・社会本部員。日本司法書士会連合会から、小澤吉徳企画担当常任理事、中里功消費者問題対策委員会委員。日本ヒーブ協議会から、川口徳子代表理事、宮木由貴子副代表理事にお越しいただいております。

皆様方におかれましては、お忙しいところを御出席いただきまして、まことにありがとうございます。


≪2.消費者委員会委員と消費者団体ほか関係団体との意見交換について≫

○河上委員長 本日の意見交換会テーマですけれども、いつものように漠としたしたものではなくて、「官民連携の具体的なアイデアについて」というものを提示させていただきました。こういうテーマを出させていただきましたのは、実は昨年の8月、第3次消費者委員会で取りまとめ、公表いたしました「消費者行政における官民連携の在り方に関する調査報告」で指摘させていただきましたように、当委員会では、今後の地方消費者行政を含む消費者行政の発展のためには、官民連携が不可欠な要素、キーワードになると考えているからであります。

複雑化する消費者問題あるいは多様化する消費者の価値観に対応していくためには、行政という観点から何かをしていくとしても、財政の厳しさはもとより、人的資源あるいは専門的知見等において限界があるということで、民間の活躍が必須であろうと思われます。民間の力、とりわけ消費者団体や事業者団体の皆様の力が、今後、非常に重要になると考えております。そして、行政には民間が活躍できる環境をきちんと整えるということが求められているかと思います。

そこで、本日御参加いただきました皆様には、日頃の御活動の中で、公益のために共に助けるという場面、自助・共助・公助とあるとすると、ちょうど中間の「共助」の部分ですね。その共助の取り組みや、そこにおける工夫ということで、具体的に何かございましたら、ぜひ御紹介いただきたいと思います。

また、積極的に、新たに取り組みを進めるために、行政に対してどのような環境整備を求めるかということについても、忌憚のない御意見を伺いたいと考えております。

第3次の報告を総論といたしますと、第4次委員会では、その各論部分を作るということを目指しておりまして、本日の御議論等も参考にさせていただき、今後の委員会活動にぜひ活かしていきたいと考えているところであります。

では、参加団体の皆様のほうから、説明、御意見を頂戴いたしますけれども、短くて恐縮ですが、各々15分程度ということでお願いし、その後、委員との意見交換をさせていただきたいと思います。

それでは、初めに全国消費者行政ウォッチねっとから御説明をお願いいたします。説明は15分以内でお願いいたします。

○全国消費者行政ウォッチねっと石川弁護士 こんにちは。今からお話させていただくウォッチねっとの石川と申します。よろしくお願いします。

官民連携の事例としては、具体的な取り組みとして2つだけお話させていただきたいと思っています。資料のほうには入れられなかったので、申しわけないですけれどもね。

まず、1つ目は、ウォッチねっとには消費者行政充実ネットちばという地方の消費者団体も入っているのですけれども、千葉の消費者団体と連携して、うちが作っている訪問販売お断りステッカーというのがあるのですけれども、それを千葉県の大網白里市の一部の地域に全戸配布しました。それを2年ぐらい経ってからですか、追跡調査、どれだけ効果があると実感しているかというところで、配付した全戸、結構地区があったのですけれども、全戸に戸別訪問して聞き取り調査をしました。

その際には、大網白里市に全面的に協力していただいて、配布する段階から協力していただいた。市の人と、市内のいろいろな団体、労働団体、消費者団体と私たちでネットちばの人たちとみんなで地域を区割りして訪問して、追跡調査の結果を聞き取り、それをデータでまとめて、こちらで公表するということをやってみました。こうやって戸別訪問を実際にしていくというのは、全国の取り組みとしては初めてなのかなと思いました。こうやって実際に汗をかいてみんなで動くことによって、市の方とも連携が強くなりますし、私たちは全国組織ですけれども、地域の方との連携というか、話し合いということも、情報流通がスムーズに行くようになるという点はあるのかなと思います。

ですので、結局はそこでの取り組みは2回ということになっていますけれども、単発で終わるのではなくて、ちゃんとした後追い、追跡ということも非常に大事だなと実感した活動が1つ目です。

もう一つとしては、これも千葉でやったのですけれども、リコールキャンペーンと言って、これは県民提案事業という国のお金を使ってやれる事業があったのですけれども、冬の時期だったので、ストーブとか湯沸器といったもののリコール情報が出ているものについてリストアップ化して、図とともに1冊の冊子を作って、それを老人福祉施設に持っていって、皆さんにアンケート用紙をつけて配る。その冊子とアンケート用紙をおうちに持って返ってもらって、自宅にあるかどうかといった調査をしてもらいました。

それを配布して、また回収してデータ化して、リコールに関してのデータを取るとともに、そういった活動を通して、リコール、製品事故、製品安全に関する関心を高めてもらう、地域住民の方にそういった意識を高めてもらうための取り組みをしました。このときに各地域の相談員の皆さんも含めて御協力いただいて、高齢者施設ですので、高齢者関係の人たちとも連携を取る。

そういったことで、消費者問題に関する意識をどんどん高めてもらうことが大々目的だったのですけれども、それがその後、千葉県内でのシンポジウム開催に当たって、後で話を聞きたいと思いますけれども、これからの安全確保地域協議会の基礎となるような団体、コミュニケーションができるのではないかということで、千葉の消費者団体がそこの取り組みを通して、これからの地域活動ができないかというところで、今、模索しているといった情報もこちらに入っています。

この2つの取り組みは、官民連携の事案としてはあり得るかなと思ってます。

以上です。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

では、引き続きまして、全国消費者団体連絡会から御説明をお願いいたします。

○全国消費者団体連絡会松岡代表理事 全国消費者団体連絡会の私、代表理事をしております。3人の共同代表の1人の松岡と申します。よろしくお願いいたします。

今日、全国消費者団体連絡会のほうからは、私たちが取り組んでいる、消費者団体だけではなく、官民連携の動きを運動としてするということをお話ししたいなと思っております。

まず1つは、最近取り組んでおりますのが、消費者被害防止救済基金の設立運動です。これは、消費者裁判特例法が今年10月にいよいよ施行されます。消費者団体が応援して作っております適格消費者団体が特定適格消費者団体になるように、私たちはこういう運動をしたいと思っております。また、いろいろな面でサポートを続けていきたいと考えているわけです。

この基金というのは、消費者団体だけではなく、次のページを繰っていただきますと、「2.財源」というところがありますが、これは一般の消費者からの寄附を募るということと、事業者団体からの寄附を募る。それから、公的機関からの寄附。あと、行政的には、休眠口座の活用というものも、協力して利用できるような公的な担保をしていただきたいという、特定の分野からだけの寄附ということではなく、広くたくさんの分野から関わって寄附をいただくということを目的にしております。

どういうことに使うかということにつきましては、その上の「1.適用対象」というのがありますが、まず被害救済の運動を起こす事業として、適格消費者団体が取り組む差止請求訴訟の費用の援助。それから、特定適格消費者団体が取り組む被害回復訴訟に対する費用の貸付。それから、消費者団体が自主的に営む消費者相談事業の費用の援助。それから、消費者団体によるADRの運営費用の援助というものを適用対象と考えて、この基金を作っていきたいと考えています。

運営主体といたしましては、全国消団連は現在全国で48団体が加盟している、ほとんどの消費者団体が入っているという状態の連絡会になっております。また、2013年から一般社団法人化しております。そういうことから、この基金設立のリーダーシップをとって運営管理を務めるようにしていきたいということを思っております。細かいことは、まだこれから、いろいろ検討中ですが、運営といたしましては、全国消団連が運営そのものをするわけではなく、運営委員会という第三者的な委員会を作りまして、そこで管理するという形を、ルールをきちんと決めていきたいと準備しています。

スキームも下に出ておりまして、どういう流れになるかということもお示ししています。

また、1ページに戻っていただきます。「消費者被害防止・救済に向けて各主体の連携を作り出す」ということで、そこにカラーで出ていますけれども、1つは、消費者団体自身の強化です。消費者団体自身が消費者相談を受けたり、そのことによる提言活動とか、いろいろ活用していくということで、消費者団体自身が強くなるということが必要です。

それから、一般消費者への啓発活動。どうしてこういう基金の設立が必要かということに伴って、消費者への啓発活動、情報提供活動を進めていく必要があります。

また、社会的責任の受け皿としての活動もやっていかなければなりません。これは、消費者被害の防止・救済は公益でありまして、消費者のためだけではありません。ですから、行政や事業者の人たちの支援も必要としていますし、信頼性の高い受け皿とするように、いろいろな主体からの協力をお願いすることになります。そういう官民連携の御協力によって成り立っていくものになります。

あと、もう一度ページを繰っていただきまして、ロードマップが出ております。私たちも中での議論、それから理事会とか消団連の公の場での議論を重ねているところです。ロードマップといたしましては、それぞれ先ほど述べました3つの分野について準備をやっと始めたところです。今のところ、消団連全体の理事会での了承はある程度受けていますので、それを具体化していって、総会が5月にありますけれども、総会での承認を得るという形に持っていきたいと考えております。

消費者の人たちへの理解の促進運動というのは、ずっと続くことになりますけれども、どういう啓発活動をしていったらいいかというプログラム作りや、パンフレットなどのツールの開発というものもやっていかなければならないと思っています。

また、社会的信頼性の確保ということで、いろいろな方面の方と、そのことを成り立たせるためには何が必要かという御相談も、これからさせていただくことになります。

また、今、準備しておりますのは、受け皿に必要な全国消団連の定款や規則の改正。それから、第三者機関を作るとしたら、それに必要なさまざまな規定類を作っていくということが当面の課題になっていると思います。10月の施行に向けて、基金の設置の宣言ができるかどうかというところがありますけれども、こういうことで、広く全分野の方々の御支援がいただけるように努力し、御協力をさせていただきたいと考えているわけです。

あと、具体的な問題につきましては、事務局次長の板谷のほうから御報告いたします。

○全国消費者団体連絡会板谷事務局次長 では、2.と3.について私のほうから。

「2.問題の市民社会的解決について検討を試みました」ということで、一つの事例として御紹介させていただきます。国際消費者機構(CI)の2015年度の年間のテーマが「健康的な食生活」であったこと、また厚労省の食事摂取基準が改定されて塩分について目標値が示されたこと。さらに、食品表示法の栄養表示が義務化されて塩分相当量が表示されるようになったことを受けて、全国消団連でも重点テーマの一つとして取り組もうとしたものです。

では、どういう風に具体的に進めるかというところですが、こういう個人の食生活に関わる問題ですので、単純に法規制という話にも当然ならないですし、何もしなくていいのかという話にもならない。そういうことで言いますと、関係するそれぞれの主体が協力して問題を解決していくようなプロセスを取らないとだめなのではないかということであります。何か目覚ましいことができているわけではないのですけれども、とりあえずということでやってみたのが、4ページ目から消費者ネットワークの記事の形で資料を入れてあるものです。

運営会議という私どもとしては少し大き目の勉強会を持っているのですけれども、その一つのテーマとして取り上げてみました。この会議では、この問題に前向きに取り組んでおられる加工食品メーカーさんをお呼びして、取り組みについて聞いたこと。それから、特に熱心に取り組まれている地方自治体から御報告をいただいたりして、では、私たちは何ができるかということを考えてみたということであります。

塩分は一番安上がりな調味料です。味が濃いものを消費者が求めることがあり、塩分を増やしたほうが売り上げが上がるということがあって、主体的に塩分を減らした商品を作るのはなかなか難しいですね。自分だけ単独で塩分を減らしてしまうと、ただ単に自分のところの商品が売れなくなるだけになります。しかし、放っておいていいのかというと、そうでもないということで、このメーカーさんは業界団体に働きかけて、毎年5%ずつ減らしていこうではないか。5%であれば、消費者の舌が慣れていくと、知らないうちに薄味になっていくという取り組みをやられているところです。

けれども、業界団体内で意思統一といいますか、合意がなかなか取れず、むしろ行政でそういうふうに決めてもらったほうがいいのではないかということもおっしゃっていたりもします。社会的責任というものを意識した企業の主体的な取り組みを、消費者団体として応援していければいいのではないかということで、試みにやってみたという企画でありました。

消費者庁の倫理的消費研究会に私どもも参加しているものですから、そこに報告するために消費者の意識調査をやったのですけれども、そのときに一緒にこの種の話題も設問に入れてとってみました。7ページ目に資料を入れてあるものですけれども、すみません、全く読み取り不能な資料になっていますので、少し解説だけさせていただきます。

このとき入れた設問は、先ほどの運営会議と同じように、自己責任か、社会的解決か、行政介入かというテーマで1つ設けました。見えなくなっている円グラフですが、上の段の右側の円グラフは何を聞いているかといいますと、食生活の問題の捉え方ということで、減塩を初めとする日本人の食生活がより健康的になるための方策として、あなたの考えに近いものはどれですか。一番多かったのは、それは食生活の話なのだから、個人の責任でしょうというのが46.1%です。その次の、行政の規制とか介入が必要なのではないかという話が13.3%です。その横の、これは関係する主体が協力して解決に動くべきだというのが32.4%という結果になっておりました。

その下の段の「社会の問題としてとらえ本業での社会的責任を求めています」という表題のところのグラフですが、これは塩分の約6割は加工食品から摂取していますという情報を入れた上で、このケースで、あなたは食品メーカーにどのような行動を望みますかということを聞きました。それに対して、いや、消費者の好む味、濃い味が好きだったら濃い味を、マーケティング調査に基づいて作るべきだという考えが5.3%と、少なかったです。一方で、社会的責任の観点から、しっかり塩分を減らすように商品を作って提案すべきだという回答が75.3%ということです。

一般的なインターネット調査なので、実際の行動はどうなのかというところは、また問題になるわけですけれども、インターネット調査で聞いたところでは、そういう結果が出ているということであります。

それと、表紙に戻っていただいて、3.ですけれども、消費者委員会の報告書でマルチステークホルダー会議ということが書かれていました。これについて、一つ書いてあります。「社会的責任に対する円卓会議」というのが2009年に設置されまして、このことについては経団連の斎藤本部長がこの後恐らくお話になると思います。斎藤本部長は当初からこれに関与されていらっしゃったので、私のほうは軽くちょっと触れます。

この円卓会議に消費者セクターということで、消団連はずっと関わってきたのですけれども、私たち自身も消費者セクターとしての実態を持たなければならないというのは課題意識として常に持っていたのですが、この消費者セクターという固まりをなかなか作り切れずに、したがって円卓会議にも十分な参加ができてこなかったかなと、ちょっと反省しています。力不足な面があったというわけです。

ただ、そうは言っても、河上委員長の最初のお話にもあったように、これからますますこういうマルチステークホルダーの取り組みが重要になるということから考えますと、内閣府も加わる形でこういう会議を持たれているというのは、すごく貴重な場ですね。今、機能していないとしても、すごく貴重ということがありまして、何とか枠組みを残していかなければいけないのではないか、機能させていかなければいけないのではないかという問題意識を持っています。

そのためには、私たち自身の課題も含めて、セクターとしてしっかり協力していけるようにするために、政府セクターといいますか、政府の側の位置づけといいますか、取り組み方がますます重要になってくるかなと思います。政府の側でそれなりに位置づけられれば、いろいろなセクターがそれなりの位置づけをし、セクターとしてまとまっていくという流れを作っていかなければいけないのではないかと思います。詳しくは、斎藤本部長よりお話いただければいいかなと思っています。

以上です。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

それでは、既に御要望も出ましたけれども、経団連からお願いします。

○日本経済団体連合会斎藤政治・社会本部長 御紹介ありがとうございます。今日は、私も消費者委員会ができる前の福田内閣のときから、たまたま長いだけなのですけれども、いろいろ関わってきた経験から、連携に何が必要なのかというお話を、団体としての意見というよりも、私個人が7、8年、この問題に関わってきた問題意識というのを述べさせていただければと思っております。そういう意味では、団体との意見交換になっていますけれども、それはそういうことで御容赦ください。

この問題、福田内閣のときに餃子の中毒とか、いろいろな問題が起きて、行政がしっかりしないといけない、縦割りはだめだということで、消費者庁・消費者委員会を作ったということが、まずきっかけとして、福田総理の強いイニシアチブということもあり、たまたま消費者庁構想というのを、かねてから消費者団体あるいは学者の先生が唱えていたということで一致したということで、消費者庁・消費者委員会ができたのです。

そのときに事業者の位置づけというのが、悪徳事業者、取り締まりの対象、行政がしっかりしなければいけないところから始まった感がありまして、そういう意味では、消費者は弱いもの、事業者は勝手にするものという対立構造を何とか変えたいなということで、機会あるごとに言ってきたわけでございます。その結果、昨年8月の提言を拝見しておりますけれども、消費者・事業者の連携、あるいは事業者の消費者志向経営への行政の支援とか、当時としては考えられないような言葉が並んでおりまして、この点は非常に高く評価しているところでございます。

その際、消費者の役割、事業者の役割、特に市場における役割ということを考えたときに、理想にあるのは消費者市民社会ということだと思います。釈迦に説法で恐縮でございますけれども、消費者はマーケットの主要なアクターとして、自分たちの価値観を持って商品を正しく選択することによって、そういった購買という力を借りることによって、事業者の生産とか販売というものを変えていくのだ。その目的は、サステナブルディベロップメントというか、持続可能な社会に向けてという。消費者というのは国民と言いかえてもいいかもしれませんが、そういう意識を育てることによって事業者の行動も変わるし、社会全体が良くなるのだという考え方に立っていると思うのです。

ただ、現実問題として、消費者の行動はどうかということを考えた場合に、確かに学者の先生等は、多少高くても社会にいいものは買いますよとか、研究成果はこうですよと言いますが、現実的には、差別化されない商品については、少しでも安いものを求めて、いろいろな店を回って買うというのがかなりの消費者で、僕はそれが自然だと思います。価格という要素が、品質が同じであればという前提ですけれども、それはあると。

それから、ブランド力ということで見ますと、この間も消費者団体の人、NGOの人と話したのですけれども、バレンタインデーがあって、これだけフェアトレードとか、そういうものに皆さん関心があるとは言え、ほとんど並んでいるものはヨーロッパ産とか何とかブランドばかりで、そういうものは全く気にしないのですかねと言いましたら、早速、フェアトレードチョコレートを探してくれて、私にくれましたけれども、探すのに苦労したのだよと言われました。それだけなかなか出回っていないのですね。

そこはなぜかというと、意識の高い消費者というのは確かに存在します。それは増えてきていると思います。ただ、企業というのは、マジョリティーの消費者に受け入れられなければ、幾らいいものを作っても売れないという意味で、企業は利益のために生きているものではないということはありますが、利益を上げないで企業体というのは存在しないというのもまた事実でございます。

したがって、消費者志向の経営ということを考えた場合の消費者というのは、正しい情報のもとに正しい選択ができる消費者というのを社会全体でどう育てていくかというのが大きな課題であり、これは事業者だけではできないし、また消費者団体の方も努力されているということですが、消費者団体だけでもできない。それは、行政も一体となって進めるべきものではないかと思っております。

一例を挙げますと、表示の問題、情報開示の問題がございますが、例えば賞味期限というのは開示義務があってやっておりますけれども、消費者は賞味期限を見ると、できるだけ期限の長いものを買って、賞味期限切れがどんどん残ってしまう。そのために事業者は賞味期限の3分の1ぐらいのところは返品せざるを得ない。膨大な無駄が生じているという現実のもとに、賞味期限というのは、ある一定の条件のもとでやったときの基準である。

例えば牛乳でも、日なたに置いておけば1日も経たずに腐りますし、ちゃんと保冷しておけば2週間でも3週間でももつ場合もあるというのが事実なのにも関わらず、そうした知識ではなくて、数字だけを見て行動するというのが消費パターンだとすれば、その消費パターンを変えるというよりは、賞味期限の意味とか、そういうものを行政が事業者・消費者団体としっかり一緒になって、みんなにこういうものですよというのを積極的にPRするという活動が、むしろ官民連携でいいのではないか。これは一例でございます。

それから、エコ社会ということで、企業もCSRの一環として、産業自体のCO2を減らす努力をしております。それと同時に、商品についてもエコ商品等、出しておりますが、消費者がちゃんとエコ商品を買うかということになった場合に、行政の役割としては、2、3年前でしたか、エコポイントとかエコカー減税とか、そういった政策減税的な施策と絡まないと、結果としてはうまくいかない。むしろ、政府の施策というのと社会の求めるものを何とかうまく一体となってやらなければいけないのではないかなと思っております。

そのときに、例えば今度、パリ協定が結ばれて、野心的な数値目標が出されましたけれども、今回重要なのは、車とか家庭のCO2の削減ということで、これはもちろん事業者はLEDライトをたくさん作るとかありますが、実際に家庭に普及するには、家計を持っている方がそういったものを積極的に購入するというパターンがないと、CO2の削減につながらない。そうであれば、そういう購入を促すような制度なり税制なり補助金なり、何でもいいのですけれども、そういったものも行政としてどうやってやるか。

もちろん国民運動を起こすというのも重要でございますが、そういったものを含めて考えないといけないのではないか。その意味での連携というのが私は必要ではないかと、常日頃から思っているところでございます。

そこで、このレポートを読んで、その後、消費者庁の中に消費者志向経営の検討会とか倫理的消費の研究会とかできていますが、今、その議論も横で聞いてはいるのですが、私、行政と言ったときに消費者庁は指していないと思うのです。というのは、消費者庁も入っています。ただ、消費者庁だけがやろうと思うとすごく限界があるのです。例えば、消費者志向経営の話ですと、いい企業をどこかホームページを作って見せましょうとか、表彰しましょうとか、点数をつけましょうとか、それにとどまってしまうのです。それだと、どこまで広がりがあるのかなと。

むしろ、経産省とか環境省とか厚労省の制度と一体となって、消費者志向あるいは持続可能な社会に向けた施策を推進するための企業へのインセンティブみたいなものをしっかりと出していく。例えば、そういうものを一体となって出していく。既存の制度でもいいのです。知られていない制度もたくさんありますから。それを、例えば消費者庁がこういうメニューがありますよと見せていくみたいなことのほうが、企業から事例を集めて紹介するのも確かに大事ですけれども、そちらよりも、そういう制度を使って、どんどん世の中を変えていきましょうという運動を起こしたほうがいいのかなと思っております。

それから、地方自治体が非常に重要です。地方消費者行政をやられている方が多いと思いますけれども、自治体の首長というのはかなり権限を持っていますから、首長の意識次第でかなりのことができるはずです。その中で、例えば地産地消商品の紹介とか安心・安全の製品の紹介とか、そういったものを、今、ふるさと納税みたいなものでお返しとか、ありますけれども、そういうところに取り上げるとか。いい商品とか消費者のためになる商品というのを自治体が見つけて、それを一緒になって販売の拡大をやるみたいな取り組みというものがあると、結構行けるのではないか。これはアイデアでございますけれども、持っております。

それから、さっき情報の話で賞味期限の話を申し上げましたけれども、消費者委員会ができて、4年前か、呼ばれたときに私、申し上げたことなのですけれども、風評被害への対応というのを、事業者だけではなくて行政がしっかりやらないと、例えば福島県産とか何とか産と書いただけで消費者に買ってもらえない。それによってどうしたらいいか。もちろん、企業のマルシェとか社員食堂での購買ということもやりますけれども、そもそも安全とは何なのか、これはどうなのかというのを行政のほうでしっかりと説明することによって、風評被害を起こさないようにするというのも、行政としての非常に重要な支援のあり方ではないかなと思っております。

長くなりましたけれども、先ほど板谷さんからマルチステークホルダー・プロセスについて、私のということですが。確かにマルチステークホルダー・プロセスというのは、円卓会議で実験もしましたけれども、さまざまなステークホルダーが同じ方向に向いて、代表が出ていって、議論して結論を得たものを組織に持ち帰って、みずからの行動に変えて社会全体で良くしていくという、非常に美しい絵です。ただ、そこを本当に動かすには、行政の理解、政策決定プロセス、重要政策に、円卓会議に乗るか乗らないか。

例えば、一億総活躍でもいいですし、地方創生でもいいですし、あるいは成長戦略の骨太の戦略でもいいのですけれども、そこにしっかりと入れて、その中でマルチステークホルダーの役割なり議論の決定に活かせるのかというのがないと、ただ議論して終わってしまう。

だから、さっき内閣府が出てきたと言いますけれども、本当は内閣府以外もたくさんメンバーがいるのですけれども、誰も出てこないような会議になってしまったのです。そこは、各省にとってみれば審議会のほうが自分が指名しますから、楽なのです。いろいろな人を集めて、いろいろな意見を聞いたとなるのですが、それだと個人の意見であって、組織全体になかなか広まらないというのでマルチステークホルダーをやろうと言ったのですが、逆に組織を背負っている人ほど、持ち帰って検討とか、なかなかおさまらないのです。また、時間がかかるのです。

だから、時間と手間ということを考えると、スピーディーに決めなければいけない世の中で、官邸主導でとにかくやるのだ。待機児童を何とかしろという話の中で、マルチステークホルダーでやっていたら、1年2年、結論が出ないようでは困るよという話になってしまうのです。その辺を考えた場合、確かにマルチステークホルダーという言葉もいいし、プロセスも機能させれば確かにいいのですが、それを機能させるためには、行政がこれをどう評価して、どう利用したいのかという意思が明確になって、予算もつくし、それが施策に反映するということであれば、しっかり議論しようということにもなると思うので、その辺を決めないといけないのかなと思っております。

長くなりましたけれども、私のこれまでの感想みたいな話をさせていただきました。ありがとうございました。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

それでは、引き続き日本司法書士会連合会から御説明をお願いいたします。

○日本司法書士会連合会小澤常任理事 日本司法書士会連合会常任理事の小澤と申します。よろしくお願いします。本日、ペーパーの資料はございませんが、意見がないというわけではございません。私のほうから概要を説明させていただいて、中里委員のほうから補足をと思っております。

私どもが提案したいのは、地域・地方における官民の連携でございます。当日本司法書士会連合会では、平成21年の頃から、全国各地にて消費者被害救済セミナーを実施しております。例えば今年度は沖縄と富山で開催しまして、次年度は岐阜等で開催する予定でございますけれども、地域の行政の方、消費生活センター、県民センターとか県警、包括支援センター、福祉の関係者といった方をお招きしております。これまでのテーマは「高齢者の消費者被害」ということでございますけれども、先般、富山で開催したテーマは特殊詐欺の問題でございます。

これは言うまでもないことでございますけれども、そういった被害を未然に防ぐという予防、そして被害救済というのは官民の連携が不可欠でございますので、このようなセミナーを地方で推進するというのが極めて重要なことだと理解して続けているところでございます。

概要は中里委員のほうに補足をお願いします。

○日本司法書士会連合会中里消費者問題対策委員会委員 中里です。

そもそもこのセミナーを始めたきっかけですけれども、その前に司法書士会という性質上、取引被害を中心にお話させていただきます。多くの取引被害というのは、各地の消費生活センターに持ち込まれる、あるいは自治体の相談窓口に持ち込まれて、そこで相談員さんのあっせんによって何らかの解決を見ていくというものが、ほとんどの割合を占めているわけですけれども、中には相談員さんの手に負えないような事件とか、事案の性質上、消費生活センターでは対応できないようなものというものもある。

そういうものが確実に弁護士なり司法書士という法律実務家のところにつながっていけば、これは一つのルートができていくわけですけれども、私は静岡の人間なのですけれども、地元の相談員さんの中には、私たちの努力不足ということもあって、司法書士という職業を十分に活用していただいていない状況があった。

恐らく、これは全国でも一緒だろうということで、静岡で始めた事業というのは、まず地元の相談員さん、あるいは相談窓口の職員さんの会のほうへお集まりいただいて、皆さんのところに持ち込まれた相談を私たちがお受けしたら、こういう手順で、こういう段取りで事件を解決に導いていきます。そのときには、私たちはこういうポイントに注目しながら物事を考えて進めていきます。費用はこのぐらい、時間はこのぐらいですというものを目に見える形で御提案して、まずは安心して司法書士会に事件を回してもらう。司法書士会に相談者を紹介したら、こういう風になるのだという青写真が見えるような形で提供してあげるということをやってみました。

その次に、そのシンポジウムで全体会議だけではなくて、第2部でエリア別のグループディスカッションみたいなものをやったのですけれども、それは各地域ごとに、司法書士の出席者、それぞれの地域から来ていただいて、そこで一つのテーマでいろいろなことをああだ、こうだとやることによって、そこでお互いに顔の見える関係ができ上がって、そこで終わらずに、次は地元で勉強会をやりましょう。わざわざこんなに遠くまで来なくてもいいですよということで、月に1回程度の勉強会を続けています。

そこでの勉強会というのは、私たちが何かを持ち込む素材を用意するということではなくて、むしろ相談員さんの手元にはたくさんの生きた事案があって、日々御苦労されているわけですので、そういう事案を守秘義務に反しない限りで御提案いただいて、その場で一緒になって考えるという時間に充てています。そこで、私たちも逆に教えていただくことがあるし、相談員さんからは、法律の専門家のモノの考え方ということを見ていただいて、ああ、そういうこともできるのだね、そんなことがあるのだねというのをお互いに気づき合うということで、とてもお互いにいい関係ができ上がって、それは地元の被害にあった相談者・消費者に必ず還元されるシステムではないかと思います。

それを静岡の司法書士会では、消費者分野の問題、それから福祉問題。私たち、成年後見の事件をたくさんやっているものですから、地域包括の皆さん、社協の皆さん、社会福祉の皆さんといった分野の皆さんをお招きして、福祉の権利擁護の部分での懇話会をやったり、勉強会につながっている。あるいは、今度は警察の方などをお招きして、犯罪被害者と言われる人たちの支援をするための懇話会をやって勉強会につなげていくという、いろいろな分野でお互いの仕事を知って、また私たちの仕事を知っていただいて、相談者を安心して回していただくというシステムを作るような努力をしております。

その形を全国に作っていこうということで、私たちの連合会は全国組織なものですから、私たちがずっとそこに、例えば富山なら富山に根づいて、そこで一つの組織を作り上げるということは不可能ですけれども、セミナーを通じて、地元のいろいろな関係機関の人にパネラーを依頼して、パネラーを依頼するだけではなくて、その関係の機関の人にもたくさん出席していただく。もちろん司法書士会もそこに出かけていって、今後の私的なミーティングでもいいですし、会と会との連携でもいいです。何でもいいですけれども、まずきっかけになるような仕組みを作りましょうということをずっとやってきています。多分、15、6カ所やっているのではないか。

その中では、うまくいったところもあれば、すぐにたち消えてしまったようなところもあるわけですけれども、たち消えてしまった理由の一つは、うちは弁護士会とちゃんとそういう関係ができているというところもありますし、それは別に私たちだけではなくて、弁護士会さんも含めた法律実務家全体が行政の皆さん、相談員の皆さん、福祉の現場の皆さんに対して敷居を低くして、安心して相談者を持ち込んでいただく仕組みというものが、もっと全国ででき上がっていくといいのかなと思っています。

ぜひそんな視点を官民連携という大きなテーマの中に取り込んでいただくと、本当に小さな具体的な提案ではありますけれども、具体的なとっつきやすいものとして動き始めていくのではないかと思っています。

以上でございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

それでは、最後になりますけれども、日本ヒーブ協議会から説明をお願いいたします。

○日本ヒーブ協議会川口代表理事 日本ヒーブ協議会の代表理事の日本ハムの川口でございます。本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。資料3でお配りいただいたものに沿って説明をさせていただきます。

2ページ目に、日本ヒーブ協議会における活動とスタンスを記載しております。当協議会は、企業の消費者関連部門で働く女性が、異業種の横断的ネットワークを活かして、企業人と消費者の両方の立場から企業活動と生活を考えている団体です。「生活者と企業の双方を理解し、新しい価値を創造・提供することで、生活者の利益と企業の健全な発展に寄与する」ことを目的として活動を行っております。

続いて、3ページ目をご覧ください。昨年10月の意見交換会の中で、当協議会は、企業・消費者・行政を中立的な立場でつなぐ役を担いたいと申し上げました。民官連携は、まさにそうした視点から、我々が日頃重要な取り組みと考えている案件です。

「消費者行政における新たな官民連携の在り方に関する調査報告」の中で、我々が注目しておりますポイントは、4ページ目にありますように、消費者の埋もれがちな声を集約すること。また、コンプレインレターを活かすという視点から、事業者団体との連携、事業者と消費者のコミュニケーションは大変重要です。一社ではなかなかやり遂げられない内容を含めて、事業者団体が役割を果たさなければならないと考えております。

5ページ目の資料の通り、消費者が企業に提供する情報や意見は、企業にとって商品・サービスの改善の重要なヒントとなります。消費者の行動によって企業が変わり、それによって社会が変わる。そうした循環が消費者市民社会の実現につながると考え、企業・消費者への働きかけを積極的に行ってまいりました。

消費者と企業は対立関係にあるのではなく、相互依存関係にあり、双方の円滑かつ密接なコミュニケーションにより、消費者にとっても、企業にとっても持続可能な消費社会が実現されると考えております。

6ページ目の、昨年12月に実施した第一生命経済研究所の調査の結果によりますと、企業側の姿勢は消費者に伝わりにくく、また消費者の意見は企業に伝わっていないという実態があり、そのコミュニケーションは円滑とは言えない部分があります。

しかし、双方に信頼関係構築やコミュニケーションへの潜在ニーズは十分にあると考えられます。企業と消費者が相互理解をし、コミュニケーションを取ることで、より良い消費社会になると認識していながら、それがなかなかうまく行っていないという実態があります。しかし、消費者の声が企業にきちんと伝われば、それによって動く企業はたくさんあるということも事実です。

7ページ目をご覧ください。そうした視点に基づいて、日本ヒーブ協議会で現在作成をしておりますのが「超高齢社会における企業の消費者対応」という冊子です。

「社会の変化を捉え、企業の中から社会へ‐生活者視点で学び、考え、行動し、発信する」という2015年度のテーマに基づいて、当協議会の分科会横断的な活動として、研究活動を行ってまいりました。当協議会が2013年に35周年を記念して作成した「お客様の声を活かした取り組み55事例」の続編にあたるもので、企業の高齢者対応にフォーカスし、実態調査でバックデータを取るなどして発展させております。

この研究に当たりましては、筑波大学の原田教授やみんラボ(正式名称は「みんなの使いやすさラボ」)、そして当協議会の代表経験者を中心に組織しております消費者力支援研究所といった外部の協力も仰ぎまして、情報や分析の客観性を高めてまいりました。加速する超高齢社会の影響により、企業のお客様対応部門に寄せられる高齢者からの問い合わせも増加傾向にあります。高齢者問題は、多くの企業において避けて通ることのできない大きな課題であり、消費者対応にも変化が求められております。

この超高齢社会における企業と消費者のあり方について、それぞれの立場から多角的に情報収集をし、より良い消費環境の構築・発展に寄与するヒントを模索することが、今回の目的です。

詳細につきましては、宮木のほうから説明させていただきます。

○日本ヒーブ協議会宮木副代表理事 副代表理事を務めております第一生命経済研究所の宮木由貴子でございます。よろしくお願いいたします。

今、川口のほうから説明がございましたけれども、資料7にございますように、第2部というところが主な調査結果となります。具体的には3部構成になっておりまして、企業がどのように対応を行っているのかという事例収集をしたもの。さらに、各企業のお客様相談現場では、一体どのような対応をしていて、どのようなことに困っているのか、その課題は何なのかという情報を集めたもの。そして、3つ目が高齢者の声としまして、定性調査・定量調査の双方から高齢者の情報を収集しております。

チャート8が、実際の企業の対応事例になります。今回、スペースの都合で1例だけ持ってまいりましたけれども、このように33事例を7つのカテゴリーに分類しております。見やすさについて3事例、使いやすさについて7事例、健康維持へのサポートについて5事例、介護・自立支援について5事例、買い物サポートに5事例、安全への配慮に2事例、安心サポートとして6事例。

続いて、9ページ目、こちらが実際にお客様対応の現場で起こっていることから高齢者対応をまとめたものです。高齢者のお客様の背景としては、身体的な変化、気持ちの変化、環境の変化という3つの側面から考える必要があるということ。そして、実際にどのような問い合わせが来るのかといったことを、ヒーブ協議会のメンバーから意見を出してもらいました。高齢のお客様に対応する際に重視していることとしては、ゆっくり目の速さで話す、やさしい言葉でわかりやすく話すといった対応を行っている企業が多いことが明らかになっております。

さらに、10ページ目、これは高齢者の声を定量と定性の側面から収集した情報になります。先ほど川口のほうから紹介しました第一生命経済研究所の調査は私が行っているのですけれども、企業と消費者のコミュニケーションに関する調査というものです。こちらは調査概要を省略しておりますが、男女同数、年代ごともほぼ同数、それから就労状況について、割り付けを行って2,000サンプルをとっております。企業に対する考え方などについて意見を集めたものを年代別に比較したものをみると、自分が購入した商品やサービスについて不満を感じたとき、その気持ちを企業や店舗に伝えると回答した人は、男女ともに60代が最も多くなっていました。そして、その下にあります図表のように、企業・店舗と消費者は互いに信頼しあう関係を築くべきだと考えている人も、男女ともに60代が最も多いという結果が出ております。

お客様対応現場では、高齢のお客様の対応に大変苦慮している実態はあるのですけれども、高齢のお客様というのは、企業や店舗との信頼関係構築ニーズも高い。そして、意見も一生懸命伝えようとしてくださっているという実態がわかるデータでございます。これは何かと申しますと、企業活動のヒントになるような情報というものが、高齢者に多く潜在しているということになります。

また、定性調査のほうとしましては、筑波大学の原田悦子教授に御協力いただきまして、「みんなの使いやすさラボ(通称みんラボ)」で、高齢の消費者の方々に実際にヒーブ協議会の会員企業の商品や改善事例をお示しして、御意見をいただくという形で情報収集しました。原田先生には、心理学の側面から専門的な知見をいただいておりまして、昨日の月例会にもお越しいただいて御講演いただいているのですけれども、例えば高齢者は小さいものが見えないとか、色的に見えないというだけでなくて、必要ない情報を排除する能力が落ちているので、例えば表示のときにたくさん情報を載せると、それだけで見えなくなってしまう。幾ら字が大きくて見やすい色をしていても、見えなくなってしまうといった知見などもいただいております。日本ヒーブ協議会の会員はそうした情報を企業に持ち帰って、そこから自分たちの商品・サービスの改善に活かすという活動を行っています。

11ページ目、先ほどの「消費者行政における新たな官民連携の在り方に関する調査報告」にもございましたが、公助・自助・共助といったときに、これから企業に求められていく部分というのは大きいと考えております。実際に企業においてCSRもしくはCSVという形で社会に貢献していく、自社の活動と社会貢献を両立させていく動きというものは強まっておりますし、消費者志向経営に対する意識というものも高まっているという中で、企業単体でやるところに限界があったり、それを消費者の方々になかなか理解していただけないという実態がある。そういうところをヒーブ協議会のような事業者団体でお手伝いができたらいいと考えております。

ただ、それに当たって、幾つか限界がございまして、それが最後の12ページ目の具体的な提案になります。「官民連携に向けた具体的提案‐消費者と企業のコミュニケーション支援と相互理解推進」とありますが、ぜひ行政と連携できたらと考えております。

例えば、企業や行政の間での情報交換。本日もこのような機会をいただいておりますけれども、企業が消費者対応に関して、どのようなことを行っているのかということを、一社一社、把握していただくというのは難しいことだと思うのですが、私どものような事業者団体を介して、今、企業ではこのような動きがありますということをお伝えする機会をいただけたらありがたいと思っております。

2つ目として、消費者・企業・行政の三者間での情報交換。一方向ではなくて、企業側、消費者側、行政側が双方向で意見を出せるような機会があれば、非常に興味深い情報が出てくるのではないかと思っています。例えば、日本ヒーブ協議会ではワールドカフェという方式での議論の場を持つことが多いのですが、これのいい点というのは、声を出してもらいにくい人の声が出せるということ。今の消費者はSNSで何でも書くと思われていますが、SNSで意見を出す消費者というのも、また全体のごく一部です。黙っている人はどんなことを考えているのか、そういうことも含めて、いろいろな手法で情報を出していく。そういうところに行政が関わっていただけると、信頼性、それから客観性というところで、我々としても会を開催しやすい部分がございますし、2つ目にありますように、情報の連携、収集した情報を拡散したり、普及する際にも、行政が一緒にやってくださることで信頼性の高い情報として社会に出すことができると考えております。

3つ目ですけれども、企業間の連携に対する行政のサポート。私ども、事業者団体でございますけれども、入会していただく企業さんは大企業が多いというところで、中小企業さんと交流する機会が非常に少ないのが課題です。実際にお話をさせていただくと、人を出す、時間を使ってもらうのに、中小企業さんだとなかなか人を出せないという事情があったり、そういった連携がなかなかできないのですが、ヒアリングなどをさせていただくと、かなり考え方に違いがあるというところまでわかっております。ですので、ぜひそうした業種間や企業規模による違い、そうした企業間でのコミュニケーションの機会を持っていただいて、認識のギャップというものを明らかにすることも課題ではないかと考えております。

さらに、企業から消費者への発信機会の創出・支援。教育機会の創出。日本ヒーブ協議会では、文部科学省の消費者フェスタのようなところで、小学生・中学生・高校生に消費者教育といった形でお話をさせていただく機会も持っていますが、今、企業がどのようなことを考えて、どのような消費社会を目指して活動しているのかということを若い人たちに知っていただく機会を、ぜひ作っていただきたいと考えております。

それによって、企業活動の認知度を上げて消費者の理解を促進する。これは、先ほど、川口も申し上げましたけれども、企業は消費者と対立関係にあるものではなくて、双方でより良い消費環境を構築していくといったところを若いうちに意識していただく、そこを目指しております。

さらに、一番下ですけれども、事業者団体への補助金・支援制度とございます。私ども会員企業からの会費で運営を賄っておりますけれども、それでは十分に活動が賄えない部分もございます。例えば直接的に補助金をいただくということもございますが、共同研究のような形で事業者団体を支援していただけると、またおもしろいものが出していけるのではないかなと考えております。

以上でございます。

○河上委員長 どうもありがとうございました。

それでは、御質問、御意見のある方は発言をお願いします。

大森委員、どうぞ。

○大森委員 先ほど経団連の斎藤本部長から、消費者の行動は変わっていないではないか、相変わらず安いものとかブランドに弱くて、消費者市民社会を支えるような消費者が育っていないのではないかという御意見をいただきました。私も全くそれは感じているところで、先日の意見交換会でも、消費者庁ができているのに消費者教育は進んでいないよという御意見をいただきました。私も自分が所属しているNPOで、毎日、消費者教育を一生懸命やっているのです。高齢者とか学校は割合できるようになりました。一番消費者教育をやりにくいのが現役世代です。契約当事者で経済活動を一番やっている子育て中のお母さんと、サラリーマンとかのお父さんがなかなかできていないところに大変苦渋しています。

それで、子育て中のお母さんは、まだ比較的、PTAの勉強会とかでやってもらえる機会はあるのですが、企業がなかなか難しくて、地域の市町村の消費生活センターと連携して、地元にある中小企業には、新人研修などで市の予算で無料でやりますよということで、新人研修の中でボリュームを出すことができるし、せっかく採用した新人が悪質商法につかまって破綻状態になったら選手として全然闘えないし、また犯罪者になられても企業イメージが損なわれるということで、喜んで対応してくださっているのです。ただ、そういう理解のある市町村も少ないし、そういう御理解のある企業も少ないので、本当に限られています。

それで、大企業のほうに消費者教育をやってもらえませんかとお話に行ったことがあるのですが、大企業のほうは外部委託で新人研修をしているので、ワンパッケージで英語の研修とか簿記の研修というのをボンと委託しているから、その枠には入れないというお返事をいただいたのです。

そこで、経団連の方とかヒーブ協議会の方にお願いがあります。ぜひ新人研修とか管理職研修とかリタイアする前の研修とかに消費者教育を入れていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○河上委員長 この辺はどうですか。事業者の内部で、むしろ消費者教育というか、消費者力を高めるような研修というのは可能ですか。

○日本経済団体連合会斎藤政治・社会本部長 消費者教育につきまして、例えば学校への出前授業とか、対象が子供とか、そういうところは多分ヒーブ協議会さんのほうが詳しいと思いますけれども、専門の部署を置いて、その必要性をやっている方が多いのですが、研修というのは人事部門です。別に悪口を言うつもりはない。一番頭の固い人が入っているような部門に、こういうのを協力してというのを、消費者担当、お客様担当窓口の部門の方が人事に言えるかというのが、日本の社会の中で、一般論ですが、なかなか難しかったのです。

ところが、消費者教育に限ったことではないので、3.11以降、新人研修の一環として被災地でボランティアを今でもやっている企業がありますし、社会の問題に職員が敏感にならないと、何かあったときに企業としてのアンテナが損なわれるのではないかという、特に経営者次第なのです。だから、経営者がそういう意識でやるのだと決めれば、割と物事は早く決まるのです。ただ、部門間で、例えばヒーブさんのほうが詳しいと思うのですが、お客様相談とか消費者に日頃接している人たちがそういう話を持っていっても、上になかなか上がらない。

そういう意味で、消費者志向経営を推進するには、もちろん社是・社訓というのはいいことが書いてありますが、それを今の経営者がどう理解して、どう実践するのだということをちゃんとわかってもらうということをやらないと、なかなか進まないのではないか。その意味で、表彰とか総理大臣賞とか消費者庁長官賞とか上げれば、そこに社長が出て行く。それは一つの効果はあるのですけれども、そこよりも、社内で消費者という部門の人がもっと積極的に上に言っていくというのが結構大事かな。

例えば日本ハムさん、この間、経団連とACAPで大社さんに来ていただいて、いかに消費者とのコミュニケーションを大事にしているかと、トップみずからにお話いただいて大変感動を受けたのですが、そういった経営者をどんどん増やしていかないと難しいのかな。そこが一番ポイントだと思います。それがあれば、もちろんリタイアする人とか新人とかにも、そういう大切さをちゃんと教えるというのが、研修の一環としてできるのではないかと思います。

○河上委員長 もしよければ、ヒーブさん、いかがですか。

○日本ヒーブ協議会川口代表理事 企業にもよると思いますが、最近、社内での研修の機会がとても増えてきています。例えば弊社日本ハムであれば、30歳研修、40歳研修などあります。50歳の時にはライフプランセミナーもあり、同様のことをしている企業が増えて来ております。その中に組み入れるというのは考えられるのではないかと感じて聞いておりました。

仮に、消費者対応部門にお話をいただいても、我々がつなぐことも可能だと思います。規模的なもの、どの程度のものにするかにもよりますが、そういったセミナーの中の一つの項目で入れるというのであれば、できる企業もあるかと思います。規模によっての実現性はまちまちかとも思いますが、生活とか消費者問題といったものの従業員教育も重視している企業が大変増えて来ておりますので、全く難しいということではないと感じております。

○日本ヒーブ協議会宮木副代表理事 経営層によるかなという気もするのですけれども。経営層が熱い思いで従業員に語りかけるということだと思うのです。企業はCSRレポートなどを出して、もちろん従業員はそれを読むのですけれども、事あるごとに自分の身近な上司などがそういうことを意識するようにということを企業でやれば、改めて研修という形を設けなくても、そういった思いがちゃんと伝わる企業というのは多いのではないかと私は考えています。

○河上委員長 対消費者での事業者としてのあり方ということもさることながら、事業者の社員も消費者なので、その消費者として、どう行動すべきか、どう考えるべきかという部分の研修というのが可能でしょうかね。

○日本ヒーブ協議会宮木副代表理事 はい。良いものを作って提供していくということ自体が、企業の業務改善でもあるし、消費者教育でもあるということになりますので、「良い」企業に勤めている従業員は「良い」消費者でもあるという形で、従業員としても消費者としても同時に育っていけると考えています。

○河上委員長 この間、聞いたら、埼玉県はたしか警察が某生命保険会社とタイアップして、2,500人ぐらいいるセールスレディがおじいちゃんの見守りに動き始めたという話を聞きましたけれどもね。

○日本ヒーブ協議会宮木副代表理事 そういう形で自治体や行政と企業が連携していくという取り組みは、今、増えていると思います。特に、見守りというところでは、日本ヒーブ協議会の企業でも行っているという事例が既に冊子の中でもございます。

○河上委員長 よろしいですか。ほかには。

はい。

○全国消費者行政ウォッチねっと石川弁護士 ねっと千葉の石川ですけれども、今の企業も含めた見守りということも含めてですけれども、先ほどちょっとお話ししましたけれども、安全確保地域協議会が消安法で今年から明文化されていますね。非常に今、肌で感じているのは、各自治体はこの設置に向けてなかなか動いてくれないのです。非常に大事な制度ですし、私たちが知っている消費者団体は、いろいろなところで仕掛けはやっているのですけれども、どうしても行政が関わらないとまとまらないのです。それを国のほう、消費者委員会からも意見してもらえればいいのですけれども、どんどん後押しをしてもらいたいです。

後押しをしないと自治体は動かなくて、後押しして、尻をたたくだけではなくて、設置して運用を始めたような団体については、手をたたいて褒めてあげてほしいです。自治体は、隣を見ているのです。隣を見て、まだやっていないからいい。逆に、向こうが進んでいるとなると頑張らなければいけない。それでやっと動く。なので、どんどんいい地域を作って褒めていただきたい。それができるのは国のシステムしかないので、国のほうでできればやっていただきたい。それを、委員会のほうはやれる権限に範囲があるかもしれないですけれども、いろいろ意見を出していただいて後押ししてもらえると非常に助かります。

それが官民連携の基本的な仕組み作りにもなりますし、先ほど最初におっしゃられたように、人と金が行政では賄い切れないというところは、消費者団体にお金を落としても、私は効果があると思いますけれども、それよりも今、法律で明文化されている地域協議会をしっかり作って、その仕組み作りに消費者団体が関わりますので、そういった側面支援をどんどんやっていただきたい。それは、質問というよりは意見ということですけれども、そこの点をぜひお願いしたいなと思っています。

○河上委員長 どうぞ、斎藤本部長。

○日本経済団体連合会斎藤政治・社会本部長 消費者安全法に基づいて、こういうものを作ろうというのは確かですが、そうすると法律的には高齢者のいわゆる金銭的被害とか、そちらだけのための見守りになるのです。本来、地域というのは見守りが必要だ、例えば仮設の見守りとかをやられていますし、民生委員というのがいるのですよ。あるいは社会福祉協議会というものがあるのです。そういうものが別の法律に基づいて、別々の省庁の所管のもとに、それぞれの目的のためにやっているのだけれども、行っていることは見守りなのです。

そのメニューに新しく作れと言うから、これまた大変だとか、何とか団体は入れなければいけないということだけれども、今ある組織をもうちょっと活用して、確かに行政のスリム化、効率化なのですけれども、確かに法律でこういうことが今までのネットワークに役割が1つ増えたみたいなことでないと、絶対に広がらないですよ。

そこを法律至上主義、何とか所管だと言っていると、お互いにいろいろなネットワーク同士がけんかしてしまって全然うまくいかないというのがあるので、やるときは、既存のネットワークがどういうものがあって、ここをちょっと活用すれば、その中に今の課題になっている高齢者の金銭的被害救済というのをメニューに加えてくださいみたいなアプローチのほうが、僕はうまくいくと思います。

○河上委員長 池本委員、どうぞ。

○池本委員長代理 池本です。今、御指摘されたことはものすごく大事なところだと思います。

安全確保地域協議会が高齢者被害、高齢者見守りネットワークのことだとおっしゃったのは、実は消費者庁がそれを売り込むときに高齢者被害のことばかりやっていて、そういう風に映っているのですが、安全確保地域協議会は、食の安全も、表示も、インターネットも、あらゆる消費生活全体について地域連携を作っていくための機能のはずなのです。

それともう一つ、自治体の職員が誤解しているのは、安全確保地域協議会は安全法に基づいて新たな組織を立ち上げなければいけない、自分が全部を動かさなければいけないと思うから重たいので、最後におっしゃったように、ほかの例えば高齢者福祉の部門と連携すれば高齢者見守りネットワークであるし、あるいは警察がやっているところもある、あるいは学校がやっているところも、いろいろなところがやっているところへ消費者行政も食い込んでいって、そこも活用しながら消費者問題を位置づけていくとして、そこを呼び名として、我が部署からすれば、これが安全法上の協議会と命名させてくださいと。

向こうと2つ名前が重なったっていいわけで、本当はそういうものとして宣伝していかなければいけないものだと思います。そこを行政の職員にもっと気楽に、庁内でいろいろなところと連携して、そこを活用してくださいと職員に認識を切りかえてもらわなければいけないだろうと思います。

○河上委員長 山田理事、どうぞ。

○全国消費者行政ウォッチねっととちぎ消費生活サービスサポートネット山田理事 ウォッチねっとの山田でございます。

今のお話ですけれども、官民連携イコール地域というのが出ましたけれども、地域の中でも特に基礎的自治体が一番重要だと思っております。しかもそれを言うと、人の問題です。今、池本先生がおっしゃいましたように、人で全て動きます。例えば先ほどおっしゃった、いわゆるいろいろな協議会があると。もう一つ言えば、今回の消費者教育推進法の中でも推進地域協議会があるわけですよ。それは消費者行政の中なのです。それを職員さんが理解していないのです。それをこの人がやる気になれば、当然のことながら福祉の関係でもネットワークができておりますから、そこが問題なのです。それを動かすのは人なのです。

我が栃木の場合、今、25の市町がございます。その中で、全て消センなり窓口ができております。相談員も全員配置されております。相談員さんも、例の3つの資格の中で97%が資格保持者でございます。そういう意味で、これは県が主導して全部やってくれました。今回の消費者推進地域協議会も、未設置の5番目に入っておりましたけれども、この2月1日に作ってもらいました。

ところが、その中にもう一つ、消安法もやってくださいと県に申し上げましたら、これは5万人以上の基礎的自治体のお話ではないかということなのです。だから、積極的に置かないのです。だから、せめて市や町に寄越すのだったら、まず県の中に作ってくださいということが一番必要だと思います。それはまた、人の問題で。

栃木県25市町の中に、14の市があります。その中で私は3年前から首長さんを訪ねて、消費生活条例を作ってもらうようにお願いに上がりました。当時は3つしかなかったのですが、それが2つできました。残りはやる気はありません。そういう状況です。これも人なのです。先ほどおっしゃった、最終的には首長さんの判断ですけれども、首長さんを動かすのは人、職員なのです。ですから、これからは人の育成がぜひ必要ではないかと私は痛感しております。

以上です。

○河上委員長 まずは、地方自治体の縦割りになっている部分の連携がきちんと行われることから、コミュニケーション作りをやらないといけないということなのでしょうね。でも、栃木はその意味では連携がとてもうまく行っているほうだと伺っておりますし、警察が音頭をとって70業種を束ねてネットワークを作ったという話も聞きましたけれども。

ほかには。長田委員、どうぞ。

○長田委員 今の話に触発されて思ったのですけれども、私ども、地域の婦人会なのです。そこに住んでいる人たち。その婦人会の組織は、婦人会という組織でもあるけれども、こっち側を見ると交通安全をやります、こっち側へ行くと警察母の会であり、こっち側へ行くと結核予防であり、日赤奉仕団でありという、人はまるで同じなのですけれども、いろいろな役割を持っています。その中で、子供たちの見守りもやるし、高齢者の見守り活動もやっています。だけれども、今、地方行政の中の縦割りの問題の御指摘がありましたけれども、それぞれ全部担当者が違うので、その都度に顔を変えなければいけないというのがある。

それが現状で、ある協議会に役割を1個乗せればと言うけれども、その縦割りの中で結構固められているケースもあって、前回の地方消費者行政のときにもちょっとお話ししたのですけれども、そこを何とか解決していかないと、やっている人も一緒で、こういう風にやろうねと、例えば国で少し横連携したとしても、途中で一本一本の縦のラインになって刺さってきてしまっているというのが現状だと思うので、もう少し流れとしての連携をきちんと確認した上で、最後の現場での連携がやっと実現するのかなと思います。

○河上委員長 本来、消費者庁というのは、そうした縦割りのところに横串をきちんと刺して、消費者とか生活者の視点で全体をまとめ上げる役目を期待されているはずなのです。ですから、その精神がうまく現場にまで下りていないのではないかということかもしれません。

いかがですか。石川さん。

○全国消費者行政ウォッチねっと石川弁護士 今の絡みで、今年やったシンポジウムの話をちょっとさせていただきたいのですけれども、千葉県の鎌ヶ谷市でやったのです。そのときには実行委員会というのを組織して、消費者担当の行政課と教育担当と、社会福祉の関係で社協の人とか老人会、あと包括支援センター、各地区の人も全部入ってもらってシンポジウムをやりました。この実行委員会を基礎にこれから地域協議会の仕掛けを作っていこうと考えているのですけれども、今、言った行政担当職員が変わってしまうと、シンポジウムを忘れてしまっているのです。

後追いという形で、千葉県内でシンポジウムをやったところを幾つも訪問して確認しているのですけれども、行政職員が変わっていると、シンポジウムで読み上げられた提言について、これは知りません。みんなでこれから消費者センターの充実を図っていきましょうとか、いろいろな提言があるのですけれども、引き継ぎはあまりされていない。つながっていないのです。なので、地域協議会についても、地域でポツポツとやっても、それが途絶えてしまったら意味がないので、国のほうでこういったモデルケースとか、マニュアルではないですけれども、横串を刺して、こういうふうにやっていく。これで地域協議会を作りましょう。

先ほどおっしゃっていましたように、今までの社会福祉の見守りのほうが進んでいますから、ここに入れればいいのです。ネットワークができているところに、消費者の知識とか志向を入れていく。認知症サポーター制度とか、いろいろありますけれども、そういったサポーター養成を受けている人に消費者の視点を持ってもらうだけで全然違います。

今、鎌ヶ谷の実行委員会の中には業者も入れました。宅配業者とか見守りをやっている業者も入れて一緒にやっています。そういった事業もあるので、これをもっと褒めてあげて、全国に広げて地域協議会を定着させるきっかけにしていただければ。改正消安法が施行される今年が元年ですから、いいきっかけにするべきだと私は思っています。

以上です。

○河上委員長 では、斎藤本部長、どうぞ。

○日本経済団体連合会斎藤政治・社会本部長 私、初めの発言の中で申し上げました、いろいろなメニューを消費者庁が出したほうがいいと言った趣旨は、例えば見守りでもいいですけれども、各省が補助金とか、いろいろな制度を持っているのですね。それを受け手の側が、さっき長田委員がいろいろな顔をしてと言うけれども、いろいろな顔をして、いろいろなところからもらって、それをうまく使ったほうが本当はうまく行くのではないか。

縦割り行政をなくせと言ったって、これは数十年来、ずっと言っているのですよ。これは、それを待っていたら事がなかなか進まないので、むしろ縦割りがいいことに、こっちにはこういうメニューがある、これを組み合わせれば、もっとおいしい料理ができるみたいな感じで、いろいろな省庁からいろいろなところも含めて取ってきて、それをやるぐらいの、受け手側にもあったら、むしろそっちのほうが進むのではないかというのが第一点。

それから、地方を考える場合、私、災害ボランティアの話もしているのですけれども、社会福祉関係の方々とNPO・NGOの方々がうまく連携を取れるところはうまく行きます。ただ、NPOとかNGOの方と、消費者団体もそうかもしれないけれども、それぞれの土俵・領域というのがあって、そこはお互いうまく住み分けていて、本当は協力しなければいけないところが、いざ何かあったときに誰が音頭を取るかという話になりかねないのです。

だから、そこを調整するのがまさに自治体であって、いろいろな関係者、さっき言ったマルチステークホルダーがうまくいかないのではなくて、むしろそういう場面のときほど関係者を全員集めて、こういう目的のためにやるのだからというのを、関係者だけを集めても二進も三進も行かない話は、行政が音頭をとってやるという価値があるのではないかと思っております。

○河上委員長 ありがとうございます。

大森委員、どうぞ。

○大森委員 ウォッチねっと様の千葉の取り組み、二点お聞きしましたけれども、今、啓発講座を開いても、来られる人が高齢化していたり、定メンバー化していたりして、全ての人に消費者教育を行き渡らせるということが非常に困難な時期に、このお断りシールの事例、それとリコール製品の情報のアンケートを取る事例というのは、小さな市町村であれば、くまなく消費者教育ができる、すばらしい方法ではないかと感心しているのです。お断りシールを渡すときも、ただポンと渡すわけではないと思うので、悪質商法で困っていませんかとか、そういう話があるだろうし、製品事故のときも、リコール制度というのがあってという話もついて回ることになるので、すごくいいなと感心しているのです。

その上でシンポジウムにつなげたということなので、意識を盛り上げておいてシンポジウムということになれば、この前の話だわということで参加者も増えるし、市民・町民の意識も向上する、すごい仕組みだなと感心したのですけれども、これ、割合小さな、田舎の町で実施されたのですね。大都会で可能でしょうか。そのためのクリアすべき課題とかあれば、ちょっと教えていただきたいのですが。

○全国消費者行政ウォッチねっと石川弁護士 お断りステッカーの追跡調査は、比較的小さい、人口の少ないところです。特定のお宅に配ってしまうと、そこが逆に狙われるのではないかという意識があったので、高齢者宅なのではないか、ステッカーを張るぐらいだから断れない人ではないかと狙われるのが嫌だったので全戸配布にしました。なので、全戸配布でできる軒数も限りがありますし、私たちが追跡調査をするのも限度があるので、市内の4地区ぐらいに配って追跡調査という形にしました。なので、これを大都市でやれと言われたら無理だと思います。

ただ、リコールキャンペーンのアンケートについては、老人福祉施設で皆さんがカラオケ大会をやるときに、お昼の前に壇上で皆さんと一緒に健康体操をやった後に、今日はこういう趣旨で来ています。こういうものがあるのですよ。皆さん、興味を持ってください。あなたのうちにあるかもしれない。危険ですから調べてくださいということで持ち帰っていただく。回収に行くときも回収に来ましたということでお話をして、前回来られなかった方に関しては、またお話をしてということでやっていますので、今回のリコールキャンペーンは高齢者被害で、ストーブとか危ないですよということに絞ってやったのです。

これをその前の年は、子育て世代に絞って、子育て支援センターで幼児が座る椅子のリコール商品が出ていたり、三輪車とか、いろいろなリコール商品をピックアップして、そういうアンケートもやっています。なので、誰に、どのような人に対して、どういうアンケートをするかを絞ってやることがすごく効果的だと思います。絞れば、都市部でやることも可能かなと思います。

ただ、資料を作るのは、紙ベースでやると非常にお金がかかるので、今、デジタル時代ですから、携帯で見られたりとか、いろいろな仕組みがあってもいいのかなというのは、ちょっと今、考えていますけれども、そういった費用の面がクリアできるのであれば、大都市でも可能かなと思っております。

○河上委員長 追跡調査の結果というのは、もう公表されているのですか。

○全国消費者行政ウォッチねっと石川弁護士 公表されています。済みません、今日資料に入れ忘れたのですけれども、全戸でかなりのアンケート回収率にはなっていると思います。

○河上委員長 そうですか。また、よかったら情報を提供してください。

○全国消費者行政ウォッチねっと石川弁護士 はい。

○河上委員長 ほかにはいかがでしょうか。

池本委員、どうぞ。

○池本委員長代理 これは消費者団体の側にも、あるいは事業者側にもお聞きしたいのですが、今、議論しているような官民連携のうちの民の側での動きをどう作るかというときに、それぞれの地域あるいは団体の中で動きを作る人、人を育てるということが重要だと思うのです。これまで消費者庁は、消費者行政の窓口に座る消費生活相談員については、専門家として質を向上させるとか、研修をやるとか、あるいは新しい国家資格制度にするとか、そこは一生懸命やってきているのですが、企業の中の消費者問題に関わる主体的に動く専門家をどう育成するか。

以前に、何年か前に聞いたところでは、例えば消費生活アドバイザーというのがもともとそういう位置づけでスタートしたのだけれども、いつの間にか各企業に一通り研修すると、後は内部で伝授していきますというので、その企業からの受験者が減って、逆に消費生活相談員になるための資格みたいな感じになりつつあると聞きました。その意味では、企業の中での窓口の専門家を、行政の側から育成したり、研修の機会を作ったりということでどんなことが必要なのか、望まれるのかというのをお聞きしたいこと。

それから、消費者団体の側で言うと、例えば消費生活コンサルタントというのは、地域での消費者リーダーということでスタートしたのですが、これも消費者団体の活動が全体に低調になっていくと、そこでの活躍の場がなかなかない。結局、消費生活相談員の供給源という感じになってきた。

最近、消費生活サポーターとか、行政の先ほど言ったような官民連携を進めていくときの既存のネットワークの人とは別に、消費者問題を私は一生懸命やるのだという人を育てなければいけないのではないかということが、ちらほらとは言われているのですが、なかなかそれが本格的な位置づけを持って、制度的に育成されていない。個別の自治体で、1日とか2日とか、ちょっと研修して頑張ってくださいで終わっているという感じがどうもあるのですね。

そのあたりの行政・消費者・事業者のうちの、消費者・事業者の側の消費者問題の専門家というものをどう位置づけ、どう育成したらいいのかというところを何とかしなければいけないと思いながら、なかなか名案が浮かばないのですが、もし御意見があればお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。

○河上委員長 石川さん、どうぞ。

○全国消費者行政ウォッチねっと石川弁護士 済みません、たびたび。

人材育成、非常に重要な問題で、私、千葉ですけれども、千葉県でも県の養成講座とか、いろいろやっています。ただ、その養成講座に来て、せっかく勉強した方が地域に戻ると何もしていないのです。県の方と市の方、両方に聞いたのですけれども、県は受講した方の市町村に名簿は下ろしています。ただ、市町村の側からすると、受け取った名簿をどう使っていいのか。個人情報の関係だと思いますけれども、県が情報管理をしていて、ただ、こういう人が何人いますという名簿をもらっただけで、どう使っていいかわからない。県のほうは、連絡をくれれば、そういう人が受けていますよ。具体的にどう使えばいいかは市町村で考えてください。

全く連携というか、もったいないことをやっているのです。お金をかけて人材育成のために研修に来てもらう。せっかく知識を得て、地域のために頑張ろうと帰った人が地域では何もされない。行政のフォローがないので、自分からもアクションを起こせないというもったいない状態が続いているので、ぜひこれは、私、自治体も主体的に頑張って知恵を出さなければいけないと思うのですけれども、国のほうから一定程度、地域協議会でもいいのですけれども、こういう人材が必要です。サポーターが必要ですということを宣伝してもらって、そのために県に対してこういう使い方があるでしょうというメニューをぜひ提示していただきたいと思います。

県は、積極的な県もあると思いますけれども、国からとか、いろいろなマニュアルがないと動けない状態にあるところが多いので、そこを作っていただけると、私たちも国はこう言っているでしょう。一緒に頑張りましょうということを言えるのです。そこの道筋をつけていただけると、非常にありがたいと思います。

○河上委員長 なるほど。具体性に乏しいということでしょうか。ほかにはいかがでしょうか。

斎藤さん。

○日本経済団体連合会斎藤政治・社会本部長 消費者問題の専門家、イコールお客様対応の専門家ではないと思います。仮にお客様対応の専門家になると、これは確かに資格を持った方がたくさんいらっしゃるのですが、よくよく聞くと、かなりつらい部門です。いろいろなお客様がおりますから、それこそクレーマーと言われる方の電話を受けたり。そういう中でずっと専門性で10年やれと言ったら、とてもできないというところも確かだと思います。

しかし、人材を育成するというのは、何も消費者志向をお客様対応部門だけに任せておいたら、企業は良くならないと思うのです。むしろ、レポートにも書いてございましたけれども、品質管理あるいはCSRあるいは経営戦略、そういう人に、例えばさっき言った消費者市民教育のあり方とか、ヒーブさんの作った立派な社会の好循環の仕組みみたいなものを理解してもらうほうが、私は人材育成というか。資格を取ったり、専門部署を置くのも大事ですけれども、むしろそういうマインドを持った人が経営の上に上げられるような仕組みを企業がどんどん作っていかないと、企業はこれだけグローバルな競争の激しい時代に生きていけませんよというメッセージを、もっと明確に出していただきたい。

例えば人権問題とか子供の労働の問題とか、いろいろなものがありますが、ある日突然、訴えられたらどうするのですかみたいな話を、ちゃんとリスクの中に入れておくのと入れないのと、全然経営が違ってくると思いますので、消費者問題も、そういう意味では消費者に対してどのように対応を心がけるかというのを、ある意味育成というか、そういうマインドを持った人を経営の上に立つ人がちゃんと引き上げられるか。要するに、業績がいいとか何とかではなくて、そういうちょっと変わっている、あの人、消費者のほうばかり向いていると言っていながら、こういう人も大事だねと言って、ちゃんとしかるべきポジションにプロモートできるかというのは、経営者にかかっていると思います。

私、今日は個人的な意見ですので、むしろヒーブさんに聞いてもらったほうがいい。

○日本ヒーブ協議会川口代表理事 まさに斎藤さんがおっしゃった通りだと思います。

消費者志向を専門的に取り組むという意味で、宮木も私も消費生活アドバイザーの資格を持っておりますが、二人とも対応部門にいるわけでもありません。宮木は調査研究であり、私も開発系の業務を行っています。何となく消費生活アドバイザーも対応部門が取る資格だと思っている部分がまだまだあります。しかし、内容的にはそれだけではなくて、とても幅広いです。先ほどおっしゃったCSRとか開発とか製造といった部門で、いろいろな人が消費生活アドバイザーの勉強をして、消費者志向とは何ぞやということをわかっている人間が広がっていくということは、すごく重要なことだと感じています。

積極的に取り組まれている企業は本当にすばらしいと思いますが、まだまだ積極的にされている企業は一部ではないか。先ほど言ったように、対応部門のご指摘対応をされる方の資格としてという認識を持つ企業が、まだ大勢だと思います。その点を行政からも働きかけていただいて、企業トップの考えが変わっていくと、企業の中で勉強をしようという意欲が出る者も増えていくのではないか。

仕事をしながら資格を取るというのは難しい話ですが、社員の意欲が高まってチャレンジしようと思う人間が増えていくことは、とても重要なことかと思います。

○河上委員長 まだ、企業の中で消費者を向いている人は変わった人と見られる傾向があるのでしょうか。

○日本経済団体連合会斎藤政治・社会本部長 経団連の企業行動憲章では、消費者・顧客の意見を尊重してというのが一番に書いてありますので、経営の最重要課題だということです。ただ、変わった人とは言わないけれども、多様性とか、いろいろな価値観とかを受け入れられる人でないとできないのです。そういう人を受け入れられる人材というのは、本当は必要なのだけれども、そういう人はちょっと変わって見られるのです。そこを受け入れられるかどうかということではないかなと。決して軽んじられているわけではなくて、むしろそういう人が求められる時代ではないかというのを私は言いたかった。

○河上委員長 大森委員、どうぞ。

○大森委員 企業へのお願いばかりお話が続いているのですけれども、先ほど石川さんがおっしゃったように、せっかくシンポジウムをやっても、行政の担当者が変わっていて引き継ぎがなされていなくて、それをまた教えるのが大変だったというお話がありました。私自体、NPOでいろいろな行政とおつき合いがあるのですけれども、全然関係のない部署から、パッと消費生活センターとかに入られるのです。経理とかから来ると、何で消費者啓発にお金を使わなあかんのやとか、そういうこと、平気でおっしゃる方もいらっしゃるのです。

かと思えば、消費者関連の担当者は消費者庁で勉強させた人を移動のたびに充てていっているというところもあって、そういうところでは非常に連携が進む。行政の方へ、例えば研修を義務づけるとか、一定の専門性を持った人がある程度の期間担当するとか、そういう御希望とかはないですか。

○河上委員長 石川さん、どうぞ。

○全国消費者行政ウォッチねっと石川弁護士 本当にそこが縦割りというか、時間的にも連続性がなくなってしまって、非常にもったいない。ロスをしていると思います。そこはぜひ声を大にして言っていただけるとありがたいなと思います。

○河上委員長 うまく引き継ぎができればいいのでしょうけれども、なかなかそこが難しい。

委員のほうでどうですか。阿久澤委員、樋口委員、御感想なり御意見がありましたら、お願いします。

樋口さん、どうぞ。

○樋口委員 今いろいろお話を伺っていて、一つは行政の縦割りの壁ということになるのだと思いますけれども、これは非常に問題があるということ。今、経団連さんからもお話がありましたけれども、せっかく消費者志向経営ということなら、関係省庁が協力して体制を整えていったほうがいいと思います。

私自身は、長野県で消費者問題に10数年の間、取り組んで来ましたが、その中で見ますと、自治体の体制というのも、そこの首長さんの意向によって随分違ってくるということがあるのも事実だと思うのです。企業の場合には、経営者が率先して、消費者志向経営を実現しているケースも多いと思います。同じように、地方でも、例えば、熱心に知事さんや市長さんがやっておられるケースがあります。そのリーダーシップのもと、あるいは職員の方で熱心にやった結果、幹部職員になって、さらに消費者問題を頑張っている県や市町村というのも幾つかありますので、そういう事例をどうやってうまくネットワークとして広げていくのかということが大事ではないかということを、皆さんのお話を伺って痛感しました。

それを具体的にどういう方法でやったらいいのかというところは、非常に難しい点でありまして、まさに消費者委員会側が考えなければいけない問題。特に、政府とか行政のあり方そのものではないかと思いました。

もう一つは、事実関係として申し上げておくと、消費生活アドバイザーの制度。たまたま私、30周年記念のコーディネーターだったのでお話ししますと、あのとき基調講演をされたのはトヨタの副社長さんだったのですが、その方も消費生活アドバイザーだったと記憶しています。これは全く個別の事例ですが、最近、消費生活アドバイザーの受験者は企業の方が非常に多くて、今年は特に企業の方が多かったと聞いています。アドバイザーなど、それぞれの専門家集団の中にも多様性がありまして、そこといかにうまくつながっていくのかということも、実態に則して我々のほうも検討していったほうがいいのではないかと感じました。

○河上委員長 はい。阿久澤委員、どうぞ。

○阿久澤委員 今日はどうもありがとうございました。大変勉強になりました。

それで、消費者と企業とのコミュニケーションがとても大事だなというのを再確認したのですけれども、いかに正確にコミュニケーションを取れるかということが大事ではないかと思います。そのことを実際に、消団連さんにおかれましては、前向きに取り組んでいる企業との連携によって、正確な情報を取ろうということで、健康的な食生活につながる減塩について、食塩とおいしさとの関連などを企業のほうから説明いただいているというお話です。そういった、実際に聞いてみなければわからないということが、かなりあるかと思うのですね。

企業が、いい製品を作るためには食塩を使わなければできないということもあります。発酵食品など、まさに食塩が正常な発酵を促す一つの材料となりますので、そんなところをどのように苦労して、その食塩を減らしていくかという話も、多分聞けるだろうと思います。今回はおいしさと食塩との関連だったと思いますが、その辺につきましても、例えば乳関連の事業者は、ミルクが食塩にかわっておいしさを引き出すという調理方法なども紹介するとか。

消費者が、そういった話を直接企業に聞きに行っている。そして、企業はそれを聞いてほしいという、そのお互いの関係が非常に正しい、正確な、いいコミュニケーションを今後も作っていくのではないかと実感して聞いておりました。

また、ヒーブ協議会さんにおきましても、そういった教育機会がこれからもますます得られればいいという提案等もありますし、まさにそうだと思います。そんな中で、どちらかというと消費者のほうは聞きたい。だけれども、企業としては聞かせたくないというか、聞かれたくないといった、そういったところも若干あるのではないでしょうか。そういった意味では、ヒーブ協議会の会員さんのように高い消費者志向の意識を持つ方々が、早い話、ヒーブ協議会に多くの企業が加わるような運動をぜひしていただいて、そういった志向を持つ企業の裾野をどんどん広げていただければいいかなと感じて聞いておりました。

どうもありがとうございました。

○河上委員長 斎藤本部長、どうぞ。

○日本経済団体連合会斎藤政治・社会本部長 先ほど、担当官がくるくる変わるという話でしたが、消費者庁ができて、2年足らずで課長さんがどんどん変わられるということで、これはある程度宿命でしようがないのかなと思うのですが、それを逆手に取りまして、消費者庁に出向というか、来られた人がその後どうなって、どういうポジションで、どう活躍されているかというのを逆に追跡調査なりして、消費者庁で消費者行政を学んだことが、他の省庁なり地方なり、あるいは自治体からの出向者もいらっしゃるし、企業からの出向者もいらっしゃるから、それがどうなるのかというのを、もう消費者庁ができて7年ぐらい経つのですか。

そろそろどこかでやられることを消費者委員会あたりから提案して、消費者庁そのものの行政のあり方というのは、司令塔なのだけれども、消費者マインドを霞が関全体あるいは日本全国にどう広げていくかというのも重要な使命なので。逆に、くるくる変わるから、みんな2年間研修に来たようなものだと。役人の人がみんな消費者マインドを持った。それによって、どう変わったのだという調査みたいなものができるかなと。それがあると、くるくる変わることも悪いことではないと思うようなことになるのかなと思います。

○河上委員長 樋口委員、どうぞ。

○樋口委員 実は、その点に関連して、私、昔、論文を書いたことがありまして、全く個人的なものですが。その要点をご披露しますと、日本が戦後、安かろう悪かろうの製品の品質を高めていくということで、通商産業省の中に消費者部門ができたのですが、そこの幹部だった方がその後どうなったかを追跡調査したところ、事務次官はじめ幹部になる確率が非常に高かったということであります。つまり、その時代においては、消費者問題というものが社会の中で一番重要な課題だったわけです。通産省の重点政策の変遷を調べた際にも、消費者政策は通産省のトップの政策に位置づけられていた時代がありました。

これから先、グローバル化、高齢化、地球環境問題の深刻化など、いろいろな大きな波が来ますが、そういう中で、恐らくこの消費者問題が企業にとっても、一般の方々にとっても、これまで以上に重要な課題になる。したがって、消費者庁のスタッフについて、今すぐやってもなかなか結果は出ませんから、何年か後にその方々がその後、どういう意識を持たれ、どういう活躍をされているかということを調べたら、予想ですが、皆さん、それぞれの部署で大きな活躍をされているのではないかと、私の研究結果から推測いたします。

○河上委員長 消費者というのは国民代表ですから、その国民の意識に一番沿って動いた人というのは、それなりにいい仕事を行政でもしてくれることが期待できるところなので、いつか機会があったら、その種の調査も、ぜひやってみたらいいと思います。

もう予定していた時間が来てしまいました。今日は、本当にいろいろ貴重なお話をありがとうございました。一口に「連携」と言っても、そう簡単ではなくて、それぞれのシステムとかネットワークというのは、それなりの完結性を持ってでき上がっているものですから、それをうまく調整して、それぞれが機能を果たせるような形で結びつけるには、やはり一工夫要るのだろうと思います。

福祉のネットワークは、体力が弱った方という具体的な人を前提に作り上げられているネットワークですけれども、健康な老人も一緒に入れた形で、消費者のネットワークとうまくすり合わせるということを考えないといけない。

もう一つ、ネットワークを考える上で、それを持続可能なネットワークにするためにどうしたらいいか。経済的な問題もありますし、制度的な問題もございますので、その辺も考えていかないといけない。ネットワークの中で、そこで核になるような機関が必要なのだけれども、それが本当に信頼された核として受け入れられるかどうかということもそうで、先ほど司法書士会の方がその核としての信頼性が大事なのだということをおっしゃって、私もそのとおりだという気がいたしました。

もう一つ気になるのは、消費者ネットワークでいろいろ活動していくときに、どうしても上から目線になりがちで、支援を受ける側と支援をする側みたいな形になってしまいがちなのですが、実はこの間、消費者委員会でシンポジウムをしていましたら、老人会の方がお話しされて、どこそこから危険な詐欺商法はこうだったという話をしてくれたら、別の官庁からまた来て同じ話をし、3回4回聞いているうちにだんだん嫌になって、この間も聞いたという話になってしまう、と言っておられました。

支援をされるとか、みんなに教えてもらうのはありがたいのだけれども、自分たちだって少し主体的にやりたいというので、今度は老人会の元気な老人が少し弱い老人をみんなで守るための活動をやり始めたら、みんな生き生きして、よくわからないのだけれども、こんな危ないことがあるのだそうだと、みんなに説いて回る老人部隊が頑張っているというお話しでした。フラットな関係になって、そのネットワークの中で、見守られる人も自立して、自尊心を持ってちゃんと行動できるようなネットワークを作らないといけないのだなということを痛感させられました。

あと、実は今日はほとんど議論が出なかったのですけれども、消団連さんが考えている消費者基金の構想です。国が基金を用意するということがもちろん一番望ましいことではあるのだけれども、あまり当てにしていると、いつまで経っても動かない。ですから、その意味では、特定適格消費者団体が訴訟したりするときにどうしても必要になる金銭的な援助とか、そういうものを考えたときに、基金というのが一つの大きな目標になることは確かだと思うのです。きちんとした形で基金を管理する仕掛けというのを構想されて、今、一定のスケジュールのもとで頑張っておられるというのを聞いて、大変心強く思った次第です。

人ごとのように言ってはいけないですけれども、ぜひ応援させていただきたいと思います。頑張っていただければと思いました。

あと、ヒーブさんの話で「頑張る60代」というのがありました。私も60代に入って、とてもうれしかったです。年寄りの社会になりますけれども、今から年寄りも含めて、みんなで少しでも良い市場、良い社会を作るために力を合わせて頑張っていこうという意味で、緩やかな連携をみんなで持っていくということは大変大事だなと感じた次第であります。


≪3.閉会≫

○河上委員長 今日、いろいろ伺ったお話の中には、連携へのアイデアの種になるようなものがいっぱいございました。そうしたものをできるだけうまく整理して、そして消費者委員会で今度、官民連携の報告書の各論を作る際に、いろいろと参考にさせていただこうと思います。

ちょっと時間を過ぎてしまいまして、申しわけございませんが、今日はここまでということにしたいと思います。どうもありがとうございました。

(以上)